ノリクラ 雪渓カレンダープレリリース版
Vol.4(2017/04/22) C
【ツアーコースV−位ヶ原急斜面】
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位ヶ原急斜面 | 位ヶ原山荘に向かうための案内看板 =悪天候時はここで進退の判断を決めること= |
こちらはツアーコース最後の位ヶ原急斜面。これまで樹林帯を切りとおしてコースが作られていましたが、この付近からはオープンバーンになります。
こちらは位ヶ原山荘に向かうための案内看板。ここには、「この先は今までのような道はありません。悪天候時はルートを見失いやすいです。最近、単独行の道迷い遭難が多いです。経験・自身のない方は無理せずここで引き返してください。」と、記されています。
この先は森林限界を超えてオープンバーンになりますから、今日のような視界状況では確実に方角を見失うことになります。方角を見失ってから(迷ってから)戻ろうとしても、もうその時点では戻れませんから、この看板の位置で、この先、進んでもよいのか・撤退すべきかを判断しなければなりません。
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昨年の位ヶ原急斜面 2016ノリクラ 雪渓カレンダー プレリリース版Vol.6(2016/04/20・23) F ↓ |
先週の位ヶ原急斜面 ノリクラ 雪渓カレンダー プレリリース版Vol.3(2017/04/15) C ↓ |
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今回の位ヶ原急斜面 |
位ヶ原急斜面の積雪は、昨年より2メートル程度多く、積雪の多かった一昨年よりも多い状態です。先週と比べるとわずかですが、雪解けが進んでします。
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まだまだ積雪量に問題はない |
昨年はかなりブッシュが多くなってしまいましたが、今年はまだこの傾向はありません。シーズン初めは往来できないほどひどい状態ですが、シーズン終わりに関しては、位ヶ原急斜面よりも山麓側の入口急斜面のほうが先に往来不能になりますので、実際にはこちらの往来可否はあまり大きな問題とはなりません。
ツアーコースでの下山滑走は、例年5月中旬ごろまでですが、6月でもこの斜面には積雪が残っているものの、少し滑り出すと滑走できなくなりますので、ご注意ください。
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黄砂の上にうっすらと降雪 |
今週は黄砂の影響でしょうか?バーンがまだら模様になっています。表面は白い雪に覆われていて、その下が汚れています。黄砂の後に降雪があったということです。
【位ヶ原急斜面と伊奈川の谷について】
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【本物】左の谷−位ヶ原急斜面(正規下山ルート) | 【偽物】右の谷−伊奈川の谷(間違えて何度も遭難あり) |
さて、こちらは位ヶ原急斜面を上から眺めたもの。左が「本物」で右が「偽物」です...
この2枚の画像は左右連続写真(※)で、左が本物の位ヶ原急斜面で。右は伊奈川の谷で位ヶ原急斜面ではありません。特に濃霧の時は同じような地形に見えてしまい、ツアーコースへ下山する際に間違えて伊奈川の谷へ進んで、これまで何度も遭難が発生しています。乗鞍岳春山バスが運行される4月下旬には、伊奈川に立ち入らないようにロープが設置されますが、この時期はありません。
(※ 実際には左右の画像の間に尾根部分があります。)
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位ヶ原急斜面と伊奈川の谷は隣り合っているので間違いやすい ノリクラ雪渓カレンダー冬〜春スキー版 |
ツアーコースの位ヶ原急斜面は青い部分、伊奈川の谷は赤い楕円の箇所です。ご覧のとおり隣接していて、大雪渓・位ヶ原や山頂方面から下山する際に間違いやすい位置にあります。位ヶ原急斜面や伊奈川の谷の周辺の位置関係は、ノリクラ雪渓カレンダー冬〜春スキー版 で確認できますので、ぜひ一度ご覧ください。
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伊奈川の谷−大きな岩場があるのが特徴(中央) |
伊奈川の谷には雪着きの悪い大きな岩場があり、これが位ヶ原急斜面との大きな違いです。濃霧の中でも、斜面の中に大きな岩場があるかどうか確認できるはずです。
【位ヶ原】
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位ヶ原 |
ツアーコース位ヶ原急斜面を登りきった先より、森林限界を超えて位ヶ原の台地に入ります。森林限界を超えると、天候・気候が急激に変化します。もし、急激に雲が流れ込んで視界が阻まれるようになったら、急いで引き返す必要があります。
判断の一つとして、行く先の上端部分が確認できるかどうかがポイントです。もし、上端が見えない状態であれば、引き返すことをオススメします。今回はこの先に丘があるはずですが、視界が50メートルほどしかないため、確認できません。そのため、今回はここで引き返すという判断をします。
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昨年の位ヶ原 2016ノリクラ 雪渓カレンダー プレリリース版Vol.6(2016/04/20・23) F |
今回の位ヶ原 2週間前より35センチ減少 昨年より25センチ多い |
先週は悪天候のため、こちらまで到達することができませんでしたが、2週間前と比べて35センチの減少です。また、昨年と比べて125センチ多い状態です。
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ハイマツ帯の状況は2週間前と変わらない |
2週間前に析出したハイマツ帯はあまり変化がない模様。しかし、風の影響で雪面の隆起があって、厳冬期ほどではないにせよ、まだまだ風の影響を受ける時期が続いています。
