ノリクラ 雪渓カレンダー
Vol.11(2012/07/21〜22) @
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7月17日(火)に、四国から関東甲信地方まで一気に梅雨明けを迎えました。その後は連日のように猛暑が続きましたが、週末になって再び梅雨空が広がり、生憎の週末となってしまいました。
取材一日目の7月21日(土)は、朝一番は少しばかり青空が見られて一瞬の期待感もありましたが、8時ごろから断続的に雨が降り、大雪渓エリアは周期的に濃霧のかかる状況。生憎の天候に大雪渓にお越しになるスキーヤーも少なく、大雪渓・肩の小屋口バス停に降り立つ方は、登山者の方が大半の状況でした。シャトルバスは岐阜県側・長野県側ともに始発便からAダイヤの通常運行が始まりましたが、岐阜県側の乗鞍スカイラインは正午過ぎに24時間連続雨量が規制値を超えたため、12時40分から通行止めとなり、下りのシャトルバスは、岐阜県側が13時50分便、長野県側が14時05分便で運休となりました。突然の運休で、大雪渓に滞在していたスキーヤー・ボーダーも、運休直前のシャトルバスに急遽全員が乗車しなければならない状況でした。天候は午後になっても、回復する傾向を見せず、梅雨明けなんて言葉がまったく信じられない一日でした。
取材二日目の7月22日(日)は、昨日以上の悪天候でした。昨日午後から雨量規制通行止めとなった乗鞍スカイラインは、通行規制が解除され、シャトルバスは、長野県側・岐阜県側ともに通常通りのAダイヤで始発便から運行が始まりました。乗鞍高原では、早朝の小雨が8時を回るころから激しい土砂降りになり、30分ほどで収まってきたものの、その後は降ったり止んだりを繰り返す状況です。上部の大雪渓エリアでも、山頂まではっきりと視界の効く状態があったかと思うと、稜線を超えて流れ込んでくる濃霧に一気に包まれ、さらに雨が降る周期を繰り返します。そんな状況でも、ヒルクライマーの方々が、大雪渓前を頻繁に通過して行き、8勝ち26日(日)開催の全日本マウンテンサイクリングin乗鞍まで、あと一ヶ月と迫り、トレーニングの追い込みをされる様子もありました。午後になると空が明るくなって青空がのぞき始めますが、その後、再び濃霧と雨。まるで猫の目のような天候の一日でした。
【7月21日(土)、観光センター前駐車場】
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観光センター前駐車場 |
こちらは早朝5時30分の観光センター前駐車場。
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ノリクラの峰々 − 水墨画のような構図 |
昨日から降り続いた雨は収まり、現在の天候は曇です。時折、雲間に青空がのぞき、ご覧のようにノリクラの峰々もはっきりと見られる状態。そのノリクラを掠めるように雲がかかっていて、水墨画のような構図を見せています。
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タクシー乗り場 |
朝一番から井戸端会議を繰り広げているのはタクシーの運転手の方々...
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「今朝のノリクラ、雲の雰囲気いいね」 | 「コマクサ、見たかい?」 |
水墨画のようなノリクラを指して、「今朝はノリクラがいいねぇ〜。あの雲の雰囲気がいいじゃない!」とか、「ほら〜、桔梗ヶ原の向こうのコマクサ、見に行ったかい?」と、話題はノリクラのことが中心。
実は、このように運転手が集まって話をするのは、朝一番のこの時間しかありません。お客さんを乗せると、それぞれのタクシーは三々五々となって、一日の業務に赴くわけです。ですから、「井戸端会議」といっても、重要な情報交換の場なんです。
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シャトルバス乗り場 |
そして、こちらはシャトルバス乗り場。登山に向かう方、夏スキーに向かう方々などがテントに集まっています。
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6時10分発の始発便が到着して...
