ノリクラ 雪渓カレンダー
Vol.24(2012/10/20〜21) B
【雪渓下部】
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ここからは大雪渓下部の様子をお伝えします。
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ウラジロナナカマド | 真っ赤な実 |
かろうじて残っていたウラジロナナカマドの葉もすっかり落ちてしまい、今は真っ赤な実がその存在を主張しています。
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日が当たっていても霜柱が残っている |
そのウラジロナナカマドの足元を見ると、ご覧のように霜柱が見られます。この時の気温は4℃。冷たい空気に包まれていて、ご覧のように日が当たっているにもかかわらず、午後になってもほとんど形を変えずに残っているのは、やはり晩秋といえるでしょう。
例年、9月に入るとこの付近では毎朝のように霜柱が発生します。しかし、今年の9月は記録的な高温が続き、まったく霜柱が発生しませんでした。
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石碑の岩 |
こちらは石碑の岩。雪渓下部の上端付近に位置しています。5月末付近から雪解けが進んで、モーグルコースの岩に次いで二番目に頭を出す岩です。
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チングルマ − 枯れても落葉せずに残る |
こちらは毎年定点でお伝えしている石碑の岩にあるチングルマ。枯れているものの、何とか落葉せずに残っています。この時期は雪が降り積もってしまって確認できないシーズンもありますが、ほぼ例年並みの状況でしょう。
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石碑の岩の下部 |
石碑の岩の下部から見られる大雪渓周辺・位ヶ原。
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先週の石碑の岩の下部 ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.23(2012/10/13〜14) C |
今週の石碑の岩の下部 |
先週の段階で、大雪渓エリアの紅葉はほぼすべて完了していましたので、先週と今週とはほとんど変化を感じられない状況です。
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キバナシャクナゲ − 葉が内側に反り始める |
そんな変化が感じられない中にも、よく見るといろいろな変化が生じていることに気づきます。こちらはキバナシャクナゲ。葉がすこし内側に反り始めている様子が見られます。
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雪解けと共に現れたキバナシャクナゲ 葉が内側に巻き込まれている 2009ノリクラ 雪渓カレンダー プレリリース版Vol.3(2009/04/11〜12) E |
開花直前のキバナシャクナゲ しっかりと葉が太陽に広がっている 2009ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.7(2009/06/27〜28) C |
ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.22(2012/10/06〜07) の <編集後記「高山植物の越冬...」> でお伝えしたように、寒さに耐えるため、少しでも蒸散を抑え気孔のある葉の裏側を内側に巻き込むものと考えられます。
先ほどのキバナシャクナゲは冬への準備を始めているというわけですね。
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コケモモ | 葉が赤くなる − 厳冬期の太陽光を遮蔽するために |
こちらは常緑樹のコケモモ。葉が紅葉している様子が見られます。ただ、こちらのコケモモは落葉することなく、このまま越冬しますが、冬季は光合成が極端に抑えられ、葉に届く過剰な太陽光は不要で、発生する活性酸素で組織へのダメージを与えてしまいます。そのための対策として太陽光を遮蔽するために変化しているものと考えられています。
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クロマメノキ | 唯一の紅色 |
こちらはクロマメノキ。きれいに真紅に染まっていて、紅葉がすっかり終わってしまった中では、唯一の紅色です。場所によってはご覧のようにまだ実が残っているところあるほどです。コケモモとは異なって落葉樹ですから、冬が来る前に葉はすべて枯れ落ちてしまいます。
クロマメノキのような落葉樹は葉を落とすことで冬への対策を行い、常緑樹のキバナシャクナゲやコケモモは葉を保護することで冬への対策を行っているようです。
【雪渓上部】
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雪渓上部全景 |
それでは雪渓上部の様子をお伝えします。
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雪渓上部左側 − 上級者のみ |
こちらは雪渓上部左側。大雪渓の中でも急斜面のバーンが広がり、シーズン終盤まで積雪の残るエリアです。
大雪渓エリアの中でも最も遠方に位置することから、他のエリアが滑走可能なこの時期は訪れる方は少ない状況です。しかし、今後、他のエリアが滑走できなくなって、雪渓上部左側しか滑走できなくなる8月下旬頃になると、冷え込みの影響からバーンは硬くなってきて、スプーンカットのほか、大きな氷の柱が一面に現れ、初心者の滑走は困難な状況になって行きます。さらに、雪渓上部左側は他のエリアよりも急斜面であることに加え、バーン下部は全面岩場であるため、滑落すれば大怪我となる可能性もあります。
したがって、8月下旬以降になって雪渓上部左側しか滑走エリアがなくなるとノリクラデビューは出来ませんので、初めての方は雪渓下部や雪渓上部右側が滑走できる8月中旬までにお越しになったほうが良いでしょう。
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2011年の雪渓上部左側 2011ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.24(2011/10/22〜23) B |
2010年の雪渓上部左側 2010ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.24(2010/10/23〜24) B |
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2009年の雪渓上部左側 2009ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.23(2009/10/17〜18) B |
