ノリクラ 雪渓カレンダー
Vol.3(2011/05/28〜29) C
【剣ヶ峰〜蚕玉岳】
こちらは剣ヶ峰〜蚕玉岳(こだまだけ)稜線。
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降雪により、先週よりも積雪量が増えています。そのため、先週の段階でほぼ昨年並みでしたが、昨年よりも積雪量が多くなっています。
稜線部分の積雪状況をよく見ると...
左の画像の西側部分は周辺が完全に真っ白の新雪に覆われていますが、右の画像では一部しか新雪に覆われていません。稜線付近は絶えず西からの風にさらされ、西側部分の積雪が増える結果となったようです。
今回の新雪は少し粘り気を感じる雪質ですが、厳冬期は軽い雪質のため、強風で吹き飛ばされて積雪量が増加しにくく、大雪渓など上部エリアで積雪量が増加するのは、雪質が少し重くなる3月〜4月となります。
それではいつものように剣ヶ峰〜蚕玉岳稜線からのバーン状況をお伝えします。ただし、ご覧のように濃霧がひどいため、今回は詳細にお伝えできないことをあらかじめ申し上げます。
雪面は先日の新雪部分と古い春雪が斑状に分布しています。通常、雪質が異なると滑走性が大きく変化し、バランスを崩しやすいものですが、今回は新雪部分も春雪部分も滑走性にほとんど違いがなく、やや重たい春雪を滑走している感覚でターンを普通に繰り返すことができます。
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昨年の剣ヶ峰直下の岩 2010 ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.3(2010/05/29〜30) C |
剣ヶ峰直下の岩付近は昨年よりも四週間も早い雪解け状況です。他のエリアでは先週よりも雪解けのスピードが遅くなっている傾向ですが、この付近に関しては雪解けが遅くなっているという様子は見られません。
稜線から県道乗鞍岳線との合流地点までの区間を3分の1程度滑走したところ。急斜面から緩斜面に変化する部分です。雪解けが進んで6月中下旬ごろになるとこの付近は左右から岩場やハイマツ帯が延びて来て滑走エリアが上部と下部に分断されて滑走できなくなります。
今年の山頂・大雪渓エリアは全体的に雪解けが早いため、今年の分断時期はもう少し早めになる可能性があることをこれまでお伝えしてきましたが、ご覧のように分断箇所付近で岩の頭が見られるようになって来ました。
定点で観測している岩とは異なり、正確に昨年と比較することができませんが、それでも二週間前後は雪解けが早いと考えられます。
急斜面を滑り降り、緩斜面に入ると、雪面に細かなピッチが目立つようになってきます。再氷結によってたけのこ状の氷の塊ができています。現段階では滑走に大きな影響を与えるものではありませんが、梅雨に入って降雨が多くなると、バーン表面を雨水が流れて縦溝ができたり、表面からの蒸散でスプーンカットが発生し、滑走しにくい状態になってきます。
そのため、ノリクラの春スキーは、梅雨入り前までの柔らかな雪面が保たれている時期までが楽しく滑走できる期間と考えられるかもしれません。
緩斜面の滑走エリアは、両脇をハイマツ帯に覆われるようになってきます。雪解けとともにハイマツ帯は高くなり、すでに人の背丈ほどになっています。そのハイマツ帯の近くをよく見ると...
これは雷鳥の通常の糞です。一方、雷鳥の糞には「盲腸便」というものがあります。雷鳥は植物の葉など繊維質を分解するために盲腸が発達しており、細菌によって分解して栄養分を確保します。その残りカスが盲腸便で、通常の便とは形状がかなり異なっており、よく観察していると見つけることが可能です。
稜線から約1kmほど滑り降りると県道乗鞍岳線と合流します。
切り通しの高さは3メートル。昨年よりも一週間から二週間ほど早い雪解けです、
【大雪渓下部】
ここからは大雪渓下部の様子をお伝えします。
昨年の大雪渓入口 2010ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.3(2010/05/29〜30) C ↓ |
先週の大雪渓入口 ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.2(2011/05/21〜22) C ↓ |
こちらは大雪渓入口付近。左上の画像は昨年同時期の様子、右上の画像は先週の様子です。昨年よりも一週間早い雪解け状況です。
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先週の大雪渓入口 ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.2(2011/05/21〜22) C |
大雪渓入口周辺の様子から、先週から今週にかけての雪解けは50センチ程度です。
左の画像は大雪渓入口の右側に「高山植物等の採取は禁止されています」などのお願いの記載された看板の様子。そして、右の画像では大雪渓入口のガードロープの様子。いずれも先週から姿を現し始め、どちらも、昨年より一週間早い状況です。
そして、こちらはトイレ周辺。先週から道路下を通る排水溝が現れてきて、今週は雪解け水の流れる様子もはっきりとわかるほど雪面が下がっています。先週から50センチほどの雪解けです。昨年よりも一週間程度早い雪解けです。
雪渓下部にはご覧のようにクラックが入っています。このクラックは5月初めには確認できず、大雨で激しく雪解けした後の5月中旬から確認されました。急激な雪解けによって発生したものと考えられますが、毎年、ほぼ同じ位置にできています。
開口幅は先週の50センチから1メートルと広がっています。クラックの隙間は人が落ち込んでしまうほどの深さはないものの、今日のような濃霧の中での滑走の際はクラックに気が付きにくいため注意が必要です。
クラックの上部には、大雪渓の中で最初に出現する岩があります。7月になるとこの付近にモーグルコースが作成され、多くのスキーヤーが集まることから、モーグルコースの岩と呼称させていただいております。
先週より姿が確認できるようになり、今週は50センチほどの高さになっています。先週と同様に昨年より二週間早い雪解けです。(→ Next)
■ご注意■
今回の取材記事は、バックカントリースキー・ボードの経験のある方を対象としたもので、初めての方へのイントロダクションという位置づけの内容ではありません。
初めてツアーコースなどにトライしてみたい方は、経験者と同行するか、ガイドツアーに参加されることをお勧めします。(乗鞍高原などにはガイドが同行するツアーを企画する会社がありますのでお問い合わせください。)
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