ノリクラ 雪渓カレンダー
Vol.10(2012/07/14〜15) @
この週末は海の日を迎えて、三連休となりました。しかし、例年よりも一週間早い三連休のため、梅雨末期のの芳しくない天候が続いたことに加えて、小中学校などでは、まだ、夏休みに入っていないこともあり、普段の週末とさほど変わらない状況でした。
取材一日目の7月14日(土)は、明け方と夕方に雨に見舞われました。大雪渓エリアの日中は終始濃霧に包まれます。そして、気温は一日を通して8℃前後とほとんど変わらない肌寒い一日でした。大雪渓にお越しになるスキーヤー・ボーダーの方々は、寒さに背中を丸める様子もあるほどです。稜線を超えて大雪渓に流れ込む濃霧は、午後になるとその流れがさらに足早となり、午前中は霧の抜けていた時間帯が長かったものの、午後はほとんど濃霧の中。それでも、雲間に見られる山麓の乗鞍高原では、日差しが差し込んでいる様子もあって、天候が悪いのは大雪渓エリアから山頂にかけてのごく一部だったようです。
取材二日目の7月15日(日)は、昨日と同様芳しくない天候の一日です。それでも三連休中日とあって、早朝から観光センター前駐車場には90台近い車がお越しになっています。雨の降り続く朝ですが、シャトルバスは長野県側・岐阜県側ともに始発便からAダイヤで運行がはじまります。しかし、その後、雨の降り方がひどくなり、乗鞍スカイラインは雨量規制のため、8時から通行止め。そのため、長野県側のシャトルバスは、畳平への乗り入れができないことから、ひとつ手前の大雪渓・肩の小屋バス停での折り返し運行となりました。朝はかなり激しい風雨と濃霧でしたが、それでも各便ともに多くの登山者が大雪渓にお越しになります。また、大雪渓から肩の小屋までの登山道の大半が雪の上を歩く必要がありますが、雪の上を歩くことなど想定していない登山者が大半で、雪渓の上を四苦八苦する様子がありました。
午後になって、雨は収まるものの、濃霧は続きます。時折、霧が途切れる瞬間が見られましたが、それ以上の天候の回復はなく、回復を待ちきれないヒルクライマーが続々と大雪渓前を通過してゆく様子があり、夏の訪れをも感じさせてくれました。
【7月14日(土)、観光センター前駐車場】
こちらは早朝5時30分の観光センター前駐車場。
気温14℃ − しかし生暖かい空気に包まれる | 低く垂れ込める雲にノリクラは飲み込まれている |
気温は14℃。ご覧のとおりの曇り空の朝です。そして、流れる空気には気温以上の生暖かさ・暑さといったものを感じる状況です。低く垂れ込める雲の中にノリクラの峰々が飲み込まれていて、山麓の観光センターからは確認できません。
県道乗鞍岳線(エコーライン)の大雪渓〜県境は、冬季閉鎖が解除された7月1日以降も、落石のため通行止めとなっていました。しかし、昨日(7月13日(金))からこの区間も通行できるようになって全面開通しました。畳平への乗り入れが可能になったことから、タクシー運転手の方々も、朝早くからお越しになっています。
そして、シャトルバスの始発便が到着する前から業務開始です。
誰よりも早く山頂に向かいたいという乗客を乗せて即出発です。タクシーには定刻はありませんので、車窓からの周辺散策をゆっくり楽しみたい方から、朝一番に登山口に向かいたい方など、様々なニーズに対応できるところにメリットがあるでしょう。
そして、こちらはシャトルバス。先ほど申し上げたように県道乗鞍岳線が全面開通したことから、シャトルバス畳平まで運行されることになり、ダイヤも一部の時間帯を除いて毎時一便の通常ダイヤへと戻りました。
シャトルバス専用乗り場のテント | 「ノリクラは何もないところがいいですねぇ〜。」 |
こちらは始発便を待つシャトルバス専用乗り場のテント。一旦収まった雨が再び降り始め、乗客の方はテントの中に集まっています。三連休初日ですが、この天候のため訪れる方はやや少なめ。そんな中、この時期には毎年お越しになるスキーヤーの親子の方にお会いしました。
「ノリクラは何もないところがいいですねぇ〜。」 マイカー規制前からお越しになっているとのことですが、その当時と比べても、おそらくほとんど変わっていないと感じられると思います。
時代の変化と共に追随していくべき部分と、残さなければならない本質的な部分を、より明確に発掘することを求められる時代ですが、蔵の中に眠っているお宝のような存在が、ノリクラなのかもしれません。
6時10分発のシャトルバス始発便が到着します。
今日の始発便には20名ほどの方が乗車されました。その大半が山頂登山を目指す様子ですが、これから夏山シーズンを迎えると、始発便は後続の便と比べても、登山の方が大半を占めるようになってきます。
今日はどの便も社員の方がお見送りする様子がありました。また、今年は系列会社の乗務員・車両も導入するなど、効率的な運営を実施されているようです。
雲間に青空がのぞく − 天候は回復傾向へ | 青空に期待を寄せてヒルクライムに出発 |
シャトルバス始発便が出発した後、先ほどまで降っていた雨が収まり、観光センター上空には雲間に青空がのぞくまでに天候が回復して来ました。天候の行方を思案しているのは、登山者ばかりではありません。雲間の青空に期待を寄せながら、自転車を組み立てて、ヒルクライムに出発です。
【大雪渓までの沿道の風景】
ここからは大雪渓までの沿道の様子をお伝えします。
こちらはアヤメ(菖蒲、綾目、文目、アヤメ科アヤメ属)。人工的に手を施されているわけではありませんので、ご覧のように点在して咲いています。天然のカキツバタでも群生している様子はあまりなく、「○○菖蒲園」といったように遠目からでも紫一色に染まる様子ではありません。そのため、その存在にはなかなか気付かないものです。
