ノリクラ 雪渓カレンダー
Vol.16(2011/08/25〜27) @
今回は、週末に行われる、第26回全日本マウンテンサイクリングin乗鞍の大会取材の関係から、8月25日(木)〜8月27日(土)までの三日間の様子をお伝えします。この一週間ほど、不順な天候が続き、乗鞍スカイラインの雨量規制に伴う、長野県側のシャトルバス運休が相次ぐ状況となっていました。しかし、今回は雨に降られることはあっても、シャトルバスが運休するほどの状況ではなく、また、大会当日に狙いを定めたかのような晴天に恵まれたほどでした。
8月25日(木)は、曇り空の朝から始まります。それでも上空には雲間に青空がのぞき、虹のかかる様子までみられます。しかし、大雪渓エリアは、山麓の雲の上に出るものの終日雨。大雪渓入口から望む山頂方面は、朝はまだ雲がかかっていましたが、時間とともに雲が抜け、大雪渓エリアは、比較的視界のよい状態が続きます。しかし、雨のほうは徐々にひどくなり、訪れたレーシングキャンプのメンバーも、全身ずぶ濡れで練習を続けるものの、とても午後までスキーを続ける状況ではなく、やむを得ず、午前中で切り上げる様子がありました。
午後になると、雨脚はさらにひどくなり、時折、山麓から濃霧が湧き上がるときもあって、今日はこの天候のまま、一日が終わって行きました。そして、滑走エリアは、ほぼ、雪渓上部左側の急斜面に限定される様子が見られます。
8月26日(金)は、昨日と同様に乗鞍高原は曇り空ですが、大雪渓エリアでは、中腹の霧の上に出て、霧雨が降っています。しかし、その後、突然スコールに一時間ほど見舞われた後、雲間に綺麗な青空が広がり始めます。今日はこのまま天候が回復して行くかと思いましたが、午後になって再び、霧雨→スコール→晴 という繰り返しを見せて、気まぐれな天候に翻弄させられた一日でした。
8月27日(土)は、山麓では雲が広がるものの、大雪渓エリアはきれいな快晴。しかし、お昼前から濃霧に包まれ、一時的に雨の降る夏山の天候。しかし、それ以上の状況はなく、まずまずの一日となりました。
それでは、この三日間の様子をお伝えします。
【8月27日(土)、観光センター前駐車場】
こちらは早朝5時30分の観光センター前駐車場
今日は土曜日ですので、通常ならたくさんの車がお越しになっていてもおかしくありません。しかし、この週末は、ノリクラにおいて最大のイベントである自転車ヒルクライムレース、全日本マウンテンサイクリングin乗鞍が開催され、観光センター前駐車場が大会会場となります。
そのため、8月26日(金)16時から車両の乗り入れを禁止して、会場設営が行われます。
一般のマイカーの乗り入れだけでなく、シャトルバスも観光センター前に駐車場に乗り入れできないため、今日(8月26日(土))は、車道沿いの路線バスの停留所からの発着となります。
県道乗鞍岳線の観光センター前〜県境までの区間を通行止めにして、大会は実施されますが、大会前日の今日は、観光センター前駐車場への車両乗り入れが禁止されるのみで、それ以外の規制はありません。そのため、シャトルバスも通常運行です。
大会開催に伴う、通行止めやバスの運行状況は、おしらせ − 8月27〜28日開催の第26回全日本マウンテンサイクリング in 乗鞍 開催に伴う通行・駐車規制について をご覧ください。
今日は観光センター前駐車場のみの規制ではありますが、実際には観光センター周辺の乗り換え駐車場も一部規制されるようで、大会前日にシャトルバスを利用される方は、すずらん橋駐車場や三本滝レストハウス前駐車場など、他の乗り換え駐車場を利用されることをお勧めします。
次第に雲が抜けて行く | のんびりできるのも今のうちだけ... |
早朝は雲に隠れていたノリクラの峰々も、時間とともにきれいな姿をあらわすようになって来ました。観光センター売店の方が、そんな様子を眺めながら、テラスでのんびりとくつろいでいられるのも、静かな朝のひと時だけ。今日から明日にかけては、多くの選手が訪れて、一年でもっとも忙しい二日間となります。
観光センター売店だけでなく、乗鞍高原一帯の旅館・民宿も、宿泊する選手への対応のため、今日ばかりは猫の手も借りたいほどの状態となっているはずです。
【大雪渓までの沿道の風景】
それでは、ここからはいつものように、大雪渓に向かう沿道の様子をお伝えします。こちらは観光センターから500メートル進んだところにある、スキー場前停留所付近。
スキー場前停留所から善五郎の滝駐車場までの数百メートルは道幅が狭く、沿線の旅館・ペンションの撤去や移転が一昨年から実施されていて、拡幅工事が実施されています。
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二週間前の様子(2011/08/11) | 舗装が完了 − ロードサイクルも安心して走行できる |
この拡張工事に伴い、一ヶ月ほど前からアスファルト舗装を剥がして、路面は未舗装路となっていました。MTBなら問題ない様子も、ロードサイクルにとっては、走りにくいコンディションでした。しかし、週末に実施される、全日本マウンテンサイクリングin乗鞍に間に合うように、舗装が施されました。
道幅も大型車両が安心して対向できるようになっています。ただ、この先には道幅の狭い箇所があって、信号機による片側交互通行が続いています。
