ノリクラ 雪渓カレンダー
 
Vol.12(2012/07/28〜29) @

Top-page > Index > Page:   1  2  3  4  5  6  7

(Update:2012/08/02)

 

先週は梅雨明け最初の週末でしたが、二日間とも生憎の天候となりました。週末ごとに悪天候に見舞われるサイクルを払拭するかのように、今週は夏本番の天候をようやく見せてくれました。

取材一日目の7月28日(土)は、朝からモクモクとした雲が広がる夏空から一日が始まります。晴れてはいるものの、どちらかというと雲量が多い状態です。天気予報でも晴マークの並ぶ状況ということもあり、観光センター前駐車場には6時の時点で96台ものマイカーがお越しになりました。そして、シャトルバス始発便は2台が運行され、ご来光バスは4台も運行されたほどで、早朝からヒルクライマーが続々と出発する様子は、先週前は見かけることのできなかった光景です。そんな朝一番の出発準備を見るだけで、夏本番を迎えた感覚ですが、濃霧に包まれていた上部エリアも、時間とともに霧が抜けて行き、雲間から日差しが差し込めば、まさに夏模様そのものの光景が大雪渓に広がります。また、雪渓を登るスキーヤーは額に汗を滲ませながら、雪渓をハイクアップする様子もありました。午後になっても曇〜晴の天候には大きな変化はなく、そのまま一日が終わろうかとしましたが、16時30分ごろに若干雨が降って、18時30分ごろから雷鳴とともにしっかりとした夕立が断続的に降り続き、一日が終わって行きました。

取材二日目の7月29日(日)は、快晴の朝から始まります。観光センター前駐車場には昨日以上のマイカーがお越しになり、朝から賑わいのある様子が続きます。ただ、この天候も8時ごろから雲がわき始め、9時には日差しが遮られる状態になります。そのため、ヒルクライムに出かけても、さほどの暑さを覚えません。そして、今日はいつも以上に多くのヒルクライマーが県道乗鞍岳線(エコーライン)を埋め尽くし、まるで大会さながらの雰囲気といってもよいでしょう。そして、大雪渓もいつものように多くのスキーヤー・モーグラーで賑わっています。山頂付近にかかっていた雲も、午後には完全に解消し、雲間から日差しが差し込むようになると、コントラストの強い夏の空が見られるようになり、今日はしっかりとした青空が続いたわけではなかったものの、夏山の雰囲気が十二分に感じられた一日でした。

◎ 今回の目次

Page-1 : 【7月28日(土)、観光センター前駐車場】       【大雪渓までの沿道の風景】
Page-2 : 【大雪渓に到着】       【雪渓下部 T】
Page-3 : 【雪渓下部 U】
Page-4 : 【雪渓下部 V − モーグルコース】       【雪渓中段】       【夏山本番の肩の小屋】
Page-5 : 【雪渓上部 T】       【雪渓上段 U − レーシングキャンプ】
Page-6 : 【7月29日(日)、夏模様・ヒルクライムの一日】
Page-7 : 【畳平、お花畑】       【昨年の今ごろは?】       <編集後記>
 
●参考資料●
(周辺地図) − ノリクラ ガイドマップ (春〜夏スキー 大雪渓・山頂版)      ノリクラ ガイドマップ (県道乗鞍岳線カーブ番号版)
(シャトルバス) − 2012シーズン版 乗鞍岳マイカー規制・乗り換え駐車場・シャトルバス情報

 

【7月28日(土)、観光センター前駐車場】

観光センター前駐車場

こちらは早朝5時30分の観光センター前駐車場。

 

青空 − 天候がようやく安定してきた

気温14℃、ノリクラの峰々には雲がたなびくものの、綺麗な青空に恵まれた朝を迎えます。この一週間は天候のよい日が続き、梅雨が明けてようやく天候が安定してきたように感じます。

 

観光センター前駐車場 − 朝からたくさんのマイカーが訪れる

夏らしい雰囲気が続くようになり、観光センター前駐車場は、朝早くから多くのマイカーが訪れています。6時の時点で、ほぼ半分程度が埋まっている状況です。

 

シャトルバス − 窓口開始前から人の列

そして、シャトルバス乗車券販売所も窓口が開かれる前から人の列ができるようになって来ました。

 

タクシー乗り場 − 大半の車両が早朝から出払う

こちらはタクシー乗り場。いつもなら、常連の運転手の方々が井戸端会議ならぬ、状況報告をされている時間帯ですが、今日ばかりは様子が異なります。

タクシーの姿がほとんどありませんが、タクシーがまだ到着していないのではなく、すでに乗客を乗せて出発した後なのです。ここから7km先にある三本滝ゲートが開門する6時にあわせて、乗客を乗せて出発して行きました。いち早く山頂目指したい登山客が利用されているようです。

 

そして、6時10分発のシャトルバス始発便が到着。

 

改札と乗車

こちらもいつものように乗客を乗せて出発です。こちらも登山のスタイルをされている方が多く、登山は朝一番に活動開始が一般的です。

 

今日の始発便は2台が運行され、観光センターを出発します。

 

今日はヒルクライムの方もたくさん...

