ノリクラ 雪渓カレンダープレリリース版

Vol.1(2019/04/06) C

 

 

Top-page > Index > Page:   1  2  3  4 

(Update:2019/04/11)

 

 【ツアーコースV−位ヶ原急斜面】

位ヶ原急斜面 滑落注意の看板(左)と位ヶ原山荘の看板(右)
今シーズンは滑落事故が多発(2〜3月で6件発生)

こちらはツアーコース最後の位ヶ原急斜面。これまで樹林帯を切りとおしてコースが作られていましたが、この付近からはオープンバーンになります。オープンバーンとは視界が開けているというですが、逆に目印になるものがないという意味でもあり、視界不良時(濃霧)は方向を見失って遭難することを示しています。位ヶ原山荘の看板の位置から急斜面の上端が見えないほどの濃霧の場合は、今日の山行を中止して引き返すことをオススメします。

位ヶ原山荘の看板の隣には、長野県警察・遭対協の滑落注意の看板が設置されています。今年は雪が少なかったため、アイスバーンとなる日が多く、2月に4件、3月に2件も救助事案が発生しました。乗鞍岳においては過去に例のないほどの発生状況です。アイゼン・ピッケルの携行を勧めていますが、救助事案の中には下山時にアイゼンの歯をひっかけて転倒したものや、アイゼンを外さずにシリセードでアイゼンをひっかけるケースもあり、アイゼンの使用方法の注意も合わせて必要です。

 

2017年の位ヶ原急斜面
2017ノリクラ 雪渓カレンダー
プレリリース版Vol.2(2017/04/08) C
2018年の位ヶ原急斜面
2018ノリクラ 雪渓カレンダー
プレリリース版 Vol.2(2018/04/07) C
今回の位ヶ原急斜面

位ヶ原急斜面の積雪は昨年並みで、一昨年よりも少ない状況。

 

新雪20cm もっさりとしたパウダー 上部エリアは良かったとのこと

新雪が20センチ程降り積もっていますが、ややもっさりとしたもたつき感のあるパウダー。でも上部エリアは良かったと滑り降りてきた方々は満足そうでした。

 

【位ヶ原急斜面と伊奈川の谷について】

【本物】左の谷−位ヶ原急斜面(正規下山ルート) 【偽物】右の谷−伊奈川の谷(間違えて何度も遭難あり)

さて、こちらは位ヶ原急斜面を上から眺めたもの。左が「本物」で右が「偽物」です...

この2枚の画像は左右連続写真(※)で、左が本物の位ヶ原急斜面で。右は伊奈川の谷で位ヶ原急斜面ではありません。特に濃霧の時は同じような地形に見えてしまい、ツアーコースへ下山する際に間違えて伊奈川の谷へ進んで、これまで何度も遭難が発生しています。乗鞍岳春山バスが運行される4月下旬には、伊奈川に立ち入らないようにロープが設置されますが、この時期はありません。
(※ 実際には左右の画像の間に尾根部分があります。)

 

位ヶ原急斜面と伊奈川の谷は隣り合っているので間違いやすい
ノリクラ雪渓カレンダー冬〜春スキー版

ツアーコースの位ヶ原急斜面は青い部分、伊奈川の谷は赤い楕円の箇所です。ご覧のとおり隣接していて、大雪渓・位ヶ原や山頂方面から下山する際に間違いやすい位置にあります。位ヶ原急斜面や伊奈川の谷の周辺の位置関係は、ノリクラ雪渓カレンダー冬〜春スキー版 で確認できますので、ぜひ一度ご覧ください。

 

伊奈川の谷−大きな岩場があるのが特徴(中央)

伊奈川の谷には雪着きの悪い大きな岩場があり、これが位ヶ原急斜面との大きな違いです。濃霧の中でも、斜面の中に大きな岩場があるかどうか確認できるはずです。

 

【位ヶ原】

位ヶ原

位ヶ原急斜面を登り切った先の位ヶ原。これより森林限界となります。森林限界を超えると、天候・気候が急激に変化します。もし、急激に雲が流れ込んで視界が阻まれるようになったら、急いで引き返す必要があります。

 

2018年の位ヶ原 −積雪量129センチ
2018ノリクラ 雪渓カレンダー
プレリリース版 Vol.2(2018/04/07) C
先週の位ヶ原 − 積雪量169センチ
(2019/03/30)
今回の位ヶ原
積雪量204センチ

位ヶ原(標高 約2500メートル)で積雪は204センチ。先週より35センチ増加、昨年より75センチ多く、すでに昨年以上の積雪量となっています。

 

剣ヶ峰方面 高天ヶ原方面

位ヶ原より上部の山頂方面は、それほど積雪が多い状態ではなく、所々で岩の頭が確認できます。

 

【大雪渓下部】

大雪渓下部

それでは大雪渓下部の積雪状況をお伝えします。

 

定点観測の前川国有林の看板は昨年10月末に撤去

積雪量の定点観測を行っていた前川国有林の看板は、昨年10月末に撤去されてしまいました。

 

積雪量の比較ができませんが、現時点で今シーズン最高の積雪量

そのため、積雪量の比較ができない状態となっています。しかし、現時点では今シーズン最高の積雪量で、今後も4月下旬ごろまで増加すると考えられます。

 

トイレ小屋・避難小屋(冬季閉鎖中)−利用可能は5月下旬〜6月上旬以降

大雪渓入口から北側へ50メートルのところにトイレ小屋と避難小屋があります。避難小屋・トイレは冬季閉鎖中で、乗鞍岳春山バスが大雪渓まで延長運行される5月下旬〜6月上旬に利用可能になります。トイレ小屋・避難小屋周辺の積雪量は若干少な目です。