工事中の道路の様子は、ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.7(2011/06/25〜26) @ 【車窓から】 でも、お伝えしておりますので、合わせてご覧ください。
観光センターから約7km進んだ三本滝ゲートを通過すると、県道乗鞍岳線は、乗鞍高原温泉スキー場のかもしかゲレンデの中を進んで行きます。
かもしかゲレンデは、日当たりがよいことから、多くの山野草が自生しています。それまで、ヨツバヒヨドリの白が大勢を占めていた様子から、白とピンクの二色に分かれている様子が見られます。
ピンク − ヨツバヒヨドリ | 白 − ゴマナ |
よく見ると、ヨツバヒヨドリ一種類ではないようです。ピンクに変化し始めたのは、これまで見ていたヨツバヒヨドリ。そして、白い花は、夏の終りから咲き始めるゴマナ(胡麻菜、キク科シオン属)、よく似た植物にハルジオンやヒメジオンがありますが、葉の形状が異なっています。ゴマナは葉が胡麻に似ていて、若葉が食用できるところから、その名が由来されています。
夏の植物から、徐々に秋の植物へと、花期が移りつつあるようです。
ダケカンバの回廊 | 所々、黄色く色づく |
さらに進むと、ダケカンバの回廊が始まります。何の変哲もないところですが、ダケカンバも、その葉の色合いが少しずつ薄くなってきて、中には、黄色く色づくものさえ、見られるようになって来ました。
よく見ると、色々な植物が変化を始めている様子が確認できます。こちらはムラサキヤシオツツジ。春山バスが運行を始めた頃には、綺麗な紫色の花を楽しませてくれました。そして、葉の方も紫に変化を始めています。気の早い紅葉と言えますが、この付近が紅葉の見頃を迎えるまでには、まだ一ヶ月近くが必要でしょう。
ノリクラの紅葉前線は、大雪渓などの上部エリアから山麓の乗鞍高原まで、標高差が大きいことから、9月中下旬から10月下旬まで、長期間にわたって徐々に下って行きます。ノリクラの紅葉の概要は、乗鞍紅葉情報(紅葉の歩き方) をご覧いただき、見頃の時期を逃さず楽しんでください。また、紅葉の時期になれば、速報にてリアルタイムに紅葉状況をお伝えする予定です。
標高2230メートルの冷泉小屋付近に達すると、さらにさまざまな山野草・高山植物にめぐり合うことができます。
こちらは、先週お伝えしたサラシナショウマ。大きく伸びる尾のような形状が特徴で、非常に目立つ存在です。
しかし、その傍らを良く見ると、釣鐘のような実を見つけることができます。ムラサキツリバナ(紫吊花、別名クロツリバナ、ニシキギ科ニシキギ属)は、亜高山帯〜高山帯に分布し、山野草というよりも高山植物の範疇になってきます。
実がもう少し熟してくると、外皮が割れて、実が吊るされている様子が見られます。その外皮の割れ方で、ツリバナの種類を見分けることができますが、どうやら、このツリバナの実は3裂に割れるようです。そのことから、ムラサキツリバナと判断できます。また、4裂のものは、ヒロハノツリバナです。
そして、冷泉小屋付近の紅葉は、さまざまな色合いを楽しむことができます。そんな色合いの一役を担っているのは、黄色に色づくミネカエデ(峰楓、カエデ科カエデ属)、ムラサキツリバナと同様に、実ができている様子が見られます。こちらも、特徴的な形状をしていますので、すぐに見つけることができるでしょう。
そして、こちらはナナカマドの実。大雪渓付近では、ウラジロナナカマドが大半を占めています。そして、ウラジロナナカマドは、実が直立していますが、こちらのナナカマドは垂れています。しかし、山麓のナナカマドとは異なり、葉に光沢を持つ、タカネナナカマド(高嶺七竈、バラ科ナナカマド属)です。
ウラジロナナカマドは、紅葉すると赤や橙の色合いを呈しますが、タカネナナカマドは、真紅から暗紫色となり、もしかすると、紅葉の時期のほうが、見分けやすいかもしれません。
そして、森林限界を超えるあたりに位ヶ原山荘があります。
抜けるような澄んだ青空に、秋を思わせるような鰯雲がなびくようになって来ました。
眼下には見事な雲海。ご来光が天候によって見られたり、見られなかったりするように、雲海もその時の天候で左右されます。日が昇り始めると同時に、雲海は消滅して行くか、山麓の地表が温められて湧き上がる雲で、上部エリアも雲に飲み込まれて行くか、どちらかの推移をたどることのほうが多いようで、このままの光景が、一日中楽しめることはほとんどありません。
こちらは翌日の8月28日(日)、早朝5時の様子。雲の重厚さがまるで異ります。荒波が沸き立っているように見られる情景は、実際にはほとんど動きはないものの、激しく雲が流れているかのように見られます。
ツアーコース入口(11号カーブ) |
「山登りは朝一番が鉄則!」と、いわれるのは、山の天候は急変するためですが、やはり、地表が温められて、水蒸気が発散されるようになると、空気の透明感も低下します。
そのため、山登りでなくても、きれいな光景をご覧になりたいのであれば、「早起きが鉄則!」と、いうことになります。
早朝はまったく雲のなかった状態も、上層の薄い雲がたなびくようになってきました。時刻はまだ8時前ですが、朝一番のビビッドな光景は、賞味期限が短いものです。
そして、それでも「賞味期限内」に大雪渓に到着です。(→ Next)
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