ノリクラ 雪渓カレンダー
 
Vol.6(2012/06/15〜17) C

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(Update:2012/06/21)

 

【稜線へ】

それでは肩の小屋から稜線目指します。

 

肩の小屋から稜線へ直登する箇所 赤線の直答するルートは進入できません
青線の登山道を進んでください
(高山植物、雷鳥保護のため)

左の画像は肩の小屋から稜線へ直登する箇所です。5月下旬から6月上旬頃までは、この付近にも積雪がありましたので、そのままダイレクトに稜線まで登ることができましたが、ご覧のとおり雪解けで岩場やハイマツ帯がかなり多くなってきました。

左の画像では、上部部分でハイマツ帯が大きく広がっている様子がわかりません。しかし、右の画像のように、赤線の×印の箇所を越えて、その先の雪渓を歩いていっても、さらに再びハイマツ帯が広がってしまうため、それ以上先を進むにはハイマツ帯や岩場へ侵入するしかなくなってしまいます。

 

肩の小屋〜山頂の登山道入口
登山道以外のルートは登行できません

そのため、青線の登山道を必ず利用してください。岩場に咲く高山植物の踏み荒らしと雷鳥の生息地のハイマツ帯を保護する必要があります。

 

登山道には誘導ロープ − 踏み荒らし被害防止のため

登山道を区分けするための誘導ロープの設置が始まっています。誘導ロープにより行動が制限されますが、踏み荒らしによる被害を防ぐためには致し方ない対策ですので、自然保護の観点から必要でしょう。

 

先週の肩の小屋〜山頂の登山道(稜線まで3分の1地点)
ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.5(2012/06/09〜10) C
今週の肩の小屋〜山頂の登山道(稜線まで3分の1地点)

ここからは肩の小屋から稜線に向かう登山道の様子をお伝えします。

この付近は肩の小屋から稜線までの区間を3分の1程度進んだあたり。先週までは例年よりも積雪量の多い状況が見られましたが、ご覧のように周辺の積雪は完全になくなりました。また、雪解けという観点から見たとき、例年よりも一週間程度遅い状況です。また、積雪量の少なかった昨年と比べると一ヶ月近く遅い状況でした。

 

昨年の肩の小屋〜山頂の登山道(今週と積雪が同じ時期)
2011ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.3(2011/05/28〜29) B
今週の肩の小屋〜山頂の登山道(稜線まで中間地点)
昨年より三週間遅い雪解け

こちらは肩の小屋から稜線までのちょうど中間付近。今年は今週になってようやく確認できるようになりました。左の画像は同時期よりも三週間ほど早い昨年の状況。ちょうど、今週と同じ位の積雪状況で、このことから、今年は昨年よりも三週間遅い雪解けを示しています。

 

2011年の肩の小屋〜山頂の登山道(稜線まで中間地点)
2011ノリクラ 雪渓カレンダーVol.6(2011/06/17〜18) B
2010年の肩の小屋〜山頂の登山道(稜線まで中間地点)
2010ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.6(2010/06/18〜19) B
2009年の肩の小屋〜山頂の登山道(稜線まで中間地点)
2009ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.6(2009/06/19〜20) C
2008年の肩の小屋〜山頂の登山道(稜線まで中間地点)
2008ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.6(2008/06/21〜22) C
=過去4年間と比べても、最も多い積雪量=

同じ場所の過去4年間の画像を比較します。どの年も周囲は完全に雪解けが完了し、今年の積雪量の多さを物語っています。また、この様子から今年はまだ高さ1メートル近い積雪があることがわかります。

【剣ヶ峰・蚕玉岳・朝日岳方面を目指すスキーヤー・ボーダーの方々へ − 大雪渓・肩の小屋方面から稜線への登行ルートについて】

@ 2012/06/15 10:00
=大雪渓からのルート=
赤線はどれもハイマツ帯に阻まれる
青線の滑走ラインに近いルートをお願いします
(高山植物保護と雷鳥保護のため)
A 2012/06/15 10:05
=肩の小屋からのルート=
赤線の直登ルートはハイマツ帯に進入してしまう
青線の登山道(夏道)を利用してください
(高山植物保護と雷鳥保護のため)