 

モーグルコースの岩 − 今年はまだ埋まっていません。

また、5月下旬ごろから6月上旬ごろにかけていち早く姿を現すモーグルコースの岩は、今シーズンはまだ埋まっていません。ただ、この1〜2週間で積雪が増え、かなり小さくなりました。今後の降雪で埋まる可能性があります。

 

大雪渓はまだこれから積雪量が増加します

大雪渓はこれから積雪量が増加する時期です。しかし、夏スキーの時期の積雪量を左右する要因は、梅雨の降雨による減少もありますので、春先の降雪量だけでは予想が難しいところです。

 

<編集後記>

「今シーズンの冬の気候を振り返る...」

今回から春シーズンに向けたノリクラ雪渓カレンダープレリリース版を開始しましたが、今シーズンの厳冬期の天候状況をまとめておきたいと思います。

 

下の表はアメダス(観測地点:奈川)の2014年〜2019年の月平均の気象統計・ツアーコース積雪量です。

    降水量
(mm)
平均気温
(℃)
最高気温
(℃)
最低気温
(℃)

平均風速
(m/s)

日照時間
(時間)

ツアーコース積雪量前年比
3番標識
(積雪量)
5番標識
12月 平年 76.8 -0.7 4.9 -5.9 1.3 106.8
2014 56.5 -2.1 2.8 -6.8 1.7 91.6 55cm(+50) +150
2015 177.5 -2.6 1.3 -6.4 1.9 70 125cm(+70) +100
2016 108.5 1.2 6.3 -3.4 1.7 113.6  60cm(-65) -135()
2017 148.5 -0.1 6.0 -5.7 1.7 120.5 85cm(+25) +20(80)  
2018 39.0 -2.2 2.7 -7.1 2.1 113.4 85cm(0)、 +55(135)  
今年 90 0.3 5.5 4.5 1.7 109.3  67cm 70cm  
1月 平年 85.9 -3.6 1.5 -9.2 1.3 106.5
2014 66 -4.4 1.5 -10.9 1.8 145.3 175cm(-100) -40(170)
2015 102.5 -3.4 1.2 -8.4 1.7 124.9 125cm(+50) +90(260)
2016 124 -2.8 2.4 -7.6 1.8 110.9 95cm(-30) -110(150)  
2017 57.0 -3.8 1.5 -9.1 1.8 118.3 130cm(+35) +45(195)
2018 89.5 -4.3 0.6 -9.3 2.1  109.6 160cm(+30) +45(240)  
今年 29.0 -3.4 2.0 -9.8 1.9  140.8 85cm 125cm  
2月 平年 99.2 -3.2 2.5 -9.1 1.3 122.8
2014 124 -4.4 1.7 -10.4 1.7 167.2 75cm(-100) -120(130)
2015 41.5 -3.2 2.4 -9.3 1.7 125.9 145cm(+70) +130(260)
2016 119 -2.4 3.4 -8.4 1.9 144.9 87cm(-58) -130(130  
2017 91.5 -3.1 2.8 -9.2 1.9 142.2 165cm(+78) +148(278)
2018 15.5 -4.4 1.3 -10.4 1.9 111.5 165cm(0) -18(260)  
今年 76.0 -1.2 5.6 -7.0 1.7 149.3 95cm 135cm  
3月 平年 158.1 0.6 6.7 -5.2 1.3 155.5
2014 256.5 0.8 6.1 -4.5 1.8 157.3 120cm(-40) -30(240)
2015 134.5 1.0 7.6 -4.6 1.7 157.7 140cm(+20) +35(275)
2016 66 1.4 17 -9.8 1.8 103 80cm(-60) -140(135)  
2017 27.0 -0.3 5.7 -5.8 1.7 171.1 155cm(+75) +137(272)
2018 222.5 2.7 9.4 -3.1 1.7 171.1 135cm(-25) -67(235)  
今年 109.0 1.3 7.6 -4.4 1.8 147.6 140cm 215cm  

降水量は12月が平年より多かったものの1〜3月は少なく、平均気温は2月では平年よりも2℃も高い状態でした。積雪量は1〜2月にかなり少ない状態でしたが、3月中旬からまとまった降雪に見舞われるようになり、3月末の時点では3番標識では例年以上、5番標識ではほぼ例年並みとなりました。

ただ、1〜2月の降雪が少なかったことから、2月中旬からはアイスバーン状態となる日が多くなり、滑落事故が2月に4件、3月に2件と過去最多の発生件数となっています。このほか事案に挙がらないケースも含めてアイゼンをひっかけて転倒滑落するケースが多く、また、スキーヤーではシールが効かなくなり滑落するケースは日常的に発生しました。

今後、山頂方面に向かう人数が増えてくる時期になってきますが、ゴールデンウィーク頃までの山頂方面は厳冬期と変わらず、アイスバーンとなっているため、入山人数増加とともに事故件数増加も懸念されます。長野県警察や山岳遭難対策防止協議会(遭対協)では、滑落注意のポスターをツアーコースなどに掲示して注意喚起しております。今一度、ご注意の上、入山してください。


 


■ご注意■

今回の取材記事は、バックカントリースキー・ボードの経験のある方を対象としたもので、初めての方へのイントロダクションという位置づけの内容ではありません。
初めてツアーコースなどにトライしてみたい方は、経験者と同行するか、ガイドツアーに参加されることをお勧めします。(乗鞍高原などにはガイドが同行するツアーを企画する会社がありますのでお問い合わせください。)

 

Copyright (C)   乗鞍大雪渓WebSite

Top ||   <<Back  1  2  3  4    -  Next-Page (Vol.2)>>