ノリクラ 雪渓カレンダー
プレリリース版 Vol.1(2013/03/23) B
【ツアーコース U】
入口急斜面を登りきった先のツアーコースは、比較的なだらかなルートが続きます。
「お会いできてうれしいですよ!」 | 「肩の小屋付近までは行って見たいです...」 |
10時の気温はマイナス2℃。やや強めの風が吹き抜けています。日差しもしっかりあって、おそらく風さえなければアウターが不必要なほどの穏やかな雰囲気でしょう。
急斜面を登りきったところでは、一休みされる方の姿が今日も見られます。アルペンスキーにツアー用のビンディングを装着しながらもシールを使用せずにスノーシューでやってこられたこちらの方。久々にバックカントリーにお越しなったものの、シールのゴム糊が経年変化して使用できなくなってしまったため、やむなく板を担いでお越しになりました。
「WebSiteはいつも見てますよ!今シーズン初めてのノリクラでしたが、お会いできてうれしい...」と、おっしゃって下さいました。「肩の小屋付近までは行って見たいです...」と、おっしゃりながら、ペースを落とすことなく先を行きます。
1番標識付近 | 高天ヶ原(左)、剣ヶ峰(右) |
先ほどまで雲の中に隠れていたノリクラの峰々。ようやくその姿をあらわすようになって来ました。左の画像には1番という標識があります。ツアーコース内には山麓側から山頂方面に向かって、1番〜6番の標識が設置され、ある程度の位置を把握することができます。
ノリクラをバックに記念撮影 |
ツアーコース内では各所でノリクラの峰々が見られるビューポイントがあり、1番標識付近が最初に訪れるビューポイントで、今日も足を止めて記念撮影をされる様子が絶えず続いていました。
春のノリクラは今回が初めて | 今日はどこまで行けるかな... |
夏スキーの時期には良く訪れていたものの、この時期は始めてというこちらの方々。「目標は山頂!(剣ヶ峰)」とのこと。まだ、この時期の山頂付近はアイスバーンであることが多く、アイゼン・ピッケルといった装備が必要です。
稜線付近の雪が緩むのは4月下旬以降で、この頃になると多くのスキーヤーが稜線目指して大雪渓を一斉に登る様子が見られるようになります。今回も大雪渓から直登して稜線を目指す様子が見られましたが、稜線近くに差し掛かるとバーンが硬くなって登りきることが困難となります。そのため、厳冬期に山頂を目指す登山者の多くは、大雪渓から肩の小屋へと進んだ後、ここから、アイゼン・ピッケルの装備を整えて、夏の登山道に近いルートを取る場合が多いようです。
締まった雪質でツボ足のほうが歩きやすいほど... |
厳冬期だと柔らかい新雪を踏み抜いてしまうツボ足も、今回は冷え込んで締まった雪質が日中の日差しで緩む様子がなく、かなり歩きやすい様子が見られました。
さらに季節が進んで、ザクザクの雪質ともなれば、緩んだ雪面を膝近くまでツボ足が踏み抜いてしまうため、スノーシュー・わかんといった装備があったほうが楽でしょう。
昨年の3番標識 2012ノリクラ 雪渓カレンダー プレリリース版 Vol.1(2012/03/24) B ↓ |
先週の3番標識 速報(2013/03/16) ↓ |
今週の3番標識 先週より15センチ減少 昨年より20センチ多い |
こちらはツアーコース中間付近にある3番標識。左上は昨年同時期で右上が先週のものです。先週よりも15センチ減少して、昨年よりも20センチ多い状況です。
すでに申し上げたとおり、例年ならば3月下旬から4月上旬に積雪量のピークを迎えますが、今年は3月上旬にピークを迎えて例年以上の積雪量となりました。
昨晩の降雪は数センチ |
昨晩は数センチの積雪が見られましたが、昨日までのトレース跡を覆い隠すほどの積雪量ではありません。
まるでゲレンデのような締まった雪質 |
しかし、適度に締まった下地にうっすらと積もる柔らかな新雪は、まるでゲレンデを滑走するような滑り易いコンディションでした。
昨年の5番標識 2012ノリクラ 雪渓カレンダー プレリリース版 Vol.1(2012/03/24) B ↓ |
先週の5番標識 速報(2013/03/16) ↓ |
今週の5番標識 先週より20センチ減少 昨年より80センチ多い |
こちらはツアーコース上部付近の5番標識。3番標識の画像と同様に、左上は昨年同時期で右上が先週のものです。先週より20センチ減少して、昨年より80センチ多い状況です。
先週の画像をご覧くださるとお分かりのとおり、標識そのものが雪に埋もれてしまっていて、最も積雪量の多くなった3月上旬は5番標識がどこにあるのかすらわからない状況で、雪面よりも40センチも埋まっていました。
青空がなくなり、鉛色の空へ |
11時現在の気温はマイナス2℃。相変わらず強めの風がツアーコース内を吹きぬけます。そして、青空が徐々に失われ、山頂付近ははっきりとしているものの、モノトーンな世界へと変化して行きます。
