ノリクラ 雪渓カレンダー
プレリリース版 Vol.6(2012/04/26〜30) A
【春山バス試運転 − 位ヶ原山荘へ】
発車した車内では、松本市担当者の方より、本日の試運転の説明と挨拶がなされました。
「本日は天候が心配されましたが、朝、位ヶ原山荘に連絡してバスの運行には支障がないと確認して、試運転を実施する運びとなりました。平成24年度の春バスの事業計画についてのご意見については位ヶ原山荘にてお伺いいたします。
この先、三本滝ゲートを通過後、道路状況などを確認、現場写真の撮影等を行いながら、終点の位ヶ原山荘に向かいたいと思います。また、その際、途中の道路状況などについてのご意見などもございましたら、位ヶ原山荘にて賜りたいと思います。」
観光センターを出発して7kmほどで三本滝ゲートに到達します。すでにお伝えしているとおり、4月19日(木)に休暇村ゲート〜三本滝ゲート間の冬季閉鎖が解除され、三本滝ゲートまではマイカーでお越しになることができるようになりました。
Mt.乗鞍のスキー場営業が終了して、4月からは休暇村ゲートから順次除雪が実施され、乗鞍岳春山バスの終点となる位ヶ原山荘付近の除雪が完了したのは今週初めのこと。そのため、三本滝ゲートから先は、大型バスがようやく通行できるだけの道幅しか除雪がなされていないはずです。
雪解け水が絶えずしみ出る | 雪の量が多くなる |
標高1500メートルの乗鞍高原を出発して、標高1800メートルの三本滝ゲートを通過すると、周辺の雪の量が多くなってきます。雪解け水も絶えず道路を流れ、法面にはまだ雪が貼り付いています。法面に貼りついた雪が、実は一番厄介なシロモノなのです。
所々で法面の雪が崩落する | 「いや〜、ここはちょっと通れんぞ!」 |
道路周辺の雪は、3月下旬から4月上旬にかけて降った大雪で大幅に積雪量が増加しました。そのため積もっている雪も時間が経過していないためスカスカな状態。そのため、雪壁も崩落しやすく、今回も所々で道路に落下している箇所が見られました。
そんな箇所に差し掛かると慎重にバスを進めます。「いやいや〜、結構崩落してるなぁ。ちょっとここは通れんぞ!」と、バスを止めます。
トランクからスコップを取り出し、乗務員全員で除雪作業です。ゴールデンウィークから6月までの春山バスも7月から10月までのシャトルバスも、乗鞍岳線を運行するバスには、すべての便で車掌が同乗します。山岳路線でどのようなアクシデントが発生するか予測不可能であり、ワンマン化が進むバス路線の中でも、乗鞍岳線だけはやはり特殊な山岳路線といえるでしょう。
冬季閉鎖中のため、カーブミラーはまだありません | 雪壁からは枝先が飛び出る |
前述のとおり、三本滝ゲートより先は冬季閉鎖中です。そのため、カーブミラーなど道路の保安設備は、周辺の積雪状況の問題などもあって、完全に設置されていません。大型バスがすれ違えられないことはもちろん、退避場所すらありませんから、一般のバス・タクシーの通行が困難なことは容易に想像できます。
また、雪壁からは、ダケカンバなどの枝先が横に飛び出ていて、ただでさえ狭小な幅員をさらに狭めています。
途中で道路状況確認、報道用の写真撮影のため、バスは一旦停止します。例年なら、車幅ぎりぎりの箇所がいくつもあり、ヘアピンカーブでは後輪が雪の上を乗り上げなければ通行できない箇所があります。
今年は、どの箇所も幅広く除雪がなされ、特にヘアピンカーブなどでは、道幅以上に除雪されている箇所もあって、ベテランの運転手の方も「今年は運転しやすいなぁ〜、いつもより1メートルは幅広くできてるよ!」と、おっしゃっていました。
標高2230メートルの冷泉小屋付近に差し掛かります。この先から積雪量が急激に増えてくるところです。
積雪量が増えてきて、背の高いバスの車窓からも雪壁の向こうを見渡すことが困難な状態になって来ました。
それと同時に幅員も狭くなってきます。それでもバスの車幅は確保されていて、雪壁ギリギリをすり抜けるものの、なんら問題なく運行が続けられました。
そして、乗鞍岳春山バスの終点である標高2350メートルの位ヶ原山荘に到着します。
【春山バス試運転 − 位ヶ原山荘に到着】
試運転バスが到着した11時過ぎの位ヶ原山荘は気温3℃。雪ではなく雨です。
転回場所の除雪状況をチェック | 「今年はどこも問題ないね」 |
春山バスは位ヶ原山荘の横にあるこのスペースで転回します。例年、バスのテールを引っ掛けそうになりながら、何度も切り返しをしないと展開できない状態ですが、幅広く、そして、奥の方までしっかりと除雪がなされていて、こちらのベテラン運転手さんも「今年はホントにどこも問題ないねぇ!」と、うれしそうでした。
