ノリクラ 雪渓カレンダー

Vol.9(2016/07/08〜09) E

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(Update:2016/07/14)

  

【雪渓上部 V】

雪渓上部左側 − 上級者限定

こちらは雪渓上部左側。大雪渓の中でも急斜面のバーンが広がり、シーズン終盤まで積雪の残るエリアですが、入口から最も遠く急斜面であるため、他のエリアが滑走できなくなる8月上旬以降にならないと、こちらで滑走するモーグラーはいません。今年は早々にコブ管理人がモーグルコースを作成し、滑走可能な状態に仕上げています。

現時点では、雪渓下部のモーグルコースがまだ滑走可能ですが、今後、他のエリアが滑走できなくなって、こちらのバーンしか滑走できなくなるころにはバーンが冷え込んで固くなり、急斜面を滑落の危険性があるため、初心者の方の滑走は困難ですのでご承知ください。

 

これまでのモーグルライン すぐ近くまで岩場が接近

こちらは7月8日(金)の模様で、これまでのモーグルラインは雪解けにより、すぐ近くまで岩場が接近してしまいました。10日(日)は乗鞍スカイラインサイクルヒルクライム取材のため、こちらには訪れておりませんが、おそらく、新たなラインが作成されたと思われます。

 

こちらは雪渓上端部分。

 

雪渓上端は他エリアよりも雪解けが少ない

前のページの【雪渓上部T】の雪渓上端と同様に、こちらも他のエリアと比べると雪解けが少ない状況。

 

今回と同じ積雪量の昨年画像(8月上旬)
2015ノリクラ 雪渓カレンダーVol.13(2015/08/01〜02) D

こちらは今回と積雪部分が同じの昨年画像で、時期は今回より3週間遅い8月上旬。ただ、ご覧のとおり、積雪が貼りついている下部はクレパスの底だった部分で、完全に雪解けが完了しています。したがって、実際には今回の積雪状態は、これよりも1〜2週間程度前と同じ状況といってもよく、そうなれば、今年と昨年はそれほど大きな違いはないとという結論になります。

 

上端から−雪渓下端まで143メートル
昨年より8週間も早い雪解け、例年の8月中下旬並み

雪渓上部左側の上端から下端までの距離は143メートル。昨年より8週間も早い雪解け、例年の8月中下旬の積雪状況です。

上端の位置は昨年とそれほど違いなくても、下部が9月上旬並みの積雪状況で、上は多く下は少ないという現象から、例年よりもバーンの斜度が高くなっている(急斜面)ということになります。

 

【肩の小屋】

肩の小屋 −今日もスタッフの方がお出迎えてくれる

大雪渓の北西に位置する肩の小屋。7月1日(金)から今シーズンの営業が始まりました。今日もスタッフの方がお出迎えくださいました。ただ、天候が悪く、今日は訪れる登山者は少ない様子。

 

営業開始からまだ1週間、足らないものばかり...

営業開始からまだ1週間で、足らないものばかり...今日も食材や販売用のペットボトル等の搬入が行われます。

ビールサーバー到着、生ビールもこれから提供できます

そして、ハイシーズンを迎えるにあたって必要なのがこちら...生ビールを提供するためのビールサーバーです。このほか、ソフトクリームも運び込まれていました。

 

スキー合宿・登山の団体利用もできます。

「8月にスキー合宿の宿泊が入っていますが大丈夫でしょうか?」と、心配されていましたが、1ヶ月半程度雪解けが早いと考えると、雪渓上部左側しか残っていない状況も考えられます。ただ、雪渓上部左側は急斜面のため、上級者でないと難しい部分があります。ただ、現時点では判断が時期尚早かもしれません。

 

【畳平、お花畑】

畳平

こちらは畳平。9日(土)は、まとまった雨が続き、7時の段階で24時間雨量が57mmに達し、規制値の70mmまであとわずかという状況です。

 

