ノリクラ 雪渓カレンダー
Vol.15(2012/08/16〜19) @
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お盆休み後半を迎えました。お盆をはさんだ前後の1週間のお休みを見ると、ノリクラ雪渓カレンダーVol.14(2012/08/11〜13) でお伝えしたように、お盆休み前半は生憎の天候が続きました。しかし、8月16日(木)以降のお盆休み後半は、直前の天気予報で雨マークが並んでいても、当日になると良い天候に恵まれることがあり、そんな天気予報に翻弄されて訪れることを躊躇した観光客の方も多かったのではないかと考えられます。そのため、良い天候の割には訪れる方は少なめであったように感じられます。
今回は8月16日(木)から8月19日(日)までの4日間の様子をお送りいたしますが、8月16日(木)〜18日(金)の取材内容をメインにお伝えいたします。
取材一日目の8月16日(木)は、きれいな青空の朝から始まります。昨日まで天候が芳しくなかったせいもあって、今日はたくさんの人が訪れ、観光センター前駐車場は8時30分には満車になるほど。山麓は良い天候だったものの、山頂付近は絶えず霧がかかり、早朝7時の段階では、標高2780メートルの肩の小屋周辺は霧に包まれた状態でした。剣ヶ峰山頂付近は西からの風が横殴り状態となり、霧雨に濡れてしまうほど。この天候も11時過ぎには雲がなくなり、山麓の絶景を雲間から一気に開けるようになると、訪れた方々が一様にカメラを取り出す様子がありました。午後になるときれいな青空に真っ白な夏雲が浮かぶようになり、そんな中をたくさんのヒルクライマーが訪れる様子が続きました。
取材二日目の8月17日(金)は、鰯雲の広がるきれいな青空の朝を迎えます。昨日よりもお越しになる来場者数が幾分少なく、若干さびしい感覚をも感じます。きれいな青空に力強い朝日が昇るようになると、夏山特有の天候の変化がスタートを切ります。そして、青空はものの1時間ほどで雲が沸きあがり、日差しがさえぎられるようになります。午前中の大雪渓付近は絶えず山麓から沸きあがる雲に包まれ、時折、視界が奪われる状態となります。午後になって、雷鳴が絶えず響くようになり、15時ごろにはややまとまった雨降りがあり、今日はひどい雷雨・夕立ではありませんでしたが、典型的な夏山の天候の変化を体験した一日でした。しかし、この時の乗鞍高原はひどい土砂降りで、山麓に垂れ込める雲の上にあった大雪渓付近ではそんな様子をうかがい知ることもできませんでした。
取材三日目の8月18日(土)も、きれいに広がる青空から朝一番を迎えます。ただ、昨日の段階では雨の予報が出ていたこともあって、観光センター前駐車場にお越しになっているマイカーは、昨日よりもさらに少ない状況です。力強い太陽ときれいな青空から始まった一日は、もう夏山特有の天候へとスタートが切られたと同然で、8時過ぎにはモクモクとした湧き上がり、お昼前には雷鳴が鳴り響きます。正午を過ぎると大雪渓には急激な雲の流れ込みと、16℃あった気温が9℃まで急激に低下する状況が見られました。ただ、この状況は大雪渓より上部だけで、山麓の乗鞍高原には日差しが降り注ぐ様子が雲間から確認できます。ただ、それ以上の天候の変化はなく、各地で局所的な大雨、落雷事故が発生している中、問題なく一日を送ることができました。
【8月17日(金)、観光センター前駐車場】
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観光センター前駐車場 |
こちらは早朝5時30分の観光センター前駐車場。
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気温14℃、青空にきれいな鰯雲 − お盆休み後半、人出がやや少ない |
今朝は青空にきれいな鰯雲の広がる朝を迎えています。気温は14℃、暑くもなく寒くもない心地よい朝を迎えています。お盆休み後半を迎えていますが、やや人出の少ない状況。タクシーの運転手さんも天気予報を見ながら、お越しになる乗客を待っています。
「このお盆休みは天候が芳しくなく、ちょっと寂しいねぇl〜」、やはり、お盆休みの1週間は、観光業に携わる方々がにとっては、重要な1週間でもあります。
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シャトルバスを待つ方々の列 |
こちらはシャトルバス乗り場。始発便の到着を待つ方々が列を作るようになります。
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そして、いつものようにシャトルバス始発便が到着。
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午後から雨マーク − アサイチで出発、早めに下山! |
今日の天気予報は午後から雨降りのマークが出ています。そのため、山頂に向かう方の中には、「今日は午後から天気が崩れるとのことですから、朝一番で山頂を目指し、早めに下山します。」と、おっしゃりながら、シャトルバスに乗り込む様子もありました。
