ノリクラ 雪渓カレンダー
Vol.13(2013/08/03〜04) @
8月最初のノリクラ雪渓カレンダーです。ノリクラ雪渓カレンダーは、主にバックカントリースキーヤー向けの「プレリリース版」を3月下旬から5月上旬まで連載し、グリーンシーズンに入ると、大雪渓を中心にノリクラにお越しになる様々な方々を対象とした「正式版」を連載しています。正式版の連載は年によって若干異なりますが、5月中旬のVol.1から10月末のVol.25までの全25編となります。今回のノリクラ雪渓カレンダーはVol.13で、ちょうど折り返し地点を通過したところ。まだグリーシーズン真っ只中ですが、もうシーズン後半に差し掛かってきました。
取材一日目の8月3日(土)は、山頂にモルゲンロートの輝く朝を迎えます。しかし、その後、乗鞍高原は一時的に雲に覆われます。ただ、大雪渓付近は雲の上で、現地に向かう道中から少しずつ晴れてゆく場面展開が夏のノリクラともいえます。ただ、大雪渓も10時過ぎから、周期的に山麓から雲が沸きあがるようになり、視界が妨げられるときもありました。午後は山麓からの雲の流れ込みはなくなり、さわやかな北風へと空気の流れが変わり、一日を通してみれば、まずまずの安定した状況だったといえます。
取材二日目の8月4日(日)は、早朝は青空がありましたが次第に曇り空となり、午後になって一時的に青空がのぞくものの、ほぼ終日曇でした。それでも、今日の県道乗鞍岳線は、ヒルクライマーに埋め尽くされ、まるで走行会かレースが開催されているような賑わい振りでした。位ヶ原山荘付近までは寒さはなく、大雪渓付近までやってくると気温12℃で肌寒さを感じ、岐阜県側の乗鞍スカイラインは濃霧のため、自転車は通行止めになるほどでした。
大雪渓の積雪量は、先週と同様に昨年よりも多い状態が続いています。入口付近の雪渓下部では昨年よりも雪解けが1〜2週間ほど遅い状態、雪渓上部も全体的には昨年より1週間程度遅いものの、場所によっては昨年並みかやや少ない状況です。また、剣ヶ峰(乗鞍岳山頂)へ向かう登山道は、畳平から山頂へのルートではアイゼンは必要ありませんが、大雪渓からのルートでは、肩の小屋までの登山道に積雪区間が60メートルほど残っていて、例年より1週間ほど雪解けが遅く、冷え込んだ場合にはアイゼンが必要です。
【8月3日(土)、観光センター前駐車場】
夜の観光センター前駐車場 |
こちらは前日の8月2日(金)の夜。
満天の星空 |
ご覧のように綺麗な星空が広がっています。カメラでは明るい星しか見えませんが、実際には夜空を埋め尽くすほど星がちりばめられています。気温は16℃。じーっと星空を眺めていると、肌寒さを覚えるほど。8月といえども、乗鞍高原の朝晩は「冷え込み」という表現を使っても良い程で、日中は暑くても寝冷えには十分注意しなければなりません。
早朝5時、モルゲンロートに輝く |
そして、一夜明けた早朝5時の観光センターからは、真っ赤な朝日に照らされたノリクラの稜線が輝く朝を迎えます。
次第に雲が多くなる |
気温は13℃、長袖でちょうど良い状態です。天候はやや雲量の多い晴。先ほどの画像の通り、日の出直後はくっきりと確認できた稜線付近も、時間と共に雲量が多くなり、その姿はすぐに確認できなくなりました。
90台ものマイカーが早朝からお越しになる |
5時の段階で観光センター前駐車場は90台ものマイカーが訪れ、今日一日の賑わいが朝一番から感じられる状況です。
6時、朝日が差し込む |
6時近くになって観光センター駐車場にも朝日が差し込むようになって来ました。ただ、上空の雲はやや動きが早く、今日の天候が少し気にかかるところです。
シャトルバス乗り場 | 大半の方が長袖姿 |
こちらはシャトルバス専用の乗車エリア。テント内でシャトルバス始発便を待つ方々はほとんどが長袖姿です。8月の光景とは想像できないかもしれませんが、乗鞍高原では、天候の悪いときは8月と言えども、長袖でちょうど良い気候の日もあるほどです。
また、終点の畳平は、山麓がどんなに暑い日でも長袖が必須で、早朝の便に限らずどの時間帯のシャトルバスに乗車するときも、長袖は必ず持参してください。
そして、シャトルバス始発便がいつものように到着。
今日の始発便は2台運行 − お盆休みはさらに混雑が予測される |
今日も始発便は2台が運行されました。おそらく次の週末から始まるお盆休みの期間中はかなりの混雑が予想され、シャトルバスだけでなく、観光センター駐車場も早い時間帯から満車になることと思います。
