ノリクラ 雪渓カレンダー

Vol.11(2016/07/23〜24) C

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(Update:2016/07/28)

 

【雪渓下部 U、雷鳥の親子】

石碑の岩

雪渓下部の南側に位置する石碑の岩。大雪渓でモーグルコースの岩に次いで2番目に雪解けとともに現れる岩です。

 

チングルマ 風に吹かれて

こちらは毎年定点でお伝えしている石碑の岩にあるチングルマ。花柱の撚りがほぐれて、完全に実の状態になりました。これから風に乗って実が飛んで行くことと思われ、昨年より3週間早い状態です。ただ、こちらのチングルマは進捗が他より早く、大部分のチングルマはちょうど見ごろを迎えています(↓)。

 

大雪渓エリアは高山植物が見頃に(左:チングルマ、右:ミヤマダイコンソウ)

大雪渓入口から雪渓上部に向かう道中は、数多くの高山植物が見頃の時期を迎えています。名前が覚えなくとも、貴重なこの光景だけでも、雪渓に急ぐ足を止めてご覧になられたらと思います。

 

岩陰に

大雪渓周辺は周期的に濃霧が立ち込め、そんな中、岩陰から周囲の様子をうかがう鳥がいます。

 

雷鳥の雛 親鳥(メス)

それは雛を連れたのメスの雷鳥。

クロウスゴの花がお気に入り 「クルルル、クルルル」 − 鳴き声で雛を呼び寄せる

雛が入り込んでいるのはクロウスゴの木(画像左)。小さな花がたくさん咲いています。他の高山植物と比べてこちらのクロウスゴの花は、好んで食べるようです。そして、雛が少し遠くまで行ってしまうと、「クルルル、クルルル」と、親鳥が雛を呼び寄せます。

 

ノリクラでは足環で個体識別調査が実施されている
(雛にはまだ足環がない)
親子はいつも一緒

ノリクラでは信州大学名誉教授 中村浩志先生のグループによって、足環による個体識別を行って、雷鳥の分布などの調査が継続的に実施されています。左の画像でお分かりのとおり、親鳥には足環がついていますが、今年生まれた雛には足環がありません。今後、秋から冬前にかけて足環をつける作業が実施されることと思います。継続的な調査には欠かせない作業です。

雛は生まれて1ヶ月程度と思われますが、雷鳥は生後1ヶ月までは生存率が極めて低く、ここを乗り切れば自分で体温調整することもできるようになり、また、十分飛べるようになって外敵から身を守ることもできるようになります。

これまでは猛禽類が外敵と思われていましたが、最近の調査ではカラスが雷鳥の雛を捕食することがわかり、特に大雪渓付近はスキーヤーの弁当などを狙うカラスが多くなっています。大雪渓に飛来するカラスを増やさないためにも、弁当類・レジ袋は必ずザックの中から出さないようお願いいたします。

 

雷鳥は絶滅危惧種Tb類 − トキの二の前にしないように
=カラスへの対策も=

雷鳥は絶滅危惧種Tb類(近い将来に絶滅の危険性の高い種)に指定されています。一度絶滅してしまうと、トキのように莫大な費用をかけて保護・繁殖させなければなりません。そうならないためにも、一般人ができることは可能な限り取り組むことが必要です。

【カラス対策 − 絶対にザックから食べ物・レジ袋を放置しないこと】
先ほど申し上げたようにカラスは人(スキーヤー)の食べ物を狙って大雪渓に集まります。カラスは臭いはわかりませんが、学習能力によってレジ袋に食べ物があると判断します。そのため、レジ袋に入っている物は中身が食品であろうがなかろうが破って中を確かめます。また、ザックに食べ物が入っていることも知っています。左右どちらからでも開けられるダブルジッパーのザックの場合、ジッパーの隙間をつまんで簡単に開けてしまいますので、ジッパーをどちらかの端に寄せるなど簡単に開けられないようにしてください。

【雷鳥保護の取り組み】
孵化後、ライチョウ家族一ヶ月間ゲージ保護事業(2013ノリクラ 雪渓カレンダーVol.15(2013/08/14〜17) F)

 

【雪渓中段】

雪渓中段全景

こちらは雪渓上部右側と雪渓下部をつなぐ雪渓中段。千数から中央の大岩の手前部分の積雪がなくなりました。ただ、積雪は完全に消滅したわけではなく、中央の大岩の向こう側にはまだ残っています(↓)。

 

今回と同じ積雪量の2012年画像(8月下旬)
長さ40メートル×横17メートル
ノリクラ 雪渓カレンダーVol.17(2015/08/28〜29) C
先週の雪渓中段
長さ50メートル×横23メートル
ノリクラ 雪渓カレンダーVol.10(2016/07/16〜17) C
今回の雪渓中段 − 長さ20メートル×横10メートル
昨年より6〜7週間早く、例年の8月下旬並み

