ノリクラ 雪渓カレンダー
Vol.2(2011/05/21〜22) D
【5月22日(日)、三本滝レストハウス】
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三本滝レストハウス前駐車場 |
昨日の晴天から一夜明けた5月22日(日)は、雨降りの朝から始まります。こちらは三本滝レストハウス前駐車場。
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人影はまばら... |
先日は、標高2702mの畳平まで運行される岐阜県の乗鞍スカイラインのシャトルバス始発便の様子をほおのき平駐車場からお伝えしましたが、長野県側でも一日三便の春山バスが標高2350mの位ヶ原山荘まで運行されています。
こちらの三本滝レストハウス前から春山バスに乗車することができ、いつもならたくさんのスキーヤー・ボーダーの方々でにぎわうはずですが、今日はこの天候のため、出発の準備をされている方はまばらな状態です。
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春山バスの到着を待つ |
観光センターを発車した春山バス第一便が三本滝バス停に到着するのは8時20分。定刻前にバス会社の係員が乗車券を発売します。
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春山バス − 今日も通常運行が行われる |
岐阜県側の乗鞍スカイラインは5月15日から冬季閉鎖が解除されましたが、長野県側の県道乗鞍岳線の冬季閉鎖解除は7月1日。そのため、春山バスは特別な許可のもとで運営されています。凍結などにより運休になることはありますが、今日は問題なく定刻どおり位ヶ原山荘へ出発しました。
【ツアーコース T −入口】
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かもしかゲレンデ |
今年の春山バスの運行は4月29日より始まりましたが、運行開始日は年によって異なっています。春山バスは乗鞍高原内の各バス停で乗車することができますが、多くの方は観光センターもしくは三本滝のバス停を利用します。
また、春山バス運行開始直後は、観光センターよりも三本滝バス停を利用されるスキーヤー・ボーダーの方々が圧倒的に多い状況です。それは、三本滝バス停隣のかもしかゲレンデまでツアーコースを経由して下山滑走することが可能なためです。
しかし、かもしかゲレンデはご覧のように滑走できる状況ではありません。かもしかゲレンデ内を下山滑走することができるのは5月上旬ごろまでです。
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ツアーコース入口 | クマザサに覆われる − 泥まみれの藪漕ぎ |
そして、こちらはかもしかゲレンデ最上部から始まるツアーコース入口。先週までは何とかここまで積雪がありましたが、ご覧のようにほぼ完全に雪はなく、人の背丈ほどのクマザサに覆われています。
そのため、泥まみれになりながらの藪漕ぎが必要となります。
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ツアーコース入口急斜面 |
こちらはクマザサを分け入った先の入口急斜面。滑走できる状況ではありません。さらに、この先には人の背丈以上のブッシュが生い茂り、行く手を遮っています。
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上端付近 |
こちらは急斜面上端付近。
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粘土質の土壌のため、登行不可能 |
この部分はブッシュがほとんどなく、問題なく登って行けそうですが、粘土質の土壌のため雪がなくなると登ることが全くできません。
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入口急斜面の下山は困難 |
下山時は雪がなくても粘土質の地面をスリップ覚悟で降りることは可能に思われますが、泥まみれとなる状況から現実的には下山困難と考えられます。
【ツアーコース U】
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この先も切り株・ブッシュが広がる |
入口急斜面を登りきった先のツアーコースもご覧のように切り株・ブッシュがかなり広がっています。
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1番標識付近 − 滑走できるのはここまで |
そして、何とか滑走できるのは1番標識付近までです。
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3番標識付近 − 板をはずして歩く |
それでも所々で板をはずして歩くことを強いられます。
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昨年の3番標識 2010ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.2(2010/05/22〜23) D ↓ |
先週の3番標識 ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.1(2011/05/14〜15) B ↓ |
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今週の3番標識 |
こちらはツアーコース中間付近にある3番標識。左上は昨年同時期で右上が先週のものです。先週よりも50センチ少なく、昨年よりも50センチ少ない状況です。標識周辺の積雪がなく、今後は積雪量の減少を計測することが困難なほどです。
