ノリクラ 雪渓カレンダー
Vol.1(2012/05/12〜15) @
3月下旬から連載してきました ノリクラ雪渓カレンダー プレリリース版 は、ゴールデンウィーク前半の様子をお伝えして終了し、今回より、ノリクラ雪渓カレンダー 正式版 の連載を開始いたします。例年、正式版は10月末までの5ヶ月半(25週間)に渡る長期の連載ですが、春先から夏、そして、秋の紅葉から晩秋まで、ノリクラの四季が十分に感じられる内容を掲載して行きますので、どうかこれまでと同様に、ご愛読のほど、お付き合いお願いいたします。
ゴールデンウィーク前半は、まさに春スキーそのものの穏やかな天候・気候に恵まれ、申し分ない状況でしたが、ゴールデンウィーク後半は不安定な天候で、ノリクラを初め、多くの山岳地帯では冬山の様相を呈し、北アルプス北部では、多数の遭難事故となったことは、ご承知のことと思います。
また、標高の低い平地では、いつもと変わらない暖かな陽気であったものの、上空には真冬並みの寒気が流れ込み、その気温差は40℃にも到達し、関東地方では大規模は竜巻が発生しました。今週に入っても、寒気の流れ込みが続き、乗鞍岳春山バスの始発便の運休も見られたほどです。
取材初日の5月12日(土)は、青空が広がったものの、終日冷え込んだ空気に包まれ、雲は足早に流れる不安定な状況。それでも路面凍結はなく、春山バスは通常通り運行されました。しかし、森林限界を超えた位ヶ原では、マイナス4℃で絶えず強い北風が吹きぬけ、真冬と同等の様相でした。「春山」という言葉の中には、「冬山」という言葉が半分以上含まれていると思わなければならない一日でした。そして、翌日の5月13日(日)は、快晴無風でぽかぽか陽気。まさに春スキー日和という一日で、これ以上ない穏やかな天候に恵まれました。
5月15日(火)は、乗鞍スカイラインオープン初日。生憎の雨降りとなってしまいましたが、路面凍結などはなく、ほおのき平駐車場での乗鞍岳登山バス発車式に続き、畳平での安全祈願神事・乗鞍岳山開き祭も無事に終了し、10月末までの6ヶ月半が始まりました。
■ご注意■
今回の取材記事は、バックカントリースキー・ボードの経験のある方を対象としたもので、初めての方へのイントロダクションという位置づけの内容ではありません。
初めてツアーコースなどにトライしてみたい方は、経験者と同行するか、ガイドツアーに参加されることをお勧めします。(乗鞍高原などにはガイドが同行するツアーを企画する会社がありますのでお問い合わせください。)
【5月12日(土)、観光センター前駐車場】
こちらは朝6時30分の観光センター前駐車場。
今日は冷え込んだ朝を迎えます。6時の気温は0℃ですが、その一時間前の5時はマイナス2℃。朝日の暖かさをほとんど感じませんが、それでも気温の上昇に少しは寄与しているようです。天候は晴、しかし、ノリクラの峰々には雲の帯が横たわり、北から南へと激しく流れて行きます。
久しぶりに寒々とした冬へと逆戻りした朝です。
この時期は季節が行ったり来たりを繰り返します。しかし、季節は後退することなく、進んでいるところはこんなところに見られます。観光センター周辺の山肌を良く見ると、これまでモノトーンしか呈さなかった様子も、うっすらと明るさが芽生え始めている様子に気付きます。
こんなちょっとした変化を楽しむことが、新緑を迎えるこれからの時期には、必要な目線とも言えます。
こちらは観光センター西隣にある乗鞍自然保護センターの桜の木。そのつぼみはまだ固く閉じています。
しかし、その周辺では少しずつ芽吹きを始めるものもあり、こんな淡いピンクを見ると、ノリクラにも遅い春がやってきた証拠とも言えます。乗鞍高原の桜前線は楢の木坂付近まで到達していて、番所付近は満開の状態です。
今後の桜前線はさらに上昇して、乗鞍岳春山バスの車窓から山桜が手に取るように眺められるようになってくることと考えられます。
そして、こちらはスモモ。白い花が密に開花します。つぼみが大きくなってきて、そろそろ、時期を迎えることでしょう。
平地では夏日を迎える日が目立つようになって来ました。しかし、こちらはまだストーブの必要な状態。一年の四季のうち、その大半を冬が締めているノリクラの春や夏は本当に短いものです。
【三本滝レストハウス前】
こちらは観光センターから7km先にある三本滝レストハウス。乗鞍岳春山バスに乗車しようとするスキーヤー・ボーダーの方々が集まっています。時刻は7時30分ですが、レストハウス前の駐車場はほぼ満車状態。
レストハウス前のアスファルト部分は50台ほどしか駐車できません。ゴールデンウィーク期間中は、周辺の砂利スペースの除雪が実施されていなかったことから、かなりの混雑が見られました。
