ノリクラ 雪渓カレンダー

Vol.13(2011/08/04〜05) E

Top-page > Index > Page:   1  2  3  4  5  6

(Update:2011/08/11)

 

【畳平、お花畑】

それでは、畳平のお花畑の様子をお伝えします。7月を中心にいろいろな高山植物が見られる時期を迎え、8月に入っても、まだまだ、見頃の時期が続いています。畳平のお花畑は、ノリクラの中で気軽に訪れることができる箇所としては、もっとも大規模な高山植物のお花畑といえます。

 

入口付近 − ハクサンイチゲはほぼ終了

お花畑の雪解けは、このあとご案内する周回コースの奥のほう(西側)から始まり、入口方面(東側)へと順番に進んで行きます。そのため、高山植物の生育も、周回コースの奥のほうが先に進み、入口方面へと順番に進んで行きます。

こちらは階段を下りてお花畑入口付近。全体の中でもこの付近は雪解けの遅いエリアとなります。この付近でもハクサンイチゲの群落が終わり、お花畑の見頃の時期はひと段落します。

 

入口付近 − コバイケイソウ(種子) 入口付近 − ネバリノギランが見頃

左の画像は、コバイケイソウ。ご覧のように花期は終わり、種子ができている様子が見られます。しかし、右の画像のネバリノギランのように、これから咲く花もあって、まだ、見頃の時期が続いていることがわかります。

 

入口付近 − モミジカラマツが見頃

そして、ハクサンイチゲの白の群落に置き換わって咲くのは、モミジカラマツ。先週までは、ハクサンボウフウが咲く様子が見られましたが、今週は花期が終わりに近づいてきているようで、そのため、現在は白の群落を形成しているのは、モミジカラマツだけとなっています。

 

入口付近 − オトギリはこれからが花期

さらによく観察すると、オトギリが開花を始める様子が見られます。この高山植物が咲き始めると、夏も終わりに近づいてきているように感じます。

 

入口付近 − ミヤマキンバイは紅葉が始まる

ミヤマキンバイは、すでに花期を終え、一部の葉は、ご覧のように紅葉が始まっている様子もあります。季節を先取りするかのように、移り変わって行く高山植物の変化が、垣間見られます。

 

遊歩道分岐点

遊歩道をさらに進んで周回コースを右に回り、お花畑を奥のほうへ(西の方へ)向かいます。

 

分岐点付近 − ミヤマクロスゲ、木道より背が高くなる

遊歩道の木道を良く見ると、高山植物の背丈が木道よりも高くなっている様子が見られます。知らないうちに生い茂っているのは、ミヤマクロスゲ。秋に入って、葉が黄色く変化を始めると、太陽の日差しを受けて、黄金色に輝く様子はまるで麦畑のような光景です。

 

分岐点付近 − オンタデ

先週あたりから目立つようになって来たのは、オンタデ。

 

オンタデ(雌株) オンタデ(雄株)

雌雄異株のオンタデは、花の色でどちらの株であるかわかります。

 

ヨツバシオガマ − 花期が長く楽しめる

オンタデが点在する中に、ヨツバシオガマが見られます。ヨツバシオガマは比較的花期が長く楽しめ、さらには、花も葉も全身を紫に染める様子が最後に見られ、「葉まで美しい」という形容から「シオガマ」という名称に値する様子を見届けたいものです。

「葉まで美しい」から「シオガマ」にたどり着くまでの言葉の連想は、その理由を聞かない限りは、なかなかたどり着かないもです。(葉まで美しい → 浜で美しい → 浜でつかうもの → 塩釜(シオガマ))

 

遊歩道に隠れるように咲く

まるで、遊歩道に隠れるように咲いているこちらの高山植物は、誰にも見つけられずに、素通りされているかもしれません。

 

クロクモソウ ウメバチソウのつぼみ − これから楽しみ

こちらの高山植物は、クロクモソウ。花の部分は、少し地味なスタイルですが、葉が特異的な形状をしていますので、見慣れてくると、すぐに発見できます。

また、右の画像は、ウメバチソウ。もともと、高さ10センチ程度の小さな高山植物ですが、現段階では、さらに小さく、また、ご覧のような小さなつぼみですから、見過ごされてしまいますが、パッチリした花の姿は、これから楽しむことができるでしょう。

 

周遊コース中央付近 − ハクサンボウフウは花期を終える

先週の周回コース中央付近は、ハクサンボウフウが白一色に広がっていました。しかし、今週はその様子がありません。よく見ると、ハクサンボウフウは花期が終わり、一つひとつに小さな種子ができている様子が見られます。

 

そして、周回コースの奥では...

