ノリクラ 雪渓カレンダープレリリース版

Vol.1(2016/03/19) C

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(Update:2016/03/24)

 

【ツアーコースV−位ヶ原急斜面】

こちらはツアーコース最後の位ヶ原急斜面。これまで樹林帯を切りとおしてコースが作られていましたが、この付近からはオープンバーンになります。

 

この先森林限界へ − 完全防備
フェイスマスク・厚手のグローブ・アウター装着

位ヶ原急斜面を登り切った先が森林限界の位ヶ原になります。森林限界を境に天候・気温が急激に悪化・低下するケースが多く、森林限界に達する直前にある位ヶ原急斜面でも、上部の状況が推測できる程度の天候変化を感じることができます。ですから、位ヶ原急斜面を登る前に森林限界以降の天候・気候に対応できる対策をしておきます。

この時期になると、厳冬期ほどの厳しさはありませんから、フェイスマスクは必須ではありませんが、少なくとも厚手のグローブ・アウターはここで装着しましょう...

 

昨年の位ヶ原急斜面
2015ノリクラ 雪渓カレンダー
プレリリース版 Vol.1(2015/03/21) C

先週の位ヶ原急斜面
速報2016/03/12
今回の位ヶ原急斜面
先週とほぼ同じ
昨年より2メートル少ない

位ヶ原急斜面の積雪は、先週とほぼ同じで、昨年より2メートル少ない状態です。おそらく、全エリアの中で昨年との差が激しい場所はないかと思います。ただ、こちらも3番標識や5番標識と同様に、昨年は一昨年と比べて1〜2メートル多い状態でしたので、今年が極端に少ないという状況ではなさそうです。

 

湿雪20センチ − ストップスノーでターンしにくい
夜間の冷え込みで、翌日は固いバーンに
=これからの時期はバーン状況が刻々と変化する=

5番標識付近まではシールに張り付くベタベタな雪質だったものが、湿雪には変わりないものの、幾分軽さが感じられるようになってきました。しかし、20センチほどの湿雪は完全なストップスノーでターンしにくい状態...それでも先週のモナカよりもまだ滑りやすいでしょう。ただ、夜間の冷え込みで固くなると相当滑りにくい状態が予測されますので、これからの時期は日によって、また、午前・午後などの時間帯によって、バーンコンディションが大きく変化することを念頭に置いて行動してください。

今回は湿雪でしたが、夕方から晴れてきて、夜間は星がくっきりと輝く状態となり、翌日3月20日(日)はかなり固いバーン状態となりました。そのため、湿雪という情報だけでアイゼンを持たずに行動することは避けるとともに、どのような状況では対応できる装備を持参するとともに、現場では状況に応じて判断することが常に求められることを忘れてはなりません。

【位ヶ原急斜面と伊奈川の谷について】

【本物】左の谷 −位ヶ原急斜面(正規下山ルート) 【偽物】右の谷 −伊奈川の谷(間違えて何度も遭難あり)

さて、こちらは位ヶ原急斜面を上から眺めたもの。左が「本物」で右が「偽物」です...

この2枚の画像は左右連続写真(※)で、左が本物の位ヶ原急斜面で。右は伊奈川の谷で位ヶ原急斜面ではありません。特に濃霧の時は同じような地形に見えてしまい、ツアーコースへ下山する際に間違えて伊奈川の谷へ進んで、これまで何度も遭難が発生しています。乗鞍岳春山バスが運行される4月下旬には、伊奈川に立ち入らないようにロープが設置されますが、この時期はありません。
(※ 実際には左右の画像の間に尾根部分があります。)

 

位ヶ原急斜面と伊奈川の谷は隣り合っているので間違いやすい
ノリクラ雪渓カレンダー冬〜春スキー版

ツアーコースの位ヶ原急斜面は青い部分、伊奈川の谷は赤い楕円の箇所です。ご覧のとおり隣接していて、大雪渓・位ヶ原や山頂方面から下山する際に間違いやすい位置にあります。位ヶ原急斜面や伊奈川の谷の周辺の位置関係は、ノリクラ雪渓カレンダー冬〜春スキー版 で確認できますので、ぜひ一度ご覧ください。

 

伊奈川の谷 −大きな岩場があるのが特徴(右上)

伊奈川の谷には雪着きの悪い大きな岩場があり、これが位ヶ原急斜面との大きな違いです。濃霧の中でも、斜面の中に大きな岩場があるかどうか確認できるはずです。

 

