ノリクラ 雪渓カレンダー
Vol.9(2012/07/06〜07) A
【大雪渓に到着】
9時の大雪渓の気温は8℃。濃霧に加えて雨が激しく降っています。風も周期的に強弱を繰り返し、かなり荒れた天候です。
全く訪れる方のない大雪渓にお越しになったのは、毎年、この時期に基礎キャンプを開催されているグループの方々。代表の方とも久しぶりの再会を喜びます。
今日のような天候だと、一般的な判断としては、「悪天候につき、キャンプは開催中止です!」と宣言しても、参加者も十分納得してもらえるものですが、このキャンプだけは、少しばかり状況が違うようです。
メンバー全員が「オフシーズンの大事な時期こそ、このキャンプに参加することが最大の目的!」といわんばかりの雰囲気で、誰もやめようなどと言い出しません。オフシーズンのこの時期にみっちりレッスンを受けて、更なるレベル向上への意欲は人並み以上です。
初めて参加される方もいれば、何度もお越しになる常連の姿もあります。常連の方は、この時期のノリクラの雨降りへの対策はばっちりで、「雨の日はゴム手袋...」が定番のようです。
この時期、積雪のある山が少なくなってきていることもあって、雪上訓練にお越しになる様子も見られます。
ピッケルストップなどの練習にはある程度の斜度も必要で、濃霧の中、雪渓上部へと向かいます。(ただし、冬の綺麗な雪と異なり、砂とハイマツの葉でかなり汚れた状態ですので、ドロドロになる覚悟が必要です...)
そして、7月上旬の週末ですから、この天候でもマイクロバスでお越しになるグループが数組見られました。
その中には、久しぶりにお越しになったかつてのノリクラの常連の様子がありました。マイカー規制が始まってからは全く足が遠のいてしまい、ノリクラの雪渓に再び足を踏み入れるまでに10年近いブランクがありました。
それでもブランク期間よりも、これまでノリクラ通いを続けていた期間のほうが長く、「いや〜、このようにやってきてみれば、もう一度、通い始めてもいいかなぁ〜という気分になりますよ。」と、表情もにこやかです。
かつてのようにマイカーでポールを運び入れることはできなくなり、色々な面で不便があることは確かです。でも、その不便さの中でも、実際にお越しになってみれば、それほどでもないという感覚もあるようです。
【雪渓下部】
ここからは大雪渓下部の様子をお伝えします。
雪渓下端部分は、雪解けが進むと共に車道から離れ始めてきました。車道までの距離は20メートルで、昨年よりもかなり短い状態です。
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先週の大雪渓入口 ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.8(2012/06/30〜07/01) B |
今週の大雪渓入口 下端は先週より3メートル移動 |
大雪渓入口付近の雪解けは、高さで50センチ程度。下端部分は3メートルほど移動しています。
昨年の大雪渓入口 2011ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.9(2011/07/07〜09) C ↓ |
先週の大雪渓入口 ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.8(2012/06/30〜07/01) B ↓ |
こちらは大雪渓入口隣の車道と接する部分。雪渓下端から車道までの距離は7メートルです。昨年は10メートルでしたから、積雪量が若干多い様子がわかります。
2010年の大雪渓入口 2010ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.9(2010/07/10〜11) A |
2009年の大雪渓入口 2009ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.9(2009/07/11) A |
2008年の大雪渓入口 2008ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.9(2008/07/12〜13) A |
2007年の大雪渓入口 2007ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.9(2007/07/07〜08) A |
=今週も過去5年間で最も多い積雪量が続く= |
そして、2010年〜2007年の様子を見ても、今週の積雪量の多い差は一目でわかります。ちなみに雪渓下端から車道までの距離は、2010年が10メートル、2009年が18メートル、2008年が20メートル、2007年が30メートルで、今週の7メートルが最短となり、過去5年間で最も多い積雪量が今週も続いています。
昨年の登山道入口 2011ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.9(2011/07/07〜09) C ↓ |
先週の登山道入口 ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.8(2012/06/30〜07/01) B ↓ |
大雪渓入口から北へ50メートルほどの所に肩の小屋への登山道入口があります。先週からの雪解けは高さ30〜50センチほどで、やや遅めの雪解けです。登山道を示す標識柱の根元まで雪解けがようやく進みました。
2010年の登山道入口 2010ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.9(2010/07/10〜11) A |
2009年の登山道入口 2009ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.9(2009/07/11) A |
2008年の登山道入口 2008ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.9(2008/07/12〜13) A |
