ノリクラ 雪渓カレンダー

Vol.16(2007/08/24〜25) D

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(Update:2007/08/30)

 

【高山植物】

チングルマなど群生する高山植物が少しかげりを見せて、開花する絶対数はやや少なくなってきている感じはありますが、まだまだ高山植物の季節は続きます。

コウメバチソウ(花)

こちらはコウメバチソウ。地面近くに茎を抱くようにつくハート型の根生葉が特徴です。大雪渓では8月下旬ですが、畳平のお花畑などでは、8月上旬ごろ咲き始めます。

 

黄色の雄しべに見えるのは雄しべではありません

十分咲いているように見えますが、実はこちらのコウメバチソウ、まだ、しっかり開花していません。どう見ても黄色見えるのが雄しべの葯(やく)ですが、これは受粉機能のない仮雄しべ(仮雄蕊−かゆうずい)。そして、仮雄しべの中央にあるのが本来なら雌しべの柱頭に見えますが、こちらが本来の雄しべです。

これからこの雄しべが仮雄しべの外側まで開いてはなびら(花弁)近くまで広がり、開花のプロセスを経て行きます。

シナノオトギリ(花) − まだまだこれから

こちらはシナノオトギリ。先週はかなり群生していましたが、今週はご覧のようにまばらな状態。でも、まだつぼみのものがたくさんありますので、一旦休憩といったところでしょうか?

ウサギギク(花)−頭花全体が開花しました

こちらはウサギギク。先週の ノリクラ雪渓カレンダーVol.15(2007/08/17〜19)D では、はなびらの中央部分にある丸い頭花の部分は外周から開花を始めることをお伝えしました。先週外周から咲き始めたウサギギクはご覧のように頭花全体が開花しました。

ですから、マルハナバチもご覧のように頭花の中央で蜜を吸ってますね。

 

後ろ足には大きな花粉の団子 花粉の団子はマルハナバチの幼虫のえさに...

マルハナバチはミツバチの一種で、朝から晩まで蜜を吸い集めます。そして、花を振動させて体についた花粉を後ろ足にある「花粉籠」と呼ばれる器官に集めて行きます(振動集粉)。こちらのマルハナバチは左の画像のように両足に大きな花粉の団子をつけています。

この花粉の団子は蜜とともに巣に持ち帰り、マルハナバチの幼虫が生育するための貴重な蛋白源になっています。

 

キバナシャクナゲ(果)

キバナシャクナゲはもう開花しているものを見かけることはできませんが、ご覧のように果ができている状態ならたくさん見つけられます。ご覧のように先端には雌しべの花柱が長く伸びます。ご覧のように4〜5個の果ができていますが、ハクサンシャクナゲの場合は10個程度の花をつけますので、ご覧のものはキバナシャクナゲであることがわかります。

 

シナノヒメクワガタ

こちらは ノリクラ雪渓カレンダーVol.14(2007/08/11〜13)D で開花の状態をご紹介いたしました。そのときはヒメクワガタかシナノヒメクワガタかわかりませんでしたが、果の先端部分がへこんでいないためシナノヒメクワガタであることがわかります。

スキーヤーのすぐそばにいます エゾゼミ

先週のノリクラ雪渓カレンダーの編集後記でもお伝えしましたが、その後も「大雪渓にはセミがいるんですか?」という問い合わせが相次ぎましたのでご紹介いたします。例年、この時期になるとセミの姿は確認しますが今年は発生数が多いようです。そのため、多くの方がセミの存在の気づいたのだと思います。

こちらはエゾゼミ。エゾゼミの仲間にはこのほか、コエゾゼミやアカエゾゼミなどがあります。こちらのエゾゼミはやや大型で、羽の先端まで入れて7センチほど。昆虫は門外漢なので確定したことはいえませんが、中央の「W」の文字の上の横のラインに途切れがないためエゾゼミと考えられます。

エゾゼミは、通常、標高500〜1000メートル付近に生息するようで、高くても1500メートル付近までのようです。したがって、大雪渓のように標高2600〜2800メートル付近で確認することは珍しいことかもしれません。また、環境省や長野県のレッドデータには指定されていませんが、東京都、三重県、大阪府、鳥取県、島根県、山口県、香川県、高知県、佐賀県では準絶滅危惧種に指定されています。

 

腹弁がないのでメス 雪渓の上をゆっくりと歩いています

セミの存在に気がつかない理由に大雪渓では気温が低いせいか鳴き声を聞かないことが挙げられます。こちらのセミはおなか周りに鳴き声を発する腹弁がありませんのでメスであることがわかります。

大雪渓でエゾゼミの鳴き声を聞かないかというと、全く鳴いていないというわけではありません。日差しの強い日のお昼近くにはセミの鳴き声なのかどうかわからない程度の弱々しい鳴き方をしていますので、おそらく多くの方が気にも留めていないものと思います。

 

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