ノリクラ 雪渓カレンダー
プレリリース版 Vol.3(2012/04/07〜08) D
【ツアーコース W −位ヶ原急斜面】
こちらはツアーコース最後の位ヶ原急斜面。これまで樹林帯を切りとおしてコースが作られていましたが、この付近からはオープンバーンとなってきます。
昨年の位ヶ原急斜面 2011ノリクラ 雪渓カレンダー プレリリース版Vol.3(2011/04/09) C ↓ |
先週の位ヶ原急斜面 ノリクラ 雪渓カレンダー プレリリース版 Vol.2(2012/03/31) C ↓ |
位ヶ原急斜面の積雪は先週より60センチ多く、昨年と比べて1メートル多い状況です。こちらも3番標識・5番標識と同様に、この一週間で急激に増加しています。そして、これまでは昨年よりも1メートル以上少ない状況が続きましたが、先週から急激に増加して、今週の積雪量は初めて昨年を上回る状況となりました。
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先週の位ヶ原急斜面 −
中央の木は高さ50センチ ノリクラ 雪渓カレンダー プレリリース版 Vol.2(2012/03/31) C |
今週の位ヶ原急斜面 −
中央の木は完全に埋まる 周辺のブッシュも少なくなる |
先週も同位置の比較画像を掲載いたしましたが、今週も同位置の画像を比較して見ます。先週は画像手前に高さ50センチほどのブッシュがあります。しかし、右側の今週の画像では、そのブッシュはありません。急斜面上方を良く見ると、先週よりも明らかにブッシュの分布が少なくなっていることがわかります。
40〜50センチの新雪 | 吹雪はさらにひどく、視界100メートル以下 |
ストックで突き刺して40〜50センチもの新雪です。天候は回復傾向どころか、吹雪はさらにひどくなる一方で、視界は100メートルを切る状況となって来ました。
忍耐 − 厳冬期と変わらない吹雪 | 極上のパウダー |
気温は急激に低下をはじめ、13時の時点でマイナス8℃です。厳冬期と変わらない吹雪に向かって歩く姿は、「忍耐」以外の何者もありません。この積雪と冷え込みですから、極上のパウダーを楽しむことができることは、あえて説明する必要のないほどです。
全く視界の効かない状況と一変して、こちらは翌日の4月8日(日)の位ヶ原急斜面の様子。全く別世界といても良いほどのロケーションが広がっています。
位ヶ原急斜面を少し登ると、遠景の山並みが横一列に並んでいます。その頂はすべて白く輝き、真っ青な空との輪郭を白い稜線のラインが縁取っているかのような光景です。
そんな絶景を時々振り返りながら登るのが今日一番の楽しみ...天気の良い日はあくせくと登るだけでなく、こんな風にこのロケーションに身を任せながら過ごすのも良いでしょう。
ここからの山並みの眺めは左から順番に、浅間山、八ヶ岳、南アルプスが一望でき、さらには右側やや手前に中央アルプスが並んでいます。どの山も頂が白く輝き、周辺の低い山と区別がつきやすいので、夏場よりも山の位置を把握しやすいでしょう。
パウダーを滑るのも楽しいものですが、今日のような日は下を向いてひたすら歩くばかりではなく、絶景を目に焼き付けながら歩いてほしいものです。おそらくこれほどまでくっきりと冴え渡る真冬の光景は、今シーズン見納めかと思われます。さらに位ヶ原急斜面上部でも雪煙が巻き上がり、その先は真冬の厳しさが待っている様子が推測されます。
歩いてゆっくり楽しむからこそ、この絶景のよさを120%味わうことができるでしょう...
