ノリクラ 雪渓カレンダープレリリース版

Vol.2(2019/04/13) C

 

 

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(Update:2019/04/18)

 

 【ツアーコースV−位ヶ原急斜面】

位ヶ原急斜面 滑落注意の看板(左)と位ヶ原山荘の看板(右)
今シーズンは滑落事故が多発(2〜3月で6件発生)

こちらはツアーコース最後の位ヶ原急斜面。これまで樹林帯を切りとおしてコースが作られていましたが、この付近からはオープンバーンになります。オープンバーンとは視界が開けているというですが、逆に目印になるものがないという意味でもあり、視界不良時(濃霧)は方向を見失って遭難することを示しています。位ヶ原山荘の看板の位置から急斜面の上端が見えないほどの濃霧の場合は、今日の山行を中止して引き返すことをオススメします。

位ヶ原山荘の看板の隣には、長野県警察・遭対協の滑落注意の看板が設置されています。今年は雪が少なかったため、アイスバーンとなる日が多く、2月に4件、3月に2件も救助事案が発生しました。乗鞍岳においては過去に例のないほどの発生状況です。アイゼン・ピッケルの携行を勧めていますが、救助事案の中には下山時にアイゼンの歯をひっかけて転倒したものや、アイゼンを外さずにシリセードでアイゼンをひっかけるケースもあり、アイゼンの使用方法の注意も合わせて必要です。

 

2018年の位ヶ原急斜面
2018ノリクラ 雪渓カレンダー
プレリリース版 Vol.3(2018/04/14) C
先週の位ヶ原急斜面
ノリクラ 雪渓カレンダー
プレリリース版 Vol.1(2019/04/06) C
今回の位ヶ原急斜面
ほぼ昨年並みの積雪

位ヶ原急斜面の積雪は、先週よりも10〜20センチ程積雪が増え、ほぼ昨年並み。

 

先週の位ヶ原急斜面
ノリクラ 雪渓カレンダー
プレリリース版 Vol.1(2019/04/06) C
木々の高さから
先週よりも積雪が増えていることがわかる

全体的に見回しても、各々の木の高さから、先週よりも積雪量が増えていることがわかります。

 

新雪は10〜20センチ
モッサリとした感じの状態 − それなりに楽しめる雪質

新雪は10〜20センチほど。ただ、モッサリとした感じの状態でパウダーと呼べるものではありません。でも、それなりに楽しめる雪質です。

 

蚕玉岳はプチパウダーでした

山頂方面に向かったこちらのお二人。スノーシュー(※)で行った左の方は蚕玉岳まで行けたものの、スプリットボードの右の方は途中から雪が硬くなりシールで登れず断念されたとのこと。この時期の山頂・稜線はまだ厳冬期と変わりありませんのでアイゼンが必要です。(※ 外周にエッジのついていない雪原を歩くタイプのスノーシューでは、硬い斜面を登ることは困難です)

山頂方面の雪が緩むのはゴールデンウィーク過ぎで、ゴールデンウィーク頃でもまだ硬い日が多い状態です。

 

【位ヶ原急斜面と伊奈川の谷について】

【本物】左の谷−位ヶ原急斜面(正規下山ルート) 【偽物】右の谷−伊奈川の谷(間違えて何度も遭難あり)

さて、こちらは位ヶ原急斜面を上から眺めたもの。左が「本物」で右が「偽物」です...

この2枚の画像は左右連続写真(※)で、左が本物の位ヶ原急斜面で。右は伊奈川の谷で位ヶ原急斜面ではありません。特に濃霧の時は同じような地形に見えてしまい、ツアーコースへ下山する際に間違えて伊奈川の谷へ進んで、これまで何度も遭難が発生しています。乗鞍岳春山バスが運行される4月下旬には、伊奈川に立ち入らないようにロープが設置されますが、この時期はありません。
(※ 実際には左右の画像の間に尾根部分があります。)

 

位ヶ原急斜面と伊奈川の谷は隣り合っているので間違いやすい
ノリクラ雪渓カレンダー冬〜春スキー版

ツアーコースの位ヶ原急斜面は青い部分、伊奈川の谷は赤い楕円の箇所です。ご覧のとおり隣接していて、大雪渓・位ヶ原や山頂方面から下山する際に間違いやすい位置にあります。位ヶ原急斜面や伊奈川の谷の周辺の位置関係は、ノリクラ雪渓カレンダー冬〜春スキー版 で確認できますので、ぜひ一度ご覧ください。

 

伊奈川の谷−大きな岩場があるのが特徴(中央)

伊奈川の谷には雪着きの悪い大きな岩場があり、これが位ヶ原急斜面との大きな違いです。濃霧の中でも、斜面の中に大きな岩場があるかどうか確認できるはずです。

 

