ノリクラ 雪渓カレンダー
Vol.4(2015/05/30〜31) D
【稜線へ】
それでは肩の小屋から稜線に向けて出発します。
肩の小屋から稜線への登山道 −下から半分以上雪解け |
肩の小屋から稜線への登山道は下から半分以上で雪解けが終了しています。
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先週の登山道 ノリクラ 雪渓カレンダーVol.3(2015/05/23〜24) B |
今週の登山道 |
この先、大雪渓につながる朝日岳直下のバーンに到達するまで、ほとんど雪がなく、細く残っている程度に過ぎない状況です。その細くなった部分は左の先週の画像では75メートルほどで、右の今週では40メートルとなっています。
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昨年同時期の4週間後の登山道(積雪箇所) 2014ノリクラ 雪渓カレンダーVol.8(2014/06/28〜29) E |
今週の登山道(積雪箇所) 昨年より3〜4週間早い雪解け |
こちらは積雪が始まる部分で、左の画像は昨年同時期より4週間早いもので、下端部分は今週よりもやや上にありますので、今週は昨年と比べて3〜4週間早い雪解けです。
雪に慣れていない方はアイゼン装着を |
雪の上を登ることはできたものの、下りが全くダメ...とおっしゃる方も多いと思います。今日のようなザクザクの雪質なら、雪上の下山に慣れていらっしゃる方ならツボ足で問題ありません。ただ、慣れていらっしゃらない方は、アイゼンを装着したほうが安全でしょう。
スキー・シリセード | 家庭ごみの袋で完全防備−米袋など厚手のものがおススメ |
さて、こちらの4人の方々。スキーを持つ2名とシリセードの2名。よく見ると、シロセードのお二人はお尻全体を取り囲むように、家庭ごみの大きな袋を装着しています。これならカッパも破れないし、お尻が濡れなくて済みます。ただ、最近の家庭ごみの袋だと薄くて破れやすいため、お米の袋など やや厚手のものを選択されたほうがよいでしょう。
「後ろの手をこのようにして...」 | コントロールしながら |
シリセードでもそれなりに技術が必要で、ガイドの方が手の置き方などを指導...
初心者は単独では行わないようお願いいたします |
ガイドさんと同じように滑り出すものの、なかなかうまくコントロールできません。この場所は下部に岩場などがありませんから、比較的安全に滑り降りることができますが、初めての方は単独では行わないようお願いいたします。バランスを崩して制動が効かなくなるとかなりのスピードが出て危険です。
【稜線】
こちらは蚕玉岳(こだまだけ)〜朝日岳の稜線。画像の左側が蚕玉岳山頂(標高2979メートル)に続き、画像右側が朝日岳山頂(標高2975メートル)に続いています。
積雪部分は朝日岳直下のみ(180メートル) |
現在、雪の上を歩く必要があるのは、朝日岳直下の赤線部分のみで、雪上の距離は180メートルです。積雪は6月中旬から下旬並みの状況です。
左側の稜線部分は滑走不能 | 右側の朝日岳直下は滑走可能 |
左の稜線部分は滑走不能となり、右側の朝日岳直下のバーンから滑走することになります。
稜線から朝日岳へ移動 | 滑走準備 |
こちらが朝日岳、すでに何人かの方が滑走の準備をされています。なお、朝日岳には登山道はありませんので、この先、積雪がなくなる山頂付近に立ち入ることができなくなります。
ダイナミックにしぶきを上げる | 一気に大雪渓エリアへ |
縦溝はほとんどなく、柔らかい雪をダイナミックにしぶきを上げる様子は豪快とのもの...そのまま、一気に大雪渓エリアへと滑り込みます。
冷え込んだ日はアイゼンが必要となります − 登山道に積雪があるうちはアイゼン携行 |
登ることができても下ることができない場合があることは、山登りでは周知のこと。朝日岳直下はご覧のようにステップが切ってあり、強い冷え込みがなければ、ツボ足でも登ることができます。ただ、冷え込んで雪面が硬かったり、下りに慣れていない場合は、アイゼンが必要となりますので、登山道に積雪があるうちはアイゼンを必ず持参してください。
「バックカントリースキーもそろそろ終わりの時期かなぁ〜」 |
稜線でゆっくりされているこちらの方々。「今年はノリクラを含め、月山や富士山など軒並み積雪量が少なく、バックカントリースキーもそろそろ終わりの時期かなぁ〜」と、名残惜しそうにおっしゃっていました。例年、6月半ばから下旬にかけて、春スキーヤーの方々は「シーズン終了」と、名残惜しそうにおっしゃる様子が見られ、それとは逆に夏スキーヤーの方々「そろそろシーズンイン」と、喜ぶ様子があり、季節がまた一歩先へと進んでいく様子がこんなところにも見られます。
昨年同時期の蚕玉岳〜朝日岳稜線 2014ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.4(2014/05/31〜06/01) C ↓ |
昨年同時期2週間後の蚕玉岳〜朝日岳稜線 2014ノリクラ 雪渓カレンダーVol.6(2014/06/14〜15) D ↓ |
