ノリクラ 雪渓カレンダープレリリース版

Vol.1(2018/03/31) B

 

 

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(Update:2018/04/05)

 

【ツアーコースV−位ヶ原急斜面】 

位ヶ原急斜面

こちらはツアーコース最後の位ヶ原急斜面。これまで樹林帯を切りとおしてコースが作られていましたが、この付近からはオープンバーンになります。

右の画像は位ヶ原山荘に向かうための案内看板。ここには、「この先は今までのような道はありません。悪天候時はルートを見失いやすいです。最近、単独行の道迷い遭難が多いです。経験・自身のない方は無理せずここで引き返してください。」と、記されています。

この先は森林限界を超えてオープンバーンになりますから、今日のような晴天の場合は問題ないものの、視界不良時は確実に方角を見失うことになります。方角を見失ってから(迷ってから)戻ろうとしても、もうその時点では戻れませんから、この看板の位置で、この先、進んでもよいのか・撤退すべきかを判断しなければなりません。なお、この看板の上に見える急斜面上端部分が確認できるかどうかが、判断材料の一つとなるでしょう。

 

2017年の位ヶ原急斜面
2017ノリクラ 雪渓カレンダー
プレリリース版Vol.1(2017/04/01) B
今回の位ヶ原急斜面
昨年より1メートル近く少ない

位ヶ原急斜面の積雪は、昨年より1メートル近く少ない状態ですが、極端に積雪の少なかった一昨年よりも多く、過去数年間で見た時はほぼ例年並みの状況です。

 

午前中は緩むことなく表面はパックされた状態が続く

11時30分の気温はプラス4℃、しかし、今回は3番標識当たりから冷たい空気が入り込むようになり、午前中はバーンが緩むことなく、表面がパックされた状態が続いていました。

 

この時期は時刻によってバーン状態が刻々と変化
★14時以降は再氷結で下山滑走しにくい★

この時期のツアーコースは時刻によってバーン状態が刻々と変化し、日中は日差しを受けてかなり緩むものの、14時以降になると、登行によって荒れたバーンがそのまま凍り付き、まともに滑走できる状態ではなくなります。そのため、上部エリアからの下山滑走する場合、下山時刻にはかなりひどい状況が予測されます。

 

【位ヶ原急斜面と伊奈川の谷について】

【本物】左の谷−位ヶ原急斜面(正規下山ルート) 【偽物】右の谷−伊奈川の谷(間違えて何度も遭難あり)

さて、こちらは位ヶ原急斜面を上から眺めたもの。左が「本物」で右が「偽物」です...

この2枚の画像は左右連続写真(※)で、左が本物の位ヶ原急斜面で。右は伊奈川の谷で位ヶ原急斜面ではありません。特に濃霧の時は同じような地形に見えてしまい、ツアーコースへ下山する際に間違えて伊奈川の谷へ進んで、これまで何度も遭難が発生しています。乗鞍岳春山バスが運行される4月下旬には、伊奈川に立ち入らないようにロープが設置されますが、この時期はありません。
(※ 実際には左右の画像の間に尾根部分があります。)

 

位ヶ原急斜面と伊奈川の谷は隣り合っているので間違いやすい
ノリクラ雪渓カレンダー冬〜春スキー版

ツアーコースの位ヶ原急斜面は青い部分、伊奈川の谷は赤い楕円の箇所です。ご覧のとおり隣接していて、大雪渓・位ヶ原や山頂方面から下山する際に間違いやすい位置にあります。位ヶ原急斜面や伊奈川の谷の周辺の位置関係は、ノリクラ雪渓カレンダー冬〜春スキー版 で確認できますので、ぜひ一度ご覧ください。

 

伊奈川の谷−大きな岩場があるのが特徴(中央)

伊奈川の谷には雪着きの悪い大きな岩場があり、これが位ヶ原急斜面との大きな違いです。濃霧の中でも、斜面の中に大きな岩場があるかどうか確認できるはずです。

 

【位ヶ原】

2017年の位ヶ原
2017ノリクラ 雪渓カレンダー
プレリリース版Vol.1(2017/04/01) B
今回の位ヶ原
積雪量164センチ、昨年より45センチ少ない

