ノリクラ 雪渓カレンダー

Vol.6(2015/06/13〜14) D

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(Update:2015/06/18)

 

【稜線へ】

それでは肩の小屋から稜線に向けて出発します。

 

枯草の中からハクサンイチゲが可憐に咲く

出発してすぐのところですが、枯草の中から(←これもれっきとした高山植物です。ミヤマクロスゲ)、可憐なハクサンイチゲが開花を始めています。高山植物の中には雪解け間際の水辺を好むハクサンイチゲのようなものもあれば、ミネズオウやイワヒゲなど岩の隙間に自生するものなど さまざまで、ひとくくりに高山植物と言っても、コマクサのように完全に高山帯にしか自生しないものから、ショウジョウバカマのような山地に自生するものまで、色々なところに分布していて、それが多様性の表れともいえます。

 

肩の小屋から稜線方面への登山道

先週もお伝えしておりますが、例年ならまだ積雪があってもおかしくないものの、今週は朝日岳直下に出るまで完全雪解けが完了しました。

 


拡大

朝日岳直下まで積雪はありません − 雪に慣れていない方はここで引き返すことをお勧めします

左は朝日岳直下に出るまでの登山道を拡大したところ。その先に少し白い部分がありますが、それが右の画像で、ここから先が朝日岳直下のバーンです。雪に慣れていない方は、ここで引き返すことをお勧めします。(登ることができても、下ることができなくなります。)

 

【稜線】

こちらは蚕玉岳(こだまだけ)〜朝日岳の稜線。画像の左側が蚕玉岳山頂(標高2979メートル)に続き、画像右側が朝日岳山頂(標高2975メートル)に続いています。

 

積雪部分は朝日岳直下のみ(100メートル)
=積雪は6月中旬から下旬並み=

現在、雪の上を歩く必要があるのは、朝日岳直下の赤線部分のみで、雪上の距離は先週の140メートルから100メートルへと短くなっています。積雪は6月中旬から下旬並みの状況です。赤丸のバーン狭小箇所は今週になって途切れる可能性がありましたが、雪解けスピードが先週よりも遅くなり、今週も問題なく滑走可能な状態です。おそらく、次週末には分断されると推測されます。また、バーン上端から滑走する際には、途中の 登山者の歩行を妨げないよう、また、登山者の安全に配慮した滑走をお願いいたします。

 

ステップが切ってあるものの、下りは苦労
=アイゼン着用を=
シールで登る山スキーヤー

ルート上はステップが切ってあり、それに合わせて歩けば登りは問題ないものの、今回も下りでは苦労されている方が多数いらっしゃいました。慣れていない方は、ぜひともアイゼン着用をお願いいたします。

稜線付近の積雪が少なくなり、シールで登ってくる山スキーヤーの姿がめっきり減ってきましたが、「7月になっても大雪渓での夏スキーに来ますよ!」と、おっしゃってくださり、まだまだ、バックカントリーのシーズンは続きます。

 

今週から登山道の一部が歩行できる

登山道のつづら折れ箇所は、先週の段階ではまだ大半が埋まっていて通行に適さなかったものの、つづら折れの一部で雪解けが進み、一段下の折り返し箇所にルートが付け替えられました。そのため、積雪区間は先週と変わらないものの、積雪区間を歩く距離が先週の140メートルから100メートルへと短くなりました。

なお、スキーヤーの場合は、ブーツで登山道を歩くのは困難なため、先週と同様につづら折れ箇所の上端まで雪上を歩いたほうがよいでしょう(赤点線)。

 

朝日岳直下から滑り降りる 「雪があるうちはまだまだ来ますよ!」

朝日岳直下から滑り降りるこちらの常連。「雪があるうちはまだまだ来ますよ!」今シーズンのツアーコースは12月上旬に大雪が降っていきなりシーズンインしましたが、それ以来、毎週欠かさずノリクラ通いが続いています。

 

大雪渓に滑り降りる狭小部分 − 次週末あたりは途切れる可能性が

大雪渓に滑り降りる狭小部分は、ターンが問題なくできる程度の幅があって、おそらく、次週末あたりは、一部で歩く必要があるものの、滑走できる可能性が考えられます。

 

昨年同時期の蚕玉岳〜朝日岳稜線
2014ノリクラ 雪渓カレンダーVol.6(2014/06/14〜15) D
先週の蚕玉岳〜朝日岳稜線
ノリクラ 雪渓カレンダーVol.5(2015/06/06〜07) D
今週の蚕玉岳〜朝日岳稜線
昨年より2週間以上早い雪解け

