ノリクラ 雪渓カレンダー
Vol.17(2011/09/01〜02) @
9月最初のノリクラ雪渓カレンダーをお届けします。9月は台風のシーズン。今回はまさにその影響を受けてしまった二日間となってしまいました。
9月1日(木)は、どんよりとした曇り空から一日が始まります。乗鞍高原周辺の山肌も飲み込むほどの低い空につつまれ、いまにも泣き出しそうな様相。その予測どおり、7時過ぎには雨が降り始めます。そして、三本滝から濃霧に包まれ、今日は全山濃霧の中にすっぽりと覆われてしまいます。大雪渓付近は視界が50メートルを切るほどの状況。ただ、雨と風はほとんどなく、それに関しては過ごしやすい状況ですが、視界が全く効かない状況ですから、取材にならない一日でした。そして、いつもなら、西、もしくは、北からの風の流れが、東から風が流れ、台風12号の直接的な影響はまだ感じられないものの、風の流れから、台風が徐々に近づいてきている様子がわかります。
9月2日(金)は、日本列島に台風がさらに近づいてきたため、天候の回復など期待できず悪化傾向...しかし、台風の動きが遅いため、昨日よりも風の強さが加わった程度の悪化しかありません。ただ、濃霧であることはまったく変わりませんので、今日もまったく取材にならない一日でした。
8月が終わり、シラカバ・ダケカンバを中心に、葉の色合いに変化が始まり、今週は夏から秋へと季節がシフトし始めた雰囲気が、十分感じられる状況になってきました。そんな二日間の様子をお伝えします。
昨年と同様に、9月から紅葉情報を始めます。5ページ目の 【紅葉情報】 をご覧ください。全く変化のない箇所もありますが、例年と同様、9月に入り、色合いに変化が見られるようになって来ました。
■ご注意■
今回の大雪渓関連の記事はノリクラ初心者の方を対象にしておりません。ノリクラデビューをお考えの方は来年の夏シーズンをご検討ください。
これからの時期は天候の急変により降雪・凍結などで冬山の様相を呈します。今後、大雪渓に新雪が降った場合でも、急斜面とアイスバーンが残っていて、この時期にノリクラの雪渓で滑走されたことのない方や、ソフトブートのボードの方は絶対にお越しにならないようお願いいたします。
【9月1日(木)、観光センター前駐車場】
こちらは早朝5時30分の観光センター前駐車場。
雲が低く垂れ込める | 訪れる方はほとんどありません |
周辺の山肌をも飲み込むほどの低い雲が垂れ込めています。日本の南にある台風12号が週末に向けて上陸するという状況のため、観光センター前駐車場に訪れるマイカーは数えるほどしかありません。
気温は16℃。風はほとんどなく、台風の湿った空気はさほど感じません。それどころか、長袖の上にさらにアウターを着込んでちょうど良い状況です、
お盆を過ぎたあたりから、周辺の木々の色合いに変化を感じるようになって来ました。徐々に緑が薄くなってきたところに、黄色味がかってきている雰囲気が見られます。
森林限界を超えた大雪渓・位ヶ原エリアの紅葉は、ウラジロナナカマドとダケカンバがメインですが、山麓は木々の種類がたくさんあり、色合いも豊富です。その中でも、やはりシラカバの紅葉は目に留まるもの。
ただ、シラカバは一気に落葉が始まってしまうのため、樹木全体が黄色く光るような、みごとな紅葉にはなかなか出会えないのが残念です。そのシラカバは、少しずつ落葉が始まり、季節の移り変わりが始まっています。
そして、いつものようにシャトルバス始発便が到着。
台風が接近していて、今後の天候は間違いなく悪化傾向ですが、今日の運行はAダイヤ。シャトルバスは、通常運行のAダイヤと、悪天候時に減便運行されるBダイヤの二つのダイヤが編成されています。しかし、前日の段階で決定されたダイヤは、途中で天候が悪くなったからといって、変更されることはありません。
ただ、天候の急変で、岐阜県側の乗鞍スカイラインが通行止めになると、乗鞍スカイラインを路線とする岐阜県側のシャトルバスの運休はもちろんのこと、ここでお伝えしている乗鞍高原から畳平に向かう長野県側のシャトルバス も、同時に運休となりますので、今日のような状況の場合は、常にシャトルバスの運行状況を気にしながら、下山のタイミングを図る必要があります。
乗鞍岳シャトルバス(畳平へのシャトルバス)の運行状況は、アルピコ交通 新島々営業所(電話 0263-92-2511)にご確認ください。また、乗鞍岳シャトルバスは、前述のとおり、乗鞍高原から出発する長野県側の路線と、平湯温泉・ほおのき平から出発する岐阜県側の路線の二つがあります。お問い合わせの際は、どちらの路線か明確にお電話ください。
雲はさらに低くなる | シャトルバス乗車の際は防寒着・合羽をご用意ください |
雲はさらに低くなり、山麓の山々を飲み込んで行きます。今日のように雲が低く垂れ込んでいるときは、大雪渓・位ヶ原や周辺の畳平など上部エリアは雲の上に出て、眼下にきれいな雲海が広がることもあります。しかし、台風が接近している今日の天候状況から考えると、上部エリアが晴れているとは、とても考えられません。
終点の畳平のバスターミナルは、売店・喫茶・レストランなどの設備があり、寒い日は暖房も入っていますので、山麓の乗鞍高原と同じ服装でも、畳平バスターミナルに駆け込めば構いません。しかし、それでは単に畳平バスターミナルと乗鞍高原の往復しか体験できず、シャトルバスに乗車した甲斐がありません。ぜひとも、防寒着・合羽を持参の上、畳平周辺の散策にも対応できるようにお越しください。
一般の方にとって、雨具といえば、合羽ではなく「傘」と連想されることと思います。しかし、山岳地帯では傘は役に立ちません。それは、台風の日に傘が役に立たないことと同じです。
さて、今日はどこまで天候がもってくれるか...シャトルバス始発便は定刻どおり出発です。