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4番標識付近 − 板をはずさずに滑走できるのはここまで |
通常、登って行けば積雪量が多くなるため、ブッシュが徐々に少なくなってきますが、今回は激しい雪解けのため、ツアーコース中間付近を過ぎても広範囲にブッシュが広がっています。こちらは4番標識付近で、位ヶ原から板をはずさずに滑走できるのはここまでです。
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昨年の5番標識 2010ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.2(2010/05/22〜23) D ↓ |
先週の5番標識 ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.1(2011/05/14〜15) B ↓ |
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今週の5番標識 |
こちらはツアーコース上部付近の5番標識。3番標識と同様、左上が昨年のもの、右上が先週のものです。先週より50センチ減少し、昨年とほぼ同じ状況です。
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位ヶ原急斜面 − ここでもブッシュが見られる |
ツアーコース最上部の位ヶ原急斜面に差し掛かってもブッシュが広がっています。ツアーコースは全体的に積雪量が減少し、今後は切り株・ブッシュが一気に出現して来ることが予測されます。
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昨年の位ヶ原急斜面 2010ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.2(2010/05/22〜23) D ↓ |
先週の位ヶ原急斜面 ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.1(2011/05/14〜15) B ↓ |
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今週の位ヶ原急斜面 |
位ヶ原急斜面の積雪は先週より50センチ減少し、昨年より30センチ少ない状況です。
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ツアーコースに訪れたボーダーの方 |
この天候のため、今日は訪れる方は皆無と思いましたが、位ヶ原急斜面を下山滑走されるボーダーの方々にお会いしました。
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これより下部は滑走困難、位ヶ原山荘へ引き返す |
春山バスを利用して、今回始めてツアーコースにやってこられたというこちらの方々。ツアーコースの状況を説明し、また、ツアーコースの滑走経験がないことから、位ヶ原山荘まで登り返して、春山バスで下山することをお勧めしました。
今回は位ヶ原の視界が良好で引き返すことが可能であること。そして、位ヶ原山荘から出発する下山バスの発車時刻まで余裕のあることを考慮した上での判断でした。
12月下旬ごろから滑走可能となったツアーコースも、今シーズンはそろそろ店じまいとなってきたようです。次のシーズンに向けてノリクラのページがまた一つ進んで行きます。
【昨年の今ごろは?】
5月22日(土)は、早朝は綺麗な青空が見えていましたが、10時ごろから上空から青空がなくなります。それでも少し薄日の差す曇り空のまま、一日安定した天候が推移し、ほとんど風のない穏やかな状況とはっきりと遠景が眺められ、山頂や稜線付近でゆっくりと休憩していても全く問題ない状況。そして、今日はお昼を過ぎても稜線に向けて、スキーヤー・ボーダーの方々が絶え間なく登ってこられ、一日中、賑わいを見せていました。
そして、翌日5月23日(日)は終日雨、長野県側の春山バスは通常通り運行されたものの、岐阜県側の乗鞍スカイラインは積雪のため通行止めとなりました。位ヶ原から乗鞍高原に滑り降りるツアーコースもかなり雪解けが進んで滑走が困難な状況となってきました。
<編集後記>
今年は雪解けが早めに推移していることから、昨年なら積雪のある場所でも、すでにハイマツ帯が生い茂っている状況が見られます。そのため、肩の小屋の南の斜面から稜線に向けて直登すると、途中でハイマツ帯にさえぎられてしまいます。今回はそのハイマツ帯を分け入って稜線まで直登するスキーヤー・ボーダーの方々の姿がありました。
ハイマツ帯は単なる茂みではなく、そこは雷鳥の生息域です。周辺を見回してみるとお分かりと思いますが、雪渓以外にあるものはハイマツ帯だけで、雷鳥がこの地で生活するには、ハイマツ帯に身を寄せるしかないことは、すぐに想像できるはずです。
乗鞍に雷鳥が生息していることは、ここを訪れる方なら少なからずともご存知のことと思います。雷鳥は春とともに活動をはじめ、今はハイマツ帯の中にある巣で産卵・抱卵の時期を迎えています。 そのため、大勢のスキーヤー・ボーダーの方々がハイマツ帯に侵入することは、雷鳥を追い払ったり、雷鳥の巣を壊したりする可能性があります。
ハイマツそのものも成長の遅い高山植物ですから植生を傷つけないことはもちろんですが、自然環境はいろいろな連鎖の元で成り立ち、ハイマツへの悪影響は雷鳥にも大きく影響します。
自然のフィールドでスキー・ボードを楽しむのであれば、そんな自然環境の連鎖を考える必要があるでしょう。自らの行動が自然環境にどのように連鎖して影響を与えるのか、常に想像・連想しながらすごすことができなければならないと感じます。
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