ノリクラ 雪渓カレンダー
Vol.4(2010/06/05〜06) E
【鶴ヶ池雪渓】
鶴ヶ池雪渓 − 畳平から約200メートル |
前ページまでは長野県側の大雪渓・山頂方面をメインにお伝えしてきましたが、岐阜県側でスキー滑走が指定されている鶴ヶ池雪渓もポピュラーな存在です。
畳平から約200メートルというアクセスの利便性が特徴で、天候の急変などへの対応が容易であることから、ノリクラでの春スキーが初めてという方にもお勧めできるエリアです。
そのため、小さなジュニアの練習にも安心して滑走できるエリアでもあります。
紺碧の空に向って大きくジャンプを繰り返します。
緩みきったバーンコンディションにエア台はすぐに崩れてしまい、ジャンプの度にスコップで修正を続けなければなりません。ゲレンデ内であれば硫安(スノーセメント)で雪面を凝固させることができますが、中部山岳国立公園に位置する乗鞍岳一帯の中でも、鶴ヶ池雪渓や長野県側の大雪渓などは、国立公園の中でももっとも規制の厳しい特別保護地区に指定され、自然環境に影響を与える行為は制限されています。
そのため、土壌改良剤(肥料)として使用される硫安の使用は、外来植物の繁殖を増加させ、在来の高山植物の自生分布に影響を与えることが懸念されることから、使用が制限されています。
これからもノリクラで夏スキーを楽しんで行けるよう、エア台の整備には若干の苦労が伴うものの、後世にわたっても夏スキーができるよう、マナーを守った行動に努めていただくようお願いいたします。
鶴ヶ池雪渓は魔王岳の北斜面に位置し、その山頂直下(雪渓の奥)は中〜急斜面が広がり、スキートレーニングには最適はバーンがあります。
モーグルライン |
今回は20名程度のモーグラーの方々の姿がありました。
一般的にゲレンデ見られるコブは多くのスキーヤーが滑走することで自然に発生しますが、モーグルの場合、均等間隔で大きさの揃ったコブが必要で、スコップで掘ったり、同じラインを均等に滑走してモーグルラインを作成することが一般的です。
そして、今年もコブ管理人がライン作りに励んでいます。おそらく、毎週、ライン作りにお越しになることでしょう...
そして、今回のラインは20コブ・76メートル。
バーンコンディションはその日の天候で大きく影響されますが、この時期は比較的天候にかかわらず柔らかめの状態が続きます。
日差しが照りつければ、真夏に匹敵する灼熱感を覚え、喉を縦にしてビールを流し込む感覚はこの上ない至福のひとときでしょう。
ほとんどの方が今シーズンのノリクラ入りが今日は初めてで、高い標高の空気の薄さに体が順応していないばかりではなく、この暑さにも体が付いて行くことができず、モーグルコース脇を登る姿もかなり辛そうな様子が見受けられました。
この上ない真っ青な天空の世界に果敢に飛び込むモーグラーの方々の姿を見ると、今年も夏スキーのシーズンが到来したことを実感させてくれます。本格的な夏が訪れる前に、耐え忍ばなければいけない梅雨の時期が待っています。そんな梅雨入り前の貴重な一瞬を楽しませてくれた一日でもありました。
【昨年の今ごろは?】
昨年も今回の二日間と全く同じような週末を過ごすことができました。
6月6日(土)は乗鞍高原から湧き上がる雲海に包まれた位ヶ原周辺は綺麗なベールがなんともいえない幻想的な光景。その中を延長運行された春山バスが肩の小屋口バス停までやってきます。そして、一目散に稜線に向って出発を始める様子が繰り広げられます。その後、天候は曇り空となってしまいましたが、まずまずの天候で一日を終えます。
そして、翌日の6月7日(日)は今回と同様、綺麗な青空の朝を迎え、汗ばむほどの状態となってきます。乗鞍スカイラインのヒルクライムでは途中で雲が流れて行く状態ではあるものの、ヒルクライムにはもってこいのコンディション。そして、森林限界を超えた桔梗ヶ原には青空に剣ヶ峰や蚕玉岳・朝日岳などの山々が青空のスクリーンに映える様子がうかがえ、さらにモーグラーの集まった鶴ヶ池雪渓には果敢にコブラインを攻めて行く姿があって、夏スキーのシーズンにシフトしつつある光景が繰り広げられました。
<編集後記>
スキーヤー・ボーダーにとって雪渓の積雪量の推移が気になるところですが、バーンコンディションも刻々と変化しています。
ウインターシーズンは新雪の深さがどの程度あり、その柔らかさ(軽さ)がターンしたときの浮遊感ににつながるものがあるかといった指標で雪質を感じ取りますが、3月を過ぎて徐々に雪の結晶が崩れてくると、パウダー感は少しずつ感じられなくなってきます。
5月以降の春スキーのシーズンともなると、あまり日中の日差しがなくても雪面が緩んで、安心して滑走することができ、稜線上でも寒さを感じることが少なくなり、ダイナミックなスキーを楽しむことができる時期となります。ノリクラの雪渓でのスキーを一年を通して見て、滑走エリアと過ごしやすさなどから最も楽しい時期ともいえます。
そして、梅雨を迎えて、乗鞍高原側のシャトルバスが7月から運行開始となって大雪渓までのアクセスが容易になる7月を迎えると、大雪渓には夏スキーを楽しむスキーヤー・ボーダーの方々が押し寄せるようになります。7月が大雪渓での夏スキーのシーズンインというイメージもあるかもしれませんが、この頃になると、6月までは柔らかかった雪面は、スプーンカットや雪面が再氷結して筍のような円柱状の氷の柱がいくつもでき、それを整地しないと滑走できない状況となります。
7月下旬〜8月上旬の梅雨明けを迎えると、バーンは再び柔らかくなって滑走しやすい状況となります。しかし、この頃となると滑走エリアも制限されるようになって来ます。そして、9月以降は滑走できるエリアが雪渓上部左側の急斜面しかなくなり、上級者しか滑走できなくなります。さらにはアイスバーンを通り越してスケートリンク状態になる日も現れてくる状態となります。
上記のような状態からシーズンを通して最も滑走しやすい時期は、梅雨入り前の5月から6月上・中旬ごろまでといえます。ノリクラでの楽しい春スキーをお考えの方は、ぜひ梅雨入り前にお越しください。また、その後の夏スキーでノリクラデビューをお考えであれば、梅雨明けからお盆ごろまでがよいでしょう。
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