ノリクラ 雪渓カレンダー
Vol.5(2015/06/06〜07) @
先月は気温の高い日が続き、梅雨入りが遅れるのではないかという報道もありましたが、今年も各地で続々と梅雨入りが発表されるようになってきました。天候不順の中でも「外遊び」を楽しく過ごせるような工夫ができれば、思ったほどの苦痛はありません。
6月6日(土)は、昨晩の雨が収まり、雲間に青空と山頂方面が見え隠れする朝を迎えます。しかし、大雪渓方面は終日濃霧で午前中は小雨の降る状況。昨日の乗鞍スカイラインは降雪のため、15時25分より通行止めとなりましたが、夜から雨に変わって路面の雪がとけたため、通常通り7時から通行可能になりました。大雪渓から山頂にかけての天候は、濃霧と冷たい西または北からの風が続き、冬に近い寒さです。午後になって雨と風は収まって、気温は若干高くなって寒さは和らぐものの、濃霧は相変わらず続き、山頂方面が姿を現すようになるのは15時以降で、あいにくの一日でした。
6月7日(日)は、快晴の朝から始まります。終日この天候を期待したいところですが、9時前には山麓から雲が湧き上がり、山頂付近は完全に雲に飲み込まれてしまいました。雲の動きや霧の流れ方は夏のノリクラそのもの。霧の流れの中入るとひんやりとした雰囲気があって、無風になるとやや蒸し暑さが戻ってくる感覚が周期的に繰り返され、山頂付近はほぼ終日濃霧が続きました。春山バスでお越しになる方々は、稜線まで登る山スキーヤーの方よりも、大雪渓で繰り返し滑走する夏スキーヤーのほうが多い状況となって、今年は早々に春山シーズンから夏スキーの季節へと移り変わって行く雰囲気が感じられました。
先月は昨年よりも2週間から1ヶ月程度早い状況が見られましたが、全体的に雪解けスピードが遅くなり、今週は山頂方面では昨年より2週間程度早い状況、大雪渓付近では昨年より1週間程度早い状況です。そのため、夏スキーのメインステージである大雪渓においては、例年と遜色ない積雪量と考えて差し支えないレベルに落ち着いて来たといってよいでしょう。
さて、6月8日は、岐阜県(東海地方)と 長野県(関東甲信地方)の梅雨入り平年日ですが、東海地方は6月8日の午前中に、そして、午後になって関東甲信地方の梅雨入りが発表されました。昨年よりも4日・3日早い状況です。これで岐阜と長野の両県にまたがるノリクラは完全に梅雨入りしました。梅雨明けの平年日は両地方とも7月21日ですので、海の日あたりまではぐずついた日々と仲良く過ごす工夫が必要でしょう。
それでは、二日間の様子をご覧ください。
■ご注意■
今回の取材記事は、バックカントリースキー・ボードの経験のある方を対象としたもので、初めての方へのイントロダクションという位置づけの内容ではありません。
初めてツアーコースなどにトライしてみたい方は、経験者と同行するか、ガイドツアーに参加されることをお勧めします。(乗鞍高原などにはガイドが同行するツアーを企画する会社がありますのでお問い合わせください。)
【6月6日(土)、雷鳥の卵を託す】
観光センター前駐車場 |
早朝7時の観光センター前駐車場。昨晩からの雨が収まり曇り空の朝を迎えます。
乗鞍スカイライン、春山バスともに通常どおり |
昨日のノリクラは吹雪でした。畳平スタッフの話では11時45分に気温3℃を観測して雪が降り始め、13時にはマイナス1℃まで低下して、14時にはマイナス1.5℃で吹雪なったとのこと。この時点では路面への積雪はなかったものの、その後も吹雪が続いて、15時25分に乗鞍スカイラインは通行止めとなりました。6月になって積雪による通行止めは、毎年ではないものの たびたび見られ、また、単に降雪という現象に限れば、ほぼ毎年確認されているはずです。
そして、夜になって山頂方面の雪は雨に変わり、降り積もった雪は朝には溶けてしまい、乗鞍スカイラインの通行止めは解除されて、通常通り7時に開門されました。また、長野県側の乗鞍岳春山バスが走る県道乗鞍岳線(冬季閉鎖中)も同様に積雪箇所はなく、始発便から大雪渓まで通常運行されることが決まりました。
取材陣が集まる |
さて、いつもなら春山バスに乗車するスキーヤー・ボーダーの方々の出発風景をお届けしますが、その前に、ノリクラにとって重要な一場面にお会いいたしましたので、お伝えいたします。
信州大学名誉教授
中村浩志先生(右) 環境省担当者(中央)、上野動物園担当者(左) |
