ノリクラ 雪渓カレンダー

Vol.8(2015/06/27〜28) D

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(Update:2015/07/02)

  

【畳平に到着、畳平周辺】

気温1℃の暴風雨 − 厳冬期以上の寒さ

8時の畳平の天候は暴風雨。気温は1℃で、体感的にはかなりの寒さを覚え、厳冬期以上の寒さです。出迎えてくださったのは環境パトロールの方。ここ最近はレインウェア姿以外は拝見していないように記憶します。それだけ天候が悪い日が続いているという事になるのでしょうか?

 

シャトルバスから急いで駆け込む

この状況ですから、シャトルバスを 降りたら急いで正面のバスターミナルに入り込みます。出発時点のほおのき平では想像できない天候状況です。シャトルバス乗車前にあらかじめレインウェアを着用したほうがよいと、前のコーナーでお伝えしたしたが、ご覧のようにバスを出た瞬間、悪天候に見舞われることは多々あります。畳平の天候が山麓のほおのき平と大きく異なることは珍しくありません。

 

バスターミナルで一時待機

バスターミナルに一時避難した方々も、天候の回復の見込みが立たず、しばらくは待機されていた模様です。

 

暴風で屋根のトタンがはがれ始める

この暴風で畳平の建物の一部ではトタン屋根がはがれ始めています。いかに今日の暴風がひどいものであるかよくわかります。

 

スキーは大雪渓へ

この状況にも関わらず、今日もスキーヤーの方々の姿があります。先週までは岐阜県側滑走指定地の鶴ヶ池雪渓で滑走されていましたが、6月22日(火)より滑走禁止となりましたので、これから専用道を歩いて大雪渓へと向かいます。畳平から大雪渓までは歩いて30分程度だと思います。

なお、7月になると長野県側のシャトルバスの運行が始まりますので、大雪渓に向かうには乗鞍高原行きのシャトルバスに乗って、大雪渓・肩の小屋口で下車します。

 

不動岳 鶴ヶ池

ここから先は畳平周辺の様子をお伝えします。左の画像は畳平の南にある不動岳。そして、右の画像は、畳平の東にある鶴ヶ池。

 

一昨年同時期の不動岳
2013ノリクラ 雪渓カレンダーVol.8(2013/06/29〜30) A
一昨年同時期の鶴ヶ池
2013ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.8(2013/06/29〜30) A

こちらは一昨年の同時期の不動岳と鶴ヶ池。どちらも今週とほぼ同じ状況ですので、ほぼ例年並みの雪解けという事がわかります。

 

小さなコマクサが多数

さて、先週もご紹介したコマクサ。小さいうちは見つけるのに苦労することと思います。右の画像の看板付近では数多くのコマクサが点在していますが、お分かりでしょうか?

 

看板のすぐ足もとに 可憐なコマクサが咲く − でも白山などでは駆除対象

コマクサは他の高山植物が自生できない流動性の高い土壌(砂礫地)に根を下ろし、厳しい環境で群生する様子から「高山植物の女王」と呼ばれています。北アルプスでは、白馬岳、蓮華岳、燕岳、乗鞍岳で群生し、国内分布の南端は中央アルプス、西端は御嶽山と言われていて、各地で保護の対象とされています。しかし、本来の自生地ではないところでは、外部から持ち込まれたコマクサが分布を広げて自然環境に変化を与えていて、白山、羊蹄山、樽前山では、コマクサの除去作業が実施されています。

国内の高山植物といえども、本来の自生地ではないところに外部から持ち込まれた場合は、セイヨウタンポポなどの外来種と同じ扱いになってしまいます。

 

剣ヶ峰まで行ってきましたよ!

さて、シャトルバス始発便に乗車して、暴風雨の中を剣ヶ峰に向かったこちらの方々。ちょうど畳平へ戻る途中ですれ違うことができました。

 

トレーニングではなく苦行そのもの

今日はノリクラのことをよく知る左の方が、富士山登山のトレーニングのためにお二人をお連れされましたが、この環境ではトレーニングの度を越して、苦行そのものです。ノリクラの環境を熟知されたうえでの判断と思われますが、こんな日がノリクラデビューとはちょっとかわいそう...今度はスカッと晴れた秋の紅葉散策に、是非とももう一度お越しください。

 

【畳平、お花畑】

お花畑入口 − 6月15日から一般開放が始まっています

それではここからは畳平お花畑の様子をお伝えします。今年は雪解けが早く、6月中旬ごろには奥の方では開花が始まり、6月15日(月)から一般開放が始まりました。

 

入口付近の雪解けが急速に進み、ハクサンイチゲ、ショウジョウバカマが咲き始める

こちらは入口付近の様子。先週までは完全に雪に閉ざされていましたが、かなり雪解けが進んで、入口付近を含めて、全体的にかなり積雪が少なくなりました。そのため、雪解け終わったところから一斉に咲き始めています。

 