アヤメとカキツバタとハナショウブは、区別の付きにくいものです。アヤメやカキツバタはウサギの耳のようにまっすぐ伸びる3枚の花弁(内花被)があり、外側に大きく3つ広がる花弁が見られます。この大きな花弁にある綾目模様があるのがアヤメ。アヤメの模様部分に相当する箇所が白い筋だけのものがカキツバタです。その大きな花弁の上に、一本の雄しべ確認できます。その雄しべの上にあるのが花柱です。
アヤメの自生する場所は水辺ではありませんが、ハナショウブは水辺に自生しているので、その点から区別ができます。また、古代から江戸時代まではショウブのことをアヤメのことを差していたようです。
沿道の道端。ちょうどガードロープと同じ高さくらいに眼を移すと、ちょっと変わった形の花が咲いていることに気付くはずです。
ヤマオダマキ | つぼみの頃から外皮が変形 これが開いて花びらのように見える(実際は萼) |
こちらはヤマオダマキ(山苧環、キンポウゲ科 オダマキ属)。苧環(おだまき − 紡いだ麻糸を管状の巻き上げたもの)に、形状が似ているところからこのように呼ばれています。特徴的な形状の部分は、実際は萼(がく)で、右の画像では、開花する前のつぼみの外皮に、すでにその特徴的な形状が見られます。この後、開花するとつぼみの外皮が萼になって行きますから、特徴的な花びらに見られる器官は萼で、実際の花はその内側あることが確認できます。
器官の一部が管状になったものを「距(きょ)」と呼びますが、ヤマオダマキは、萼片にそれぞれ長い管状の距があり、特徴的な形状を見せてくれます。
三本滝ゲート | 斜面からは雨水が流れる |
観光センターから約7kmほどのところにある三本滝ゲート。マイカー規制はここから実施されます。7月12日(木)から7月13日(金)にかけて、まとまった雨があり、斜面からは雨水が流れています。
かもしかゲレンデ | 数多くの山野草が咲き始める |
こちらは県道乗鞍岳線が横切るかもしかゲレンデ。比較的日当たりもよい場所のため、数多くの山野草を見つけることができます。
小さいながらも、緑の中によく目立つのはベニバナイチヤクソウ(紅花一薬草、イチヤクソウ科イチヤクソウ属)。そろそろ花期が終わりに近づいてきているようです。
秋に刈り取った全草が民間薬に使用され、その基本種のイチヤクソウには、脚気・利尿・生理不順・避妊など多様な効能があるとされています。イチヤクソウの「イチヤク」とは、「一薬多効」の意味。こちらのベニバナイチヤクソウにも脚気・利尿の効能があるとのことです。
ミヤママタタビ | ピンクに変化するのが特徴 |
そして、葉が白化しているのは、先週もお伝えしたマタタビ。よく見ると、白ではなくピンク色に変化しているようがわかります。マタタビの近種であるミヤママタタビ(深山木天蓼、マタタビ科マタタビ属)。
ミヤママタタビは、マタタビのように猫をひきつける成分はないとされています。
三連休を迎えたこともあって、今日も多くのヒルクライマーがやってきます。「いつもは乗鞍スカイラインのヒルクライムにやってくることが多いのですが、今日は県道乗鞍岳線が全線開通したこともあってやってきました。」
カメラを背中に提げてやってきました。そして、小さな滝を見つけてシャッターを切ります。今日は自分だけの撮影ポイントを探しながらのヒルクライムです。
毎週同じように見られる緑の回廊も、一週間ごとに色々な変化を教えてくれます。
さて、先週まで綺麗な紅色を見せてくれたムラサキヤシオツツジ。ご覧のようにもうひとつもありません。落下した花弁が一つだけ残り、そこにムラサキヤシオツツジが咲いていて証を示しています。
ムラサキヤシオツツジの花弁が落ちていた足元に眼を移すと、そこにはマイヅルソウ(舞鶴草、ユリ科マイヅルソウ属)が可憐な花をつけています。
沿道に繰り広げられるそんな小さな変化を楽しめるのも、ヒルクライムの楽しさの一つです。
そして、標高2350メートルにある位ヶ原山荘を越えると...
森林限界を超えた沿道の風景は一変して、ロケーションの広がりを感じさせてくれるものになります。
こちらは位ヶ原山荘から約1.5kmのところにあるツアーコース入口、11号カーブ。
昨年のツアーコース入口 2011ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.10(2011/07/14〜15) @ |
先週のツアーコース入口 ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.9(2012/07/06〜07) @ |
先週(右画像)と比べてかなり雪解けが進んでいる様子がわかります。大雪渓の積雪状況は次のページよりお伝えしますが、今週はどのエリアもかなりの雪解けが見られます。そのため、先週までは昨年よりもかなり多い積雪が見られたものの、今週はあまり昨年と変わりない状況となってきました。
さらに進んで7号カーブの位ヶ原お花畑。昨年もまだ残雪がのこっていましたが、今年はそれ以上の積雪です。例年、7月中下旬には位ヶ原お花畑の積雪はなくなりますが、この様子では、8月にずれこむ可能性があります。
5号カーブ | 4号カーブ |
雪の壁が見られるようになるのは、先ほどの7号カーブの位ヶ原お花畑から先で、5号カーブや4号カーブでは人の背丈以上もあります。
雪の大壁(4号カーブ) −現在、5メートル | 大雪渓に到着 |
大雪渓駐車場手前の4号カーブの雪の大壁では、まだ5メートルの雪の壁が見られます。そんな雪の大壁を眺めながら大雪渓に到着です。(→ Next)
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