ノリクラ 雪渓カレンダー

プレリリース版 Vol.6(2008/04/26〜27) F

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(Update:2008/05/01)

 

【雷鳥生息調査】

雷鳥生息調査へ出発

「ノリクラにきたら一度は雷鳥を見たい!」という方も多くいらっしゃるかと思います。国内では立山などを初めとする北アルプス一帯や南アルプス、そして、御嶽山・乗鞍岳といった高山帯を持つ山に生息する雷鳥は氷河期の生き残りと形容されることもあるほど貴重な野鳥です。氷河期から温暖化が進み、多くの雷鳥が北へもしくは標高の高いところに移動するものの、その大半が住処を奪われて絶滅したと考えられています。世界的見ると北半球の北部に分布する中、日本での生息域は最南端と言われ、北アルプスなどの高山帯はハイマツの分布など雷鳥の生息にとって欠かせない環境が残る貴重な領域と考えられます。

今回は信州大学教育学部 教授の中村浩志先生を中心とした雷鳥の生息調査が行われました。ノリクラでの調査は一年を通して定期的に実施されています。

 

中村先生より今日のメンバー紹介

今回は大黒岳方面での調査。道中での小休憩で中村先生よりメンバーの紹介をいただきます。今回はアウトドア関連の学校の方々と、長野朝日放送の取材の方々の7名です。

 

富士見岳のバーン − 雷鳥保護の観点から何らかの規制が必要

途中、富士見岳からの滑走バーンを見て、雷鳥保護の観点から滑走に関して規制が必要になるとのことでした。

 

稜線に近づくにつれて次第に急斜面に − 気温が低く今日はアイゼンが必要

大黒岳に近づくに連れて斜度も急になり、今日は冷たい空気に覆われて緩むことのない雪面はアイゼンでないと登って行くことはできません。そんな中でも、道中では雷鳥や渡り鳥などのお話を挟んでメンバーの雰囲気を和ませながら進んで行かれます。

 

大黒岳に向けて進みます

「あれが大黒岳です。その先に避難小屋がありますからそちらに向かってください。」と先に足を進めます。

 

山頂付近は猛烈な西風にさらされる 避難小屋 − 到着するとほっと気が抜ける

大黒岳の山頂部分は猛烈な西風が吹きつけ、積雪もほとんどない状態。そして、強風にあおらせてまっすぐ立ってあることすらできません。

 

機材をセットし撮影の準備

避難小屋で機材をセットして撮影が開始されます。

午前中は大黒岳一帯で調査 渡り鳥の羽

午前中の調査は大黒岳一帯で行われました。途中で野鳥の羽を見つけます。この時期は渡り鳥がやってきて、力尽きた鳥が雪面に落ちていることがあります。そんな小鳥を狙ってこの時期だけは鳶や鷹などの猛禽類が高山まで上がってくることが良くあるそうです。

 

日本の高山に雷鳥が生息できるのはハイマツ帯があるから

日本の高山に雷鳥が生息できるのは、強い風などに身を隠すことのできるハイマツ帯があるからです。したがって雷鳥を見つけるために風当たりが強く、ハイマツ帯が露出している箇所を観察します。

 

ハイマツ帯を眺めると... 見つけたのは雄の雷鳥

最初に見つけたのは雄の雷鳥。

 

足輪の識別を確認しノートに記録されます。

 

雷鳥のつがい − メス(手前)、オス(奥)
今は縄張り争いとつがい形成の時期

そして、この時期は縄張り争いとつがい形成の時期でもあり、先ほどの雄のそばにはメスの雷鳥が寄り添うように歩いています。

 

雷鳥を落ち着かせながら観察を続けます

そんな雷鳥をやや遠くから落ち着かせるように観察します。

 

雷鳥の雪穴 − ここに身を寄せる

こちらは雷鳥の雪穴。風の強いときはここに身を隠して過ごすとのこと。

 

盲腸糞 − 雷鳥には二種類の糞があります

そしてその雪穴のそばには雷鳥の糞がありました。通常、未消化のものは細長いころっとした糞をしますが、こちらは盲腸糞といってあまり見られないとのこと。草食である雷鳥は長い盲腸を持ち、そこにはセルロースを分解するバクテリアが活動します。その盲腸から排出された糞がこのようなものだとのことです。

避難小屋でお昼

お昼になって再び避難小屋に戻ります。

 

信州大学 中村先生
雷鳥のことを多くの人に理解してもらいたい

雷鳥に対して非常に熱心で、雷鳥のことを多くの人に理解してもらうために常に努力を重ねていらっしゃいます。次の世代に雷鳥保護と調査の必要性を引き継いでいかねばと常々語っていらっしゃいます。

 

まだまだ今日も夕方遅くまで調査が続きます。

 

<編集後記>

GW前半が始まり、初日の26日(土)はひどい悪天候に見舞われましたが、その後は比較的良い天候が続いています。そしてそれまでツアーコースを歩いてやってくる必要のあった位ヶ原もGW後半の5月3日(土)より、春スキーバスの運行開始が予定されています。春スキーバスの運行とともにそれまでひっそりとしていたノリクラも、訪れる方々で少しずつ活気がでてくるようにも感じ、そんな人の出入りも季節感を感じさせる大きな要素かもしれません。

季節を通して訪れる方々の志向が異なりますが、ノリクラは四季を通じてそんな方々を享受できる奥行きと広さがあるように感じます。これからも色々な方々にお会いし、お話をお聞きできたら幸いかと思っております。

 

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