2008年の雪渓上部左側 2008ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.24(2008/10/25〜26) F |
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2007年の雪渓上部左側 2007ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.24(2007/10/20〜21) G |
2011年〜2007年までの各年の様子をご覧ください。2008年や2007年はご覧のようにかなりしっかりとした降雪に見舞われ、銀世界となっています。
この時期は一旦降雪に見舞われると、長期間にわたって積雪の残る状態となります。ただ、これが完全な根雪になることは少ないようです。
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先週の雪渓上部左側下端部分(落書きの岩) ノリクラ 雪渓カレンダー 正式版 Vol.23(2012/10/13〜14) C |
今週の雪渓上部左側下端部分(落書きの岩) |
雪渓上部左側の右寄りの下端部分の下に落書きの岩があります。雪渓の下端部分と落書きの岩の間の距離は72メートル。先週より1メートルしか変化していません。そろそろ雪解けがとまりつつあります。
例年との比較は、降雪に見舞われたシーズンもあって、正確な比較ができません。
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モーグルコース |
こちらは先週まで滑走していたモーグルコース。
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先週のスタート付近 ノリクラ 雪渓カレンダー 正式版 Vol.23(2012/10/13〜14) C |
今週のスタート付近 位置の変化はほとんどありません |
スタート付近の位置はほとんど変化はありません。
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整備さえ行えば滑走可能な状態(左:ピッチの長いライン、右:ピッチの短いライン |
二つのラインもご覧のように形状が残っていて。整備さえ行えば滑走可能な状態です。ただ、今後は冷え込みが厳しくなり、取材一日目もアイゼンが効かないほどの硬いアイスバーンの部分もあるかと思えば、取材二日目はこれまでと同じように緩んだ状態を見せるときもあって、コンディションの変化が激しい時期となっています。
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アイゼンも効きにくいアイスバーン |
こちらは取材一日目のアイスバーンの様子。表面が光っていて、青氷になっている場所もあります。アイゼンでも前歯をしっかりステップを切らないと登れない状態です。
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昨年の雪渓上端付近 2011ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.24(2011/10/22〜23) B ↓ |
先週の雪渓上端付近 ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.23(2012/10/13〜14) C ↓ |
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今週の雪渓上端付近 |
こちらは上端付近。画像手前の岩場を見るとかなり雪解けしているように見られますが、表面に乗っていた部分が雪解けしたに過ぎず、先週からの雪解けは10〜20センチほどと、今週はかなり雪解けスピード遅くなっています。左上の昨年との比較では、同じ岩がどこにあるのか探すのさえ苦労するほどの違いがあります。
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昨年同時期の1ヶ月前の雪渓上端付近 2011ノリクラ 雪渓カレンダーVol.20(2011/09/22〜23) C |
今週の雪渓上端付近 昨年より1ヶ月遅い雪解け |
左は昨年同時期の1ヶ月前のもの、右は今回のもの。ご覧のように昨年よりも1ヶ月遅い雪解けであることがわかります。
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先週の雪渓上端付近 ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.23(2012/10/13〜14) C |
今週の雪渓上端付近 ほとんど雪解けしていない |
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先週の雪渓上端付近 ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.23(2012/10/13〜14) C |
今週の雪渓上端付近 ほとんど雪解けしていない |
上端部分の様子を見ても、先週からほとんど雪解けしていないことがわかります。
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下端部分まで38メートル |
雪渓上部左側下端までの距離は38メートル。2011年は濃霧で測定不能、2010年は49メートル、2009年は74メートル、2008年と2007年は降雪により上端・下端部分が不明瞭になり測定不能でした。
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年に一度は山頂登山 |
さて、こちらの方。夏スキーの常連の方ですが、今日はスキーの道具は持ってきていません。実は年に一度は山頂まで登らないと、一年が終わらないということで、久々に山頂登山に出かけられました。山頂付近は、東寄りの長野側は問題なかったものの、西寄りの岐阜側は凍結していてかなり慎重に下山されたとのこと。
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「乗鞍は乗鞍高原から山頂まで何度来ても飽きませんね!」 |
「乗鞍は下の乗鞍高原から山頂まで何度来ても飽きませんね!」と、おっしゃっていましたが、今日のような超快晴の日のお越しになれば、そんな風に感じられる方がきっと増えるのではないかと思います。そして、今日のような一日はシーズン終盤のご褒美とも考えられるでしょう...(→ Next)
■ご注意■
今回の大雪渓関連の記事はノリクラ初心者の方を対象にしておりません。ノリクラデビューをお考えの方は来年の夏シーズンをご検討ください。
これからの時期は天候の急変により降雪・凍結などで冬山の様相を呈します。今後、大雪渓に新雪が降った場合でも、急斜面とアイスバーンが残っていて、この時期にノリクラの雪渓で滑走されたことのない方や、ソフトブートのボードの方は絶対にお越しにならないようお願いいたします。
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