ノリクラ 雪渓カレンダー
 
Vol.12(2013/07/27〜28) @

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(Update:2013/08/01)

 

7月最後のノリクラ雪渓カレンダーです。この1週間ははっきりしない天候が続き、にわか雨に見舞われる日も続いてしまいました。

取材一日目の7月27日(土)は、猫の目のようにめまぐるしく激変する天候の一日でした。夜明けごろにはきれいな青空が広がったものの、しばらくするといきなり雷鳴と共に土砂降りが1時間ほど続き、お昼ごろにはモクモクと湧き上がる入道雲の夏空が広がりました。このまま、天候は回復するかと思ったものの、夏空も1時間ほどしか持たず、午後からは山頂付近に雲が流れ込み、夕方には再び土砂降り。雨の中に霙が混じるほどの状況でした。それでも、今日の山頂方面はいつも以上の賑わいぶりで、畳平駐車場も観光バスで満車状態でした。

取材二日目の7月28日(日)は、雲間に青空がのぞく朝を迎えます。お越しのマイカーは昨日よりも多く、観光センター前駐車場は5時で70台、6時で90台となり、9時前には満車となりました。そして、ヒルクライマーの方もかなりたくさんお越しになり、10時30分時点の三本滝ゲート通過台数は200台にものぼり、今季最高で、おそらく一年を通してもこれだけヒルクライマーがたくさんお越しになる状況はあまり見られないと思います。一時的に日差しがさす状況もあったものの、13時にはにわか雨に見舞われ、気温が10℃まで低下して冷たい風が吹きぬけます。その後は雨が断続的に降る状況が続き、安定しない天候の一日でした。

大雪渓の積雪量は、先週と同様に昨年よりも多い状態が続いています。入口付近の雪渓下部では昨年よりも雪解けが1〜2週間ほど遅い状態、雪渓上部も全体的には昨年より1週間程度遅いものの、場所によっては昨年並みかやや少ない状況です。また、剣ヶ峰(乗鞍岳山頂)へ向かう登山道は、畳平から山頂へのルートではアイゼンは必要ありませんが、大雪渓からのルートでは、肩の小屋までの登山道に積雪区間が90メートルほど残っていて、例年より1週間ほど雪解けが遅く、冷え込んだ場合にはアイゼンが必要です。

 

◎ 今回の目次

Page-1 : 【7月27日(土)、観光センター前駐車場】         【観光センターから大雪渓へ、沿道の風景 T】
Page-2 : 【観光センターから大雪渓へ、沿道の風景 U】         【観光センターから大雪渓へ、沿道の風景 V(ヒルクライム)】
Page-3 : 【大雪渓に到着】         【雪渓下部 T】
Page-4 : 【雪渓下部U】         【雪渓下部 V、モーグルコース】         【雪渓中段】
Page-5 : 【雪渓上部 T】         【雪渓上部 U、スキーキャンプ】         【山頂への登山道と肩の小屋】
Page-6 : 【畳平、お花畑】         【昨年の今ごろは?】         <編集後記>「乗鞍スカイライン電気自動車(EV)乗入れ実験・研究」

【ヒルクライマーへのアドバイス(レインウェアの持参、熱中症と水分補給可能場所、下山走行の注意点)】    (Page-2)
【大雪渓→肩の小屋→山頂登山道のルート地図、各ルートのおおむねの残雪期間】     (Page-3)
【登山道の積雪状況 − 大雪渓・肩の小屋口バス停から山頂方面へ登山される方へ】     (Page-3)

●参考資料●
(位ヶ原・大雪渓・山頂方面 概要) − ノリクラガイドマップ(春〜夏スキー 山頂版)
(県道乗鞍岳線 概要) − ノリクラガイドマップ(県道乗鞍岳線カーブ番号版)

  

 

【7月27日(土)、観光センター前駐車場】

観光センター前駐車場

こちらは早朝6時の観光センター前駐車場。

 

山頂付近 − 次第に厚い雲に覆われる 訪れたマイカー − いつもよりやや少なめ

観光センター前駐車場にお越しのマイカーは45台ほど。5時の時点ほとんど変わりません。いつもなら、6時前になるとやってくるマイカーが多くなるものの、今日はちょっと少なめです。5時ごろまでは青空が広がりましたが、次第に厚い雲に覆われるようになって来ました。