【大雪渓までの沿道の風景】
それでは、ここからはいつものように、大雪渓に向かう沿道の様子をお伝えします。
何気なく、見過ごしてしまう沿道の様子ですが、よく見るとここにも季節感が存在します。乗鞍高原から三本滝までの区間は、マイカーでも通行可能ですから、じっくりと観察することも可能です。ご覧のようにススキが大きくなっている様子があります。
おそらく、皆さんがお住まいの地域でもススキは自生していることと思います。しかし、そんなススキをじっくりと眺める時間は、平素はなかなか作ることのできない方もいらっしゃるのではないかと思います。乗鞍高原にはそんなのんびりとした時間を楽しむためにお越しになる方も多いかもしれません。
「道端の野菊」で片付けられてしまうものですが、少しばかり淡い青紫色の花びらはノコンギク(野紺菊、キク科シオン属)。色合いにはかなりばらつきがあり、純白に近いものから、かなり紫色のものもあります。
野菊と呼ばれるものは、先週の ノリクラ雪渓カレンダーVol.16(2011/08/25〜27)@ でもご紹介したゴマナをはじめ、数々あって区別が難しいものです。ノコンギクに似た花にヨメナという野菊があります。頭花周囲の冠毛の有無、総苞片の色などから区別しますが、判別が難しい場合もあります。
こちらは、観光センターから7km先にある三本滝ゲート。この先からマイカー規制が始まり、バス・タクシー、自転車のみ通行できます。三本滝ゲートには、警備員の方が常駐しており、開門前の道路パトロールや許可車両の誘導を行っています。
ご覧のとおり、濃霧がかかっています。警備員の方の話では、今朝のパトロールもひどい濃霧に見舞われ、ヘッドライトをつけても、先がまったくわからないほどとのこと。路肩の白線を頼りに運転しなければならないほどで、その状況から比べると、現時点は状況が良くなってきているようです。
三本滝ゲートを過ぎてしばらくすると、乗鞍高原温泉スキー場のかもしかゲレンデです。
ヤナギランの実 | イタドリの実 |
そろそろ、花の時期は終わりに近づき、ヤナギランやイタドリは、ご覧のような実の時期になってきました。
さらに進んで、周辺はダケカンバの回廊が続きます。先週あたりから、黄色く変化した葉の様子が見られるようになって来ました、
そして、ダケカンバだけでなく、ご覧のようにウラジロナナカマドも、色合いに変化が見られるようになり、この一週間で一気に秋の気配が色濃くなってきています。例年、この時期、これほどまで変化が進んだことは余りありません。
こちらは、先週お伝えしたサラシナショウマの箇所。ムラサキツリバナ(紫吊花、別名クロツリバナ、ニシキギ科ニシキギ属)が、たわわに実をつけている様子が見られます。
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今週のムラサキツリバナ 外皮が3裂に割れて実がぶら下がる |
先週は、まだ硬い外皮に覆われていましたが、ご覧のように3裂に割れて、中の実がぶら下がっている様子が見られます。このように実がぶら下がる様子から、ツリバナの名前は由来されています。
この状態から、すぐにカラマツソウ(キンポウゲ科カラマツソウ属)であることは、なかなかわかりづらいものです。花期の時期はすでに終わって、ご覧のように実ができています。
カラマツソウと呼ばれるのは、花の部分(正確には雄しべ)がカラマツの葉の状態に似ているところから命名されていますが、カラマツソウの仲間で、まったく同じ形状の花をつける高山植物に、モミジカラマツ(キンポウゲ科カラマツソウ属)があります。モミジカラマツは大雪渓エリアに多く分布していて、モミジカラマツはまだ花期が続いています。
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カラマツソウの実 実の形はまったく異なります |
モミジカラマツの実 −
葉はカエデに似ている 2007ノリクラ 雪渓カレンダーVol.20(2007/09/22〜23) C |
花はまったく同じでも、ご覧のように実はまるで異なることがわかります。よく見るとどちらも特徴的な葉の形をしていて、高山植物であるモミジカラマツは、葉がカエデに似ているところから、このように呼ばれています。
位ヶ原山荘 | この先濃霧 −乗鞍スカイラインは視界不良で自転車通行止め |
そして、森林限界に差し掛かる位ヶ原山荘から先は、ご覧のように完全に霧の中。むしろ、雲の中といったほうがこの状態を正確に伝えられるかもしれません。先ほど、三本滝ゲートの警備員の方がおっしゃっていた、早朝のパトロールの時に近い状態でしょう。
ここまでひどい濃霧になると、対向してくるシャトルバスやタクシーのヘッドライトも、数十メートルまで接近しないとわからないほどで、さらに自転車ともなれば、電池式のヘッドランプを点滅させても、対向車両からはまったくわからないものです。そのため、この日の岐阜県側の乗鞍スカイラインは、シャトルバス・タクシーなどの自動車の通行はできても、自転車の通行は見合わせの措置が取られました。
足元さえはっきりしない状況の中、大雪渓に到着です。(→ Next)
■ご注意■
今回の大雪渓関連の記事はノリクラ初心者の方を対象にしておりません。ノリクラデビューをお考えの方は来年の夏シーズンをご検討ください。
これからの時期は天候の急変により降雪・凍結などで冬山の様相を呈します。今後、大雪渓に新雪が降った場合でも、急斜面とアイスバーンが残っていて、この時期にノリクラの雪渓で滑走されたことのない方や、ソフトブートのボードの方は絶対にお越しにならないようお願いいたします。
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