観光センター前駐車場はシャトルバスの発着のベースエリアとして、多くの観光客・登山客に利用されています。また、ヒルクライムに訪れる方も観光センター前駐車場がベースエリアとなっています。8月末(今年は8月25日〜26日)に開催される、全日本マウンテンサイクリングin乗鞍のスタート地点が、観光センター前であることも関連があるかと思いますが、やはり、マイカーを止める駐車スペース、スポーツドリンクや弁当などを販売する自販機や売店や公衆トイレなどが完備されていて、利便性の良さが求められるからでしょう。

 

ゴール目指して出発!

6ページ目で県道乗鞍岳線に訪れたヒルクライマーの様子をお伝えしますが、観光センター前駐車場はノリクラに訪れる様々な方々が利用する、ビジターセンター的な位置づけを担っています。

 

【大雪渓までの沿道の風景】

ここからは大雪渓までの沿道の様子をお伝えします。

 

善五郎の滝駐車場

先々週はアヤメ、先週はウツボグサが咲いていましたが、さて、今週はどのような変化が見られるでしょうか?

 

ウツボグサ − 花が終わる ヒメジョオン − 身近にあるが帰化植物

左の画像のように、ウツボグサは花期が終わってしまいました。それでもアヤメのようにどこに咲いていたかわからない様子はなく、ご覧のとおりの花の終わった花穂が靫(うつぼ)の形になってきました。

そして、小さな花をつけるのはヒメジョオン(姫女菀、キク科ムカシヨモギ属)。北米原産で、要注意外来生物として環境省から指定されている帰化植物です。乗鞍一帯では、セイヨウタンポポやオオハンゴンソウなどの外来植物の除去が積極的に行われていますが、ヒメジョオンも積極的に駆除が行われている地域もあるほどです。

身近に見られる植物も、実は在来植物の生育に影響を与える帰化植物であったというケースは、よくあるものです。

 

釣鐘型の特異な形状

そして、沿道には釣鐘型の特異な形状の植物が多数見られるようになってきました。

 

ヤマホタルブクロ 萼片に反り返りがない

こちらはホタルブクロ。正確にはヤマホタルブクロ(山蛍袋、キキョウ科ホタルブクロ属)。萼片の裂片間に反り返った付属片がないことが見分けの特徴です。

この花が沿道に咲き始めると、ノリクラには本格的な夏が訪れます。

 

三本滝ゲート − この先マイカー規制

観光センターから約7kmほどのところにある三本滝ゲート。マイカー規制はここから実施されます

 

パンフレット − 自転車のスピード出しすぎ危険!

三本滝ゲート警備員の方が指し示すパンフレットは、自転車のスピード超過への注意喚起を求めるもの。もちろん、登りのスピードではなく、下りのスピードのことを指しています。

下山する自転車の方は、スピード超過しているという意識はないかもしれませんが、カーブで対向車に驚いてバランスを崩す自転車の方が多数います。カーブに進入する際は、どのような状況が起きても安全に停止できる位まで減速してください。

自動車と異なり、一旦事故に遭遇すれば、ダメージが非常に大きくなる自転車ですから、交通事故の大原則である「防衛運転・予測運転」に心がけることが大切です。

 

かもしかゲレンデ

そして、こちらはかもしかゲレンデ。車道はかもしかゲレンデを縫うように横切って行きます。

 

ヤマブキショウマ 群がるのはベニシジミ(夏型)

こちらはヤマブキショウマ(山吹升麻、バラ科ヤマブキショウマ属)。県道乗鞍岳線(エコーライン)の沿道で、森林限界付近までいたるところで見られる山野草です。

ヤマブキショウマに群がって蜜を吸う蝶はベニシジミ(シジミチョウ科ベニシジミ属)、蝶は年に数回世代交代があって、蛹(さなぎ)で越冬し春に成虫になった蝶を「春型」、それ以降に成虫になったものを「夏型」と呼んでいます。羽の模様などにその形態の違いがあります。こちらのベニシジミは夏型の成虫。春型と異なって少し地味な色合いです。

 

ヤナギランが咲き始める

夏のかもしかゲレンデをピンクに染めるのはヤナギラン。そろそろそんなシーズンが近づきつつあります。

 

オトギリソウ − 徐々に秋の気配へ

季節の移り変わりは本当に早いもので、よく観察してみると、オトギリソウが咲いているのを確認できます。大雪渓辺りでは、8月下旬に開花する秋を先取りする高山植物です。

 