右から雷鳥研究の第一人者の信州大学名誉教授 中村浩志先生(鳥類生態学)、そして、中央は環境省担当者、左は上野動物園担当者の3名です。
昨日採取した雷鳥の卵を上野動物園で人工飼育 | 10℃に保存して上野動物園へ |
今年から環境省では雷鳥保護に向けた人工飼育の取り組みが始まりました。今回は、乗鞍岳で雷鳥の卵を10個採取し、ニホンライチョウの近縁種であるスバールバルライチョウの人工飼育の実績がある、東京の上野動物園と富山市ファミリーパークで、ニホンライチョウの人工ふ化を行う予定です。
昨日は吹雪の中、中村先生らのグループで、産卵間もない雷鳥の卵が採取されました。ご覧の上野動物園の車内には10℃に設定した恒温槽が乗せられていて、この中に昨日採取した雷鳥の卵が保管されています。運転中の振動で卵に破損のないよう厳重にパッケージされているとのことでした。
吹雪の中3つ巣から5個の卵を採取(中村先生) |
今回の取り組みに対して、中村先生は、「雷鳥の縄張りは2009年の半分程度に減少していて、今回も卵を探すのは苦労しました。今回は5月上旬ごろから縄張り分布の調査を開始し、50近い縄張りがあることを把握しました。その中から、採取に適した巣を選定し、今回は3つの巣から5つの卵を採取することに成功しました。2008年からスバールバルライチョウ(ニホンライチョウの近縁種)の人工飼育に成功していて、しっかり飼育できると確信しています。ただ、人の手で育てた雷鳥を山に戻す段階が難しく、少なくとも今後10年は続く事業だと考えています。」と、おっしゃっていました。
トキやコウノトリのように自然界で絶滅させない(環境省の方) |
また、環境省の方は、「自然界で絶滅してしまったトキやコウノトリの経験を、ニホンライチョウの保全に生かして行きたい。将来的には生息数の減少している地域で増やしていきたいと思います。」と、今年から始まった取り組みについて、このようにおっしゃっていました。
人工飼育、宜しくお願いいたします | 上野動物園にむけて出発 |
ニホンライチョウの人工飼育は初めての取り組みですが、上野動物園と富山市ファミリーパークでは、スバールバルライチョウ(ニホンライチョウの近縁種)の人工飼育に成功しており、あと1週間ほど卵の採取を続けて、2施設での人工飼育が予定されています。上野動物園の方の話では、まずは人工飼育が成功することを目標に取り組んでいきたいとおっしゃっていました。
一昨年は、肩の小屋となりにある東京大学宇宙線観測所にて「ライチョウ家族のゲージ保護事業」が行われました。(参照:【孵化後、ライチョウ家族一ヶ月間ゲージ保護事業】(2013ノリクラ 雪渓カレンダーVol.15(2013/08/14〜17) F))
今回も「現時点でもっとも大事なのは生息数減少を食い止めること。これはトキの失敗をライチョウでは絶対に繰り返さない。」という強い危機感をもって取り組んでいらっしゃいます。
【レンゲツツジが見頃に】
自然保護センター | レンゲツツジが満開 |
さて、先週もお伝えした自然保護センターのレンゲツツジですが、完全に満開状態で、きれいな朱色を放っています。
一の瀬園地 | レンゲツツジ群落 |
乗鞍高原内でレンゲツツジといえば、やはり一の瀬園地にあるレンゲツツジ群落かと思います。
見頃を迎える − 昨年より1週間早い |
晴れ渡った日であれば、ノリクラの峰々をバックに高原らしい雰囲気のある写真が撮れるはずです。昨年はまだつぼみの状態でしたが、今年は1週間早く見頃を迎えました。
まだつぼみもあって見頃は続く |
完全に満開のものもありますが、ご覧のようにつぼみの状態のものもかなり見られますので、見頃はしばらく続くはずです。
観光センター | 今シーズン最後は「1ヶ月振りですよ〜」 |
さて、観光センターに戻って、そろそろ春山バス始発便の出発時間が近づいてきました。1ヶ月ぶりにお越しになったという右の常連の方。「シーズン終了を締めくくるためには、最後は絶対にノリクラに来なければと思ってましたが、何とか来ることができました。」とのこと...「終わり良ければ総て良し」という言葉があるように、締めくくりというものは大事ですね。
乗鞍岳春山バス始発便 |
今日の始発便は2台が運行され、約50名程度の方が大雪渓に向けて出発します。
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