ノリクラ 雪渓カレンダー
プレリリース版 Vol.1(2012/03/24) C
【ツアーコース − 位ヶ原急斜面】
こちらはツアーコース最後の位ヶ原急斜面。これまで樹林帯を切りとおしてコースが作られていましたが、この付近からはオープンバーンとなってきます。
昨年の位ヶ原急斜面 2011ノリクラ 雪渓カレンダー プレリリース版Vol.1(2011/03/26) C ↓ |
先週の位ヶ原急斜面 (2012/03/17) ↓ |
位ヶ原急斜面の積雪は先週より40センチ多く、昨年と比べて60センチ少ない状況です。先週までは昨年よりも1メートル以上少ない状況でしたので、今後の降雪でも積雪量の増加を期待したいところです。
濃霧 − 視界は100メートルほど | ダケカンバの枝は氷結 − 明け方は雨であったことが推測 |
正午の位ヶ原急斜面の気温はマイナス6℃まで低下しています。視界は100メートル程度で山麓方面の様子は全く確認できません。ダケカンバは枝先までびっしりと凍り付いています。着雪ではなく氷結状態になっていますので、降雨の後、気温が下がってきたことが推測されます。
相変わらず吹雪は続き、この視界状況ではこれより上部に向かうことは、避けたほうがよいと判断されるのが一般的と考えられます。
【位ヶ原】
ツアーコースを登りきった先の位ヶ原。標高約2500メートルの台地は、森林限界を超えるため、ツアーコースとは異なり、目印となる木々が極端に乏しくなってきます。
先ほどのツアーコース位ヶ原急斜面のダケカンバは氷結状態でしたが、ここでは、びっしりと着雪しています。この様子から、今朝から降り始めたものは雨ではなく、湿雪であったことが推測できます。
あまりにもびっしりと着雪しすぎたため、枝が大きく垂れ下がっています。こんな様子を見るのも珍しいことです。
見事といえる樹氷ですが、「綺麗...」などとうっとりとしていられる状況ではありません。気温はさらに下がってマイナス10℃。吹雪に加えて、風も強くなり、時折、地吹雪にもなります。
この画像を見て、位ヶ原のどこであるか判断が付かないと思います。ですから、この状況で位ヶ原に入り込んでしまうと、帰ってこられなくなってしまうわけです。視界そのものは、先ほどのツアーコース位ヶ原急斜面とそれほど変わりありませんが、周辺に木々や標識といった構造物が乏しいため、ひどい濃霧の中にいるように感じるわけです。
ですから、ツアーコース内で視界がある程度確保されていても、同じ感覚で位ヶ原を歩くと大変なことになるわけです。この天候下では、位ヶ原に足を踏み入れてはいけないと考えたほうがよいでしょう。
不用意に足を踏み入れ、引き返すことができなくなって、「大変なことになった!」と思った瞬間には、「遭難」という状況が想定されます。
【位ヶ原山荘】
こちらは標高2350メートルの位ヶ原山荘。位ヶ原山荘はグリーンシーズンはもちろんのこと、一部の期間を除いて厳冬期も営業しています。位ヶ原山荘は、北アルプス地域で冬季営業する数少ない山小屋の一つです。
今日も薪ストーブを囲んで常連の方々が集まっています。
厳しい条件下でも、この位ヶ原山荘での団欒を楽しみにしているからこそ、まるで「修行」ともいえる吹雪の登行に耐えることができるのでしょう。
でも、冬の厳しさが緩んで春になってくると、何か「自分のノリクラ」が遠ざかって行くような感覚にもなるものです。
<編集後記>
今回は厳冬期と春先の違いを重点に記事を作成しました。一般的にどちらが厳しいといえば、「厳春期」という言葉が存在しないことからも、やはり冬のほうが厳しいのだろうと思います。確かに寒いということだけで、いろいろな制約が冬にはあります。そのため、春になってからバックカントリースキーにお越しになる方が、ノリクラでもたくさん見られるようになって来ました。
しかし、春は真冬以上に天候の変化が激しく、そのことが起因していろいろな現象をもたらす時期でもあります。
その一つが雪崩。天候や気温の変化で雪層の内部が不安定になり、また、冬では見られなかった降雨による影響により、雪崩が誘発される危険性が高まります。また、気温が高くなると濃霧が発生しやすくなり、特に位ヶ原より上部では、午前中は綺麗に晴れ上がっていても、いきなり濃霧に見舞われて、帰るに帰られないといった状況に陥ることが多々あります。さらに終日マイナス10℃以下の厳冬期から、気温が0℃前後を推移する春先になれば、日中の雪解けと夜間の冷え込みが繰り返され、翌朝には全山アイスバーンになることもあります。
以上のように主だった点だけ挙げても、厳冬期と同等の危険度があることが推測されます。天候の変化が起きやすい事象から、いろいろな現象に遭遇するだろうという想像力こそが、アイゼンやピッケルといった冬山装具以上に「最強な装備」であると言えるでしょう。
■ご注意■
今回の取材記事は、バックカントリースキー・ボードの経験のある方を対象としたもので、初めての方へのイントロダクションという位置づけの内容ではありません。
初めてツアーコースなどにトライしてみたい方は、経験者と同行するか、ガイドツアーに参加されることをお勧めします。(乗鞍高原などにはガイドが同行するツアーを企画する会社がありますのでお問い合わせください。)
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