一週間が経過して、砂利スペースも自然融雪して、30台ほどの駐車スペースができるようになって来ました。
ゴールデンウィーク後半から、寒気の流れ込みで不安定な天候が続きました。そのため、春山バス始発便は路面凍結で運休になる日が続出しています。取材日前日の始発便も運休で、今朝もかなりの冷え込みがあったため、運休が懸念されました。
しかし、バス会社による早朝パトロールにより路面凍結箇所が確認されず、今日は通常通りの運行が決まりました。そのため、三本滝バス停に8時20分に到着する始発便に乗車しようと、出発の準備が駐車場のあちこちで始まります。
春山バスの運行は、吹雪など気象条件にも左右されますが、最も重要なのは凍結など路面状況です。特に前日気温が高く、道路周辺からの雪解け水が路面に流れ出し、それが夜間の冷え込みで凍結することが多々あって、「こんなに良い天気なのに運休?...」という結果になり、疑問を抱く方がたくさんいらっしゃいます。
しっかり晴れているからこそ放射冷却が強まり、それが路面凍結へとつながるわけです。また、いくら放射冷却が強くても、前日に雪解け水がなければ、路面凍結は起こらず、今回のように問題なく運行できる場合もあります。
さて、駐車場内では、地図を片手に今日の予定を話し合っている方々がいらっしゃいます。「剣ヶ峰に向かうには直登したほうがいいですか?それとも肩の小屋から巻いていったほうがいいでしょうか? ノリクラガイドマップ (冬〜春スキー版) を見ると、大雪渓には過去の雪崩箇所があってちょっと迷ってます。」
もう少し暖かい時期になって、バーンが十分に柔らかくなってくると、位ヶ原から朝日岳に向けて、シールでダイレクトに稜線まで登ってくる方が多くなってきます。しかし、この時期は、まだ、肩の小屋から巻いて行く方が多いようです。寒い時期は肩の小屋から先はアイゼンが必要な世界となり、頂上へ直登してもアイスバーンで滑走が困難な状況もあり、そんなコンディションの時に稜線・山頂へシールで登るのは危険なため、肩の小屋にスキーを置いて、剣ヶ峰に向かう方もいらっしゃいます。
三本滝停留所 − すでに長い列が... |
時刻は8時に回ろうという頃。すでに三本滝バス停にはご覧にように長い列ができています。三本滝バス停の定刻は8時20分です。しかし、週末は混雑が予測され、乗車に時間がかかることから、春山バスは早めにやってきます。そのため、バス停にも早めに並ばれることをお勧めします。
乗車券の販売 | ツアーコース下山滑走の方は片道券の購入 |
春山バスの到着から、乗車券の発売が始まります。かもしかゲレンデの状況は次のページで詳しくお伝えしますが、何とか下山滑走できる状況。そのため、大半の方が登り便だけの利用で片道券を購入されます。
位ヶ原山荘までの片道券は、観光センターからの乗車よりも三本滝からの乗車のほうが若干安くなります。今後、雪解けが進んで、ツアーコースの下山滑走ができなくなると下り便も利用することになりますが、往復券の場合は、観光センターからでも三本滝からでも同額です。(大人往復2400円 記事掲載時現在)
そして、8時を少し過ぎた頃、春山バスが到着します。
春山バス始発便を利用される方は、スキー板などをトランクに積み込んでからバスに乗車します。
始発便を利用される大半は、スキーヤー・ボーダーの方々ですから、バスのトランクは、ご覧のとおり、完全に満杯状態です。そのため、スキー板以外のものは、極力車内への持込をされたほうが良いでしょう。
列はさらに伸びて行き、今日の始発便は5台が運行されました。週末の始発便としては、平均的な乗客数だったといえます。
すべてのバスで乗車が完了すると、三本滝バス停を出発です。バス会社の係員の方が三本滝ゲートを開けます。
春山バスの車窓から眺める雪の壁も徐々に低くなってきます。また、例年、6月からは大雪渓・肩の小屋口バス停まで区間延長されます。そうなると、バスの背丈以上の雪の壁の中を行く様子が見られるようになり、新緑の移り行く様子と雄大な雪の壁の双方を楽しむ時期がまだまだ続きます。(→ Next)
■ご注意■
今回の取材記事は、バックカントリースキー・ボードの経験のある方を対象としたもので、初めての方へのイントロダクションという位置づけの内容ではありません。
初めてツアーコースなどにトライしてみたい方は、経験者と同行するか、ガイドツアーに参加されることをお勧めします。(乗鞍高原などにはガイドが同行するツアーを企画する会社がありますのでお問い合わせください。)
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