今週の蚕玉岳〜朝日岳稜線 昨年よりも2週間早い雪解け |
こちらが稜線部分。手前が朝日岳方面で、画像に写るなだらかなピークが蚕玉岳、それに続く奥のピークが主峰の剣ヶ峰です。左上は昨年同時期の画像。そして、右上は昨年同時期の2週間後の画像。そして、下段は今週の画像です。昨年よりも2週間早い雪解けで、先週と同じ雪解けスピードです。
昨年同時期の権現ヶ池 2014ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.4(2014/05/31〜06/01) C ↓ |
昨年同時期の3週間後の権現ヶ池 2014ノリクラ 雪渓カレンダーVol.7(2014/06/20〜21) B ↓ |
今週の権現ヶ池 昨年より3週間早い雪解け |
御岳の二ノ池に次いで国内2番目の標高に位置する権現ヶ池(ごんげんがいけ、標高2845m)。先ほどの稜線部分の3枚と同様に、左上が昨年同時期の画像、右上が昨年同時期より3週間早い画像。そして、下段は今週の画像です。昨年よりも3週間以上早い雪解けを示しています。先週とほぼ同じ雪解けスピードです。
昨年同時期の朝日岳 2014ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.4(2014/05/31〜06/01) C ↓ |
昨年同時期の3週間後の朝日岳 2014ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.7(2014/06/20〜21) B ↓ |
今週の権現ヶ池 昨年より3週間早い雪解け |
こちらが朝日岳山頂から続くバーンで、先ほど申し上げたように、画像手前にある稜線は積雪がありませんので、滑走は稜線からこちらに移動する必要があります。左上が昨年同時期の画像、右上が今週と同じ積雪状態の昨年同時期の3週間後の画像。そして、下段は今週の画像です。昨年よりも3週間早い雪解けで、先週より雪解けスピードが遅くなっています。
【剣ヶ峰〜蚕玉岳】
こちらは剣ヶ峰〜蚕玉岳(こだまだけ)稜線。
昨年同時期の蚕玉岳山頂付近 2014ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.4(2014/05/31〜06/01) C ↓ |
昨年同時期の3週間後の蚕玉岳山頂付近 2014ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.7(2014/06/20〜21) B ↓ |
今週の蚕玉岳山頂付近 昨年より3週間早い雪解け |
蚕玉岳山頂付近の様子。左上は昨年同時期の画像。そして、右上は昨年同時期の3週間後の画像。そして、下段は今週の画像です。積雪量は昨年よりもメートル近く少なく、3週間ほど雪解けが早いことがわかります。
稜線上でのんびり休憩 | 今日で「板納め」 |
風に冷たさはなく、稜線上でのんびりと休憩です。そしてこちらのグループも今日で「板納め」とのこと。
今晩はみんなでシーズンを締めくくる宴会を |
今晩はみんなで集まって、シーズンを締めくくる宴会を開催するとのこと。また、来年お会いできることを楽しみしています。
目線の先には二羽の雷鳥 |
さて、観光客の方の目線の先には、二羽の雷鳥の姿があります。手前がメスで奥がオスです。
左:オス、右:メス −
つがいの二羽、これから産卵・負荷の大事な時期 =ハイマツなどへの不用意な進入は自粛を= |
このように並べて比較すると、オスとメスの区別は容易ですが、オス・メスが一緒にいないと、一般の方には判別が難しいかもしれません。この時期のオスには目の上には赤い肉冠がありますので、それが目印の一つです。この時期の雷鳥は縄張り争いが終わり、つがいが形成され、産卵・孵化の大事な時期へと入ります。そのため、ハイマツなどへはむやみに進入されないようお願いいたします。
稜線直下で一部雪解け |
それでは、再び積雪状況についてお伝えいたします。
画像中央で雪解けが確認されますが、それ以外はまだまだ広大なバーンが広がっています。バーンは固い部分がほとんどなく、全体的にザクザクですが、緩み切ってしまうほどの柔らかさではありません。若干縦溝が見られますが、雪が柔らかいため、板が取られるほどの状況ではなく、滑走しやすいコンディションでした。また、縦溝は水の流れで生じますので、稜線直下は少なく、雪解け水が集まる山麓側で多く見られます。
昨年同時期の位ヶ原 2014ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.4(2014/05/31〜06/01) C ↓ |
昨年同時期の3週間後の位ヶ原 2014ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.7(2014/06/20〜21) B ↓ |
今週の位ヶ原 昨年より3週間早い雪解け |
稜線付近からの位ヶ原。左上が昨年同時期の画像。右上が今週と同じ積雪状態の昨年同時期の3週間後の画像。そして、下段は今週の画像です。昨年より3週間早い雪解けです。雪解けスピードは先週とほぼ同じです。
