ノリクラ 雪渓カレンダー
Vol.9(2013/07/05〜06) @
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7月に入って梅雨らしい天候が続くようになってきました。7月7日(日)に開催された自転車ヒルクライムレース、第10回乗鞍スカイラインサイクルヒルクライムの取材のため、今回のノリクラ雪渓カレンダーは一日前倒しして取材いたしました。
取材一日目の7月5日(金)は、午前中を中心に大雨の一日。岐阜県側の乗鞍スカイラインは、3時30分に通常開門するものの、24時間雨量規制のため6時30分に通行止めとなります。長野県側の乗鞍高原も周期的に激しい降り方を見せ、県道乗鞍岳線は道路上が激流冠水して、10時30分から休暇村〜大雪渓間が通行止めとなりました。そして、位ヶ原から大雪渓付近はさらにひどい状態で、視界が30メートル程度まで低下して暴風雨が続き、午後からは雨は収まりますが、相変わらず、夕方まで濃霧と暴風に見舞われました。
取材二日目の7月6日(土)は、関東甲信地方で梅雨明けが宣言されました。しかし、乗鞍ではそんな雰囲気をまったく感じさせない梅雨空の一日です。朝一番は生暖かい空気に包まれた曇空を迎えます。雲の動きは早く、今にも雨が降り出しそうな様子。大雪渓付近は濃霧と強風にさらされていて、周期的にスコールのような雨の降り方を見せています。それでも、スキーキャンプに訪れた方々は前の見えない濃霧の中をひたすら滑り続ける様子があります。長野県側のシャトルバスは大雪渓までしか運行しないため、登山口から肩の小屋まで全面積雪の登山道を慎重に登る登山者が苦労される様子もありした。
午後からは、明日開催の第10回乗鞍スカイラインサイクルヒルクライムの大会会場である岐阜県高山市丹生川の殿下平(でんかだいら)総合交流ターミナルへ向かいます。会場では選手受付などの手続きが行われますが、15時30分頃から会場周辺でもスコールのような雨降りに。ゴール付近の畳平も午前中の大雪渓と同様に濃霧と強風が続き、明日のレースが心配なところです。
そして、7月7日(日)は、通常の取材ではなく第10回乗鞍スカイラインサイクルヒルクライムの大会取材に出向きます。やはり、昨日同様に畳平・桔梗ヶ原付近の強風濃霧がひどく、レースは中止となりました。そして、中止が発表された大会会場周辺は、それまで曇り空だったものの雨がザーッと降り始めて、レース中止もやむをえない状況となってしまいました。
大雪渓・稜線付近の積雪量は、稜線付近は昨年・例年より少なく、1〜2週間程度雪解けが早い状態ですが、大雪渓は昨年並みか昨年よりも多い状態が見られます。稜線付近の登山道には積雪が残っていて、7月上旬〜中旬頃まではアイゼンが必要です。また、長野県側のシャトルバスは当面の間、大雪渓・肩の小屋口までの運行で、バスを降りてから肩の小屋までの登山道は全面積雪があるため、やはりアイゼンが必要です。
【7月5日(金)、観光センター前駐車場】
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観光センター前駐車場 |
朝6時の観光センター前駐車場。
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雨、低く垂れ込める雲、多湿感 |
昨日からの雨が降り続いています。気温は16℃、雲が低く垂れ込めていて、むしっとした空気に包まれています。
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断続的に激しい雨 |
夜半から断続的に激しい降り方に見舞われ、いわゆる「バケツをひっくり返したような」と言われる状況です。
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7月からシャトルバス運行 − ただし当面は「大雪渓・肩の小屋口」まで |
6月までの乗鞍岳春山バスに変わって、7月からはシャトルバスとして運行が行われます。バスの利用上の違いはほとんどありませんが、春山バスは大雪渓・肩の小屋口までの運行が、シャトルバスでは畳平まで運行され、運行便数も1時に1便と大幅に増えます。
ただし、7月に入っても大雪渓以降の区間は安全確保ができないため、大雪渓〜畳平間は冬季閉鎖が継続されています。そのため、全面開通となるまでは春山バスと同様に、大雪渓・肩の小屋口までの運行となっています。
大雪渓・肩の小屋口までした運行されないため、特に注意しを払わなければならない方は、山頂登山に向かう登山者です。シャトルバスを降りた登山口から肩の小屋までの600メートル程度の区間は全面積雪です。登山道の状況については、7月2日のお知らせ − 乗鞍岳山頂(剣ヶ峰)登山道の積雪状況 をご確認ください。
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シャトルバス専用乗車口 |
7月からのシャトルバス乗車口は、観光センター前駐車場内に設置されたテントとなっています。大雪渓・肩の小屋口バス停までの折り返し運行の表示が掲示されています。
【7月2日から当面の間の観光センター〜大雪渓・肩の小屋口までのシャトルバス運行ダイヤ】
