ノリクラ 雪渓カレンダー
Vol.1(2012/05/12〜15) G
【乗鞍スカイライン】
それでは、ここからは乗鞍スカイラインの様子をお伝えします。こちらは乗鞍スカイライン基点の平湯峠。ほおのき平駐車場から約6kmほど進んだ所にあり、この先は2003年からマイカー規制の対象区間とされ、バス・タクシーや自転車など限られた車両のみの通行となります。
平湯峠まではマイカーの走行は可能ですが、ここにはシャトルバスのバス停はありません。畳平へ向かうにはほおのき平駐車場か平湯温泉(あかんだな駐車場)に戻る必要があります。
⇔ | ||
昨年の平湯峠付近 2011ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.1(2011/05/14〜15) E |
今週の平湯峠付近 昨年より残雪が少ない |
標高1684mの平湯峠ゲートから乗鞍スカイラインを進むと山肌に残雪が見られるようになってきます。ただ、今年は残雪が少し少ないようです。
平湯峠から3kmほど進むと、夫婦松駐車場に差し掛かります。この付近までやってくると周辺の残雪が多くなってきました。夫婦松駐車場の先には、かつての料金所がありました。現在も乗鞍スカイライン管理事務所があって、道路状況のパトロールなどの管理業務が行われています。
⇔ | ||
昨年の乗鞍スカイライン(4kmポスト付近) 2011ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.1(2011/05/14〜15) E |
今週の乗鞍スカイライン(4kmポスト付近) 昨年よりも若干少ない積雪量 |
夫婦松料金所を1kmほど進んだ4kmポスト付近の様子。積雪量は昨年よりも若干少ないようです。
今日は降雨のため、路面湿潤が見られますが凍結はしていません。しかし、周辺の積雪からの雪解け水が路面に広がると、夜間凍結で通行止めとなることがあります。実際、翌日の5月16日(水)は、路面凍結で9時30分まで通行止めとなりました。
⇔ | ||
昨年の猫の小屋跡地 2011ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.1(2011/05/14〜15) E |
今週の猫の小屋跡地 右側の雪壁以外はほぼ昨年並み |
さらに進んで、こちらは標高2000m付近の猫の小屋跡地。左の昨年の画像と比べ、道路右側の雪の壁は、今年のほうが圧倒的に多い状況です。それ以外の箇所は、ほぼ同じかやや少ない様子です。
乗鞍スカイラインは猫の小屋跡地を過ぎた9kmポストあたりから森林限界を抜けてロケーションが広がります。しかし、今日は生憎の天候ですから、高山市内など遠景の様子ははっきりしません。
そして、吹き抜ける風にも冷たさが感じられるようになって来ました。
⇔ | ||
昨年の烏帽子岳 2011ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.1(2011/05/14〜15) E |
今週の烏帽子岳 ほぼ昨年並みの積雪量 |
森林限界を超えて最初に見られる山は23ある乗鞍の峰の一つである烏帽子岳(えぼしだけ 標高2550m)。濃霧のため、撮影角度がやや異なっていますが、ほぼ昨年並みの積雪量です。
森林限界を抜けた先は、まさに山岳道路といった雰囲気。
乗鞍スカイラインは全線片側1車線で、ヘアピンカーブを除けば、大型バス同士でも対向に支障はありません、しかし、視界の聞かない濃霧時は、突然、対向車両が現れますから、道幅が広くても、前方状況には注意が必要です。
また、道路状況を熟知していない観光バスなどもたくさんお越しになりますので、防衛運転が必要かもしれません。
ヘタなコース取りをするとお尻をもこすってしまう県道乗鞍岳線(エコーライン)ほどではないものの、十分制動をかけていても転げ落ちて行きそうな乗鞍スカイラインでは、下りでは慎重な運転が必要です。特にタイヤの細いロードサイクルはなおさらのこと。
7月に開催される乗鞍スカイラインサイクルヒルクライムなど、ヒルクライムの人気の高まりから、自転車でお越しになる方も多くなって来ました。タイヤ・ブレーキなどの点検は十分に行ったうえで走行してください。
⇔ | ||
昨年の四ッ岳カーブ 2011ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.1(2011/05/14〜15) E |
今週の四ッ岳カーブ 昨年よりも積雪量はやや多く、一昨年とほぼ同じ |
|
⇔ | ||
昨年の四ッ岳カーブ 2011ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.1(2011/05/14〜15) E |
今週の四ッ岳カーブ 昨年よりも積雪量はやや多く、一昨年とほぼ同じ |
乗鞍スカイラインの中でもっとも雪の壁が高い四ッ岳カーブ。昨年よりも積雪量はやや多く、一昨年とほぼ同じ状況です。
樹林帯の中の猫の小屋跡までの気候と、その先の森林限界を抜けた四ッ岳カーブ付近では気候に大きな差があります。そして、四ッ岳カーブから土俵ヶ原を抜けて桔梗ヶ原に差し掛かると、さらに厳しい天候となります。風も強くなることはもちろんのこと、その風の冷たさもさらにひどくなって行きます。
⇔ | ||
昨年の鶴ヶ池雪渓 2011ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.1(2011/05/14〜15) E |
今週の鶴ヶ池雪渓 昨年より多い積雪量、例年並み |
畳平に到着する手前に鶴ヶ池雪渓が広まります。岐阜県側で唯一滑走が認められているエリアです。畳平から歩いてすぐの場所にあることから、初めてお越しになったスキーヤー・ボーダーの方にも安心してお勧めできる場所です。例年6月下旬まで滑走可能です。
昨年は積雪量が少なかったため、今年のほうが圧倒的に多い状況です。また、2010年ほど多くはなく、2009年とほぼ同等で、例年並みといったところでしょうか?
