ノリクラ 雪渓カレンダー
Vol.22(2010/10/09〜10) C
【肩の小屋 − 雷鳥観察会】
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肩の小屋 |
こちらは大雪渓の西側にある肩の小屋。
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雷鳥観察会 |
肩の小屋はこの三連休を持って今シーズンの営業が終了しますが、今日は雷鳥研究の第一人者である信州大学教育学部 中村浩志教授(鳥類生態学)の引率による、長野県山岳協会自然保護委員会主催の雷鳥観察会が開催されました。
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肩の小屋周辺での観察 |
肩の小屋周辺を中心に、参加された方々は中村先生のあとを追って行きます。そして、ハイマツ脇で何かを見つけます...
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雷鳥の巣 − 二つの卵が残される |
そこには雷鳥の巣がありました。ハイマツ脇に小さなくぼみが作られ、二つの卵が残されています。
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孵化しなかった卵を手にとって観察 − 雷鳥は膝よりも高いハイマツ帯には巣を作りません |
大きさはウズラの卵を一回り大きくしたほど。雷鳥は低いハイマツ帯の脇に巣を作り、6〜7個程度を産卵します。孵化は一斉に始まるため、この卵は生育しなかったのか無性卵ではなかったのかと推測されます。
すでに巣立ちを終えているため、ここに雷鳥が戻ってくることはありません。
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雷鳥の姿を見つける |
さらに別の場所を探すと雷鳥の姿を発見します。
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今年生まれた幼鳥(左) − メスの親鳥(右) |
そこには二羽の雷鳥。左側が今年生まれた幼鳥。そして、右側はメスの親鳥です。よく見ると親鳥には足輪がついている様子がわかります。
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双眼鏡で足輪を確認 | 足輪の色をノートに書き記す |
その足輪の色を双眼鏡で確認し、発見した場所と左右の足輪の色をノートに書き記します。
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静かに待機すれば間近に観察できる |
周囲の状況に少しばかり驚く様子も見られましたが、じーっと動かずに待機していると、ご覧のように手に届くほどの距離で雷鳥の様子を観察することができます。
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そして、二羽とも空高く飛び去って、雷鳥の観察会も終了となります。
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雷鳥はこのような高山植物を食べます | 雷鳥の糞 |
最後に雷鳥の餌となる高山植物の説明などがなされます。雷鳥はキバナシャクナゲ、コメバツガザクラ、ガンコウランなどの葉や芽を食べます。特にガンコウランは一年中にわたって食べているようで、ガンコウランの黒い実を食べたあとは、通常、茶色の糞が黒くなる様子も見られるとのことです。
このようなわい性(矮性)の環境でないと雷鳥は生息することができませんが、南アルプスではシカの侵入が目立ち、その状況が二〜三年も続くとあっという間に周辺が食べつくされ、雷鳥が生息できない環境となってしまいます。
ノリクラでは、中村先生の調査研究により、すべての雷鳥の個体識別が完了し、その結果から増加傾向であることが確認されています。しかし、全国的には絶滅の危機に立たされていることには間違いありません。
トキと同じような運命をたどらないためにも、今のうちから対策を講じる必要があるわけです。(→ Next)
■ご注意■
今回の大雪渓関連の記事はノリクラ初心者の方を対象にしておりません。ノリクラデビューをお考えの方は来年の夏シーズンをご検討ください。
これからの時期は天候の急変により降雪・凍結などで冬山の様相を呈します。今後、大雪渓に新雪が降った場合でも、急斜面とアイスバーンが残っていて、この時期にノリクラの雪渓で滑走されたことのない方や、ソフトブートのボードの方は絶対にお越しにならないようお願いいたします。
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