こんなときは、天候の急変によるホワイトアウトが懸念され、ツアーコースより先の森林限界を超えたエリアへの進入は、慎重を期す必要があります。
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昨年の6番標識手前の谷 2012ノリクラ 雪渓カレンダー プレリリース版 Vol.1(2012/03/24) B |
今週の6番標識手前の谷 |
5番標識を過ぎて6番標識付近に差し掛かると、ウェーブ状になった箇所があります。左の昨年同時期よりもフラットになっていることがわかります。
2月上旬の6番標識手前の谷 −
まだウェーブが残る 速報(2013/02/09) |
こちらは今年の2月上旬のウェーブ箇所。ちょうどこの時期からウェーブの形状が埋まってきて、この箇所の通過が容易になってきたところです。それまでは、人の背丈誓いほどのウェーブとなっていて、登り降りするのに一苦労するほどでした。
ただ、ウェーブが小さくなってきたことで勢い良く下山滑走してくるため、ウェーブに足をとられて転倒負傷することが懸念されます。過去には転倒負傷して救助要請した事案も発生していますので、細心の注意が必要です。
そして、6番標識を過ぎれば、ツアーコース最後の位ヶ原急斜面へと向かいます。
【ツアーコース− 位ヶ原急斜面】
ツアーコース − 位ヶ原急斜面 |
こちらはツアーコース最後の位ヶ原急斜面。これまで樹林帯を切りとおしてコースが作られていましたが、この付近からはオープンバーンとなってきます。
昨年の位ヶ原急斜面 2012ノリクラ 雪渓カレンダー プレリリース版 Vol.1(2012/03/24) C ↓ |
先週の位ヶ原急斜面 速報(2013/03/16) ↓ |
今週の位ヶ原急斜面 先週とほぼ同じ、昨年より2メートル以上多い |
位ヶ原急斜面の積雪は先週とほぼ同じで、昨年と比べて2メートル以上多い状況です。前述の3番・5番標識付近など山麓方面のツアーコースでは、積雪量が減少に転じているものの、位ヶ原急斜面付近や、次のページでお伝えする大雪渓方面などでは、積雪量がこれからも増える様子が見られます。
昨晩の降雪は5センチ程度 − トレース跡はなくなる |
この付近の昨晩の降雪は5センチ程度。山麓側と比べると柔らかい新雪が多く、昨日までのトレース跡は全くなくなっていました。
入口急斜面と同様にシールのグリップが効きにくい |
それでも、下地はやはり硬めでシールのグリップが効きにくく、入口急斜面と同様にスリップに注意しながら登るスキーヤーの様子が見られました。
シールを持参するのを忘れてしまい... | でもツボ足のほうが歩きやすいですよ! |
そして、入口急斜面付近でも見られましたが、こちらでもツアー用のビンディングを装着したスキーなんですが、シールを装着せずにツボ足で登ってこられる方がいらっしゃいます。
お話をお聞きすると、シールを持参することを忘れてお越しになったとのこと...「でも、今日はシールよりもツボ足のほうが歩きやすいコンディションでしたから助かりましたよ!」
シールで登っていらっしゃるスキーヤーの中には、滑る斜面に足をとられて転倒される様子も見られました。そんなときは、身動きが取れなくなる急斜面にたどり着く前に、スキー板をはずしやすい緩斜面でツボ足になって登りきることをオススメします。そのほうが安全でタイムロスも少ないと思います。
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今週の位ヶ原急斜面 | 先週の位ヶ原急斜面 −
天気よければ遠景の山並みが 速報(2013/03/16) |
さて、これまでのツアーコースはノリクラの峰々が聳え立つビューポイントが何箇所かありました。しかし、位ヶ原急斜面はその反対側の遠景の眺望がポイントです。
今日は霞んでそのようがわかりませんが、右の画像の先週 3月16日(土)はご覧のように八ヶ岳、南アルプス、中央アルプスがくっきりと浮かぶ様子があります。
厳冬期はそれぞれの頂がもっと真っ白に輝いていました。また、これからの時期は、今回のように霞んでしまうため、右の画像のような鮮明な眺望を春先に望むことは難しいかもしれません。(→ Next)
■ご注意■
今回の取材記事は、バックカントリースキー・ボードの経験のある方を対象としたもので、初めての方へのイントロダクションという位置づけの内容ではありません。
初めてツアーコースなどにトライしてみたい方は、経験者と同行するか、ガイドツアーに参加されることをお勧めします。(乗鞍高原などにはガイドが同行するツアーを企画する会社がありますのでお問い合わせください。)
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