ノリクラ 雪渓カレンダー
Vol.12(2011/07/28〜29) @
まるで梅雨のようなはっきりしない天候に見舞われ、真夏のこの時期とは思えないような二日間となりました。
7月28日(木)は、昨日から続く雨の天候から一日が始まります。強弱を繰り返す雨に加えて、濃霧がひどく、耐えられないほどの天候ではなかったものの、終日にわたって悪天候が続き、全く取材にならないほどの状況。岐阜県側の乗鞍スカイラインは、6時40分に雨量規制のため、通行止めの措置が取られ、それに連動して、乗鞍高原を出発する長野県側のシャトルバスも運休となり、今日は運行が再開されることがありませんでした。午後になって、雨は収まってくるものの、濃霧はさらにひどく、本物の梅雨以上に辛い一日でした。
7月29日(金)も、昨日とほぼ同様な天候。それでも昨日からの雨はやんで、乗鞍スカイラインは7時から雨量規制による通行止めが解除されました。そのため、始発便は運休でしたが、7時便以降のシャトルバスは通常通りの運行となり、昨日はまったく人出のなかった大雪渓も、今日は数名のスキーヤーがシャトルバスでお越しになる様子が見られました。この天候ですから、バーンは硬く、さらにコブラインの中までスプーンカットなどが発生する状況に、コース整備を全員で行うところから、大雪渓での夏スキーが始まります。しかし、天候はまったく回復せず、濃霧と雨と風の一日が終日続きました。
それでは、梅雨に逆戻りしたこの二日間の様子をお伝えします。
【7月28日(木)、観光センター前駐車場】
こちらは早朝5時30分の観光センター前駐車場。
昨晩から断続的に降る続く雨は、日付が変わっても変わらず続いています。上空の雲に動きはなく、まさに梅雨に逆戻りした状況です。気温は16℃。半袖よりも長袖のほうがちょうど良いコンディションで、今日は長袖が手放せない一日となりそうです。
雨は周期的に強弱を繰り返します。激しく降るときは、かなりまとまった雨脚を見せるほど。まもなく始発のシャトルバスが到着しようとする時刻ですが、シャトルバス専用の停留所には人影はありません。
また、観光センター前駐車場も数台程度しかお越しになっていない状況ですから、人の動きがないのも仕方ありません。
観光センターの軒先で空を見上げるこちらの方々。昨年も同じ時期にやってきて、そのときも同じような天候...今日は剣ヶ峰への山頂登山を計画されてお越しになり、始発のシャトルバスに乗車しようとされています。しかし、この天候にあきらめモード...
そして、観光センター6時10分発の畳平行きシャトルバスが到着します。
天候の回復を願って... | 乗車前にもう一度空を見上げて... |
せめて山頂エリアだけでも雲が抜けていてほしいと、手を合わせてながらバスに乗り込みます。そして、バスに乗車する手前で、もう一度空を見上げる様子があります。天候の良くないときは、回復を一途に願う気持ちは誰しも一緒です。
登山に向かう人々の目的はいろいろあるかと思います。天候が悪くても登ってみたいという願望は、簡単にあきらめることはできません。また、大雪渓など上部エリアでは、雲の上に出ていて快晴ということもあります。そのため、この先の行動を予定通りに進めるか、もしくは、断念するか、現地の状況を自分の目で確かめなければ、決められないというのも事実です。
タクシー乗り場 | そうだねぇ〜、朝一番から待ってるよ〜 |
今日もタクシー乗り場には、いつものように、そして、いつもの運転手の方々がお越しになっています。今日、朝一番にやってきたこちらの運転手さん、「そうだねぇ〜、大体、6時前には、ここについているよ。だって、朝一番に行きたいお客さんもいるから...」
朝一番に登山口まで直行してほしいというニーズもあれば、運転手さんのガイド付きで沿道の風景をゆっくりとドライブしたいというニーズもあります。しかし、今日はこの後、これまでとは異なったニーズに対応することとなります。
【大雪渓までの沿道の風景】
それでは、いつものように大雪渓に向かう沿道の様子をお伝えします。こちらは観光センターから1kmほどのところにある善五郎の滝駐車場。いつもなら、乗鞍高原温泉スキー場のかもしかゲレンデ、そして、その上部から始まるツアーコース、さらに位ヶ原から山頂方面まで一望できます。しかし、今日はご覧のように、すべてが雲に覆われています。
そして、さらに進んで、こちらは三本滝ゲート。マイカー規制はここから始まります。警備員の方が「今朝のパトロールは、濃霧で何も見えなかった...」と、おっしゃっています。そして、岐阜県側の乗鞍スカイラインが雨量規制のため、7時より通行止めとなったことを教えてくれました。
乗鞍スカイラインが通行止めになると、大雪渓駐車場より1.5km先にある県境ゲートが閉鎖されるため、畳平への進入ができなくなります。そのため、バスなどの大型車両は、大雪渓駐車場で引き返すことが必須となります。大雪渓駐車場より先は、道幅が狭く、大型車の転回はできません。