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トランクに搬入 | 改札 |
スキーなどの荷物はトランクに搬入して乗車開始です。
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シャトルバス回数券 −14000円(大人用12枚綴り) |
さて、こちらの方が手に持っているのは、シャトルバス回数券。今年から販売が開始されました。大人用12枚綴りで14000円。10月31日までのシーズン中は毎日利用可能で、往路・復路の区別はありません。また、複数人での利用も可能です。1枚あたり1167円と往復券よりもおトクですから、グループでお越しになった場合、足しげくノリクラに通われる方にはオススメです。
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シャトルバス回数券 − リピーターを増やす取り組みは今後も必要 |
往復券の場合、発券枚数のカウントだけでは、待ち人数を正確に把握することができなくなり、運営上に工夫が必要ですが、シャトルバス利用者へのサービスという点では一歩前進でしょう。
シャトルバス利用者の方々に、ノリクラのリピーターになってもらうための取り組みは、今後とぜひ取り組んでもらいたいものです。
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それでは、大雪渓に向けて出発です。
【大雪渓までの沿道の風景】
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ここからは大雪渓までの沿道の様子をお伝えします。
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先週のアヤメの場所には別の花が咲く |
さて、先週咲いていてアヤメを確認しようとのぞいてみると、そこにはもうアヤメはありません。でも、別の花が咲いています。
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ウツボグサ |
こちらはウツボグサ(空穂草、靫草、別名:夏枯草、シソ科ウツボグサ属)。花が終わった後の花穂が、矢を入れる靫(うつぼ)に似ているところから命名されています。特に珍しい山野草ではなく、平地の道端など日本各地で見られる植物です。
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もう一つ、よく似た植物がこの周辺で見られます。
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クルマバナ | 花が車輪のスポークのように策 |
こちらはクルマバナ(車花、シソ科トウバナ属)、自転車のホイールを想像していただいた上でご覧になると合点がいく部分もあるかと思います。花が放射状に咲く様子が車輪のスポークに相当します。
先ほどのウツボグサもシソ科の植物でしたが、こちらのクルマバナも茎の断面が丸ではなく四角です。折ってみなくても茎を触るだけで確認できます。
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三本滝ゲート | かもしかゲレンデ |
観光センターから約7kmほどのところにある三本滝ゲート。マイカー規制はここから実施されます。そして、車道はかもしかゲレンデを横切ります。この先はご覧のように濃霧に見舞われます。
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一面にヨツバヒヨドリ |
日当たりのよいかもしかゲレンデでは、一面にヨツバヒヨドリ(四葉鵯、キク科フジバカマ属)が広がっています。
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ヨツバヒヨドリ − ヨツバといえども三枚もある(右画像) |
左の画像のように四枚の葉が輪生するので「ヨツバ...」と呼ばれますが、実際には、右の画像のように三枚輪生のものもあれば、五枚輪生のものもあり、必ずしも四葉だけではありません。
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そしてさらに進んで、沿道をよく見てみると...