<上り> 観光センター前 → 大雪渓・肩の小屋口 (7月2日から当面の間) |
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6:10 7:00
8:00 9:00 |
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<下り> 大雪渓・肩の小屋口 → 観光センター前 (7月2日から当面の間) |
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7:14 8:09
9:09 |
全面開通されるまでの間の、大雪渓・肩の小屋口までの折返し運転は、特別ダイヤで実施されます。通常ダイヤとの相違を明確にするため、運行されない便を取り消し線で示しています。
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アヤメ | 花弁の根元部分が綾目模様 |
さて、こちらは先週もご紹介したアヤメ。周辺は草刈りが行われてしまいましたが、アヤメが咲いている一角だけは残してくれたようです。先週の画像では綾目模様をはっきりと撮影することができませんでしたので、よくわかる画像を再度掲載します。
【観光センターから大雪渓へ、沿道の風景】
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三本滝ゲート − この先マイカー規制 |
観光センターから7km先にある三本滝ゲート。7月から冬季閉鎖が解除され、ゲートは開門されていますが、この先はマイカー規制となっています。
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開門中はゲート管理の方が常駐 |
ゲートの開門時間は6時から18時まで(10月は7時〜18時)。開門時間中はゲート管理の方が常駐されています。管理の方とも昨年10月末以来の再会ですね。(今年もよろしくお願いいたします)
ゲート管理では、通行許可車両のチェック(バス、タクシー、自転車など)のほか、開門前・閉門前の道路パトロールも実施しています。ゲート開門は6時からですが、開門前にご来光バスの運行があるため、実際の道路パトロールは早朝3時ごろには行わなければなりません。それが毎日ですから大変なことですね...
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普段は小さな沢が大雨であふれ出す |
昨日までの雨に加えて、周期的に土砂降り状態が続いています。そのため、道路周辺の斜面はご覧のように滝のようになっています。晴天が続くとほとんど水の流れないの小さな沢で、左の画像では道路との境に土嚢が積んであるものの、それを乗り越えるほどの勢いです。
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所によっては完全に冠水 |
そのため、場所によっては道路が冠水してしまうほどの状況。水深はわずか10センチ程度ですが流れが速く、足元をすくわれてしまうほどの勢いです。
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この後10時30分から通行止めでシャトルバスも運休に |
このため、県道乗鞍岳線は10時30分から通行止めとなり、シャトルバスも10時の便を最後に運休となりました。雨量規制による通行止めは、休暇村ゲート〜県境間となっていますので、この日も休暇村ゲートが閉鎖されました。そのため、マイカーで三本滝ゲートまでお越しの場合は注意が必要です。
また、シャトルバスを利用して、山頂方面へ登山に向かった場合は、帰りの便がない状況となります。バス会社では運休の可能性などを乗車時にアナウンスするようにされていますが、このような事態が発生することも視野に入れながら行動されるようお願いいたします。(たとえば、早めの下山、途中で引き返す、登山そのものを中止するなど)
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7月からは山野草・高山植物の季節 |
6月は新緑の季節でした。そして、7月は山野草・高山植物の季節へと移り変わってきます。道路わきにはすでに色々な草花が咲き始めています。
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花の形状は瓜二つ (左:モミジカラマツ、右:カラマツソウ) |
この二つの花はよく似てますね...両社ともまだつぼみの段階ですが、完全に開花したときの花の形状も瓜二つです。左はモミジカラマツ、右はカラマツソウ。花では区別が付きませんので、葉を見て判別します(葉の形は全く違いますね)。
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ハクサンチドリ | ベニバナイチヤクソウ |
こちらの二つは山野草というよりも高山植物の範疇になるでしょうか?左の花はハクサンチドリ(白山千鳥、ラン科ハクサンチドリ属)、千鳥が飛来する様子から命名されていますが、近種類のテガタチドリやノビネチドリと比べて、花の先端が尖っている点が判別の特徴でしょうか?
