ノリクラ 雪渓カレンダー
Vol.9(2012/07/06〜07) @
7月に入り、梅雨前線が本格的に本州に横たわるようになると、梅雨らしい天候が続くようになります。
今回は7月8日(日)に開催された第9回乗鞍スカイラインサイクルヒルクライムの取材のため、一日前倒しして通常の取材を行いました。
取材一日目の7月6日(金)は、まだ雨の降っていない曇り空の朝を迎えます。観光センターから望む乗鞍の峰々もはっきりとしていて、天候の崩れを予感させるような雰囲気ではありません。しかし、7時を回ると稜線の向こう側からモクモクと雲が流れ込んできて、剣ヶ峰などの主要な峰々が一気に雲に押しつぶれて行く様子を眺めていると、ポツリポツリと雨が降り始め、8時ごろには本格的な降り方。9時の大雪渓の気温は8℃。視界は50〜100メートルほどしかなく、西または北からの強い風に横殴りの雨に見舞われています。それでも、この雨の中でスキーキャンプに取り組む方々の様子もあり、正午前に一時的に位ヶ原方面まで視界が抜けると、新緑の色彩に「緑が美しい!」と、感動される様子もありました。しかし、それもつかの間で、午後にはさらに激しい降り方に見舞われ、畳平では突風ともいえるほどの状況。お花畑に咲き始めたハクサンイチゲが否応なく暴風雨に翻弄されていました。
取材二日目の7月7日(土)は、昨晩の激しい雨が収まって小雨の朝を迎えます。週末を迎えているにもかかわらず、観光センター前駐車場には数台の車しかなく、シャトルバスに乗車する方も一便にに2〜3名という平日以下の状況です。そして、時間と共に小雨は収まり、大雪渓付近は濃霧に覆われているものの、レインウェアがなくてもよい状態でした。今日の大雪渓はシャトルバスでお越しになる方よりも、マイクロバスでやってくるグループが多く、ポールをセットしたり、基礎キャンプをされる方々などでにぎわいました。
午後からは、明日開催される乗鞍スカイラインサイクルヒルクライムの大会会場である、岐阜県高山市丹生川町の殿下平総合交流ターミナルに向かいます。午後の乗鞍高原では晴れ間が見られるものの、安房トンネルを越えて平湯温泉街に入った途端に土砂降りの天候。選手の方々は傘を片手に自転車を車検場に持ち込む様子がありました。また、昨晩の雨で乗鞍スカイラインは終日通行止め。明日の大会も乗鞍スカイラインの通行止めが解除されない限りは開催できず、選手も大会関係者も空ばかりを見上げる状況でした。
そして、7月8日(日)は、明け方まで降り続いた小雨が収まり、乗鞍スカイラインの通行止めも解除されたことから、乗鞍スカイラインサイクルヒルクライムは予定通り開催されました。濃霧の続いたスタート地点からは想像できないほどよい天候となったゴールの畳平には、選手が次々にフィニッシュを決め、無事に大会を終えることができました。なお、第9回乗鞍スカイラインサイクルヒルクライムの特集は、7月20日頃掲載を予定しています。
【7月6日(金)、観光センター前駐車場】
こちらは早朝5時30分の観光センター前駐車場。
これから天候は悪化するとの天気予報ですが、ご覧のようにノリクラの峰々ははっきりと確認できます。
夜明け前にお湿り程度の雨が降りました。気温は14℃。暑くも寒くもない状況です。7月8日(日)に開催される第9回乗鞍スカイラインサイクルヒルクライムの取材のため、今回は一日前倒しして普段の取材を行いました。今日は平日のため、訪れる方が全くありません。やはり、梅雨明けしないと本格的な賑わいは訪れない様子があります。
関東甲信地方の梅雨明けの平年値は7月21日。例年、海の日の前後と重なり、三連休直後に梅雨明けすることもあります。
今年の海の日は7月16日(月)。例年よりも一週間早いため、とても梅雨明けは期待できそうにありません。
7月より乗鞍高原からのシャトルバスも運行が開始されました。6時10分に観光センターを出発する始発便も乗客はゼロ。「昨日は大雪渓・肩の小屋口バス停から冷泉小屋まで歩いて降りましたよ〜」と、おっしゃるこちらの車掌さん。