【位ヶ原】
ツアーコースを登りきった先の位ヶ原。標高約2500メートルの台地は、森林限界を超えるため、ツアーコースとは異なり、目印となる木々が極端に乏しくなってきます。
先々週の ノリクラ 雪渓カレンダー プレリリース版 Vol.1(2012/03/24) C 【位ヶ原】 では、ダケカンバの木々にびっしりと着雪した樹氷の世界をお伝えしました。しかし、今回のダケカンバには、数日間にわたって降雪が続いたものの、全く着雪がありません。
それは、終日氷点下の中での降雪だったため、乾いた雪しか降らず、ダケカンバに着雪しなかったわけです。真冬のノリクラの雪が乾いたサラサラのものであることは有名ですが、それは気温が低いことによるものです。
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二週間前の位ヶ原7号カーブ ノリクラ 雪渓カレンダープレリリース版 Vol.1(2012/03/24) C |
今週の位ヶ原7号カーブ 積雪量は30センチほど増加 |
こちらは二週間前の位ヶ原7号カーブにあるカーブミラーの支柱を撮影したもの。ツアーコース内ほどではありませんが、位ヶ原でも確実に積雪量が増えています。位ヶ原は気温が低いため着雪しにくい乾いた雪が降り、たえず強風に吹きさらされているため、厳冬期は積雪量がなかなか増加しません。
この画像から見ると、二週間前より30センチほど増加しています。
気温マイナス18℃、完全に厳冬期の様相 | 強風でボードが飛ばされる |
ツアーコース最上部の位ヶ原急斜面ではマイナス8℃でしたが、14時のこの地点の気温はマイナス18℃。厳冬期でもかなり寒い部類に属する気温です。風雪もかなり強くなり、今日はここで断念です。
スノーシューをザックに固定し、ボードを装着しようとした瞬間...風にあおられたボードが吹き飛ばされ、急いで確保しに走ります。位ヶ原ではボードが容易に流される程の強風が吹き抜けていて、油断をすると大変なことになります。仮にボードが飛ばされて紛失してしまうと全山歩いて降りなければなりません。また、飛んできたボードによる事故も想定されます。
「セルフレスキュー」という言葉がありますが、救助する技術を持つことも必要ですが、事故を起こさない防衛行動を心がける意味合いも含まれています。
悪天候の続く中、午後になると、日差しが差し込む瞬間も見えるようになって来ました。
こちらは位ヶ原からツアーコースに戻ってきて位ヶ原急斜面に入ったところです。濃霧の中では全くわかりませんでしたが、至るところにシュプールがあり、多くの方がパウダーを楽しまれた様子が伺えます。この時期としては極上といえるパウダーで、先週も同様のことを申し上げましたが、おそらく今シーズン最後のパウダーになることと考えられます。
<編集後記>
3月中は週末のたびに天候不順であったことと、リフトを使ってツアーコース入口まで容易にアクセスできるのが今回が最後であることから、4月7日(土)は吹雪にもかかわらずたくさんの方がお越しになりました。また、4月8日(日)は快晴に恵まれたため、前日以上の賑わいであったことは申し上げるまでもない状況でした。
お越しになる方の大半は装備などしっかりとしたものを携行されている様子が見られ、雪山に入山するという準備がなされている方ばかりでした。
ただ、長年入山していると、慢心というものが芽生えてくるもので、自分ではしっかりしていると思っていても、どこかで気の緩みが発生することもあります。いつもと同じように段取りして、普段と変わらず歩いていても何かがおかしいとか、ちょっとした物を忘れて来てしまった等といったような日は、いつも以上に気を引き締めなければならないというサインかもしれませんね。
「春スキー」という穏やかなイメージがありますが、気を緩めることなく、厳冬期と同じ感覚でいたいものです。
■ご注意■
今回の取材記事は、バックカントリースキー・ボードの経験のある方を対象としたもので、初めての方へのイントロダクションという位置づけの内容ではありません。
初めてツアーコースなどにトライしてみたい方は、経験者と同行するか、ガイドツアーに参加されることをお勧めします。(乗鞍高原などにはガイドが同行するツアーを企画する会社がありますのでお問い合わせください。)
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