【位ヶ原】

先が見えないならここ撤退を この状況では赤布があっても役に立ちません

ツアーコース位ヶ原急斜面を登りきった先より、森林限界を超えて位ヶ原の台地に入ります。森林限界を超えると、天候・気候が急激に変化しますので、視界不良で先の木々が見えにくい状況なら、ここで撤退するようお願いいたします。

この日の天候は濃霧、気温0℃で、視界は100メートル前後です。先の木がほとんど見えない状態...このような状況では赤布があってもほとんど役に立たません。

 

歩いてきたトレースは風でなくなり、元に戻れなくなります − つまり「遭難」ということ...

この状況下では地形に慣れていない方は決して先に進むことをせず撤退してください。誤って先に進んでしまい、後退しようとしても、自分の歩いてきたトレース跡は風でなくなってしまい、戻ることすらできなくなります。つまり「遭難」ということになります。

 

昨年の位ヶ原
2015ノリクラ 雪渓カレンダー
プレリリース版 Vol.1(2015/03/21) C

先週の位ヶ原
速報2016/03/12
今回の位ヶ原
先週より48センチ増加
昨年より5センチ多い

位ヶ原の積雪量は、先週より48センチも増加し、昨年より5センチ多い状況。これまで昨年よりも少ない状況が続いていましたが、今回初めて逆転しました。森林限界以降はこれから積雪量が増加する時期ですので、4月中旬ごろまで増加が期待できるはずです。

なお、ポールに取り付けられている金具は、冬季閉鎖前のカーブミラー取り外しの際に正規の位置よりも下げられています。そのため、昨年画像と相違があります。

 

【大雪渓下部】

ここからは大雪渓下部の様子をお伝えします。

 

昨年の大雪渓入口
2015ノリクラ 雪渓カレンダー
プレリリース版 Vol.1(2015/03/21) C

先週の大雪渓入口
速報2016/03/12
今回の大雪渓入口
先週とほぼ同じ
昨年より1.5メートル少ない

先週より10センチ程度積雪量が増加し、昨年より1.5メートルほど少ない状態です。先ほどの位ヶ原と同様に、大雪渓付近もこれから積雪量が増加し、例年だと、4月下旬〜ゴールデンウィーク前半あたりに最大積雪量が観測されます。


一昨年の大雪渓入口
2014ノリクラ 雪渓カレンダー
プレリリース版 Vol.1(2014/03/22) C
=今年とほぼ同じ状態=

昨年と比べると明らかに積雪量が少ない状態ですが、こちらは一昨年の同時期の画像。今回のものとほぼ同じかやや少ない状態です。そのため、今年が極端に積雪量が少ないということではないことがわかります。

なお、例年3月下旬に姿がなくなる大雪渓内の大岩(※)ですが、例年よりもかなり大きく見えていて、今後完全に姿がなくなるかどうか微妙なところです。なお、昨年は2月には姿がなくなりました。(※当WebSiteでは「モーグルコースの岩」と呼んでいる大岩です。)

 

大雪渓入口から北側へ50メートルのところにトイレ小屋と避難小屋があります。

 

ガードロープがまだ見えている

トイレ小屋(冬季閉鎖中)−利用可能は5月下旬〜6月上旬以降

上段の画像のように道路のガードロープがまだはっきりと確認でき、駐車場付近の岩も見られます。こちらは今度の降雪により埋まる可能性があります。なお、避難小屋・トイレは冬季閉鎖中で、乗鞍岳春山バスが大雪渓まで延長運行される5月下旬〜6月上旬に利用可能になります。

 

今日のミッション達成!

悪条件になればなるほど目が輝く...今日はかなりの達成感が得られた模様です。誰もが早く脱出したいという状況下にも関わらず、満面の笑顔です。(※ 今回は入山に適した状況下ではありませんので、無理のない行動を心掛けてください。)

【屋根板などでの雪崩発生と迂回ルート(位ヶ原→位ヶ原山荘)】

雪崩発生 − 位ヶ原山荘先の車道上斜面(200m×70m) 雪崩は車道を横切ってさらに下まで
2010年2月死亡事故現場 − ここは毎年雪崩が発生しています
位置はノリクラ雪渓カレンダー冬〜春スキー版 をご確認ください。