左の画像の大雪渓からのルートでは、赤線の二つのルートは、比較的取り付きやすいルートですが、ご覧のとおり、途中で積雪がなくなり、ハイマツ帯に進入してしまいます。そのため、滑走ルートに近い青線で登るようお願いいたします。
また、右の画像の肩の小屋からのルートも、直登する赤線のルートは、同じくハイマツ帯に侵入してしまうため、必ず、登山道(夏道)から登るようお願いいたします。

一人でも取り付きやすいルートを登ると、それに続くほかの方も同じルートを登ることになり、積雪のない地面を硬いブーツ底で何度も踏みつけられると、高山植物の植生に影響を与え、また、繁殖期を迎えた雷鳥への影響も懸念されます。

 

ツボ足でも問題ない程度の柔らかさ

今日の雪質は、踏み抜くほどの緩み方はなく、また、ツボ足でも問題ない程度の柔らかさがあります。そのため、アイゼンを装着せずに下山される方の姿もありました。

 

ノリクラ入りは、急遽今朝決めました
次回はちゃんと装備を整えてから来ます!

今日は非番で、急遽、朝になってノリクラにお越しになることを決められたそうです。まだまだ、ヤマの経験は少ないとご自身がおっしゃっていましたが、装備や経験は一つ一つ積み重ねるしかありません。

この時期のノリクラはご覧のようにまだ残雪期で、稜線近くでは7月になっても積雪が残っています。少なくとも、アイゼン・ストック(ピッケル)を所持されることをお願いいたします。

 

摩利支天岳 − 2007年に次ぐ積雪量

稜線に向けてしばらく登ると眼下には摩利支天岳を望むことができます。これまでと同様、積雪量の多かった2007年に次ぐ状況です。

 

【稜線】

こちらは蚕玉岳(こだまだけ)〜朝日岳の稜線。画像の左側が蚕玉岳山頂(標高2979メートル)に続き、画像右側が朝日岳山頂(標高2975メートル)に続いています。中央に大きく岩場が帯状に広がってきました。

 

2011年の稜線
2011ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.6(2011/06/17〜18) B
2010年の稜線
2010ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.6(2010/06/18〜19) C
2009年の稜線
2009ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.6(2009/06/19〜20) D
2008年の稜線
2008ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.6(2008/06/21〜22) C

2007年の稜線
2007ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.6(2007/06/16〜17) D

過去5年間を見ると、積雪量の多かった2007年は、上部にほんのわずかに岩が見られる程度、次いで2009年は今週よりも岩場が若干少ない程度でした。それ以外の年は今週以上の広がりででした。今年は先週から見え初めてきて、先週と同様にほぼ例年並みの推移と言えます。

 

大雪渓方面への滑走エリア 蚕玉岳方面の尾根

左の画像は大雪渓方面へ滑り込む箇所。今後、雪解けが進み、大雪渓上端に接続する部分に岩場が出てバーンが途切れてくると、滑走できなくなります(画像の左下付近です)。例年、6月中旬〜下旬まで滑走可能です。

右の画像の蚕玉岳方面の尾根、かなり雪解けが目立ち、積雪部分が急速に減少しています。

 

岩の頭が出始める(つづら折れの登山道の一部) 沢の幅は狭いところで30メートル切る状況

こちらの二枚の画像は、冒頭で示したの岩の帯です。この岩の帯が広がり、さらには対岸の蚕玉岳の尾根がの雪解けが進むと、稜線からの滑り込む沢の幅が狭まってきます。取材した時点では狭いところで30メートル切る状況になってきました。