こちらが中央の岩の向こう側に残る雪渓。大きさは、長さ20メートル×横10メートルで、昨年より6〜7週間早く、例年の8月下旬並みの積雪状況です。先週は昨年より5週間早い積雪状況でしたので、雪解けスピードが速くなっています。

 

滑走は無理

この状態では滑走は無理で、また、周囲から積雪が残っていることすらわかりにくい状況です。

 

あと1〜2週間で消滅

おそらく、あと1〜2週間で完全になくなってしまうと考えられます。

 

【雪渓上部T】

雪渓上部
上端は昨年並み、下端は昨年より6〜8週間早い

それでは雪渓上部の様子をお伝えします。雪の融け方が例年と異なっているため、単純な比較ができませんが、上端付近はほぼ昨年並みで、下端付近は昨年より6〜8週間も早く、上と下では雪解けが極端に違います。

 


上下の
違いは
1ヶ月以上

【上端部分が今回と同じ】昨年画像(7月下旬)
2015ノリクラ 雪渓カレンダーVol.12(2015/07/25〜26) D
【下端部分が今回と同じ】昨年画像(9月上旬)
2015ノリクラ 雪渓カレンダーVol.18(2015/09/05〜06) C

この2枚は昨年の雪渓上部の全景画像で、左は上端部分の積雪量が今回と同じ状態のもの、右は下端部分が今回と同じ積雪量のものです。それぞれの時期は7月下旬と9月上旬で、1ヶ月以上の開きがあります.

今年の積雪状況が例年と異なっていることがよくわかります。

 

雪渓上部右側全景
各ポイント@・A・Bを昨年と比較
@ 横幅−今回とほぼ同じ昨年画像(9月上旬)
2015ノリクラ 雪渓カレンダーVol.18(2015/09/05〜06) C
A 上端位置−今回とほぼ同じ昨年画像(7月下旬)
2015ノリクラ 雪渓カレンダーVol.12(2015/07/25〜26) D
B 下端付近−今回とほぼ同じ昨年画像(9月中下旬)
ノリクラ 雪渓カレンダーVol.20(2015/09/19〜20) C

雪渓上部右側全景。今年は例年と雪の残り方がかなり異なっているため、一様に比較できませんので、それぞれの箇所において比較します。

@左右の幅は56メートルで昨年より6週間早く、A上端の位置は昨年とほぼ同じで、B下端の位置は昨年より8週間早い雪解け状況を見せています。特に縦方向では上端の雪解けに対して、下端付近の雪解けが早いため、全体的な斜度が強い状況となっています。この傾向は先週とほぼ同じです。

 

今回の雪渓上端
昨年の雪渓上端
2015ノリクラ 雪渓カレンダーVol.12(2015/07/25〜26) D

先ほどの画像Aの上端の様子。昨年とほぼ同じ状態で、大雪渓全体の中で、最も積雪が残っている場所です。

 

上端から−雪渓下端まで175メートル
過去最短

上端から雪渓入口までの距離は先週の245メートルから175メートルに大幅減少。ただ、これは最長距離をとったもので、フォールラインにからめた長さは110メートルです。2015年は500メートル、2014年は510メートル、2013年は492メートル、2012は453メートル、2011年は天候不良で測定できませんでしたが前週は475メートル、2010年は319メートル、2009年は271メートル、2008年は255メートルです。

いずれの年と比べても、今年は最短であることがわかります。

 

実質的には左寄りに3分の2しか滑走できない

それでは、雪渓上部右側で滑走されている様子をお伝えします。中央付近にアルペンボードのゲートがありますが、それより右側はフォールラインに絡んだコースを取ることができず、実質的には左寄りに3分の2の部分しか滑走できません。

 

アルペンボードのグループ − 滑走距離は50メートルほど

毎週お越しにのアルペンボードのグループも今回が最後とのこと。滑走距離はわずか50メートル程度ですが、トーナメント形式でレースを楽しんでいらっしゃいました。

 

ポール練習 − 複数のグループで共同利用、岩の頭がバーン内に点在

その左側、フォールラインに絡んだコースは1コースしか取れず、しかも、点在する岩の頭を避けながらとなり、複数のグループが共同でコースを利用されていました。

おそらく、次週末は面積的には1コース程度取れるかもしれませんが、岩の頭が数多くなり、おそらく滑走不能になると考えられます。隣の雪渓上部左側はまだ滑走できますが急斜面のため、ジュニアなどの練習にはお勧めできる状況ではありません。

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