ノリクラ 雪渓カレンダー
Vol.10(2010/07/17〜18) D
【雪渓上部 U】
それでは雪渓上部右側の様子をお伝えします。
鉄塔土台 − 今週初めて姿をあらわす | 雪渓上部から雪渓中段への連絡部分 |
左の画像は雪渓上部右側エリアの下部、ちょうど雪渓中段につながる位置にある鉄塔土台です。これまでリフト土台と呼んでいましたが、冬季にコロナ観測所に物資を運ぶ雪上車の走行ルートを示すために建てられた鉄塔の土台であることがわかりましたので、名称を変更いたします。昭和40年前後に建設されましたが、雪の重みで一冬で倒壊してしまい、10年ほど前まではつぶれた残骸が残されていました。雪上車は大雪渓入口付近から宇宙線観測所に向って進み、肩の小屋の南側100メートルほどの所に、同じような鉄塔の土台がもう一つあります。
この鉄塔土台、今週になってようやく姿をあらわし、昨年よりも一週間遅い雪解けです。ただ、2008年・2007年・2006年ともに同時期に姿をあらわしていますので、今年の雪解けが特に遅いわけではありません。また、この付近から雪渓中段・雪渓下部へ滑り降りるルートとなりますが、まだ、問題なく滑走できます。
雪渓上部右側は緩〜中斜面が広がり、ポールをセットして練習するには最適なバーンです。
今日もスキー合宿の高校生の方々が横滑りの練習を兼ねてバーン整備を行い、練習に取り組んでいます。
雪渓上部右側のバーンは左寄り(南寄り)に向かうほど斜度が急になり、緩斜面で基礎的な練習を主体にしたい場合は、できるだけ右寄りで上部の肩の小屋に近いエリアがお勧めです。
標高2600〜2700mの大雪渓は、平地の3分の2程度の気圧しかありません。初めてノリクラにやってきたとき、次の一歩がかなり重く感じるものです。そのため、無理をすれば高山病となる恐れがありますので、定期的に十分な休息をとりながらトレーニングに励んでください。
ノリクラにお越しになって3年目というこちらの方、最初の年は3日間滞在されましたが、体が順応するのに時間がかかり、滑走できるようになったのは最終日のみだったとのことです。それが今年は初日から問題なく行動でき、やはり、ある程度の「慣れ」というものは必要でしょう。
サマーシーズンは水分不足とオーバーワークに注意 |
もちろん個人差があって、はじめてお越しになった当日からなんら問題なく行動できる方もいらっしゃいます。これから天候が良くなると、強い日差しで水分不足には注意が必要で、さらに終日にわたって綺麗な青空が続くと、オーバーワークも懸念されますので、サマーシーズンならではの注意が必要でしょう。
こちらは雪渓上部右側上端。先週は昨年とほぼ同様の推移を見せていましたが、今週は他の箇所と同様、昨年よりやや遅い雪解けを示しています。
左側の画像の尾根状の岩場の向こう側が雪渓上部左側になります。今後、この尾根状の岩場の下部(画像左方向)に岩が出てきて、雪渓上部右側と左側が分離し始めます。19日(月)の段階で少し頭を見せ始めていますので、ほぼ例年並の雪解けといえます。
上端から雪渓下端までの距離は先週から16メートル減少して500メートルです。昨年は悪天候のため、計測ができませんでしたので比較はできませんで、他のエリアの状況から考えてもおそらく昨年よりも多い状況と考えられます。
雪渓上部右側は上端付近は30度近い急斜面です。今日も上端から下部まで一気に滑り降りるために登ってくるスキーヤーがいます。
やはりこの急斜面の登行は結構辛そう...
ここから大雪渓入口までおよそ500メートル。雪渓上部エリアの始まり部分の石碑の岩付近まででも350メートルほどあります。真冬であれば稜線から1km以上の滑走が可能ですが、この時期にこれだけの滑走距離を滑られるところは他にはありません。
ここから見る位ヶ原にはもう完全に雪はなく、それまでハイマツと沢筋に残る残雪の織り成す唐草模様はなくなり、緑一色の絨毯が広がります。その緑も幾分明るさが見られ、めまぐるしく変化する雲の動きはノリクラの夏模様の一つです。そんな光景にめを奪われてもおかしくありません。
雪渓上部右側エリアで肩の小屋に近い付近は緩斜面があります。今日始めてノリクラにお越しになったこちらの方。WebSiteでノリクラのことを知ってやってきたとのことです。ただ、ボードのソフトブーツではこれ以上の斜度は登れず、ここで滑走されています。
今日は比較的雪面が緩んでいて歩きやすい状況ではありますが、雪の上を歩くことに慣れていないと、どんなに斜度が緩くても歩くことが困難なものです。特にソフトブーツはアルペンスキーのブーツなどと比べると滑りやすいケースもあります。また、多くの方が登るバーンでは階段状に踏み跡ができてソフトブーツでも問題なく登ることができるときもありますが、急斜面ではボードを装着することが困難なケースもあるため、雪渓での滑走に慣れていない方がノリクラデビューされる場合は、雪渓上部右側エリアが残っているお盆頃までとなります。
「とりあえず、今日はノリクラにやってくることができましたので、それだけで満足です...」と、おっしゃりながらも、何本も繰り返し、雪渓でのボードを楽しんでいらっしゃいました。好条件のもとでノリクラデビューとなりましたが、今後は悪天候にも対応できるような装備も整え、足しげくノリクラに通ってみてください。(→ Next)
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