そのため、次の週末は稜線からの滑走がかなり制限されることが予測されます。右の画像のさらに右側にある朝日岳方面から滑り降りることになります。

 

登山道のつづら折れ部分

雪解けの進んだ岩の帯は登山道がつづら折れになっている箇所で、ご覧のように登山道の方向を示すペンキの書き込みが見られます。

 

下山でバランスを崩す まるでハイキングに出かける姿

半袖・半ズボンでグローブもせず、レジ袋にペットボトルという完全にハイキングスタイルでお越しになったこちらの方。「ヤマを舐めとる!!」と、ノリクラの常連から一喝されそうな感じもありますが、実際、本当にこのような方を見かけることが多々あります。

だからといって、「このスタイルでOK」とは絶対に思ってほしくはありません。ご覧のように下山時にはバランスを崩す様子もあり、容易に登ってくることができても、下れないということの認識がない方が多いのも事実です。

 

次回はぜひとも登山の装備を整えて...

7月上旬まで研修でこちらのほうへお越しになっているというハイキングスタイルの方。山には興味があるとのことで、休日には周辺の山を歩いていらっしゃるとのことでした。もし、今後も山登りを続けられるということであれば、ぜひとも、装備と知識を少しずつ身につけていってもらいたいと思います。

お話をお聞きしているうちに周囲には霧が立ち込め始め、「早く下山しなさい」と促すと、「えっ、どうして?」と、不思議そうな表情。「合羽とか持ってないんでしょ〜、雨に降られたらどうするの?」と、付け加えるとやっと納得した様子。天気が悪くなりそうなら傘を持つという都会でも当たり前の感覚が、山に来るとそのような連想がどうしても欠如しがちである様子を見るのは、今回が初めてのことではありません。

知らないということの恐ろしさはあっても、山が好きという感覚はお話の中から感じられ、いろいろな知識などにとらわれず、山を純粋に楽しむにはこのような初心も必要なものであると思いました。

さて、それとは相反して右の方は、徳本峠(とくごうとうげ)から上高地入りして焼岳を登って、最終日の今日はノリクラにお越しになりました。足元は12本爪のアイゼンといういでたちでした。

 

昨年の蚕玉岳〜朝日岳稜線
2011ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.6(2011/06/17〜18) B
先週の蚕玉岳〜朝日岳稜線
ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.5(2012/06/09〜10) C

今週の蚕玉岳〜朝日岳稜線
2007年に次いで積雪量の多い状態

こちらが稜線部分。手前が朝日岳方面で、画像に写るなだらかなピークが蚕玉岳、それに続く奥のピークが主峰の剣ヶ峰です。昨年よりも明らかに多い積雪量です。先週と同様、過去5年間で2007年に次いで積雪量の多い状態です。

 

今週と積雪量が同じ時期の昨年画像 − 一ヶ月近い開きがある
2011ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.2(2011/05/21〜22) B

今週の積雪量とほぼ同じ時期に撮影した昨年の画像。撮影時期は5月中旬で、一ヶ月近くの開きがあることがわかります。

 

昨年同時期より一週間前の権現ヶ池
2011ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.5(2011/06/11〜12) C
今週の権現ヶ池
過去5年間で最も多い積雪量
昨年の朝日岳
2011ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.6(2011/06/17〜18) B
今週の朝日岳
例年並みの積雪量

御岳の二ノ池に次いで国内二番目の標高に位置する権現ヶ池(ごんげんがいけ、標高2845m)は、先週は2007年に次ぐ積雪量と申し上げましたが、今週は再び2007年よりも多い積雪量で、過去5年間で最も多い状態に戻っています。

そして、朝日岳では中央部分の岩場が目立つようになってきました。過去5年間で今年より積雪量の多かったのは2010年・2009年・2007年で、2011年・2008年は今年より少ない状態で、そのことから、先週と同様、例年並みと言えます。 Next

 

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