いつも沿道の様子をしっかりとチェックされていて、乗客のあまり多くないときは、車窓からの風景を詳しくガイドしてくれることもあります。単に目的地まで輸送するだけの手段ではなく、大雪渓に到着するまでの車窓の変化に着目することも乗鞍岳線のシャトルバスには魅力があります。
さて、すでにご案内の通り、富士見沢付近の落石のため、大雪渓・肩の小屋口バス停より先は通行止めの措置がとられています。そのため、シャトルバスも大雪渓・肩の小屋口バス停までの折り返し運行で、ダイヤも通常ダイヤよりも本数の少ない特別ダイヤとなっています。
なお、特別ダイヤが実施されている期間中は、晴天時・降雨時によるダイヤ変更はありません。
シャトルバス始発便が出発してしばらくすると、上空には厚い鉛色の雲が立ち込めるようになって来ました。そして、ノリクラの峰々は稜線の向こう側から覆い寄せる雲に飲み込まれます。その様子はまるで生き物を見ているかのようなダイナミックなものです。
次第にノリクラの輪郭が雲にかき消されるようになって来ました。このあと、天気予報どおりの天候となってゆきます。
【大雪渓までの沿道の風景】
ここからは大雪渓までの沿道の様子をお伝えします。
7月ともなれば、乗鞍高原周辺の新緑はどこもしっかりとした緑になって来ます。
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紅葉直前の様子 2011ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.22(2011/10/08〜09) E |
一週間後、紅葉はピークに 2011ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.23(2011/10/15〜16) E |
これからの時期は緑が濃くなってきて、新緑の頃のような緑の濃淡にが少なくなってきます。しかし、紅葉が始まる数週間前から、緑が徐々に薄くなってきて、10月上旬にはご覧のような紅葉を迎えます。左の画像は、紅葉の見頃を迎える一週間前の様子。葉が部分的に黄色くなっている状態が確認できます。
紅葉は一気に進むように感じられますが、実際には数週間前からその前兆があり、徐々に緑が薄くなって紅葉を迎えるようです。
沿道の木々に注目していると、葉が白く変色している様子に気付くはずです。
こちらはマタタビ(木天寥、マタタビ科マタタビ属)。「猫にマタタビ」で有名な植物です。特有な臭気が猫を恍惚とさせることで知られています。葉に隠れるように花がありますが、雌雄がそろっている両性花と雄花の二種類の花があります。6月から7月にかけて花期を迎えます。花期を迎える頃になると、ご覧のように葉が白化してきますので、シャトルバスの車窓からでも一目瞭然でしょう。
三本滝ゲート − この先マイカー規制 | かもしかゲレンデ |
観光センター前駐車場から7kmほど進んだところになる三本滝ゲート。この先からマイカー規制が始まります。三本滝ゲートをさらに進むとかもしかゲレンデを縫うように車道が横切っています。
かもしかゲレンデに積雪が残っていたのは5月上旬頃まで、雪解け直後は、フキノトウくらいしか自生するものは確認できませんでした。しかし、その時期から二ヶ月も経過して、かなりの草花に覆いつくされています。
ヨツバヒヨドリ | キンポウゲ |
現在、かもしかゲレンデ一面を覆いつくしているのはヨツバヒヨドリ(四葉鵯、キク科フジバカマ属)。背丈はまだ30〜50センチ程度ですが、ヤナギランやゴマナなどと同様に、かもしかゲレンデを藪に近い状態にさせる張本人です。そして、その傍らにはキンポウゲの黄色い花を見つけることができます。
何もないように見える沿道でもよく観察してみると...