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グループならタクシーも |
登山の方など、たくさんの荷物がある場合や、電車や路線バスを乗り継いでお越しになっていて、帰りの乗り継ぎ時刻などで時間的な制約がある場合は、タクシー利用のほうが良い場合もあります。
なお、手荷物を一旦預けて山頂に向かいたいという方は、観光センター内のコインロッカーを使用することができます。また、畳平にもコインロッカーが設置されています。
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観光センター内の売店 − コインロッカーはこの奥にあります |
こちらは観光センター内の売店。山頂に向かう人のため、朝一番ではおにぎりなど販売が行われています。先ほど申し上げたコインロッカーはこの売店の奥にあります。
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青こしょう、番所きゅうり − 乗鞍特産の野菜を販売 |
しかし、その傍らには番所きゅうり(ばんどころきゅうり)や青こしょうなど、乗鞍特産の野菜があります。番所きゅうりは通常のきゅうりよりもやや太くて、「番所うり」とも呼ばれています。水分が多くてみずみずしさが特徴です。青こしょうは、香辛料に使用する胡椒とは別物で、かなり辛いししとうといったところでしょうか?少量でも口から火を吹くほど猛烈に辛いものから、それほど辛味を感じないものまでさまざまですが、食べるときは少量ずつ慎重にかじる必要があります。
【大雪渓までの沿道の風景 T】
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ここからは大雪渓までの沿道の様子をお伝えします。
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中央の木にピンク色の花 |
この草地の一角も、そろそろ見つけられる草花が少なくなってきたように感じます。しかし、 中央の木を見るとピンク色の花をつけている様子が伺えます。
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ヤマハギ |
こちらはヤマハギ(マメ科ハギ属)、マメ科特有の根粒菌との共生のため、やせた土地でもよく生育することから、造成地の緑化植物として用いられます。そのため、市街地などで一般的に見られる身近な植物といえるでしょう。
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三本滝ゲート − この先マイカー規制 | かもしかゲレンデ |
観光センターから約7kmほどのところにある三本滝ゲート。マイカー規制はここから実施されます。三本滝ゲートをさらに進むと、県道乗鞍岳線はかもしかゲレンデを縫うように横切ります。
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モクモクとした夏の雲がヒルクライムを誘う |
きれいな青空にモクモクとした夏の雲。気持ちのよいヒルクライムが続きます。
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ヤナギラン |
ヤナギランもご覧のようにまだ先端まで開花していませんので、まだ花期を楽しむことができます。
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ヤマオダマキ | 紅色の萼が特徴 |
こちらはヤマオダマキ(キンポウゲ科オダマキ属)、県道乗鞍岳線沿いには数多くのヤマオダマキが自生していますが、そのほとんどが萼(がく)も花弁も黄色の個体が多い状態です。しかし、こちらのほうが標準的な個体のようです。
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沿線に多い全身黄色のヤマオダマキ |
こちらは約1ヶ月まえに撮影したヤマオダマキ。全身が黄色です。県道乗鞍岳沿線はこちらの色合いのほうが多く見られ、咲き始めてから1ヶ月経過していますが、まだ数多くの黄色のヤマオダマキを見ることができます。
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ウドの花 − 春先に山菜として...「ウドの大木」で有名 |
線香花火を少し大きくしたような花が目立つようになって来ました。こちらはウドの花(独活、ウコギ科タラノキ属)、春先には山菜として食用されます。「ウドの大木」という言葉がありますが、ウドは多年草で「木本」ではありません。(地上部分が枯れる草を「草本」指すのに対して、地上部分が枯れない木を「木本」という言い方をします。)
また、こちらの「ウドの花」に対して、「ハナウド」というセリ科の植物がありますが、これは別の植物です。
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トリカブト |
この形を見てピンときたら猛毒注意!そろそろ花期を迎えます。
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毎週同じように見られる緑の回廊も、一週間ごとに色々な変化を教えてくれます。