2007年の登山道入口 2007ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.9(2007/07/07〜08) A |
こちらも2010年〜2007年の様子をみると、2007年以外はほぼ同じような雪解けで、2007年だけが今年と同じような傾向を示していることがわかります。今後も、2007年と今年の積雪量変化の推移を見て行きたいと思います。
昨年の登山道入口 − 隙間は4メートル 2011ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.9(2011/07/07〜09) C ↓ |
先週の登山道入口 − 隙間はまだない ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.8(2012/06/30〜07/01) B ↓ |
車道との間にようやく隙間ができ始めました。その距離はわずか40センチ。昨年の4メートルの10分の1です。これまで最も積雪の多かった2007年でも1〜1.5メートルの隙間がありましたから、過去5年間で最も多い状態が継続されています。
こちらは大雪渓入口から雪渓上部につながるスキーヤー専用道。ウラジロナナカマドの緑がはっきりしてきました。
ご覧のように若葉の中にはつぼみが見られるようになって来ました。葉の勢いとしては、昨年よりも一週間ほど遅い状況ですが、つぼみの確認できる時期としては、例年並みです。
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昨年の登山道入口付近 2011ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.9(2011/07/07〜09) C |
今週の登山道入口付近 昨年より1〜1.5メートル多い積雪量 |
さて、話を登山道に戻すと、昨年は入口付近から30メートルほどは雪解けが完了していましたが、今年は登山道が全くありません。昨年と比べて、積雪量は1〜1.5メートルほど多い様子がわかります。
この先も登山道が確認できませんので、肩の小屋(剣ヶ峰方面)に向かう場合は、誘導ロープに従って登っていってください。登山道入口からモーグルコースの岩(右の画像の奥に見える岩)付近の積雪は、例年7月下旬頃まで残っています。斜度も比較的あって、雨の日など雪面が硬くなるとアイゼンなどがないと、安全に登って行くことができません。
実際、7月7日(土)は、前日よりも雪面が硬くなり、登山道入口から雪の上を登り始めたものの、途中で断念された登山者の様子もありました。
昨年のモーグルコースの岩 2011ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.9(2011/07/07〜09) C ↓ |
先週のモーグルコースの岩 ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.8(2012/06/30〜07/01) B ↓ |
大雪渓の中で最初に出現する岩があります。7月になるとこの付近にモーグルコースが作成され、多くのスキーヤーが集まることから、モーグルコースの岩と呼称させていただいております。
この一週間の雪解けは1メートル程度で、他のエリアよりもやや雪解けの多い様子が見られます。
2010年のモーグルコースの岩 2010ノリクラ 雪渓カレンダーVol.9(2010/07/10〜11) B |
2009年のモーグルコースの岩 2009 ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.9(2009/07/11) B |
2008年のモーグルコースの岩 2008ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.9(2008/07/12〜13) A |
2007年のモーグルコースの岩 2007ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.9(2007/07/07〜08) C |
=今週は下部は例年以上、上部は2007年と同程度の積雪量(雪渓下端も上部も例年以上)= |
2010年〜2007年と比べると、積雪量の多かった2007年と、ほぼ同じ状態です。2010年も同じような状態ですが、画像下部にはクラックがあって、クラックより下では積雪が1メートル以上少ない状態となっていて、単純に比較することができません。
過去5年間と比べて今週の状況は、下部の雪渓下端部分(車道沿い)では例年以上。上部付近(モーグルコースの岩付近)では2007年並みで、下部のほうが積雪量のやや多い状況ということになります。
雪解けと共にモーグルコースの岩は上下にわたって岩が大きくなり、今後、モーグルコース付近の圧迫するようになってきます。現時点でのモーグルコースの岩の下端から雪渓下端までの距離は130メートルで、最も長かった2010年の128メートルよりも長くなっています。
昨年の石碑の岩 2011ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.9(2011/07/07〜09) C ↓ |
先週の石碑の岩 ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.8(2012/06/30〜07/01) B ↓ |
そして、モーグルコースの岩から南へ約100mほどのところに、大雪渓で二番目に姿をあらわす岩があります。先週からの雪解けは70センチほどで、2007年以降の過去5年間で最も積雪量の多い状態を維持していて、例年と比べて高さ1メートル以上の積雪量の違いがあります。
こちらは毎年定点でお伝えしている石碑の岩にあるチングルマ。先週とほとんど変化が見られませんが、それでもよく観察してみると、新芽がようやく観察できます。例年よりも1〜2週間遅い状態です。
石碑の岩の下部のバーンでは、ご覧のとおり、中央部分の岩がようやく見え始めました。例年よりも一週間遅い状況です。(→ Next)
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