ノリクラ 雪渓カレンダー
Vol.20(2013/09/21〜22) @
先週末に上陸した台風18号が過ぎ去った後は、気温が一気に低下して、これまで周期的にぐずついていた天候も安定してきました。ようやく、秋本番を迎えたといってよいでしょう。
取材一日目の9月21日(土)は、久しぶりの秋の青空に恵まれた一日となりました。今年の中秋の名月は19日(木)でしたが、十六夜の月がノリクラの稜線に沈もうとする様子から今日一日が始まりました。気温は6℃でようやく一桁まで低下し、この時期らしい状況の朝です。しかし、日差しのほうは肌をも焦がす勢いの強いもので、そよ吹く風に冷たさと日差しの強さの両者がせめぎあっているかの状況で、風がなくなるとかなり暑い状況でした。久しぶりの晴天が夕方まで続き、大雪渓ではノリクラシーズンも残りわずかとなってきた「秋モーグル」ができるの時期も少なくなり、モーグラーの方々にとっても、今日の晴天はまたとないチャンスで、夕日が沈む直前まで滑り続ける様子が残っていました。
取材二日目の9月22日(日)は、午前中は綺麗な秋空となりました。上層には筋状の雲が青空にたなびく様子は秋本番を迎えたことを実感させるもの。今日もヒルクライマーの姿が多く見られましたが、大会前のようにトレーニングモードで必死の登る方の姿は皆無で、景色の良いところで足を止めてカメラを取り出す方が大半で、のんびりとこの時期らしいヒルクライムの楽しみ方をされている方々ばかりでした。徐々に雲が多くなり、日差しが遮られるようになると、少しずつ進み始めた紅葉もはっきりしない状態となります。しかし、再び日差しが戻ってくると綺麗に輝き始め、そんな様子が繰り返えされます。午後からはほぼ曇り空ですが、遠景の山並みは水墨画のように織り成す様子は終日続き、まずまずの一日を送ることができました。
紅葉情報は 6ページ目 からお伝えします。例年、紅葉は9月中下旬頃から見頃が始まります。先週と比べると少しずつ進んできて、綺麗な色合いを見せる箇所も見られます。昨年よりもやや早く例年よりも少し遅い状況です。また、大雪渓などの上部エリアでは17日(火)の初霜の影響を受けたウラジロナナカマドもあって、霜枯れしてしまったものもあります。位ヶ原よりも山麓の冷泉小屋や摩利支天方面では問題は穂tんど感じられません。
大雪渓の積雪量は、先週と同様に昨年よりも多い状態が続いています。入口付近の雪渓下部は例年なら積雪がなくなるところですが、10メートル四方の大きさがあって、昨年より3週間ほど遅い状態です。また、雪渓上部も全体的には昨年より3週間程度遅く、例年なら積雪のなくなる雪渓上部右側も、まだ積雪が残っているほどです。
■ご注意■
今回の大雪渓関連の記事はノリクラ初心者の方を対象にしておりません。ノリクラデビューをお考えの方は来年の夏シーズンをご検討ください。
これからの時期は天候の急変により降雪・凍結などで冬山の様相を呈します。今後、大雪渓に新雪が降った場合でも、急斜面とアイスバーンが残っていて、この時期にノリクラの雪渓で滑走されたことのない方や、ソフトブートのボードの方は絶対にお越しにならないようお願いいたします。
【9月21日(土)、観光センター前駐車場】
前日9月20日(金)の夜 − 観光センター前駐車場 |
こちらは前日の9月20日(金)の夜の観光センター前駐車場の様子。ご覧のように雲ひとつない星空が瞬く夜空が広がります。気温は10℃で、それほどの寒さはありません。
ノリクラの稜線がくっきりと | 頭上から明るい月が夜空を照らす |
そして、西の空にはノリクラの稜線がくっきりと浮かび上がっています。そのノリクラを照らすのは頭上に昇っている明るい月で、夜空全体を照らしてくれるから、目を凝らさなくとも稜線がしっかり確認できます。
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今年は中秋の名月と満月が一致(9月19日) | 本日(9月20日)の十六夜の月 − 右側が少し欠ける |
昨日の9月19日は中秋の名月でした。中秋の名月は陰暦の8月15日を差していて、陰暦の15日の夜は満月に近いことから十五夜の月が満月と考えられるようになっています。しかし、実際には暦と月の満ち欠けにずれがあって、中秋の名月と満月が完全に一致するとは限らないものです。
今年を含めた過去3年間は「中秋の名月=満月」でしたが、来年以降は満月とはならず、次回は8年後になるというニュースが流されていたほどです。
さて、左は昨日の中秋の名月(9月19日)の満月の画像。そして、右は一日後の本日(9月20日)に撮影したもの。肉眼ではどちらも「満月」ですが、ご覧のように拡大してみると、右側が少しだけ欠けている様子がご覧になれます。欠けた周辺ではクレーターの様子もはっきりわかりますね。
一夜明けた9が月21日(土)の朝焼け | 役目を終えた十六夜の月が沈みかける |
さて、そんな中秋の名月を楽しんで、こちらは21日(土)の早朝5時30分。日のではさらに遅くなり、ようやく東の空が赤く焼け始めた朝を迎えます。そして、昨晩を明るく照らしてくれた十六夜の月(いざよいのつき)が役目を終えて、ノリクラの稜線に帰ろうとしています。
気温は6℃とようやく一ケタ台の気温となり、この時期らしい状況となって来ました。
観光センター前駐車場 |
そして、こちらは6時の観光センター前駐車場。青空がはっきりとしてきました。
三連休初日 − 空きスペースはすでに半分以下 |
三連休初日とあって、6時の時点で84台ものマイカーがお越しになり、空きスペースは半分以下です。このところ、週末が訪れるたびに天候が悪化していましたので、久しぶりの晴天に、ようやく訪れることができたという方も多かったのではないでしょうか?