今回の観光センター前駐車場が満車になった時刻は、取材一日目の8月3日(土)は9時ごろ、取材二日目の8月4日(日)は8時30分ごろでした。観光センター前駐車場が満車になると、隣の未舗装の駐車場など周辺の駐車場へ誘導されます。ただ、お盆の最盛期は周辺の駐車場も満車となり、観光センターから1.5kmほど先にあるすずらん橋駐車場(スキー場第3駐車場)を利用することとなります。
すずらん橋駐車場には「すずらん橋バス停」が隣接していますので、シャトルバスへの乗り換えに支障はありません。ただ、トイレはあるものの売店などはありませんので、ペットボトルなどはすずらん橋駐車場に移動する前に観光センターなどで購入してください。
タクシー乗り場 |
こちらはタクシー乗り場。朝早くからお越しになり、一番早い運転手さんは夜明け前の4時から待機しています。
「朝の会議」は重要! |
朝の重要な会議(?)をされていますが、このあとお客様がお越しになれば、それぞれの運転手さんが話をする機会もほとんどなくなり、朝一番の「井戸端会議」はそれなりに重要なんです。
観光センター売店 − 山頂登山にはおにぎりを! |
観光センターの売店も7時前にはおにぎりが並べられて、今日もそれぞれの一日がスタートしました。
雲はさらに厚くなる |
さらに雲は厚くなり、山頂・大雪渓方面の様子をうかがい知ることはできなくなってきました。
【観光センターから大雪渓へ、沿道の風景 T】
ここからは大雪渓までの沿道の様子をお伝えします。
オオマツヨイグサ − 北アメリカ原産の外来種、植物学の発展に重要な植物 |
その名はオオマツヨイグサ(大待宵草、アカバナ科マツヨイグサ属)。こちらは北アメリカ原産の植物からくつられた園芸種で、日本古来の植物ではありません。いわゆる外来植物です。
マツヨイグサの仲間には125品種もの種類があり、植物学の発展に寄与した重要な植物です。20世紀初頭のオランダ植物学者であるド・フリースが、突然10種類近い植物が発生したことを突き止め、この研究から遺伝学で名高い「突然変異説」が唱えられたことでも有名です。
スキー場のゲレンデ内に点在する黄色い花 |
こちらはすずらん橋駐車場(スキー場第3駐車場)からゲレンデに入ったところの様子。奥にはブルーシートでキッズエリアのムービングベルトが保護されていますから、冬季のスキー場にお越しになった方なら、どの場所かすぐに想像できるかと思います。
そこには、数は少ないもののご覧のような黄色の花があちらこちらに咲いています。
アラゲハンゴンソウ(外来植物) 毎年除去作業が実施されている |
茎は荒い毛に覆われる |
こちらはアラゲハンゴンソウ(粗毛反魂草、別名:キヌガサギク、キク科オオハンゴンソウ属)、良く似た植物でオオハンゴンソウがあります。オオハンゴンソウは要注意外来植物として環境省から指定されていて、かなりのスピードで増殖するため、日本古来の在来植物の自生エリアを侵食してしまいます。そのため、乗鞍を含めた各地でオオハンゴンソウやセイヨウタンポポの除去作業が行われています。
こちらのアラゲハンゴンソウも外来植物で、オオハンゴンソウと同様に、グリーン・サポート・スタッフなどによって、毎年除去作業が行われます。そのため、まばらに自生する程度に収まっていて、放置すれば大繁殖してしまいます。
アラゲハンゴンソウは姿形はオオハンゴンソウと良く似ていますが、頭花(花の中心部分)がオオハンゴンソウが緑色に対して、アラゲハンゴンソウは褐色(暗紫色)です(画像左)。また、全体に荒い毛が密に生えている点も特徴です(画像右)。
鈴蘭橋 | 雲間には日差しが当たる山頂が確認 − 山頂は雲の上 |
すずらん橋駐車場というほどですから、その先にはご覧の鈴蘭橋があります。紅葉の時期になると欄干からの眺めがビューポイントとして知られています。そこから望む山頂方面にはしっかりと日差しの差し込む様子が雲間から確認され、どうやら山頂方面はこの雲の上にあるようです。
休暇村 |
さらに進むと休暇村があります。ここにあるヤマボウシの木をのぞいてみると...
ヤマボウシ −花(総苞片)は落ちて実ができる |
先週までは花弁が残っていましたが、今週は完全に花は落ちて、ご覧のような実がしっかりとできています。実はヤマボウシは6月に花が咲きます。それから2ヶ月も花が続いていたことになりますが、ヤマボウシの4枚の花弁は総苞片(そうほうへん)で、つぼみを包み込んでいた器官です。そのため、花期が完全に終了した後も、落ちずに残っていて、本当の花が結実してしばらくしてからようやく落ちたようです。
6月に咲くヤマボウシの様子はノリクラ 雪渓カレンダー Vol.7(2013/06/21〜22) C 【6月22日(土)、観光センター前駐車場】 のコーナーの中ほどをご覧ください。(→ Next)
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