ニッコウキスゲ

そして、先週もお伝えしたニッコウキスゲ。一日花ですから先週の花はもうすでに終わっていますが、花期はまだ続いています。

 

7月28日(土)の様子 − 多くのつぼみが残る 7月29日(日)の様子 − 昨日のつぼみが開花する

左の画像は7月28日(土)の様子。まだ、数多くのつぼみが残っています。そして、右の画像は翌日の7月29日(日)の様子。残っていたつぼみの半数近いものが開花しました。

まだ、つぼみが残っていますので、もうしばらく楽しめそうです。

 

紅葉スポットの28号カーブ付近

さて、この付近は紅葉の時期を迎えると、ウラジロナナカマドやダケカンバなどの赤や黄色の回廊が続く、紅葉のビューポイントです。

 

部分的な紅葉が見れら始める − 真夏によく見られる現象

この時期になると、ご覧のようにスポット的な紅葉が見られるようになってきます。本格的な紅葉まで二ヶ月近くもあり、この紅葉がそのまま残るわけではなく枯れてしまいます。

このような紅葉は沿道の各所で点在していますので、シャトルバスの車窓からでも十分確認できます。

 

山麓から湧き上がる霧 − 夏山の典型的な天候

上空には霧のような雲が山麓から湧き上がり、上空の日差しを遮り始めました。夏山の天候がそのステップを一つずつはじめています。

 

クルマユリ

こちらはクルマユリ(車百合、ユリ科ユリ属)。ご覧のとおり、特徴的な形をした花ですから、すぐに眼に留まるはずです。

花弁反転して車輪状に... クルマユリの由来は輪生する葉から

花弁が反転して車輪状になっています。同じ仲間のオニユリ(鬼百合、ユリ科ユリ属)も花弁が反転していて、花だけでは区別が付きません。クルマユリが「車百合」と呼ばれるのは、花の形状が車輪に似ているからではなく、右の画像のように、葉が車座のように放射状についているところから命名されています。

ユリの仲間は、左右の葉が互い違いに付く「互生」がほとんどですが、クルマユリは上部の葉は互生で、下部はご覧のような「輪生」が見られます。オニユリの花は、クルマユリよりもワイルドな感じで、その雰囲気で判別可能ですが、下部に輪生する葉を持つかどうかで区別されます。なお、オニユリはムカゴができることで知られていますが、クルマユリにはムカゴはできません。

 

そして、森林限界にある位ヶ原山荘を越えると...

 

目の前を雲が行き交う

標高2350メートルの位ヶ原山荘付近では目の前を雲が行き交う世界。これが夏山の一日の始まりを告げる雲の動きです。

 

11号カーブ、ツアーコース入口

こちらは位ヶ原山荘から約1.5kmのところにあるツアーコース入口、11号カーブ。ここからは高天ヶ原と剣ヶ峰の二つのピークが左右に綺麗に並ぶロケーションですが、その二つのピークに雲が掛かったり沸いたり、そして、蒸発したりを繰り返しています。なお、昨年同時期のツアーコース入口では、ほとんど積雪がなくなっていました。

 

強い日差しと夏模様 − ヒルクライムが似合う

雲が抜けて、強い日差しが差し込むと完全に夏模様...ヒルクライムが似合う光景です。

 

位ヶ原お花畑

こちらは7号カーブ付近の位ヶ原お花畑。昨年よりもやや多い積雪量が見られます。

 

ミヤマキンバイの開花はまだまだ... いち早く咲くのはセイヨウタンポポ
=強い生命力は脅威=

雪解けの終わったところでは、高山植物の芽吹きが見られ、左の画像の中には、ミヤマキンバイの黄色い花も数輪あります。しかし、なんといっても、しっかりと花をつけているのは右の画像のセイヨウタンポポ。

受粉を必要としない単為生殖で増殖するセイヨウタンポポは、外来植物の代表格です。残念ながら、県道乗鞍岳線の沿道に見られるタンポポのほとんどがセイヨウタンポポで、除去活動なども行われていますが、増殖スピードにかなわないようです。

 

ようやく、綺麗な青空が広がり始めて来ました。

 

5号カーブ
4号カーブ

宝徳霊神バス停のある5号カーブの積雪もかなり少なくなり、画像の奥にある登山道上には積雪がほぼ完全になくなりました。また、4号カーブは、昨年同時期に積雪がなくなったものの、今年はご覧のようにまだしっかりと残っている状態です。先週は3.8メートルの高さがありました。今週はおそらく1メートルほど雪解けしていると考えられますが、雪がもろくなってきていて、今週は測定できませんでした。

 

そして、大雪渓にようやく到着です。 Next

 

Copyright (C)   乗鞍大雪渓WebSite

Top ||   1  2  3  4  5  6  7  Next>>