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ニッコウキスゲ − 花は一日しか持たない(一日花) |
こちらはニッコウキスゲ(日光黄菅(別名:禅庭花)、ユリ科ワスレグサ属)。山地から亜高山帯までの高原でみられる多年草。日本全国の夏の高原風景を彩る代表的な高山植物といえるものです。ただ、近年はシカによる食害が問題視されていて、高原に広く分布するニッコウキスゲを保護する動きもあります。
「ハクサンチドリ」や「キタダケソウ」など、原産地名(基準標本)が名称になっている高山植物は数多く存在します。ニッコウキスゲに関しては、日光が原産地というわけではなさそうです。
ニッコウキスゲはユリ科ワスレグサ属で、忘れ草は朝咲いて夕方には萎んでしまう一日花。属名の「Hemerocallis」も「一日美しい」という意味で、ニッコウキスゲも一日で花が終わってしまいます。
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取材一日目のニッコウキスゲ (7月21日(土)) | |
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取材二日目のニッコウキスゲ (7月22日(日)) |
こちらの二組の画像は、上段が7月21日(土)に撮影したものと、下段が同じ箇所を翌日(7月22日(日)に撮影したもの。全く同じように見えますが、よく見ると違いがわかります。
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一日目 − 左はつぼみ、右が開花 | 二日目 − 左は開花、右はしぼむ |
花の部分だけを対比してみます。このニッコウキスゲには二つのつぼみと花が付いています。左画像の一日目では、右手前の花が咲いていて左奥がまだつぼみの状態です。そして、翌日の右画像では、右側はしぼんでいて左側が咲いています。
【二つの花の二日間の推移】 |
左の花 | 右の花 | |
@ 7月21日(土) | つぼみ | 開花 |
↓ | ↓ | |
A 7月22日(日) | 開花 | しぼむ |
⇒ 一日花であることが良くわかる推移 |
つまり、右の花は一日目に咲いて二日にはもうしぼんでしまい、左の花は一日目はまだつぼみで二日目に咲きました。この推移から一日花であることがよくわかります。
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一日目 | 二日目 | |
=同じ位置に咲いていても別の花= |
同じ位置に何日も咲いているように見られますが、実際はこのような変化を見せていて、ニッコウキスゲのはかない一日を垣間見ることができます。
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紅葉スポットの28号カーブ付近 |
さて、この付近は紅葉の時期を迎えると、ウラジロナナカマドやダケカンバなどの赤や黄色の回廊が続く、紅葉のスポットです。
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ミネカエデ − 赤い実ができる |
こちらは紅葉の時期を迎えると黄色く色づくミネカエデ。7月中下旬ですから、まだ紅葉の時期ではありません。よく見ると、赤い実ができています。やや小振りなので見逃してしまう可能性がありますが、シャトルバスの車窓からでも十分楽しめます。
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時折スコール − びしょ濡れでヒルクライム |
雨はさらにひどくなり、時折、スコールに近い降り方に...それでも、ヒルクライムに挑む方々の様子が絶え間なく続いて行きます。
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そして、森林限界付近の位ヶ原山荘を越えると...
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屋根板 − 残雪はほぼなくなる |
濃霧がさらにひどくなってきます。屋根周辺の積雪は、もうほとんどありません。
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11号カーブ、ツアーコース入口 |
こちらは位ヶ原山荘から約1.5kmのところにあるツアーコース入口、11号カーブ。ここからは高天ヶ原と剣ヶ峰の二つのピークが左右に綺麗に並ぶロケーションですが、ご覧のとおり、その姿は全く確認できません。
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昨年の位ヶ原お花畑 2011ノリクラ 雪渓カレンダーVol.11(2011/07/21〜22) @ |
今週の位ヶ原お花畑 昨年とほぼ同じかやや少ない積雪 |
こちらは7号カーブ付近の位ヶ原お花畑。先週までは昨年以上の積雪でしたが、ほぼ同等かやや少ない状態になっています。
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位ヶ原お花畑 − 雪解け直後から高山植物の新芽 |
雪解けが終了した箇所をよく見ると、ミヤマキンバイやチングルマなどの芽吹きが見られます。グリーンシーズンの短い高山植物は、雪解けが終了するのと同時に、急速に成長を始めます。
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昨年の5号カーブ 2011ノリクラ 雪渓カレンダーVol.11(2011/07/21〜22) @ |
今週の5号カーブ 昨年以上の積雪 |
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昨年の4号カーブ 2011ノリクラ 雪渓カレンダーVol.11(2011/07/21〜22) @ |
今週の4号カーブ 昨年以上の積雪 |
7号カーブの位ヶ原お花畑と異なり、宝徳霊神バス停のある5号カーブや、沿道上で最も雪の壁の高い4号カーブでは、昨年以上の様子が今週も続いています。
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雪の大壁(4号カーブ) − 現在、3.8メートル |
現在の4号カーブの積雪は3.8メートル。先週の5メートルから1.2メートルの雪解けです。おそらく、次週末にはこの雪壁もほとんどなくなることと考えられます。
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そして、大雪渓に到着です。(→ Next)
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