【位ヶ原】

位ヶ原

位ヶ原急斜面を登り切った先の位ヶ原。これより森林限界となります。森林限界を超えると、天候・気候が急激に変化します。もし、急激に雲が流れ込んで視界が阻まれるようになったら、急いで引き返す必要があります。

 

2018年の位ヶ原(積雪139センチ)
2018ノリクラ 雪渓カレンダー
プレリリース版 Vol.3(2018/04/14) C
先週の位ヶ原(積雪量204センチ)
ノリクラ 雪渓カレンダー
プレリリース版 Vol.1(2019/04/06) C
先週の位ヶ原(積雪量200センチ)

位ヶ原(標高約2500メートル)で積雪は200センチ。先週より4センチ減少、昨年より61センチ多く、すでに昨年以上の積雪量となっています。

 

剣ヶ峰方面 高天ヶ原方面

位ヶ原より上部の山頂方面は、先週よりもやや積雪が増加しました。昨年と比べると若干少ない状態です。

 

蚕玉岳方面 − 無数のシュプールが
★この時期の山頂方面は硬く、GW以降をオススメ★

今日は蚕玉岳から滑り降りる方がたくさんいらっしゃり、ご覧のように無数のシュプールが刻まれました。ただ、まだこの時期の山頂方面はバーンが硬いことが多く、こちらのコルからのエリアを外れると、甲高いエッジ音を響かせ中がらアイスバーンを滑り降りる様子が見られました。

山頂方面からの滑走はゴールデンウィーク以降にされたほうがよいでしょう。

 

【大雪渓下部】

それでは大雪渓下部の積雪状況をお伝えします。

 

先週の大雪渓入口
ノリクラ 雪渓カレンダー
プレリリース版 Vol.1(2019/04/06) C
今回の大雪渓入口
先週より10センチ程積雪が増える

先週もお伝えしたように積雪量の定点観測を行っていた前川国有林の看板は、昨年10月末に撤去されてしまったため、昨年との比較ができません。先週と比べると10センチ程積雪が増えています。

 

トイレ小屋・避難小屋(冬季閉鎖中)−利用可能は5月下旬〜6月上旬以降

大雪渓入口から北側へ50メートルのところにトイレ小屋と避難小屋があります。避難小屋・トイレは冬季閉鎖中で、乗鞍岳春山バスが大雪渓まで延長運行される5月下旬〜6月上旬に利用可能になります。トイレ小屋・避難小屋周辺の積雪量も先週より増加しましたが、昨年より少ない状態です。

 

モーグルコースの岩(赤丸)

肩の小屋への夏道がこの付近を斜め上に登っていますが、その途中にモーグルコースの岩があります。雪解けが進むとこの岩が最初に姿を現します。

 

先週のモーグルコースの岩
ノリクラ 雪渓カレンダー
プレリリース版 Vol.1(2019/04/06) C
今回のモーグルコースの岩
20センチ程度積雪が増える

ただ、今年はまだ雪に埋まっていません。それでも先週と比べると20センチ程積雪が増えているようです。

 

厳冬期のようなクリアはロケーションと
春の穏やかな気候

快晴無風が続いた今日の天候も、14時頃から雲が沸き始めました。それでも、穏やかなコンディションが終日続き、厳冬期のようなクリアーなロケーションと、春の穏やかな気候のもと、最高の一日を過ごすことができました。

 

<編集後記>

「今年は雪が多いのか少ないのか..」

先週は1〜3月の積雪量について述べました。1〜2月は雪不足でしたが、3月中旬頃から急激に多くなり、ちょうど例年並みに回復した。ただ、場所によって差があって、標高2000〜2400メートルのツアーコース付近や標高2500メートルの位ヶ原はやや多め、標高2600メートル以上の大雪渓・山頂付近はやや少な目といった所でばらつきがあります。

山スキーヤーにとっては、標高2600メートル以上の大雪渓・山頂の積雪が気になるところですが、ゴールデンウィーク頃まで積雪が増えますので、今後の状況を期待したいところです。また、自転車やマラソンの方々にとっては、道路に雪壁が残っているか気になるところでしょう。

4月中旬はツアーコースから山麓方面は融雪期に入りますが、週が明けても降雪に見舞われる状態が今年は続いていて、例年とは異なった状況が見られます。今後の積雪状況は当WebSiteでお伝えしていきますので、随時チェックしてください。


 


■ご注意■

今回の取材記事は、バックカントリースキー・ボードの経験のある方を対象としたもので、初めての方へのイントロダクションという位置づけの内容ではありません。
初めてツアーコースなどにトライしてみたい方は、経験者と同行するか、ガイドツアーに参加されることをお勧めします。(乗鞍高原などにはガイドが同行するツアーを企画する会社がありますのでお問い合わせください。)

 

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