右の花はベニバナイチヤクソウ。花が完全に開ききっていません。まだ、これから、色々な場所で咲き始めると思いますので、再度、掲載したいと思います。
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ムラサキヤシオツツジ |
県道乗鞍岳線の沿道では、6月の初め頃から見られるムラサキヤシオツツジ(紫八染躑躅、ツツジ科ツツジ属)。画像に映るこちらのものでも、すでに2週間ほど花を楽しませてくれています。
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蜜標 : 上の花弁にある斑点 − 虫たちに蜜腺の場所を示すマーク |
ムラサキヤシオツツジの花弁を見ると、どの花も上側の花弁に斑点が付いています。これは「蜜標」と呼ばれるもので、マルハナバチなどの昆虫に蜜の場所を示しているものとされています。蜜標のある上側の花弁の奥をたどって行くと蜜腺にたどり着けるもので、虫によって受粉する訪虫花の知恵とも言えます。
この蜜標はツツジ類には共通して見られ、レンゲツツジやキバナシャクナゲにも蜜標が見られます。
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冷泉小屋 | 冷泉 − 水量が変わらず |
標高2230メートルの冷泉小屋付近。いたるところで沢という沢が荒れ狂っているものの、こちらの冷泉はいつもと同じ水量。冷泉の上はすぐに県道乗鞍岳線が走っていますが、沢を横切っている様子はないため、この冷泉は沢水ではなく湧き水なのかもしれませんね。
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幻の滝 | 雨のときだけ現れる |
その冷泉小屋付近から見られるフリコ沢の滝。「通称:幻の滝」と呼ばれていて、水量が少ないときはその存在にはほとんど気付くことがなくなるため、そのように呼ばれるのでしょう。
こちらは、ご覧のようにかなりの激しさがあります。これまでは雪解け水が多かったため、ほぼ一定水量が流れていましたが、残雪がなくなってくると、雨量に左右されるようになり、日照り続きとなると、本当にチョロチョロとしか流れなくなり、姿を消すわけです。
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位ヶ原山荘 |
そして、標高2350メートルの位ヶ原山荘を越えると森林限界となって、天候はますます悪化します。
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完全に濃霧の中 |
上部は完全に濃霧の中。木々が少なくなって、上空の空気や雲の流れがダイレクトに反映されます。
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ツキノワグマの親子 |
今日はこの天候で訪れる人は全くいません。そんな状況に安心してか、ツキノワグマの親子に出会いました。こちらの存在に気付いて母熊は高さが3メートルほどもある雪の壁を一気に飛び乗ったものの、小熊はよじ登れずにフェンスにぶら下がり、その様子を心配そうに見つめています。
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想像以上にすばやく準敏な動き 登山者だけでなくヒルクライマーも熊鈴携行を! |
その後、再び森の中へと帰って行きます。高い雪の壁を一気に飛び乗る様子は想像以上に俊敏で、熊本県のご当地キャラクターが、想像を絶する機敏なパフォーマンスを見せますが、実はアレが熊本来の運動能力かもしれませんね(笑)。
さて、そんな冗談はさておいて、登山道に限らず車道近くにも出没することがありますので、登山者だけでなく、ヒルクライムをされる自転車の方も、熊鈴を携行されることをオススメします。
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位ヶ原お花畑 | 位ヶ原、5号カーブ |
位ヶ原山荘から先は完全に濃霧の中、視界は50メートルにも満たないほど。左の画像は位ヶ原お花畑がある場所ですが、ほぼ全面積雪におおされています。おそらく、7月下旬頃まで積雪が残ると考えられます。右の画像は宝徳霊神バス停のある5号カーブ。こちらも完全に雪の壁となっています。
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水の流れが荒れ狂う(大雪渓下4号カーブ) |
とにかく、今日はどこに行っても水の流れが荒れ狂っています。雪の壁が見所の4号カーブを過ぎると、大雪渓・肩の小屋口バス停です。(→ Next)
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