 

周遊コース奥 − ミヤマアキノキリンソウ 周遊コース奥 − イワギキョウ

ミヤマアキノキリンソウやイワギキョウが見られます。イワギショウは、先週あたりからちらほら見られましたが、今週は花期のピークに入って来たようです。

 

周遊コース奥 − ミヤマクロユリの種子が膨らむ

この付近は、これまでミヤマクロユリが群生していました。しかし、すでに花期は終わり、右の画像のように種子が大きくなってきている様子が見られます。

 

畳平のお花畑は、種類を変化させながら、見頃の時期がまだまだ続いて行きます。

 

【昨年の今ごろは?】

2010ノリクラ雪渓カレンダーVol.13(2010/08/07〜08)

8月7日(土)は、朝は曇空が広がるものの、次第に差し込む日差しみ、乗鞍高原は夏の雰囲気に包まれます。しかし、上部エリアの大雪渓では山麓から絶えず流れ込む雲ではっきりとしない天候、そして、いつもなら、風の流れは西または北からと決まっているものの、今日は終始東から吹き抜け、その風にひんやりとした冷涼感をがあり、、汗をかくという感覚がすーっと消えて行きます。この天候も、15時過ぎになってきれいな青空が広がるようになってきました。

そして、翌日の8月8日(日)も曇り空が終日続きます。しかし、昨日とは異なり乗鞍高原でも少しばかりひんやりとした雰囲気があり、ヒルクライムしていても肌寒さを覚えるほど。山頂付近は絶えず雲が流れ行き、大雪渓エリアは昨日のように東から冷たい空気が入り込んでいて、8月とは思えない冷涼な雰囲気は昨日以上のものとなりました。そして、ヒルクライムに訪れる方が県道乗鞍岳線を絶えず行き交い、今日一日だけで200台以上の自転車が三本滝ゲートを駆け上がって行きました。

 

<編集後記>

厳冬期の降雪量を推測する方法として、周辺の木々の様子を観察するとわかるという話は良く聞くものです。積雪に覆われた部分までは、枝が横にたわんでいて、それより上部は、積雪の影響を受けないため、枝ぶりの違いにより、その境目から積雪量がわかるというものです。

諸外国の状況では、いわゆる高山帯は、標高3000メートル以上となっていて、それを国内に当てはめると、高山帯といわれるエリアは、ほんの一握りとなってしまいます。しかし、実際には、中部山岳地帯を中心に、数多くの高山帯が存在し、標高2000メートル付近でも高山帯が見られる山もあるほどです。

それは、国内の山岳地帯が、厳冬期の強烈な偏西風と多雪に起因しているとされているからです。また、高山帯の下部には、シラビソなどの針葉樹が分布する亜高山帯があります。それらの針葉樹が、さらに上部に進出できないのは、冬の強風に耐えられないためで、富士山などでは、地面に這いつくように変形してしまったカラマツが、高山帯で見られるほどです。

そのような過酷な日本の高山帯に広く分布するのがハイマツ帯ですが、これも前述の日本特有の冬の条件にマッチしたため、分布が拡大したと考えられます。マイナス20℃以下になるような条件で、そのまま外気にさらされていると、いくらハイマツといえども凍死してしまいます。そのため、厳冬期には雪中に埋まることが必要なりますが、諸外国の高山では、日本ほどの多雪でないため、ハイマツが埋まるほどの積雪量はなく、山岳地帯をビロードのように埋め尽くす見事なハイマツ帯は、日本の高山特有の光景なのです。その中で、広大なハイマツ帯が広がるノリクラは、どれほど貴重なものであるかが想像できるでしょう。

もし、ノリクラから、ハイマツの絨毯がなくなってしまったら、殺風景極まりないロケーションになることは間違いないと、考えられます。

【これからノリクラデビューを検討されている方へ】

先週までは、お越しになる上で、注意しなければならないことについて記してきました。しかし、スキー・ボードで大雪渓を滑走するだけでなく、色々なものに目を向けて、ノリクラ全体を楽しんでいただけたら幸いと思っております。

大雪渓エリアには、高山植物がたくさん咲き誇っています。きれいに咲く花々の様子を見ると、それが高山植物であるということは、誰しも認識できると思います。ただ、咲いているものだけが高山植物ではなく、ここに自生している、ほぼすべての植物が高山植物といっても良いくらいです。おそらく、皆さんが認識している高山植物とは、お花畑のように大群生しているものを想像されているかと思いますが、そのようなエリアのほうが、ごく限られていて、実際は、その高山植物が自生するのに適したエリアだけに点在し、短い夏の間に芽吹きから開花、そして、結実までを猛スピードに完結させているのが実態です。

高山植物はわからなくとも、空の青さは実感できるはずです。そこに浮かぶ雲などを、感じ取ってほしいと思います。おそらく、ノリクラに通う方々の多くは、そんな光景に無意識にひきつけられているのではないかと思います。

ノリクラに限ったことではありませんが、感じ取ることのできるセンサーを十二分に働かせれば、そのエリアの魅力をさらに感じ取ることができます。センサーが曇っていたら、どんなに晴れていても、感じ取ることができません。(「これからノリクラでビューを検討されている方へ」の連載はこれで終了です。)

 

Copyright (C)   乗鞍香辛料監視委員会

Top ||   <<Back  1  2  3  4  5  6   -  Next-Page (Vol.14)>>