9時45分。来賓・関係者を乗せたシャトルバスは、国内自動車道でもっとも標高の高い、標高2702メートルの畳平に到着です。
【畳平 − 乗鞍岳山開き祭】
10時の畳平の気温は3℃。雨とともに周囲には霧がかかっています。そのため、屋外に出ている方はほとんどありません。
天候の悪い日は、シャトルバスや観光バスを降り立った方々が一斉に逃げ込むのは畳平バスターミナル。入口を入って正面にある軽食コーナーでは、今日も笑顔の絶えないスタッフの姿が...久しぶりの再会ですが、お元気そうで何よりです。
今シーズンはゴールデンウィーク明けから準備に入っています。畳平周辺の積雪の多いこの時期は、水源地が雪の中に閉ざされていて、軽食コーナーで必要な飲料水も山麓から荷揚げしなければならず、節水に心がけなければなりません。また、ターミナル内の発電機も本稼動状態ではないなど、不完全な状態でもなんとか営業にこぎつけたようです。
10時から安全祈願神事が始まりました。例年、畳平バスターミナル前で行われますが、悪天候のため、バスターミナル横にある乗鞍本宮内で、関係者のみの参列で執り行われました。
来賓・関係者の方々の玉串奉奠が続きます。
乗鞍本宮の拝殿には参列者で満員。本殿・拝殿ともに半年以上も雪の中に閉ざされていたとは思えないほど綺麗な状態です。
そして最後に宮司より乾杯の音頭。
「今日は生憎の雨降りではありますが、標高2700メートルのこの地としては「穏やかな雨降り」であります。昨日の高山は27℃と本州の中でもっとも高い気温を記録したと報道で行ってました。自然には逆らえませんが今年も安全にノリクラが運営できますよう皆さんとお祈りをしながら乾杯したいと思います。」
これをもって、安全祈願神事が無事終了いたしました。
畳平バスターミナル − 乗鞍岳山開き祭 | 一般参加者 − 首を長くして待っていました |
安全祈願神事に続き、会場を畳平バスターミナルに移して乗鞍岳山開き祭が始まります。毎年、山開き祭りに参加される海外からの参加者の方々も首を長くして待っていらっしゃいます。
まず、乗鞍自動車適正化協議会会長からの挨拶から始まります。
おはようございます。待ちに待った乗鞍岳の山開きということで、関係の皆様には早朝からそして、「穏やかな雨」の中ご出席いただきまして御礼申し上げます。また、国においては環境省・林野庁の方々には日ごろからご支援・ご指導を賜っておりますことをお礼申し上げます。
(...中略)いろいろな神事・テープカットなどをさせてていただきましたけれども、この国民の財産である・世界の人々の財産である乗鞍岳をこれから後世の皆様方にもきちっと保存をして守って、そして、伝えていくという役割を果たしながら、かつ、国民の皆様方に楽しんでいただける、利用していただける、そして、勉強していただける、そういう場所としても活用していただく、この二面性を私たち今生きているものが果たしていかなければいけないと考えています。
今年はそのような意味で適正化協議会でも、いったいこの乗鞍岳に年間どれくらいのお客様が入ればいいのか、そういう適正な人員を一度みんなで考えるよう...さらには、今環境を守るためにいろいろ技術が発達して電気自動車というようなものが出てきている。じゃ〜電気自動車がこの乗鞍の山に上がってくるのに果たしてその能力があるのか、あるいは電気自動車というものを入れることによって、これまでの排気ガスというもののいろんな公害等との影響を調べてみよう...いろんな面で今年は実験、あるいは皆様方と知恵を出し合って、冒頭申し上げましたようこのような国民の財産である国立公園をきちっと守って活用していこうという活動もさせていただこうと思っています。(後略...)