こちらが稜線部分。手前が朝日岳方面で、画像に写るなだらかなピークが蚕玉岳、それに続く奥のピークが主峰の剣ヶ峰です。左上は昨年同時期の画像。そして、右上は先週の画像。そして、下段は今週の画像です。先週の段階では昨年よりも2週間以上早い雪解けで、おそらく、今週も昨年より2週間以上早い状態かと思います。

 

昨年同時期の権現ヶ池
2014ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.6(2014/06/14〜15) D
先週の権現ヶ池
ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.5(2015/06/06〜07) D
今週の権現ヶ池
昨年より1週間早い雪解け

御岳の二ノ池に次いで国内2番目の標高に位置する権現ヶ池(ごんげんがいけ、標高2845m)。先ほどの稜線部分の3枚と同様に、左上が昨年同時期の画像、右上が先週の画像。そして、下段は今週の画像です。先週の段階では昨年よりも2週間以上早い雪解けでしたが、今週はほとんど雪解けがなく、昨年より1週間程度早い雪解け状況にとどまっていると考えられます。

 

昨年同時期の蚕玉岳〜朝日岳稜線
2014ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.6(2014/06/14〜15) D
先週の蚕玉岳〜朝日岳稜線
ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.5(2015/06/06〜07) D
今週の権現ヶ池
昨年より1週間早い雪解け

こちらが朝日岳山頂から続くバーンで、画像手前にある稜線は積雪がありませんので、滑走は稜線からこちらに移動する必要があります。左上が昨年同時期の画像、右上が先週の画像。そして、下段は今週の画像です。先週の段階では昨年よりも2週間以上早い雪解けでしたが、今週はほとんど雪解けがなく、昨年より1週間程度早い雪解け状況にとどまっていると考えられます。

 

【頂上小屋に立ち寄る】

こちらは剣ヶ峰直下にある頂上小屋。

 

先週から今シーズンの営業が始まる 剣ヶ峰山頂まで5分

先週から今シーズンの営業が始まりました。右の画像は頂上小屋から望む剣ヶ峰山頂。ここから5分程度で登頂できます。

 

多くの方が立ち寄って休憩を

バケツに雪を入れて、缶ビールが冷やされています。こんなものを目の前に差し出された時には、ガマンの限界が超えてしまうもの(笑)...今回も剣ヶ峰登頂の下山途中に立ち寄る方が絶えることなく続きました。

 

【剣ヶ峰〜蚕玉岳】

こちらは剣ヶ峰〜蚕玉岳(こだまだけ)稜線。

 

昨年同時期の蚕玉岳山頂付近
2014ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.6(2014/06/14〜15) D
先週の蚕玉岳山頂付近
ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.5(2015/06/06〜07) D
今週の蚕玉岳山頂付近
昨年より2〜3週間早い雪解け

蚕玉岳山頂付近の様子。左上は昨年同時期の画像。そして、右上は先週の画像です。そして、下段は今週の画像です。積雪量は昨年よりも3メートル近く少なく、2〜3週間ほど雪解けが早いことがわかります。

 

上端は登山道よりも下がる − ブーツで急斜面を降りるのは危険なため、今後は滑走困難に

雪渓の上端は登山道よりも下がってしまいました。おそらく、今後はさらに後退すると考えられますが、ブーツで急斜面を降りるのは危険がありますので、今後は滑走困難になってきます。

 

昨年同時期の位ヶ原
2014ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.6(2014/06/14〜15) D
昨年同時期の1週間後の位ヶ原
2014ノリクラ 雪渓カレンダーVol.7(2014/06/20〜21) B
今週の位ヶ原
昨年より2週間早い雪解け

稜線付近からの位ヶ原。左上が昨年同時期の画像。右上が今週と同じ積雪状態の昨年同時期の1週間後の画像。そして、下段は今週の画像です。今週は右上の画像よりも雪解けが進んでいる様子がみられますが、昨年同時期の2週間後の画像がありませんので比較できません。おそらく、先週同様に昨年より2週間早い雪解けと推測されます。

 

昨年同時期の剣ヶ峰直下の岩
2014ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.6(2014/06/14〜15) D
今週の剣ヶ峰直下の岩
6月下旬並みの状況

剣ヶ峰直下の岩付近も昨年の6月下旬並みの状況です。

 

3分の1地点 バーンが分断されました

稜線から県道乗鞍岳線までの区間の約3分の1程度まで滑り降りたところ。3週間前からバーン中央に岩の頭が出現しました。例年、6月中旬から下旬ごろになって表れるもので、今年は1ヶ月も早く出現しました。ちなみに、昨年はこの岩が出現したのは6月20日ごろで、その前に上端部分の雪がなくなり滑走できなくなりました。

岩の頭が出始めてから1ヶ月が経過して、ご覧のようにバーンが分断されました。

 