 

シャトルバス乗車券販売所 ホワイトボードの掲示 − 山頂畳平は濃霧、気温6℃

シャトルバス乗車券販売所に掲げられる天候情報もあまり芳しくない様子がうかがえます。それでも、今日のご来光バスは稜線と雲の帯の隙間から何とか朝日を拝むことができたようで、天候が良い方向に向かうのか、悪化する方向に向かうのかはっきりとわからない状況です。

 

シャトルバス始発便

いつものようにシャトルバス始発便が到着します。

 

寒くなくても長袖は必須 今日の始発便は2台運行

この時点の気温は16℃。半袖でもそれほど寒くない状況ですが、先ほどのホワイトボードの通り、畳平では6℃となっていて、長袖を持参しなければならない状況です。今日の始発便は2台の運行。訪れたマイカー台数が少ない割には、いつもの週末と変わらない乗車人数でした。

 

7時前から雷鳴と雨、「いや〜参ったなぁ...」 − この天候に観光センターの店員も困惑

シャトルバス始発便が出発した後、雲がさらに厚くなり、雷鳴がとどろくようになってきます。そして、7時前から雨に見舞われてしまいます。観光センター食堂の方々も思わぬ天候にちょっと困惑です。

 

突然土砂降りに 店頭のショーケースをあわてて撤収

空の様子は刻々と変わって行き、ひどい土砂降りに...パンやおにぎり類のショーケースを朝一番で店頭に設置したもののあわてて撤収です。

 

売店

さて、食堂の隣の売店は、今年から、乗鞍の特産品を中心としたお土産が数多く並ぶようになっています。

 

乗鞍特産品が並ぶ(左:ズッキーニ、右:ブルーベリー)
信州のお土産も充実し、乗鞍近隣の特産品も扱う(隣町の波田はスイカの名産地)

春はワラビやコゴミなどの山菜、そして、夏になるとズッキーニやブルーベリーなど乗鞍高原で栽培された農産物が並べられます。おそらく、8月になると「番所きゅうり」と呼ばれる、乗鞍高原でしか採れない珍しい瓜が並ぶことと思います。想像以上のみずみずしさで、味噌などをつけてそのままかじるのが一番おいしいと思います。

このほかにも信州のお土産が並んでいて、今回は隣町の波田のスイカ(西瓜)が並べられていました。松本市波田はスイカの名産地として全国的に有名です。

 

1時間も続く土砂降り − 出発前に出鼻をくじかれる

この土砂降りは1時間近くも続き、そろそろ出発しようと準備を始めていたボーダーの方々も完全に出鼻をくじかれた状態。

 

収まりそうにない雨に朝から缶チューハイ 「今日は大雪渓でのボードは諦めました」

収まりそうにない雨の降り方に、今日の大雪渓行きを半分諦めて、朝から缶チューハイをプシュッと空けてしまいました...あぁ〜これで今日の大雪渓でのボードトレーニングは、ほぼ中止といった雰囲気が漂っています。

 

土砂降りが収まっても小雨は続く

激しい土砂降りが収まっても、小雨はしばらく続き、大半の方が出発を思案する状況が続きました。こんな日は天候の回復を気長に待つしかなく、中には観光センターの食堂で「宴会」をはじめてしまう方もいらっしゃるとのことでした。

雨が上がって大雪渓へ

さて、大雪渓での練習をほとんど諦めていた先ほどのボードの方々...、このあと、ちゃんと、大雪渓にお越しになったようです。

 

ボードでもコブOK!

乗鞍大雪渓では、コブの練習に取り組むボードの方はたくさんいらっしゃいますが、こちらでは新たにコブを作って練習されています。

 

夕方まで楽しく

最終的に夕方まで大雪渓で楽しく過ごされていました。

 

【観光センターから大雪渓へ、沿道の風景 T】

ここからは大雪渓までの沿道の様子をお伝えします。

 

ノリウツギ − いたるところで白い花が咲き乱れる

目線よりもやや高い位置にガクアジサイのような白い花がいたるところに咲いています。
こちらはノリウツギ(糊空木、ユキノシタ科アジサイ属)。樹皮から製紙用の糊が作られ、空木のように茎が中空であることから命名されています。外側を縁取る大きな花には受粉能力を持たない装飾花で、虫をおびき寄せるための機能とされていて、実際の両性花はその中心にある細かな集まりの部分です。

