ノリクラ 雪渓カレンダー
Vol.3(2012/05/26〜27) A
【畳平に到着】
8時の畳平の気温は0.5℃。真冬並みの気温ですが、日差しの強さもあってそれほどの寒さはありません。
シャトルバスを降りたスキーヤー・ボーダーに滑走可能エリアを説明するのは乗鞍環境パトロールの方。畳平など周辺一帯の登山道やお花畑などの整備、巡回パトロールを実施されていて、入山するスキーヤー・ボーダーの方々への環境保全に関する啓蒙活動もその一環です。
スキーヤーに説明するこちらのパトロールの方。少しばかりたどたどしさの残る説明をされてますが...
先輩に指導されながら今年初めて任務に就いた新人のパトロール員です。10月末までのグリーンシーズン中は、「ノリクラ漬けの毎日」が続きます。
出発の準備が出来次第、大雪渓・剣ヶ峰方面へと歩き始めます。
【畳平周辺】
不動岳とお花畑 − 2008年以降もっとも多い積雪量 | 鶴ヶ池 − 2008年以降もっとも多い積雪量 |
ここからは畳平周辺及び畳平から肩の小屋方面へ向かう道路周辺の様子をお伝えします。左の画像は畳平の南にある不動岳。そして、右の画像は、畳平の東にある鶴ヶ池。どちらも積雪量の多い状況が見られ、2008年以降、最も多い積雪量を示しています。
畳平から大雪渓・剣ヶ峰には、肩の小屋への専用道を歩いて行きます。正式には肩の小屋の奥にある東京大学宇宙線研究所附属 乗鞍観測所に向かう専用道です。
【東京大学宇宙線研究所附属 乗鞍観測所・国立天文台 乗鞍コロナ観測所】 乗鞍観測所は、若干奥まったところにあって、剣ヶ峰への登山道から外れ、一般の立ち入りが制限されています。そのため、ここでは専用道のことを「肩の小屋への専用道」と、呼称させていただいています。 東京大学宇宙線研究所附属 乗鞍観測所は、昭和25年(1950年)に朝日新聞の学術奨励金によって立てられた「朝日の小屋」が前身で、昭和28年(1953年)に設置されました。 摩利支天岳(標高2872メートル)の山頂付近には、 国立天文台 乗鞍コロナ観測所のドームあります。こちらのほうは朝日の小屋よりも一年早く昭和24年(1949年)に建設されましたが、平成22年(2010年)3月で閉鎖されました。現在は大学共同利用機関法人 自然科学研究機構の共同利用施設として運用されています。(名称:自然科学研究機構 乗鞍観測所) 前述の「専用道」は県道乗鞍岳線の県境ゲート手前から続いていて、未舗装であるものの自動車の通行が可能です(通行は許可車両のみ)。国土地理院の地図では敷地内道路である「庭園路」として扱われています。畳平が国内自動車道最高地点とされていますが、実際には畳平よりも県道乗鞍岳線の県境ゲート付近が一般道としては最も高いところにあります(標高約2715メートル)。そして、自動車でもっとも高いところに到達できるのは、この専用道を登ったコロナ観測所であると考えられます(標高2872メートル付近)。 |
こちらは畳平の南側のお花畑。左斜面は不動岳の山肌で右斜面の恵比寿岳の山肌です。二つの山肌の谷底がお花畑で、2009年以降で最も多い積雪量を示しています。
例年なら、お花畑の一部が見えているはずですが、右の画像のとおり、完全に雪に閉ざされています。
摩利支天岳の北斜面にある不消ヶ池(きえずがいけ)も、2008年以降で最も多い積雪量です。
その不消ヶ池には畳平一帯の各施設へ給水する取水口があります。しかし、積雪量が多いため、ポールの設置がなければどこに取水口があるのかわからない状態です。また、不消ヶ池で取水した水は飲用水としても利用されるため、この付近への立ち入りは制限されています。(滑走禁止です。)
富士見岳 | 肩の小屋・コロナ観測所 分岐点へ |
畳平から約1.2km。富士見岳の山腹を横切って、分岐点へと向かいます。
【肩の小屋へ】
畳平から専用道を1.2km進んで、肩の小屋・コロナ観測所分岐点に到着します。正面が魔利支天岳の頂上で、左に進むと肩の小屋、右に進むとコロナ観測所です。まだ、道路は雪の中です。
この付近は2008年以降最も多い積雪量を示していて、その中でもっとも積雪量の多かった2010年よりも多いことがわかります。
大雪渓 | 位ヶ原 |
分岐点に差し掛かると剣ヶ峰・蚕玉岳・朝日岳の各稜線から大雪渓や位ヶ原方面まで展望が一気に開けます。分岐点付近から望む大雪渓・稜線方面(画像左)、そして、位ヶ原方面(画像右)ともに、昨年よりも多い状況です。
2008年以降、積雪量が最も多かった2009年と比べても多いことがわかります。
肩の小屋方面はこの先アイゼンが必要 | ピークは狙わず、どこまで登るかはその時の気分次第 |
この先は急斜面をトラバースしなければならないため、アイゼンを装着する登山の方々が休憩する様子があります。山頂から大雪渓・位ヶ原へと広大なエリアを一望できるビューポイントですから、ずーっとその様子を眺め続ける方々の様子も見られます。
「どこまで登るなんて決めず、そのときの気分次第で引き返すようにしています。ですから、ピーク狙いなんて気持ちはないんですよ。」と、おっしゃりながら、このパノラマを見入っています。ゆっくり楽しむには心の余裕が必要ですね。
昨日の降雪で一面真っ白 | 積雪量は3センチ |
昨日の降雪で、一帯は真っ白の新雪に覆われています。積雪量は3センチほど。定期的に降雪に見舞われていますので、なかなか雪解けが進まない状況です。
専用道にある落石防止のフェンスの様子から、昨年よりも1メートル以上多いことがわかります。肩の小屋までは所々積雪のない部分もありますが、専用道はほとんどが雪の中です。
ここから大雪渓駐車場方面へは、フォールラインがストレートな急斜面が広がっています。スキーヤー・ボーダーの方々には楽しいバーンであると考えられます。ご覧のように雪解けとともに岩場が広がり始め、この付近からの落石は雪解けが落ち着く6月下旬頃まで毎年多発しています。
そのため、この付近への立ち入りは注意が必要で、不必要に岩場に進入することは避けなければなりません。
この専用道からは山頂方面が真正面に見られます。少しずつハイマツ帯が広がってきましたが、途中で雪が途切れるところはまだありません。今後、さらに雪解けが進むと途中でハイマツ帯に阻まれて引き返す必要が出てきます。(雷鳥保護のため、ハイマツ帯への進入は避けるようお願いいたします。)
ハイマツ帯に入らなくても山頂に到達できるルートを事前に確認することが大切です。「きれいだなぁ〜」と感嘆するだけでなく、どこの登りやすいルートがあるのか、クレパスはどこに発生しているのかといった見方で、山全体が見渡せる場所からしっかりと把握しておく必要があります。
このように近くに到達すると周囲の状況がつかみにくくなり、ハイマツ帯に到達してからルートが阻まれてしまったことに気付きます。(→ Next)
■ご注意■
今回の取材記事は、バックカントリースキー・ボードの経験のある方を対象としたもので、初めての方へのイントロダクションという位置づけの内容ではありません。
初めてツアーコースなどにトライしてみたい方は、経験者と同行するか、ガイドツアーに参加されることをお勧めします。(乗鞍高原などにはガイドが同行するツアーを企画する会社がありますのでお問い合わせください。)
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