数日以内には分断部分が多くなり滑走困難へ

現在の分断箇所は上の1箇所のみですが、数日以内には分断部分が多くなります。また、スキーブーツで急斜面の岩場を降りる危険性から、ここが分断されたのちは、稜線からの滑走は困難と考えたほうがよいでしょう。

 

全景 ハイマツ帯が小高くなる

分断箇所を超えた後は問題なく滑走可能です。右の画像を見ると、ハイマツ帯がかなり高いところに位置していることがわかります。この1ヶ月でこれだけの雪解けががあったことがわかります。

 

切り通しは80センチ
過去最低の積雪量

そして、稜線から約1kmほど滑り降りると県道乗鞍岳線と合流します。切り通しの高さは80センチ、2014年は2.5メートル。2013年は1.8メートル、2012年は3.4メートル、2011年は1.7メートル、2010年は2.3メートルで、過去最低の積雪量です。

次週は上端部分が登山道よりもさらに下がり、分断箇所も大きくなることから滑走困難となり、剣ヶ峰〜蚕玉岳稜線のコーナーは今回で最後になります。

 

【昨年の今ごろは?】

例年なら、6月中旬ともなると、春スキーの雰囲気に加えて、夏スキーという雰囲気の両方を感じさせるようになってきます。それは天候などの状況とともに、訪れる方々の様相から感じ取ることができます。また、春スキーのシーズンとしてはそろそろ終りに近づき、バックカントリースキーヤーの方々にとっては、ゲレンデのスキーシーズンが終盤に差し掛かった頃のような感覚でしょうか...でも、今年は山頂付近の積雪量が多く、春スキーが終盤に差し掛かっている様子をまだ感じさせません。

6月14日(土)は、寒気が流れ込んで冷え込んだ一日となりました。午前中は濃霧と霧雨で、乗鞍岳春山バス始発便から降り立ったスキーヤー・ボーダーの方々も、冷たい雨にかなり辛そうな状況。そのため、一斉に避難小屋へ逃げ込んで、定員オーバーのすし詰め状態です。厳冬期と異なり、軽装でお越しの方も多かったため、想像以上の低い気温は耐え難いところがありました。午後になって天候は回復傾向となり、時折、山頂方面が確認できるようなってきます。しかし、しっかりと回復したのは15時以降で、もう少し早く天候が回復してくれたらと悔やむところです。

6月15日(日)は、昨日とは打って変わって雲ひとつない快晴の朝を迎えます。若干冷え込んだ空気に包まれ、日差しが高くなっても暑さをほとんど感じない状態が続きます。大雪渓では、いつものように一斉に稜線目指して登る光景が見られるものの、大雪渓下部では、スコップで作ったモーグルコースを何度も繰り返す様子があって、春山のバックカントリースキーヤーと夏のモーグラーがそれぞれの楽しみ方で過ごされていました。そして、午後になると、青空にモクモクと夏の雲がわき始め、そんなところからも、季節は夏へと移りつつあると感じられます。 

 

<編集後記>

5月末に長野県より、平成27年ゴールデンウィーク(4月25〜5月6日)における主な観光地(51箇所)の利用状況が発表されました。51箇所の大半(47箇所)で増加し、全体では前年比188.6%と2倍近い増加率になりました。主な要因のうち、「日の並びがよく、天候に恵まれたため増加」が最も多く、そのほかでは「北陸新幹線延伸」と「善光寺御開帳」が理由に挙げられています。

51箇所のうち乗鞍近隣では上高地と松本城が含まれていて、それぞれ、前年比104.1%、116.3%でした。また、乗鞍高原では宿泊者数や直接的な来場者数はカウントされていないため不明ですが、乗鞍岳春山バスは前年比97.0%と前年割れでした。ただこれは運行開始が25日から29日に変更されたことが要因で、今年の運行期間の4月29日〜5月6日に限って算出すると前年比130.0%となり、上高地や松本城を上回りました。

この数字(130.0%)は県平均の188.6%には及ばない数字ですが、51箇所のうち、ずば抜けて伸び率の高い元善光寺(飯田市、2933%)と善光寺(長野市、716.9%)を除いた前年比は114.3%ですから、乗鞍の人気度は平均よりも高いといってよいかと思います。また、春山バスの雪見客については全乗客の54.3%で昨年の67.2%を下回り、雪見客が多くなる連休後半の伸びが少なかったようです。

今年は春先の積雪量が多かったため除雪が遅れ、春山バス運行開始が遅れましたが、予定通り4月25日から運行されていれば、確実に前年以上の実績となったはずですから、来年はぜひとも予定通り運行が開始できるように体制を整えていただきたいと思います。

 

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