ツアーコース位ヶ原急斜面を登りきった先より、森林限界を超えて位ヶ原の台地に入ります。森林限界を超えると、天候・気候が急激に変化します。もし、急激に雲が流れ込んで視界が阻まれるようになったら、急いで引き返す必要があります。

今年の位ヶ原の積雪量は164センチ。昨年より45センチ少なく、積雪の少なかった一昨年より30センチ多い状態です。

 

2016年の剣ヶ峰方面
2016ノリクラ 雪渓カレンダー
プレリリース版Vol.3(2016/04/02) D
2017年の剣ヶ峰方面
2017ノリクラ 雪渓カレンダー
プレリリース版Vol.1(2017/04/01) B
今回の剣ヶ峰方面
昨年の摩利支天岳方面
2016ノリクラ 雪渓カレンダー
プレリリース版Vol.3(2016/04/02) D
2017年の摩利支天岳方面
2017ノリクラ 雪渓カレンダー
プレリリース版Vol.1(2017/04/01) B
今回の摩利支天岳方面
山頂・尾根部分の雪解けが目立つ

こちらは剣ヶ峰方面(上段)と摩利支天岳・すべり台方面(下段)の状況です。今年は山頂方面の積雪が少ない傾向が見られ、今週に入って尾根部分のハイマツが出現するほど雪解けが進んでしまい、2016年並みに積雪が少ない状況となっています。

 

位ヶ原もハイマツが出現
例年より1週間程度雪解けが早い

また、位ヶ原でもご覧のようにハイマツが見られるようになり、例年よりも1週間程度早い雪解けを見せています。

 

今年は雪崩が頻発しています − 多発地帯以外でも注意が必要

@ 3月17日(土)、大雪渓雪崩 A 3月24日(土)3号カーブ右側斜面雪崩 B 3月25日(日)前後、剣ヶ峰〜蚕玉岳直下雪崩

山頂付近は、ここ最近は毎週のように雪崩が発生しています。

厳冬期の山頂付近は、気温が低すぎて、乾いた雪は飛ばされるため、あまり積雪につながらないものの、今年は3月に入って気温が高くなり「積もる雪」が降るようになり、雪崩発生につながっているようです。

これまでは、中央画像の3号カーブ右側斜面など、過去に何度も雪崩が発生している多発地帯での発生でしたが、左の画像の大雪渓と、右の画像の剣ヶ峰〜蚕玉岳直下の雪崩は、頻繁に雪崩が発生する場所ではありませんので、今年は雪崩多発地帯以外においても、注意が必要な状況です。

 

【大雪渓下部】

2016年の大雪渓入口
2016ノリクラ 雪渓カレンダー
プレリリース版Vol.3(2016/04/02) D

2017年の大雪渓入口
2017ノリクラ 雪渓カレンダー
プレリリース版Vol.1(2017/04/01) B

今回の大雪渓入口
昨年より20センチ―多く、昨年より積雪の多い唯一の場所

それでは大雪渓下部の積雪状況をお伝えします。大雪渓入口の積雪量は昨年よりも20センチ多く、唯一、昨年より積雪量の多い箇所で、2015年に次いで多くなっています。

 

トイレ・避難小屋方面
トイレ小屋(冬季閉鎖中)−利用可能は5月下旬〜6月上旬以降

大雪渓入口から北側へ50メートルのところにトイレ小屋と避難小屋があります。避難小屋・トイレは冬季閉鎖中で、乗鞍岳春山バスが大雪渓まで延長運行される5月下旬〜6月上旬に利用可能になります。先ほどの、大雪渓入口とは逆に、トイレ小屋・避難小屋周辺の積雪量は昨年より少ない様子です。

 


拡大

山頂方面は積雪が少ない 蚕玉岳〜朝日岳 − 雪が少なく岩の頭が点在している

そして、山頂・稜線方面を見ると、岩の頭が所々に見ていて、積雪量が少ない様子がわかります。おそらく、ここ最近では最も積雪量が少ないと思われます。ただ、このエリアは4月下旬まで積雪量が増加しますので、今後の降雪に期待したいところです。

 

<編集後記>

「今シーズンの冬の気候を振り返る...」

今回から春シーズンに向けたノリクラ雪渓カレンダープレリリース版を開始しましたが、今シーズンの厳冬期の天候状況をまとめておきたいと思います。

 