さて、速報でもお伝えしたように、位ヶ原山荘から車道を登ったところ、ちょうど直線区間が始まる箇所の斜面で、本日(3月19日)雪崩が発生しました。視界が悪いため、大きさの計測はできませんでしたが、過去の雪崩から長さ200メートル×幅70メートルと推測でき、雪崩は道路部分を横切ってさらに下部まで達しています。詳細な位置についてはノリクラ雪渓カレンダー冬〜春スキー版 をご確認ください。

この箇所は毎年雪崩が発生しており、シーズン中に2回も発生する年もあり、2010年2月には死亡事故も発生しいます。位ヶ原から位ヶ原山荘へ下山滑走する場合、屋根板を経由して位ヶ原山荘に滑り込むルートが一般的ですが、沢を間違えてこの斜面に出てしまう場合がありますのでご注意ください。

 

位ヶ原山荘方面へのルート
すべり台入口まで確実に北進してから
右へ下山滑走してください(青線ルート)
雪崩場所
車道を横切る時は斜面上を確認しながら立ち止まらず通過
参照:ノリクラ雪渓カレンダー冬〜春スキー版

もし、位ヶ原から位ヶ原方面への下山ルート(屋根板への入口)がよくわからない場合は、左の画像のすべり台入口付近まで進み、右に降りる斜面を進むと屋根板に入ります(青線ルート)。それよりも手前で右に降りると、先ほどの雪崩多発斜面に出てしまいますのでご注意ください。(赤線ルート)

ただ、濃霧・ホワイトアウト時は、すべり台入口まで確実に進んだのかどうかわからない、それどころか、すべり台方面に確実に進んでいるのかすらわからない状況になりますので、ツアーコース位ヶ原急斜面前にある看板にしたがって、のショートカットルートで位ヶ原山荘に向かってください。

また、ツアーコース〜位ヶ原山荘のショートカットルート(車道)は、一部雪崩箇所を通過しますので、、斜面上を確認しながら立ち止まらずに通過してください。

 

屋根板も雪崩発生 − 南側で多発、できるだけ北側を

雪崩場所
できるだけ屋根板北側へ迂回してください
参照: ノリクラ雪渓カレンダー冬〜春スキー版

また、屋根板も同様に雪崩が発生しました。先週も発生した場所がもう一度雪崩れた模様です。屋根板は東側に開けた斜面ですが、雪崩はその南側(上から見て右側)で多発していますので、できるだけ北側(上から見て左側)を下山滑走し、また、位ヶ原山荘から登り返す時も南側ではなく、北側を登ることをお勧めします。なお、北側通過時も雪の状況を確認しながら慎重に下山滑走してください。

 

夕方にはきれいに虹のアーチ − 苦行を成し遂げたご褒美

そして、ゲレンデまで下山滑走すると、夕方にはご覧のような虹のアーチがかかっていました。「今日の苦行を成し遂げたご褒美だ!」と、ばかりに何度も大きなアーチがみられ、天候の悪いときでも最後には何か良いことがあると、改めて再認識した一日でした。

 

【翌日、3月20日(日)は見事な快晴】

3月20日(日)見事な快晴(画像提供:読者様)
入山者200名以上 − 今季一番、過去最高

さて、翌日の3月20日(日)は、打って変わって見事な快晴の一日なりました。初日の悪天候のため、入山を翌日に延期された方も多く、三連休中日ということもあって、この日は200名以上の方がツアーコースに入山された模様です。今シーズン一番の入山者数で、間違いなく過去最高の賑わいになりました。

 

3月19日(土)の大雪渓入口 3月20日(日)の大雪渓入口
(画像提供:読者様)

大雪渓付近もご覧のとおり、一日目と二日目では別世界...ちなみに写真に写る人物画像は合成ではありません。一日目の悪天候に懲りず、二日目もトライされました!!