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昨年同時期の剣ヶ峰直下の岩 2014ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.4(2014/05/31〜06/01) C |
今週の剣ヶ峰直下の岩 昨年より2〜3週間早い雪解け |
剣ヶ峰直下の岩付近も昨年の6月中旬並みの状況です。雪解けスピードは先週とほぼ同じです。
3分の1地点 岩の頭 − 昨年より1ヶ月以上早い雪解け |
稜線から県道乗鞍岳線までの区間の約3分の1程度まで滑り降りたところ。先々週からバーン中央に岩の頭が出現しました。例年、6月中旬から下旬ごろになって表れるもので、今年は1ヶ月も早く出現しました。また、しばらくするとこの箇所でバーンが上下に分断されてしまいます。ちなみに、昨年はこの岩が出現したのは6月20日ごろで、その前に上端部分の雪がなくなり滑走できなくなりました。
ただ、岩の頭が出始めてから、この2週間は思ったほど雪解けが進んでいないため、まだ、バーン分断に至っていません。
最も細くなった部分で幅20メートル |
最も細くなった部分で幅20メートルです。おそらく、あと1〜2週間でこの箇所は分断されると考えられます。
県道乗鞍岳線 |
そして、稜線から約1kmほど滑り降りると県道乗鞍岳線と合流します。
切り通しは1.6メートル 過去最低の積雪量 |
切り通しの高さは1.6メートル、2014年は3.5メートル。2013年は2.5メートル、2012年は4.2メートル、2011年は2.7メートル、2010年は3〜4メートルで、過去最低の積雪量となっています。
【昨年の今ごろは?】
5月が終わって6月になりました。乗鞍岳春山バスが運行を始めたゴールデンウィークがつい先日だったように感じるのに、すでに1ヶ月も前のことになっています。その春山バスは、5月29日(木)より大雪渓への延長運行が始まり、今回は最初の週末を迎えました。大雪渓まで歩かずにやってこられるようになると、夏のシャトルバスとほとんど変わらない利便性となり、山頂・稜線を目指すバックカントリーの方々に加えて、大雪渓だけを繰り返し滑走するサマースキーヤーの姿も少しずつ増えてきます。それに伴い、ノリクラの雰囲気も少しずつ夏モードに変わって行くように感じられます。
5月31日(土)は、ほぼ終日快晴で気持ちのよい空気感に包まれた一日。乗鞍岳春山バスは通常通り運行され、大雪渓まで延長運行が開始されて初めての週末ということもあって、始発便は5台運行されました。バスを降りて目の前には大きな雪山が真っ青な空に聳え立ち、あちこちでシャッターを切る様子が見られます。大雪渓駐車場が一年で最も賑わうのが、おそらく、大雪渓延長運行された最初の週末であると考えられ、よい天気に恵まれたこともあって、乗車された方の中には、大雪渓延長運行を待ちわびていた方もいらっしゃったようです。今日は汗というものを完全に忘れた一日で、風に吹かれる心地よさが、今年もこの時期に忘れずにやってきてくれたことをうれしく思うほどでした。
6月1日(日)は、昨日以上に透明感あふれる澄んだ青空が広がります。乗鞍スカイラインを登った桔梗ヶ原付近の空は、これ以上にないほどの深い青空が雪原いっぱいに広がります。この快晴の空は終日に渡って広がり、一年の中で一番綺麗な青空だといっても過言ではないほどの状況でした。
<編集後記>
「県道乗鞍岳線、7月1日全線開通なるか...」
県道乗鞍岳線の全線開通は7月1日となっていますが、落石などの危険性の問題から、ここ数年は7月1日の開通は大雪渓までにとどまり、その先の県境方面の開通(全線開通)は1〜2週間ほど遅れ、年によっては海の日以降になっています。
全線開通ができないという事は、乗鞍スカイラインとの相互通行もできないため、観光バスなどは旅程を変更しなければならず、中には高山方面から畳平を経由して乗鞍高原に宿泊する団体ツアーが、畳平から平湯温泉に降りて国道158号を回って乗鞍高原に入るというケースも見られます
また、乗鞍高原からシャトルバスに乗って畳平から山頂登山に向かう観光客の場合も、シャトルバスが大雪渓折り返し運行のため、大雪渓から登り始めなければなりません。
実はこちらのほうが問題で、予定通りに畳平から登る場合は、稜線直下に積雪が一部残る程度ですから、雪の上を歩くことを想定する必要がありませんが、7月上旬の大雪渓〜肩の小屋への登山道はほとんど雪に閉ざされていて、天候が悪いときはアイゼンがないと困難な場合があります。そのため、雪上を歩くための装備を持参されないまま、大雪渓〜肩の小屋登山道を登ることになり、転倒まで至らなくても足元がおぼつかない様子が何度も拝見されます。
今年は乗鞍岳春山バスの運行開始も遅れましたが、観光産業としての機会喪失を防ぐ意味からも、できる限り、道路開通やバス運行は予定通りに開始できる対応が必要かと思います。
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