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昨年の剣ヶ峰方面 速報(2016/04/23) |
今回の剣ケ峯方面 | |
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昨年の摩利支天岳すべり台方面 速報(2016/04/23) |
今回の摩利支天岳すべり台方面 |
剣ヶ峰方面は昨年とそれほど変わらない状況が見受けられますが、摩利支天岳方面は明らかに積雪量が多いことがわかります。
【大雪渓下部】
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それでは大雪渓下部の様子をお伝えします。
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2015年の大雪渓下部 2015ノリクラ 雪渓カレンダー プレリリース版 Vol.6(2015/04/25) C ↓ |
昨年の大雪渓下部 ノリクラ 雪渓カレンダー プレリリース版Vol.6(2016/04/22) D ↓ |
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今回の大雪渓下部 3週間前とほぼ同じ、昨年より1メートル多い |
悪天候のため、3週間も出向くことができませんでしたが、3週間前の4月1日と同じ水準を保っています。本来ならもう少し増えていてもよい時期です。
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トイレ・避難小屋方面 |
大雪渓入口から北側へ50メートルのところにトイレ小屋と避難小屋があります。
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トイレ小屋・避難小屋(冬季閉鎖中)−利用可能は5月下旬〜6月上旬以降 |
避難小屋・トイレは冬季閉鎖中で、乗鞍岳春山バスが大雪渓まで延長運行される5月下旬〜6月上旬に利用可能になります。例年よりもやや多い積雪状況です。
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朝日岳稜線直下より上部はアイスバーン − アイゼン必須 |
今日は山頂方面に登って行く方々の姿がたくさん確認できました。右の画像は朝日岳の稜線付近。多くの方がここから下山滑走される様子がみられました。下山滑走された方のお話では、稜線に出る直前まではシールで何とか登行することができたものの、その先はアイゼンでないと無理で、多くの方がここで断念されたとのことでした。
ゴールデンウィーク過ぎまでは、稜線付近はまだアイスバーン状態のことが多く、スキーアイゼンでも登ることが困難なことが多い状態です。12本爪アイゼンの携行をお勧めします。
【県道乗鞍岳線の除雪状況】
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除雪は21日(金)に位ヶ原山荘に到達 |
さて、乗鞍岳春山バスの運行を控え、県道乗鞍岳線の除雪作業が進められています。21日(金)に除雪の先端が位ヶ原山荘に到達しました。除雪日程としては例年並みですが、今年はスキー場営業終了が1週間程度遅かったため、三本滝ゲート以降の除雪開始が遅れましたから、それを勘案すると例年よりも早いペースで進められたことになります。
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雪壁は低い所で3m以上、高い所は確実に5m以上 (冷泉小屋〜位ヶ原山荘間) |
積雪量は冷泉小屋付近から急激に増加し、低いところでも3メートル以上。高いところは測定できていませんが、5メートル以上は確実にある状況です。
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29日運行開始予定の乗鞍岳春山バスは、前日28日に最終決定 |
乗鞍岳春山バスの運行までには、運行に使用する大型バスを用いての試運転を実施したうえで、運行可否が決定されるため、運行開始日(今年は4月29日)の数日前には除雪が完了する必要があります。ただ、場所によっては、道幅が狭いところがあり、雪壁を削って拡張する必要のある場所もありますから、29日に間に合うかどうかは、今後の作業にかかっていて、前日の28日に最終決定されます。なお、決定され次第、お伝えいたします。
<編集後記>
「乗鞍スカイラインの一部区間早期開通」
富山県の立山黒部アルペンルートが4月15日に開通し、かの有名な「雪の大谷」は昨年より6メートル高い19メートルに達しているとのこと。観光客の多くが、この雪の大谷を目的に訪れ、特に雪のない地域の海外旅行客には人気とのこと...
ゴールデンウィーク頃から運行開始の乗鞍岳春山バス(長野県側 乗鞍高原〜位ヶ原山荘)も、雪の壁を行く車窓が評判を呼び、一般観光客(雪見客)も年々増加しています。しかし、同じ乗鞍に通じる岐阜県側の乗鞍スカイラインは5月15日からの開通で、ゴールデンウィークのタイミングに間に合わないことが、問題視されていました。
そこで乗鞍スカイラインでも、今年から新たな試みとして5月1日より、夫婦松駐車場まで早期開通させます。夫婦松駐車場の標高は1973メートル。長野県側の摩利支天バス停付近に相当する標高ですから、周囲の雪景色を十分楽しめる状況かと考えられます。
これにより、新たな集客につながることを期待したいところです。なお、国内自動車道最高標高地点である終点 畳平(標高2702メートル)への全線開通は、例年通りの5月15日予定です。
■ご注意■
今回の取材記事は、バックカントリースキー・ボードの経験のある方を対象としたもので、初めての方へのイントロダクションという位置づけの内容ではありません。
初めてツアーコースなどにトライしてみたい方は、経験者と同行するか、ガイドツアーに参加されることをお勧めします。(乗鞍高原などにはガイドが同行するツアーを企画する会社がありますのでお問い合わせください。)
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