下の表はアメダス(観測地点:奈川)の2014年〜2018年の月平均の気象統計・ツアーコース積雪量です。

    降水量
(mm)
平均気温
(℃)
最高気温
(℃)
最低気温
(℃)

平均風速
(m/s)

日照時間
(時間)

ツアーコース積雪量
3番標識
(前年比)
5番標識
(前年比)
12月 平年 76.8 -0.7 4.9 -5.9 1.3 106.8 81(注) 108(注)
2014 56.5 -2.1 2.8 -6.8 1.7 91.6 55cm(+50) 95cm(+150)
2015 177.5 -2.6 1.3 -6.4 1.9 70 125cm(+70) 195cm(+100)
2016 108.5 1.2 6.3 -3.4 1.7 113.6  60cm(-65) 60cm(-135)
2017 148.5 -0.1 6.0 -5.7 1.7 120.5 85cm(+25) 80cm(+20)
今年 39.0(少) -2.2(低) 2.7 -7.1 2.1 113.4 85cm(0)、並 135(+55)、多
1月 平年 85.9 -3.6 1.5 -9.2 1.3 106.5 106(注) 194(注)
2014 66 -4.4 1.5 -10.9 1.8 145.3 75cm(-100) 170(-40)
2015 102.5 -3.4 1.2 -8.4 1.7 124.9 125cm(+50) 260(+90)
2016 124 -2.8 2.4 -7.6 1.8 110.9 95cm(-30) 150(-110)
2017 57.0 -3.8 1.5 -9.1 1.8 118.3 130cm(+35) 195(+45)
今年 89.5(並) -4.3(低) 0.6 -9.3 2.1  109.6 160cm(+30)、多 240(+45)、多
2月 平年 99.2 -3.2 2.5 -9.1 1.3 122.8 118(注) 200(注)
2014 124 -4.4 1.7 -10.4 1.7 167.2 75cm(-100) 130(-120)
2015 41.5 -3.2 2.4 -9.3 1.7 125.9 145cm(+70) 260(+130)
2016 119 -2.4 3.4 -8.4 1.9 144.9 87cm(-58) 130(-130)
2017 91.5 -3.1 2.8 -9.2 1.9 142.2 165cm(+78) 278(+148)
今年 15.5(少) -4.4(低) 1.3 -10.4 1.9 111.5 165cm(0)、多 260(-18)、多
3月 平年 158.1 0.6 6.7 -5.2 1.3 155.5 129(注) 261(注)
2014 256.5 0.8 6.1 -4.5 1.8 157.3 125cm(-40) 270(-30)
2015 134.5 1.0 7.6 -4.6 1.7 157.7 145cm(+20) 305(+35)
2016 66 1.4 17 -9.8 1.8 103 85cm(-60) 165(-140)
2017 27.0 -0.3 5.7 -5.8 1.7 171.1 160cm(+75) 302(+137)
今年 222.5(多) 2.7(高) 9.4 -3.1 1.7 171.1 135cm(-25)、並 235(-67)、少
注:積雪量の平年値は2014〜2017年の平均値。積雪量は各月の月末時点

12月と2月は、「降水量:少、気温:低」で、3月は「降水量:多、気温:高」という傾向です。積雪量は12月は並〜多、1・2月は多、3月は並〜少という状況です。3月は降水量が平年よりかなり多いにも関わらず、気温が高いため積雪とはならず、雨になった日があったことが積雪量増加につながらなかったと推測されます。

特に今年は山頂付近の積雪量がまだ少なく、蚕玉岳〜朝日岳稜線直下では、この時期では見られない岩が点在しています。また、3月に入って、大雪渓、富士見岳、3号カーブ右側斜面と立て続けに雪崩が起きていて、これも降水量が多く気温が高いことによるものと思われます。つまり、例年の3月なら、森林限界以降の標高の高いところは、気温が低く、乾いた雪が降るため、なかなか積もらないものの、今年は気温が高く、やや湿り気のある雪がまとまって降ることが要因の一つとが考えられます。


 


■ご注意■

今回の取材記事は、バックカントリースキー・ボードの経験のある方を対象としたもので、初めての方へのイントロダクションという位置づけの内容ではありません。
初めてツアーコースなどにトライしてみたい方は、経験者と同行するか、ガイドツアーに参加されることをお勧めします。(乗鞍高原などにはガイドが同行するツアーを企画する会社がありますのでお問い合わせください。)

 

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