熊にご注意 − 熊鈴携行を

例年、熊の出没が増えるのは7月下旬以降になってからですが、今年はすでに多い傾向が続いています。ただ、人に対する警戒心の強く、よほどのことがない限り、熊のほうが回避すると思われます。そのため、人の存在をアピールして鉢合わせを避けるように心がければ、大きな問題になることは少ないと考えられ、登山中やヒルムライム中は熊鈴を鳴らしながら行動するとよいと思われます。

 

畳平のお花畑

畳平のお花畑は、先週、ハクサンイチゲの全面満開を迎えました。

 

ハクサンイチゲはピークを過ぎる それに代わってミヤマクロユリが全面満開

それから1週間が経過し、ハクサンイチゲは花弁を落とすものが目立つ状況で、それに置き換わってミヤマクロユリが全面満開となりました。

 

両性花 雄花だけの単性花

よく見ると、左のように雄しべ・雌しべの両方が揃った両性花と、雄しべだけの単性花ものがあります。多年草であるミヤマクロユリは年を重ねることに大きくなり、また、土壌の状態も影響して、雄しべと雌しべをつける両性花となるまでには長い時間が必要となります。

 

先週のショウジョウバカマ
ノリクラ 雪渓カレンダー
Vol.8(2016/07/02〜03) D
今回のショウジョウバカマ
花茎がさらに伸びる
手前のミヤマキンバイは花期終了

いつもお伝えしているショウジョウバカマ。花茎がさらに伸びています。また、右手前に咲くミヤマキンバイは花が終わり、左上のハクサンイチゲも花茎が延びています。ショウジョウバカマは、他の花が咲く前からいち早く開花し、ほかの花が枯れてもまだ成長続けています。

 

雨量規制で通行止めの懸念から、
山頂登山→お花畑散策に変更

山頂登山に向かう予定だったバスツアーの方々は、雨量規制で乗鞍スカイラインが通行止めになる懸念から、お花畑散策に予定変更されたとのこと。もっともこのひどい雨の中では、山頂登山は無理があり、特に団体行動においては、安全最優先で判断をしなければなりません。

 

コバイケイソウ − つぼみが全くない
=今年ははずれ年か=

こちらはコバイケイソウ。まだ時期が早いのかもしれませんが、こちらは花(つぼみ)をつけたものが全く見られません。葉がこれだけ大きくなっていますが、花はまだなんでしょうか?もしかすると、今年ははずれ年なのかもしれません。

コバイケイソウは、当たり年とはずれ年が交互に訪れると知られています。実際には2〜3年続けて花を咲かせ、全く咲かない(ほとんど咲かない)年を挟んで、再び、開花する状況を繰り返しているようです。

 

遊歩道分岐点 ハクサンイチゲの群生

そして、遊歩道を進むと、ハクサンイチゲの群生があります。ただ、やはり花期は過ぎつつある状態です。

 

遊歩道わきに黄色い花 ミヤマキンポウゲ

それに置き換わって、黄色い花が咲きます。ミヤマキンポウゲの群生は、ハクサンイチゲに次ぐボリュームで、あちこちが黄色く染まっているのですぐにわかるはずです。

 

そして、遊歩道の折り返し地点い差し掛かると...

 

ハクサンイチゲは完全に終了 − ミヤマクロユリの群生に置き換わる

ミヤマクロユリの群生が先週から続いています。この付近ではハクサンイチゲはほぼ完全に終わってしまいましあt。

 

ミヤマダイコンソウ キバナノコマノツメ
コイワカガミ チングルマ

このほかの高山植物としては、ミヤマダイコンソウ、キバナノコマノツメ、コイワカカミ、チングルマなどが咲き、ハクサンイチゲ一辺倒だった時期が終わるとボリューム感が乏しくなる一方、高山植物の種類は逆に多くなります。

 

