ノリクラ 雪渓カレンダー
 
Vol.11(2013/07/20〜21) E

Top-page > Index > Page:   1  2  3  4  5  6

(Update:2013/07/25)

 

【畳平、お花畑】

たくさんの観光バスがやってくる

こちらは7月20日(土)、午後の畳平の様子。先週までは人出が芳しくない状況でしたが、ご覧のように多くの観光バスがやってきています。

 

シャトルバスにも長い列が − 県道乗鞍岳線の全面開通が影響か

こちらは乗鞍高原行きのシャトルバス乗り場。長蛇の列ができています。観光バスの増加やシャトルバスの利用者数の増加は、県道乗鞍岳線の大雪渓〜県境畳平の通行止めが解除されたことが大きく影響しているのではないかと思われます。

乗鞍スカイラインや県道乗鞍岳線の通行状況が、来場者の動員に大きく影響するため、冬季閉鎖解除は規定どおりの期日に実施されることが絶対条件と考えられます。

 

畳平のお花畑

さて、ここからはいつものように畳平のお花畑の様子をお伝えします。

 

入口付近のハクサンイチゲ − 先週より満開が続く、昨年より1週間早い状況

こちらは入口付近のハクサンイチゲ。先週の段階で満開状態となり、昨年より1週間早い状況を見せてくれました。例年なら、ピークが過ぎる時期ですが、先週とほとんど変わらない状況が続いていて、ハクサンイチゲの見頃が長く続いています。

 

ミヤマクロユリもほぼ満開 − 昨年より1〜2週間早い状況

その傍らで覗き込むように観察されているのはミヤマクロユリ。ほぼ満開に近い状態で、昨年より1〜2週間早い状況です。

 

ミネズオウ − 本来なら岩礫地に自生する高山植物

こちらはびっしりと細かな花が咲いている一角を見つけます。こちらはミネズオウ。高山帯の岩礫地に自生し、お花畑のような水の豊富な雪田では本来なら多くなられない高山植物です。

 

お花畑全景(周回コース) 周回コース分岐点

畳平のお花畑は左の画像のように周回コースとなっていて、奥のほうから手前の方へと雪解けが進んできます。そのため、周回コースの奥の高山植物から先に開花をはじめます。右の画像は周回コースに入る分岐点です。

 

周回コース分岐点付近

分岐点から右にまわると、先週は見かけなかった高山植物が花を咲かせています。

 

ミヤマクロスゲ − 秋には草紅葉を演出する ミヤマホタルイ

左はミヤマクロスゲ、そして、右はミヤマホタルイです。いずれも、他にきれいな花をつけている高山植物がたくさんあるため、多くの方がそのまま通り過ぎてしまいますが、特にミヤマクロスゲは秋になると葉が黄金色に輝き、いわゆる秋の畳平の光景である「草紅葉」を演出する重要な高山植物です。

 

ヨツバシオガマ
これからがシーズンの高山植物

夏が本番を迎えるようになると咲き始めるのはヨツバシオガマ。畳平のお花畑も次のステージへと季節が切り替わってきました。

 

チングルマもこれからが本番

そして、こちらのチングルマも夏が本番を迎える少し前から咲き始めます。

 

周回コースをさらに奥へと進みます。

ミヤマキンポウゲ ミヤマキンポウゲは背が高い − ハクサンイチゲと同じくらい

畳平のお花畑で黄色い花はミヤマキンバイとミヤマキンポウゲの二つが主な要素となっています。一見するとその違いがわからないものですが、背丈がまったく違いますので、そのポイントに注目すれば一目瞭然です。

ミヤマキンバイは高さが10〜20センチ程度と低く、ミヤマキンポウゲは30〜50センチ程度の背丈です。こちらの二枚の画像を良く見るとハクサンイチゲとほぼ同じ高さで、30センチ以上あります。したがってミヤマキンポウゲであることがわかります。

 

コイワカガミ 観光客にはコマクサと間違えられる

ピンクに染めているのはコイワカガミ。これだけ群生していると見事なものです。ちなみにコイワカガミのことをコマクサと見間違える観光客の方はたくさんいらっしゃいますが、コマクサはその生育環境からお花畑には存在しません。また、このように群生することもありません。

コマクサがお花畑にない理由は、先週の畳平お花畑のコーナーでお伝えいたしましたので、そちらをご覧ください。(→ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.10(2013/07/13〜14) E

 

周回コース奥を回る − 北側から南側へ

周回コースを一番奥まで進んで、左から右へと進んで行きます。(北から南へ)

 

ハクサンイチゲはそろそろ終りに これからの主役はミヤマクロユリへ

ハクサンイチゲはそろそろ終りに近づいてきました。満開に近い状態になったのは6月下旬ですから、3週間も見頃が続きました。そして、次の主役はミヤマクロユリへとバトンタッチします。

 

雄花 両性花

左画像にはミヤマクロユリは黄色の雄しべだけの雄花、右の画像では緑色の雌しべもある両性花で、ご覧の通り、ミヤマクロユリには二種類の花が存在します。多年草であるミヤマクロユリは年を重ねることに大きくなり、また、土壌の状態も影響して、雄しべと雌しべをつける両性花となるまでには長い時間が必要となります。

 

畳平お花畑は、今が一番!