このあと、来賓の方々の祝辞、及び、祝電の紹介などがありました。
樽開き | 振舞い酒 |
そして、待ちに待った樽開き。
昨年は震災などの影響から、例年よりも2万人ほど少ない18万人ほどの来場者数にとどまりましたが、今年は20万人を見込んでいます。
【昨年の今ごろは?】
5月14日(土)は、昨晩から続く強めの風が吹き抜ける朝から始まります。雲量の多い青空は次第に雲の勢力が優勢となり、徐々に天候は悪化傾向になって行きます。それでも春山バスの第一便は5台が運行され、多くの方が訪れた三本滝レストハウス付近は朝の賑わいが広がっていました。
ひどい雪解けのため、先週まではかもしかゲレンデまで問題なく滑走下山できたツアーコースも切り株・ブッシュがかなり多くなってきて、そろそろツアーコースでの滑走下山のタイムリミットが近くなってきています。
ツアーコースより上部の位ヶ原は、それまで白一色だった雪原が人の背丈近くまで大きくなったハイマツ帯が至るところに広がるようになり、この激変ぶりには驚かされるものです。そんな状況でも、午後になると小雪が舞い、気温はマイナス2℃まで低下するほど。春と冬が交互に訪れるこの時期ならでは状況を見せ付けられた一日でした。
そして、5月15日(日)は、乗鞍スカイライン開通日、朝からよい天候に恵まれ、ほおのき平駐車場での乗鞍登山バス出発式に引き続き、畳平で乗鞍岳山開き祭が開催されました。朝からの快晴は時間とともに少しずつ薄雲が広がる状況を見せましたが、それでも多くのスキーヤー・ボーダーが稜線を目指して登って行く様子が見られ、適度に柔らかな春スキー特有のバーンコンディションを思う存分味わうことができた一日でした。
<編集後記>
今回の乗鞍スカイライン初日は生憎の天候となってしまいました。今年は「今後のマイカー規制のあり方」を検討する目的で、乗鞍スカイラインに電気自動車(EV)の乗り入れ実験が計画されています。この実験は「地域振興のための実験・研究」で、マイカー規制を緩和することを前提としたものではないとのことです。
電気自動車は大気・騒音環境に負荷をかけない乗り物ですが、マイカー規制後、乗鞍の自然環境が復元しつつあるのは、自動車による大気汚染だけではありません。マイカー規制前は約42万人の入山者が推定されていて、現在は約20万人と半減しています。マイカー規制後も入山者の大半は山頂方面や畳平周辺など限られた地域に集中していることが推定され、入山者数半減が、環境への人的負荷軽減につながっている点を見逃してはなりません。
また、現在、一般観光客の大半は、シャトルバスや観光バスで畳平に入山していて、個人が持ち込む物品が必然的に制限される点が、ゴミの散乱軽減つながっていることと考えられます。また、さらにはペットの持込ができない所もマイカー規制前との大きな違いです。
乗り物をクリーンにしても、訪れる方々すべてに高い環境意識を持って行動していただくのはなかなか難しい点があります。また、畳平や乗鞍山頂一帯といった狭い地域ではなく、ノリクラを取り巻く山麓の環境も一帯になって考えなければならないことは、シカ・イノシシ・サルといった野生生物の侵入問題の解決には至りません。
自然環境と観光活動を天秤にかけても、必ず自然環境に傾くように天秤を操らなければならないでしょう。それは、ノリクラという自然環境があるからこそ観光産業が成り立っているからです。ノリクラから自然環境がなくなれば、そこに訪れる観光客もいなくなってしまうことを忘れてはなりません。単に乗鞍スカイラインの償還期限が経過したからマイカー規制に踏み切ったのではないということを忘れてはなりません。
■ご注意■
今回の取材記事は、バックカントリースキー・ボードの経験のある方を対象としたもので、初めての方へのイントロダクションという位置づけの内容ではありません。
初めてツアーコースなどにトライしてみたい方は、経験者と同行するか、ガイドツアーに参加されることをお勧めします。(乗鞍高原などにはガイドが同行するツアーを企画する会社がありますのでお問い合わせください。)
Copyright (C) 乗鞍大雪渓WebSite |
|