シャトルバス乗車券販売所 | 畳平気温6℃ |
シャトルバス乗車券販売所も朝早くから窓口を開き、そのホワイトボードには畳平の気温は6℃と記されています。ほとんど乗鞍高原と変わらない気温です。17日(火)に畳平で初霜・初氷が観測されましたが、この時期は早朝は氷点下になることも珍しくない状況です。
始発便を待つ乗客の列 | 係員が下り便の混雑状況を説明 |
シャトルバスの乗り場には始発便を待つ登山客の方がすでに列を作っています。係員が午後の下り便の混雑状況などの説明を繰り返し行います。来週あたりから本格的な紅葉シーズンを迎えますが、そうなるとかなりの人出を迎えることなります。
シャトルバスの利用は、お盆と紅葉シーズンが最も混雑します。
シャトルバスはマイカー規制が実施された2003年から運行が始まりました。運行開始当時は紅葉シーズンよりもお盆が混雑する状況でしたが、ここ数年はお盆よりも紅葉シーズンのほうが混雑する状況が見られます。また、繁忙期や通常期などにかかわらず、上り便よりも下り便の方が特定の時間帯に利用者が集中するため、激しい混雑が見られます。特に15時便とその前後便の混雑が多いようですから、帰宅時間を若干前後させるなどの調整が、紅葉シーズンには特に必要かと考えられます。
そして、シャトルバス始発便が到着します。
2台運行 − 厚手のウェアー姿も目立つ |
今日は2台が運行されました。大半の方が登山に向かうようで、長袖スタイルで、さらには厚手のウェアの方もいらっしゃるほどです。
朝晩は冷え込んで日中は暑い − 秋と夏が同居する |
この時期は朝晩はかなり冷え込んでも、日中はこれまでと変わらぬ暑さを感じる状況で、秋と夏が同居している状態です。乗務員の方々のスタイルを見ると、防寒着を着込む方や半袖姿の運転手さんなどさまざま...なお、登山に向かう方は、どちらの気候にも対応できるように、ウェアをご用意ください。
【観光センターから大雪渓へ、沿道の風景 T】
鈴蘭バス停付近 | 善五郎の滝 駐車場 |
それでは大雪渓に向かう沿道の様子をお伝えします。
今日は日差しが強い − 夏の勢いが残る |
今日は朝から強い日差しが差し込み、8時ごろになると肌をも焦がす勢いとなってきます。雰囲気は秋ですが、まだまだ、夏の勢いが残っている状況です。
ミズナラの葉 | ミズナラの実(どんぐり) − 今年はやや遅い |
まだ、秋にシフトできないのはこちらのミズナラ。少しずつ葉の状況に変化が見られ、どんぐりも実ってきていますので、秋への準備は着実に進んでいます。しかし、昨年はすでに実があちらこちらに落ちるほどでしたから、やはり、秋への準備が遅れているようです。
紅葉になり始めた模様が綺麗 |
しっかりと赤や黄色に色付いた紅葉もきれいですが、ご覧のように微妙に変化し始めたタイミングも、それは趣のあるもの...葉だけ見ていると、木の種類を判別することはなかなか難しいものですが、そこにぶら下がる実を見つければ、木の種類は一目瞭然です。
5裂の実から、ツリバナとわかる |
ご覧のように実がぶら下がっているのはツリバナ(吊花、ニシキギ科ニシキギ属)。ツリバナには何種類かの仲間があり、実の割れ方によって見分けられます。3裂はムラサキツリバナ(クロツリバナ)、そして、4裂はヒロハツリバナで、どちらも亜高山帯に分布します。そして、こちらの5裂は山麓に見られるツリバナです。乗鞍高原一帯の標高1500メートル付近は山地帯と呼ばれ、高山帯や亜高山帯よりも低い山麓側に位置しています。
花や実のない時期になると、ツリバナの種類を判別することが困難になるばかりか、ツリバナであることすら判別できなくなりますので、実が落ちる前に色々な植物を観察しておくと良いですね。
シラカバ | 黄色く色付き始める |
乗鞍高原周辺のシラカバもかなり黄色に紅葉が始まりました。ただ、シラカバは木全体が黄色に紅葉する様子はあまり見られず、黄色くなった部分はすぐに枯れ落ちてしまう状況があちこちで見られます。
道端に可憐な野菊 | ノコンギク − 草刈を免れて綺麗に咲き誇る |
県道乗鞍岳線の右端は色々な山野草があるのですが、全日本マウンテンサイクリングin乗鞍の大会開催に向けて、草刈が行われるため、折角の山野草が少なくなってしまいました。しかし、そんな中でも、何とか生き残っているノコンギクを見つけることができました。
ムラサキの舌状花は同じでも中央の筒状花の状態が異なる(左:咲いている、右:咲き終わった) |
ノコンギクは山地の秋の野菊を代表するもので、長期間に渡って花を楽しませてくれます。よく見ると左のように「咲いているもの」と、右のように「花が終わったもの」がありますが、どちらも咲いているように見えますので、我々の眼を長い間楽しませてくれるものです。
キク科の花は、植物の中で最も進化した植物といわれていて、紫色の舌状花は虫をおびき寄せるためのもので、実際の花はその中心部分に無数にある小さな花の集合体(筒状花)です。実際の花でない周辺部分に関心を寄せるのは、虫だけなく人間も同じなようですね。(→ Next)
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