例年なら、ハクサンイチゲが終了する頃にミヤマクロユリが見頃を迎えますが、今週は両方が見頃となっていて、畳平お花畑は一番良い時期を迎えています。

 

【昨年の今ごろは?】

2012ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.11(2012/07/21〜22)

7月17日(火)に、四国から関東甲信地方まで一気に梅雨明けを迎えました。その後は連日のように猛暑が続きましたが、週末になって再び梅雨空が広がり、生憎の週末となってしまいました。

取材一日目の7月21日(土)は、朝一番は少しばかり青空が見られて一瞬の期待感もありましたが、8時ごろから断続的に雨が降り、大雪渓エリアは周期的に濃霧のかかる状況。生憎の天候に大雪渓にお越しになるスキーヤーも少なく、大雪渓・肩の小屋口バス停に降り立つ方は、登山者の方が大半の状況でした。シャトルバスは岐阜県側・長野県側ともに始発便からAダイヤの通常運行が始まりましたが、岐阜県側の乗鞍スカイラインは正午過ぎに24時間連続雨量が規制値を超えたため、12時40分から通行止めとなり、下りのシャトルバスは、岐阜県側が13時50分便、長野県側が14時05分便で運休となりました。突然の運休で、大雪渓に滞在していたスキーヤー・ボーダーも、運休直前のシャトルバスに急遽全員が乗車しなければならない状況でした。天候は午後になっても、回復する傾向を見せず、梅雨明けなんて言葉がまったく信じられない一日でした。

取材二日目の7月22日(日)は、昨日以上の悪天候でした。昨日午後から雨量規制通行止めとなった乗鞍スカイラインは、通行規制が解除され、シャトルバスは、長野県側・岐阜県側ともに通常通りのAダイヤで始発便から運行が始まりました。乗鞍高原では、早朝の小雨が8時を回るころから激しい土砂降りになり、30分ほどで収まってきたものの、その後は降ったり止んだりを繰り返す状況です。上部の大雪渓エリアでも、山頂まではっきりと視界の効く状態があったかと思うと、稜線を超えて流れ込んでくる濃霧に一気に包まれ、さらに雨が降る周期を繰り返します。そんな状況でも、ヒルクライマーの方々が、大雪渓前を頻繁に通過して行き、8勝ち26日(日)開催の全日本マウンテンサイクリングin乗鞍まで、あと一ヶ月と迫り、トレーニングの追い込みをされる様子もありました。午後になると空が明るくなって青空がのぞき始めますが、その後、再び濃霧と雨。まるで猫の目のような天候の一日でした。

 

<編集後記>

「昔は問題じゃなかったが...」

最近の大雪渓周辺はほとんどゴミが落ちていません。当たり前でよいことですが、そんな中、お弁当を広げたことがはっきりとわかるような状態の一角がありました。故意にゴミを残して行ったということではなく、不用意にこぼしたというレベルで、それほど大きな問題ではない状況です。マイカー規制以前の大雪渓周辺は、ハイマツ帯の中からは生ゴミ臭が感じられる場所もあったほどですから、その当時と比べれば、本当にきれいになったものです。

山の中だけではなく、市街地でもクリーン化が進みました。また、喫煙についても、以前は歩きタバコが問題にならなかったものの、最近は、屋外ですら喫煙が制限される時代となってきました。

「昔はこれくらいのことは問題とならなかった」ということが、最近では大きく取り上げられる状態です。昔のノリクラから比べればきれいになりましたが、最近は梅干の種どころか米粒一つすらこぼさないレベルにまでなっています。「十年一昔」という時代から、最近はヘタをすると「一年一昔」にまで、物事の考え方・感じ方が変化し、多様化しています。10年前までは問題にならなかったことが、最近は問題視される状況です。

ノリクラというフィールドは変わりませんが、そこに通う人たちは、その時代の中で生きています。そして、次の世代に今のノリクラを残して行くには、次の世代の感覚にあわせて行動しなければなりません。

昔ならば、「米粒・梅干の種くらいいいや〜」という感覚だったでしょうが、最近は食べこぼしをカラスが狙っています。そんな一端からも昔とは環境が異なってきています。ですから、訪れる前と同じ状態を維持するつもりで行動しなければならないでしょう。

 

Copyright (C)   乗鞍大雪渓WebSite

Top ||   <<Back  1  2  3  4  5  6  -  Next-Page (Vol.12) >>