 

3月19日(土)はストップスノー・ホワイトアウト

3月20日(日)は固いバーン・快晴無風
(画像提供:読者様)

一日目の湿雪・ストップスノーから一変して、夜間の冷え込みにより、バーン全体はやや硬めとなり、場所によってはクトーなどが必要だったとのこと...これからの時期は厳冬期以上にバーンコンディションが大きく変化しますので、アイゼンなどの装備はどんな天候あっても必須です。

また、今回の夜間の冷え込みはそれほどではなかったものの、もう少し冷え込みが強ければ、シールやツボ足では歩くことすらままならない状態になることも珍しくなく、過去には曇った天候であったにも関わらず、夜間の冷え込みが強く、位ヶ原周辺が全面アイスバーンに見舞われたこともありました。

 

見事な雲海
(画像提供:読者様)

そして、飛騨側方面は見事な雲海に包まれました。

 

<編集後記>

「今シーズンの冬の気候を振り返る...」

今回から春シーズンに向けたノリクラ雪渓カレンダー プレリリース版を開始しましたが、今シーズンの厳冬期の天候状況をまとめておきたいと思います。

11月下旬にまとまった降雪があり、乗鞍高原でも道路除雪作業が行われるほどでした。11月に道路除雪が行われるケースは少なく、また、12月上旬にはツアーコース位ヶ原急斜面まで比較的容易に登行することができる状態となり、シーズンはじめとしては雪不足を感じさせるものではありませんでした。ただ、山麓の降雪は少なく、Mt乗鞍スキー場は12月上旬のオープンを1週間程度遅らせて12月10日となりました。

例年なら訪れるはずの年末年始寒波がほとんどなく、元日は4年振りの初日の出を拝むことができました。その一方、積雪量の少ない状態が続き夢の平ゲレンデ、かもしかゲレンデ、鳥居尾根などの主要なゲレンデは年が明けてからようやくオープンする状態でした。

ようやく冬らしい大雪に見舞われたのは1月20日になってからですが、その後も大雪はほとんどなく、積雪量の少ない状態に至っています。

下の表はアメダス(観測地点:奈川)の2015年12月〜2016年3月の月平均の気象統計・ツアーコース積雪量です。

    降水量
(mm)
平均気温
(℃)
最高気温
(℃)
最低気温
(℃)

平均風速
(m/s)

日照時間
(時間)

ツアーコース積雪量前年比
3番標識 位ヶ原急斜面
12月 平年 76.8 -0.7 4.9 -5.9 1.3 106.8
2014 56.5 -2.1 2.8 -6.8 1.7 91.6 0 -
2015 177.5 -2.6 1.3 -6.4 1.9 70 0 -
今年 108.5 1.2 6.3 -3.4 1.7 113.6  -50 -  
1月 平年 85.9 -3.6 1.5 -9.2 1.3 106.5
2014 66 -4.4 1.5 -10.9 1.8 145.3 -40 -200
2015 102.5 -3.4 1.2 -8.4 1.7 124.9 +40 +100
今年 124 -2.8 2.4 -7.6 1.8 110.9 -30 -200  
2月 平年 99.2 -3.2 2.5 -9.1 1.3 122.8
2014 124 -4.4 1.7 -10.4 1.7 167.2 -100 -200
2015 41.5 -3.2 2.4 -9.3 1.7 125.9 +30 +200
今年 119 -2.4 3.4 -8.4 1.9 144.9 -30 -200  
3月 平年 158.1 0.6 6.7 -5.2 1.3 155.5
2014 256.5 0.8 6.1 -4.5 1.8 157.3 -100 -150
2015 134.5 1.0 7.6 -4.6 1.7 157.7 +100 +200
今年
(※)
66 1.4 17 -9.8 1.8 103 -120 -300  

⇒ 各月とも降水量は平年以上でも気温が高く、2月でも雨の日があった

各月とも平年より気温が高く、2月でもツアーコースで雨に見舞われることが多々ありました。ツアーコースの積雪量は昨年と比べると大幅に少ない状態。しかし、一昨年と比べるとそれほど違いはなく、例年よりやや少ない程度と考えられます。ただ、ツアーコース入口急斜面から1番付近の下部や、6番付近の谷では、例年以上に少ない状態がみられ、早期の雪解けによりツアーコースでの下山滑走は、例年よりも早く不可能になる可能性が考えらえれます。

また、上部の位ヶ原でも積雪量が少ない状態ですが、3月に入って急速に増えています。大雪渓も今後増加が期待できる時期に入りますので、夏スキーへの影響は現時点ではまだ不明です。


■ご注意■

今回の取材記事は、バックカントリースキー・ボードの経験のある方を対象としたもので、初めての方へのイントロダクションという位置づけの内容ではありません。
初めてツアーコースなどにトライしてみたい方は、経験者と同行するか、ガイドツアーに参加されることをお勧めします。(乗鞍高原などにはガイドが同行するツアーを企画する会社がありますのでお問い合わせください。)

 

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