ハクサンチドリ | ゴゼンタチバナ |
左はハクサンチドリ(白山千鳥、ラン科ハクサンチドリ属)、右はゴゼンタチバナ(御前橘、ミズキ科ミズキ属)。どちらも今が見頃です。
そして、こちらも見頃迎えている山野草、カラマツソウ(唐松草 、キンポウゲ科カラマツソウ属。)です。新芽が出始めた頃、茎が分岐する部分がお腹のようにぷっくりと膨れているところから、「デッパラ」といわれ、食用にもなります。
よく似た花をつけるにモミジカラマツ(紅葉唐松、キンポウゲ科モミジカラマツ属)があります。自生している地域は、カラマツソウは森林限界以下ですが、モミジカラマツは亜高山帯〜高山帯に分布する高山植物です。
特に大きな違いは葉にあり、モミジカラマツと命名されているだけあって、子供の手のひらほどの大きさの葉に対して、カラマツソウは数センチ程度で、葉の形状にも特徴があります。
こちらは参考までに大雪渓のモミジカラマツの画像をご覧いただきます。花の形状はよく似ていますが。モミジのような大きな葉があり、葉を見ればその違いは一目瞭然でしょう。
こちらは先週もお伝えしたムラサキヤシオツツジ(紫八染躑躅、ツツジ科ツツジ属)。そろそろ、こちらは見頃を終えようとしています。
さて、先週掲載した ノリクラ 雪渓カレンダー 正式版 Vol.8(2012/06/30〜07/01) F で、長年、乗鞍岳線のシャトルバスの車掌を務めていらっしゃる方との会話で、「若い人に『石畳』っていって通用するんでしょうか?」というやり取りをご紹介いたしました。
県道乗鞍岳線(エコーライン)の中で、荒田沢橋を過ぎた27号カーブから冷泉小屋手前の22号カーブまでの区間が最も急勾配で、スリップ防止のため、ヘアピンカーブにはコンクリート舗装され、まるで石畳を走行しているようなひどい振動があったため、このように呼ばれていました。マイカー規制後も、しばらく石畳は現存していて、特に自転車で下山するときは振り落とされてしまうほどのひどい状況でした。現在は、コンクリート舗装の上からアスファルト舗装がされ、自転車での下山もなんら苦労ありませんが、ご覧のように路肩にはかつての「石畳」が残されていて、歴史の一端を感じさせます。
そして、森林限界付近の位ヶ原山荘を越えると...
屋根板方面 − 残雪がほとんどなくなる | ツアーコース入口 − 位ヶ原11号カーブ |
右の画像のように屋根板方面の残雪もほとんどなくなり、この付近の雪景色もそろそろシーズンオフになろうとしています。そして、位ヶ原山荘から約1.5kmほど進んだツアーコース入口付近の11号カーブ付近もご覧のように積雪がなくなり始めています。
こちらは昨年同時期の11号カーブの様子。積雪は明らかに今年のほうが多い様子がわかります。
それでも昨年と同様に、この付近のウラジロナナカマドも白い花をつけています。
さらに進んで7号カーブの位ヶ原お花畑。昨年もまだ残雪がのこっていましたが、今年はそれ以上の積雪です。例年、7月中下旬には位ヶ原お花畑の積雪はなくなりますが、この様子では、8月にずれこむ可能性があります。
5号カーブ | 4号カーブ |
雪の壁が見られるようになるのは、先ほどの7号カーブの位ヶ原お花畑から先で、5号カーブや4号カーブでは人の背丈以上もあります。
こちらは大雪渓駐車場手前の4号カーブの雪の大壁。現在の高さは、先週の6.8メートルから減少して、5.9メートルです。まだまだ、その高さに圧巻させられます。
そして、濃霧と雨の続く大雪渓に到着です。(→ Next)
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