ノリクラ 雪渓カレンダー
Vol.10(2011/07/14〜15) D
【雪渓上部】
それでは雪渓上部の様子をお伝えします。雪渓上部から雪渓下部に滑り降りる部分の雪解けが進み、下山滑走のエリアが制限されるようになって来ました。昨年よりも一週間早い雪解け状況です。
雪渓上部は中央部分で上部から尾根が延びてきて、バーンは左右に分離してくるようになります。左右の分かれる尾根が大きくなり、尾根の上方の積雪がなくなり、上端部分とつながろうとしています。昨年より二週間ほど早い雪解け状況です。また、こちらは右側部分(雪渓上部右側)。中斜面が続き、ポールレッスンが盛んに行われるエリアです。
雪渓上部右側エリアの下部、ちょうど雪渓中段につながる位置にある鉄塔土台です。先週から高さ70センチ〜1メートルほどの雪解けで、先週と同様に昨年よりも一週間早い雪解け状況です。
肩の小屋方面 | 雪渓上部から雪渓中段への連絡部分 |
左の画像は肩の小屋方面。岩の頭が目立つようになって来ました。右の画像は鉄塔土台の下部で、雪渓上部右側から雪渓中断へと滑り降りるエリアです。現段階では滑走に支障となるところはありませんが、あと一週間から二週間ほど経過すると、この箇所も滑走できなくなり、雪渓上部から大雪渓入口へ下山滑走することができなくなります。(スキーヤー専用道を歩いて下山となります。)
こちらは雪渓上部右側の上端部分。先週は昨年よりも三週間ほど早い雪解けでしたが、今週は雪解けが若干遅く、昨年よりも二週間程度早い雪解けを示しています。
上端から雪渓下端までの距離は485メートル。こちらに関しては、昨年よりも一週間ほど早い雪解け状況にとどまっています。
上端部分でお会いしたこちらの方。真新しい皮のブーツが手入れの行き届いた革靴のように光っているのが印象的でした。滑走面にはうろこ模様が刻まれています。(通常、カットソール、ステップソールと呼ばれます。)
「プラスチックよりも皮のブーツのほうが、急斜面を滑る感覚はしっくり来るんですよ〜。思ったよりも操作しやすいですよ。」とのこと。
滑っては登り、登っては滑る...多くの場合、この二つの動作の間には、「板をはずす」という面倒な行為がその連続性を阻んでいます。しかし、うろこのスキーの場合、滑り終わったら、そのまますぐに再び登り返すことが可能です。
「この楽チンな板に慣れたら、シールでの登行すら不自由に感じますよ〜」。シールを装着していないため、その分の重量がなく、さらに登るときの板を前後させる動作で、シールと雪面の摩擦抵抗もないため、あっという間に登ってきてしまいます。
もともと、スキーは滑る道具ではなく、冬の野山を移動することが目的でした。このスキーがそんな原点にもっとも近いところにあるのかもしれませんね。
そんなうろこのスキーとは対極に位置するのが、アルペンレーシングのトレーニング。いかに早く滑り降りるかを競うもので、もちろん、登ることなどまったく想定にありません。
メタル入りのレーシング板にプレートつきのビンディングは、それを持つだけでもかなりの負担。今回、初めてお会いする方々ばかりで、表情がやや硬い様子が見られましたが、そんな中でも笑顔がこぼれる一瞬があり、表情が硬いのではなく、とにかくピンと張り詰めた状況でのトレーニングを崩さないといったところかもしれません。
しっかりとした緊張感を持つことは、アルペンレーシングにおいては「怪我をしない」ということにも直結しています。
スラロームなどは「雪上の格闘技」とも呼ばれていて、林立するポールをいかにすり抜けて行くか。一旦、緊張を抜くと怪我に直結しかねません。
一回の滑走時間はわずか数十秒。でも、それを一日中繰り返し練習することは、体力的に考えると思ったほど容易でなく、一回の滑りが非常に貴重なものであることがわかります。
さらに、この雪上に立つまでに、日程調整や交通費・宿泊費などの捻出などもあって、トレーニングを続けるには、そんな努力も惜しむことはありません。
今日は日差しをさえぎる雲がなく、ジリジリと照りつけられたバーンはかなり緩んできます。激しく雪飛沫を上げながら、次のポールへと果敢に滑り続ける姿があります。
気温は20℃に満たない気候で、汗がほとばしるような状況ではありません。強い日差しとさわやかな空気は、発汗したと同時に発散されて、水分が奪われていることに気付きにくいもの。
さわやかな風が流れていても、それが裏目に出ることもあって、喉が渇いてなくとも、定期的な水分補給は必須です。
ここでのトレーニングが今後の活躍につながって行くことでしょう。「辛い...」としか感じられなかったノリクラでの思い出も、ここで見た風景が、そのうちかき消してくれるものだと思っています。(→ Next)
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