これまでにも、濃霧の中、県境ゲートからバックで延々と降りてくる観光バスを何度も拝見いたしましたが、おそらく、運転手さんはかなり大変だったと思われます。
この雨で、いつもなら、ほとんど流れのない箇所でも、ご覧のように激しい滝になって、流れ落ちる様子が随所に見られます。
三本滝ゲートを通過すると、乗鞍高原温泉スキー場のかもしかゲレンデの中を進んで行きます。
ゲレンデ一角は草原地帯となっていますので、色々な花々を見つけることができる箇所でもあります。一面を覆いつくす白い花はヤマブキショウマ。サラシナショウマと花の形状が良く似ているところと、ヤマブキと葉が良く似ているところから、このように名称されています。ちなみに、ショウマ(升麻)とは、サラシナショウマの根茎を原料とする生薬名から由来されています。
同じように白いこちらの花はイタドリ。特別珍しい植物ではなく、乗鞍高原一帯には普通に見られるものです。イタドリは「虎杖」、もしくは「痛取」と表記されます。前述のヤマブキショウマと同様に、イタドリも生薬の原料として用いられ、その根茎が「虎杖根(こじょうこん)」という生薬の原料とされているところから、「虎杖」と表記されます。また若葉には、止血作用があって、痛みを取り除くという意味から、「痛取」と呼ばれます。
イタドリは、路肩や荒地などさまざまなところに発生し、国際自然保護連合が定める「世界の侵略的外来種ワースト100」に指定されています。しかし、日本では、イタドリを外来種とは、認定していません。
タデ科の仲間のイタドリの学名は、「Fallopia japonica 」。つまり、イタドリは日本古来の植物ですから、日本では外来種とは認識しないわけです。しかし、イギリスでは、19世紀に観賞用として輸入したイタドリが旺盛に繁殖して、路肩のアスファルトを破壊するなどの問題となっていて、最近ではイタドリを駆除する「イタドリマダラキジラミ」を、日本から導入されているようです。
この「イタドリマダラキジラミ」。その名のとおり、イタドリを主な餌としており、まさに「タデ食う虫も...」という、昆虫が存在していたことがわかります。
そして、こちらはヤナギラン。かもしかゲレンデでは、これからピンク一面の世界が広がってくることでしょう。山火事などで更地となったところに、いち早く自生する植物で、このように開けたかもしかゲレンデでは、ごく普通に見られる山野草です。花が終わると綿毛の種子が風に乗って、ふわふわと飛んで行く様子が見られるようになります。そのころになると、周囲の木々も黄色や赤へと変化し、秋の高い空に綿毛が舞い上がる様子は、この時期の風物詩とも言えるでしょう。
雲行きに変化は見られず、むしろ、山麓の低い山肌すら飲み込んで行く勢いです。
さて、先週もお伝えした部分的な紅葉ですが、同じものがご覧のようにまだ残っています。秋の本格的な紅葉の時期でも、見頃は一週間から二週間程度ですので、次週には枯れてなくなっていることと考えられます。
標高が上がるにつれて、濃霧のエリアに突入して行くようになって来ました。
そして、こちらは位ヶ原山荘。
観光センターを6時10分に出発した上り始発便のシャトルバスが、畳平を折り返して、観光センター行きの下り便として運行されています。先ほど三本滝ゲートのところでお伝えしたように、岐阜県側の乗鞍スカイラインが7時より通行止めとなり、それにあわせて、長野県側のシャトルバスも運休の措置が取られました。
そのため、ここですれ違ったシャトルバス以降は、全便が運休となりました。
位ヶ原山荘から1.5kmほど進んだ11号カーブ。厳冬期には、この付近からスキー場上部まで滑走することのできる、ツアーコースの入口があります。ご覧のように完全に濃霧に包まれて、その様子をはっきり見ることができませんが、先週まで残っていた積雪が、ほぼ完全になくなっている様子が見られます。
さらに進んで、こちらは7号カーブの位ヶ原お花畑。こちらでは、まだ、残雪があります。それでも昨年よりも若干少ない状況です。
道路がなければ、現在地さえわからないほどの濃霧に見舞われるようになって来ました。積雪期の位ヶ原は道路だけでなく、周辺のハイマツ帯なども完全に雪に覆われ、周辺は、目印のまったくない白一色の雪原へと変化します。その状況で、このような濃霧に覆われると、行き場を失うこととなります。厳冬期の位ヶ原の恐ろしさは、そんな場面にあります。
5号カーブ | 4号カーブ |
宝徳霊神バス停付近の5号カーブにはまだ積雪がありますが、4号カーブでは完全に雪解けが終わりました。5号カーブに関しては、昨年よりもやや遅めの推移ですが、4号カーブは昨年よりも一週間程度早い状況です。
4号カーブを過ぎると、目の前まで濃霧が立ち込めるようになり、大雪渓に到着です。(→ Next)
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