【昨年の今ごろは?】

2015ノリクラ 雪渓カレンダーVol.10(2015/07/04〜05) @

7月10日(金)は、晴天の朝を迎えますが、山頂方面は絶えず雲が流れる状況。大雪渓付近は気温は高くないものの、とにかく暑さを感じ、さわやかさは一切ありません。それでも、お昼近くになると時折青空が広がるようになり、湧き上がる雲は夏の雰囲気を感じさせるもの。午後も曇りと青空が交互に流れる状況でしたが、15時ごろからきれいな快晴となり、夜は満天の星空が広がりました。

7月11日(土)は、雲一つない快晴の朝を迎えます。気温は9℃とこの時期としては冷え込みました。時間が経過してもきれいな快晴が続き、遠景の山並みは水墨画を思わせるような雰囲気。要所要所でカメラを取り出すヒルクライマーは、なかなか前に進めません。大雪渓にもたくさんのスキーヤー・ボーダーの方が訪れ、本格的な夏山シーズンの到来です。午後は明日開催される第12回乗鞍スカイラインサイクルヒルクライムの大会会場である殿下平総合交流ターミナルに向かいます。気温は25℃と暑い中、訪れた選手は今年こそは晴天の下での大会開催を願いたいと 一様におっしゃっていました。

稜線方面の登山道の積雪は、おそらく、9日(木)の大雨で雪解けが進んだ影響からほとんどなくなり、登山道上には積雪区間はなくなりました。また、大雪渓の積雪状況は、この1週間の雪解けが少ない状況がみられ、先週までは昨年より1週間、場所によっては2週間早い雪解け状況がみられたものの、今週は昨年とほぼ同じ状況の箇所もあって、例年と遜色ない積雪量と考えて差し支えないレベルに落ち着いて来たといってよいでしょう。また、バーンコンディションは再氷結による氷柱がこの時期としては少ないため良好です。

 

<編集後記>

「自然を土台とする観光は、自然を第一に考えないと両方が自滅してしまう...」

かつて、マイカー規制前の7月は、夏スキーヤーにとって一年の年明けという区切りで、この日を待ち望んでいたものです。マイカー規制前も三本滝から上部は夜間通行止めでしたが、現在のように施錠管理は行われていなかったため、事実上、終日通行可能で、夜中に大雪渓まで登ることが普通に行われていました。特に夏スキーが盛んだった90年代までは、スキー合宿やキャンプなどが数多く行われていて、全面ポールで埋め尽くされるほどで、夜中に到着した人は、懐中電灯で大雪渓を登り、場所取りのためにポールを仮設置するほどでした。

もちろん、大雪渓に来るスキーヤーは全員マイカーですから、あの狭い大雪渓駐車場は、先に入った車が退出できる配慮などお構いなく、どんどん詰め込む状態で、路上駐車も頻繁に発生していました。もちろん、畳平の駐車場も観光客で満車になり、駐車待ちの車で県道乗鞍岳線も乗鞍スカイラインも渋滞発生が恒常的にみられ、いろんな意味でキャパシティを超えていました。

過去には年間40万人以上が訪れ、そのころの繁盛ぶりに戻りたいという意識はもちろんの事と思います。しかし、シャトルバスで40万人は、輸送量的には可能であっても、マイカーで訪れたころは、マイカーが一つの待機場所になっていたため、シャトルバスで40万人は、マイカー規制前よりも施設面でのオーバーユースとなってしまします。かといって、マイカー規制を解除したらよいかというと、それは時代に逆行しているといわれてもおかしくありません。また、電気自動車(EV)だけなら良いかといえば、過去のマイカー規制の問題であるオーバーユースに対する回答にはなっていないため、仮に将来、EVが普及した時に、過去と同じような問題が発生する懸念は残っています。

ノリクラには自然を求めてやってくる人が数多くいます。自然と観光とを天秤にかけて考える風潮がありますが、天秤にかけるということは両者が同じ次元にあるもの同士について行われるものです。しかし、ノリクラに限らず観光は自然をベースに成り立っていますので、自然がないと観光が成り立ちません。ですから、天秤にはかけられないんです。

 

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