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ゴマナ | クロウスゴ − 今年枝に実がなっている |
秋になるとキク科の植物が数多くなってきます。こちらはゴマナ。各所で一斉に咲き始めています。そして、クロウスゴの実ができていて、これを目当てにツキノワグマがやってきます。
クロウスゴと聞いてもピンと来ないかもしれませんが、ブルーベリーと聞けば、ツキノワグマじゃなくても、飛びつく人は多いでしょう(笑)。ブルーベリーの仲間の高山植物には、クロウスゴのほかにクロマメノキがあります。どちらもよく似ていますが、クロマメノキは前年枝に花・実ができます。
したがって、右の画像では実が若いピンク色の今年枝にできていますから、クロウスゴということになります。
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チェーンが落ちて立ちこけ... |
ヒルクライムにはアクシデントがつきもの...リアのギアーからチェーンが落ちてしまい、県道乗鞍岳線の中でももっとも急勾配の28号カーブで立ちこけしてしまいました。クリートでペダルとシューズが固定されているため、バランスを崩すとクリートからシューズをリリースさせることができず、転倒してしまいます。ヒルクライムの場合、チェーンが落ちてしまうと一瞬のうちに自転車が停止してしまいますから、どんなにベテランでも転倒する前にクリートをリリースさせて足を着地させることは困難でしょう。
また、通常のママチャリしか乗ったことのない方が、ロードサイクルに乗るときの最初の関門が、クリートの着脱かもしれません...
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沿道には黄色の花が目立つようになる |
さて、沿道は黄色の花が多数目立つようになって来ました。
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ハンゴンソウ − 葉が幽霊の手招きのよう |
植物の判別方法としては、前回の ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.14(2012/08/11〜12) A では、ハンゴンソウの葉の切れ込み方で見分けることを話をいたしました。それと同様に他の植物も、葉で見分けをするケースが結構見られるものです。
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カンチコウゾウリナ |
こちらはカンチコウゾリナ(寒地顔剃菜、キク科コウゾリナ科)。茎に剛毛が生えていて、顔を当てると髭が剃れそうなところからこのような名前がつけられています。
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葉の先端が尖る ミヤマコウゾウリナとの違い |
下部(地表部分)の葉に葉柄がない =後述のアキノキリンソウを参照= |
左の画像のように茎には多数の剛毛が生えています。そして葉の先端は尖っていて、葉の縁にも尖った部分が多数あります。ミヤマコウゾウリナの場合は、葉の先端が丸くなっていて全体的に舌のような感じの形状で、葉の縁の尖りもありません。
また、右の画像では下部の葉を写していますが、上部の葉と同様に葉柄がありません(後述のアキノキリンソウを参照)。
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アキノキリンソウ |
こちらはアキノキリンソウ(秋の黄輪草、秋の麒麟草、キク科アキノキリンソウ属)。
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上部の葉には葉柄がない |
下部(地表部分)の葉には葉枝がある =カンチコウゾウリナとの違い= |
上部の葉には葉柄がありませんが、下部の葉には長い葉柄があるところがカンチコウゾウリナとの見分け方です。同じように見えるキク科の黄色の花も見分けるポイントさえ押さえると、比較的容易に判別することができます。
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サラシナショウマ |
こちらはサラシナショウマ(晒菜升麻、キンポウゲ科サラシナショウマ属)。葉を水で晒すと食用になります。また、ショウマ(升麻)という名称は、サラシナショウマの根茎を原料とする生薬名から由来されています。このほかヤマブキショウマやレンゲショウマなど、「ショウマ」という名称を持つ植物がありますが、サラシナショウマが本家本元です。
ただ、これらの「ショウマ」はサラシナショウマとの関連性はまったくなく、ヤマブキショウマ(バラ科レンゲショウマ属)は、葉がヤマブキに似ていることから、レンゲショウマ(キンポウゲ科レンゲショウマ属)は、花が蓮の花に似ているところから由来しています。(→ Next)
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