そして、位ヶ原山荘で、本日の試運転に関しての協議が始まります。
まず初めに松本市の担当者の方から、乗鞍岳春山バスの事業計画の概要のご説明がありました。
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今年新しく刷新された「乗鞍岳春山バスご利用の皆様へ」というパンフレットの地図も、ライチョウの生息地域などを考慮して、滑走可能エリアなどが設定されていること。
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今後、位ヶ原エリアなどで道路除雪が進むと段差ができるため、スキーヤーの転落防止のための防護ロープの設置を進めること。
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冬季閉鎖中の運行であるため、運行前の道路凍結・雪崩などの確認を実施し、1日3便の運行本数は変更しないが、運行台数は臨機応変に対応する。
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大雪渓・肩の小屋口までの運行延長は、除雪状況を見ながら今後決めて行きたい。
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安全喚起として、春山入山計画書の提出を求め、観光センターや位ヶ原山荘など既存の設置場所のほか、畳平・ほおのき平・アカンダナなど岐阜県側へ設置協力、そしてアルピコ交通のホームページからもダウンロードできるようになった。
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万一の事故に備えて、賠償責任保険に加入し、すでに適用されている。
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また、ツアーコースへの下山時に、誤って伊奈川方面・前川本谷方面に進入することを防ぐためのコース誘導のロープ設置が昨日完了したこと。
・ 周辺各県に向けてのPR活動を実施。
などの報告がありました。
例年以上に除雪がしっかりされていたので、問題の箇所はないという意見もあり、運行してかまわないと考えられる。これから、雪が融けてくると安全施設などが出てくるので、それに合わせて、今後も対応して行きたいと思っています。ただ、除雪が進んでも、通行止め期間中であることは変わりなく、安全を見極めて、春山バスの運行を実施されたいと思います。
例年よりも早めに除雪を実施しています | 位ヶ原山荘までは問題なく運行できる状況です |
除雪作業を受託した建設業者の方の話では、「例年よりも除雪が広く、28日の初便から運行できると思われる。除雪は例年よりも早めに実施している。日のあたる所は、雪の壁が崩落するところもありますが、連絡いただければ、早急に対応させていただきます。」
大雪渓への延長運行は、除雪の進捗次第で判断されますが、位ヶ原山荘より上部は例年よりも多く、現段階では、正確な日時までは申し上げられない状況です。
それでは、皆さんからご意見をいただき、問題なく運行ができるようですので、予定通り、4月28日(土)より運行するということでよろしくお願いいたします。今後、運行については、安全管理が一番大事と考え、自然の景観保護にも注意を払いながら、関係機関と一緒に取り組んで行きたいと思います。
協議が終了して試運転バスは下山します。平成20年より一日一便から三便へと運行本数が増加され、それに伴って利用者数も大幅に増加して行きました。昨年は東日本大震災の影響から、若干の落ち込みがありましたが、今年は周辺各県等へのPR活動も行われ、更なる利用者の増加を期待したいところです。(→ Next)
■ご注意■
今回の取材記事は、バックカントリースキー・ボードの経験のある方を対象としたもので、初めての方へのイントロダクションという位置づけの内容ではありません。
初めてツアーコースなどにトライしてみたい方は、経験者と同行するか、ガイドツアーに参加されることをお勧めします。(乗鞍高原などにはガイドが同行するツアーを企画する会社がありますのでお問い合わせください。)
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