 

カンボク − ノリウツギとよく似た花(6月中下旬)
ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.7(2013/06/21〜22) C

カンボクは葉が3裂
ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.7(2013/06/21〜22) C

ノリウツギとよく似た木に、カンボク(肝木、スイカズラ科ガマズミ属)があります。ただし、カンボクは6月中下旬頃咲きますので、時期さえ覚えておけば見間違えることはありません。右の画像のように、カンボクの葉が3裂になっているところも大きな相違点です。

 

ノリウツギの装飾花は長持ちする それは花ではなく萼だから

カンボクは1週間ほどで装飾花が落ちてしまいますが、ノリウツギの装飾花は長く楽しませてくれます。同じように見える二つの装飾花も、カンボクなどのガマズミの仲間の装飾花は、花そのものであるのに対し、ノリウツギなどのアジサイの仲間の装飾花は、花ではなくガク(萼)だからです。

ガク(萼)だから長く残ると言われてもピンと来ないかもしれません。
わかりやすい現象を挙げれば、一般的な花の場合、花が終わって実ができる頃になると、ガク(萼)は呼び方が変わって、「ヘタ(蔕)」と呼ばれるようになります。こんな現象から、花が枯れてしまってもガク(萼)は最後まで残ることが理解できるはずです。

 

膝ぐらいの高さには特徴的な形の花が咲く ヤマホタルブクロ

膝くらいの高さには、かなり特徴的な形の花が咲いています。こちらはヤマホタルブクロ(山蛍袋、キキョウ科ホタルブクロ属)。

 

ホタルブクロの仲間は萼の部分で見分ける ヤマホタルフクロ − 萼に反り返りがない

ホタルブクロには、セイヨウタンポポのように萼(がく)の一部が反り返ったもののほか、反り返っていないヤマホタルブクロがあります。こちらは反り返っていませんので、ヤマホタルブクロになります。それ以外の違いはほとんどありません。釣鐘型の花の中にホタルを入れて提灯代わりしたというのが名前の由来ですが、実際にそのような使い方をされたのかどうかは不明です。

 

道端に白い花がいっぱい トリアシショウマ

先ほどのノリウツギと同じく、現在、道端にたくさん見られるのは、トリアシショウマ(鳥足升麻、ユキノシタ科チダケサシ属)。

 

トリアシショウマ − 茎は長めの毛 トリアシショウマ − 葉脈がやや乱れている

「○○ショウマ」と呼ばれる山野草は数種類あり、その中でよく似たものはヤマブキショウマとアカショウマなどがあります。アカショウマは茎が赤くて茎全体は毛が密に覆われていて、ヤマブキショウマは葉がヤマブキに似ていて、それぞれの葉脈がはっきりしていて平行に走っています。

トリアシショウマの茎は長めの毛に覆われていて、ヤマブキショウマと比べると葉脈がやや乱れている点に特徴があります。ただ、本当によく似ていて見分け方も何種類もあり、判別は結構難しいものです。

 

花から花へ − セセリチョウの仲間
前足で味を確かめ、ゼンマイ状のストローを出す 蜜を吸い始める

そんなトリアシショウマの周りには、セセリチョウの仲間と思われますが、つぎから次へと蜜を吸い続けています。前足で味を確かめたら、ゼンマイのように巻いてあるストローを口先から伸ばして蜜を吸い始めます。

 

ノビネチドリ

この時期は、数多くの山野草が一気に花開き、ご紹介できないものがたくさんあります。こちらは先週お届けできなかったノビネチドリ(延根千鳥、ラン科テタガタチドリ属)。花が終わり始めてしまいました。同属のテガタチドリは、根茎が肥厚した掌のような形状であるのに対して、ノビネチドリは掌形にならず伸びるため、このように呼ばれいます。

 

ノビネチドリ − 葉が波打って縮れている ノビネチドリ − 花弁に白い筋が入る

チドリの仲間にはテガタチドリのほかに、ハクサンチドリが有名ですが、これら二つとノビネチドリの大きな違いは、葉が波打って縮れている点と、花弁(唇弁)に白い筋が入るところです。高さは30〜60センチほどあって、ハクサンチドリやテガタチドリよりも大型です。
また、花の形が複雑ですから、実際には三者の違いはもっとたくさんあります。 Next

 

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