木道には一部積雪が残る 周回コースは左側のみ通行可

さらに進んで遊歩道の周回コースの起点。一部で積雪が残っているため、右方向のみ通行可能で、一番奥まで進んだら、再び折り返して戻ってくることになります。

 

ハクサンイチゲ満開のエリアが先週よりも広がっている

先週は周回コースの中央付近から奥に渡ってハクサンイチゲが満開でしたが、今週はもう少し手前までハクサンイチゲの満開箇所が増えています。

 

ハクサンイチゲの茎が延びる ミヤマキンバイ

ハクサンイチゲの茎をよく見る、先週よりも少し伸びています。咲き始めはほとんど茎はありませんでしたが、これからどんどん背が高くなって行きます。ですから、この茎の長さを見ると咲き始めから時間が経過しているかどうかを推測することができます。右はミヤマキンバイ。画像ではすでに終わりに近い状態ですが、今後、入口付近で咲き始めることと思います。

 

ミヤマクロユリ

ハクサンイチゲの傍らからミヤマクロユリが顔を出しています。

 

遊歩道奥ではすでに見頃に 奥から少し手前はつぼみが

遊歩道の一番奥のほうで見頃となっていて、それよりも少し手前部分は数多くのつぼみが見られますので、もうしばらくは楽しむことができるはずです。

 

枯れ始めたハクサンイチゲも コイワカガミにバトンタッチ

ハクサンイチゲに関しては、咲き始めから1〜2週間経過していますので、すでに枯れ始めたものも出てきました。また、それに代わってコイワカガミのつぼみが開花しようとしています。

畳平お花畑は、例年よりも2週間程度早い状況が見られますので、少し早目にお越しいただいたほうがよいかと思います。

 

【昨年の今ごろは?】

2014ノリクラ 雪渓カレンダーVol.8(2014/06/28〜29) @

6月28日(土)は、早朝に一降りあった後、曇り空の朝を迎えます。どんよりとした状態で、中腹はのうむで視界が効かず、大雪渓に到着する直前から霧の上にでて、天候は曇りであるものの山頂まではっきり確認できる状態となります。このまま天候が回復するかと思ったものの、次第に山頂から大雪渓まで完全に霧に覆われてしまいます。霧雨から小雨の状態の降り方が終始続き、雨も霧もさほどひどいものではなく、気温も暑くもなく寒くもない状態で、雨対策さえしっかりしていれば、過ごしやすいコンディションに入るのではないかと感じられました。

6月29日(日)は、日付が今日に変わる頃に激しい雷雨に見舞われたものの、雲間に青空が広がる朝を迎えます。夜の激しい雨で通行止めが懸念されたものの、乗鞍スカイラインは通常通り開通し、シャトルバスも通常運行されます。しかし、畳平は濃霧で9時過ぎから周期的に雨に見舞われる状況。昨日も同じく濃霧と雨の一日でしたが、昨日は霧の抜けるタイミングがあったものの、今日は全く霧が抜ける気配がない状況。それでも、午後になると、一時的に日が差すときがあって、視界が開けた乗鞍高原を見ると日差しがしっかり差し込んで、天候の悪いのは大雪渓・山頂付近だけだったようです。結局、終日にわたって、濃霧と雨に見舞われた一日となりました。

 

<編集後記>

先日、6月21日(日)に乗鞍天空マラソンが開催されました。悪天候のため、競技スタート後に折り返し視点を位ヶ原山荘先に急遽変更されましたが、トップ選手を迎える前に対応完了でき、その迅速な対応ぶりには感心いたしました。エイドステーションの移動など大変だったと思います。

レース開始から2時間程度は、位ヶ原山荘付近の天候もそれほどひどくなかったものの、その後、急に風雨が強くなって気温も低下しました。そのため、予定通りに大雪渓までレースを行っていたら、大変なことになっていたと思います。実際、レース後半になると、寒さに身を震わせて顔面蒼白状態の選手も多数いらっしゃいました。また、救助件数は昨年より少なくなりましたが、おそらく、距離が短くなったためと考えられます。しかし、救助のほとんどが低温で動けなくなったケースでした。

天候が良ければ、普通のマラソンと同じ装備で問題ないものの、今回のように雨に見舞われると、山岳地帯であるがゆえに、想像以上に体温が奪われます。おそらく、一般のマラソンであれば、ある程度雨に濡れたほうが体温上昇をおさえられると考えられますが、天空マラソンではそれが度を越して、体温低下を招いてしまうわけです。

経験のある登山者であれば、絶対に濡れないことが何より大事であることは身にしみていると思います。ですから、真冬の降雪期よりも春先の雨のほうがよほど怖いのです。

天空マラソンは、「マラソン」という競技ですが、その前に登山地帯を走っているという概念をもって対策を取らなければなりません。今回の様子を見ていると、選手各個人の対応にもう少し必要な点があったのではないかと考えられます。そのため、今後はより強くその点をアピールし、雨対策グッズの販売を拡充したり、エイドステーションでの保温対策の充実なども場合によっては必要かもしれません。

 

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