ノリクラ 雪渓カレンダー
Vol.7(2016/06/25〜26) @
6月最後のノリクラ雪渓カレンダー。2016年も折り返し地点に差し掛かろうとしています。半年前はどうだったのかと思い返すと、雪不足で目も当てられないスキー場の光景が思い出されますが、いまだにその余波が大雪渓では続き、九州地方では記録的な豪雨に見舞われ、異常気象とは本当に恐ろしいものだと再認識させられます。先週、沖縄地方の梅雨が明けましたが、それは梅雨前線が北上したということで、本州での本格的な梅雨の始まりを告げることを意味しています。
6月25日(土)は、昨晩からの大雨が収まり、曇り空の朝を迎えます。ただ、雲はどんよりとしていて、今にも泣きだしそう...乗鞍高原を出発する春山バスは始発便から通常運行が開始されたものの、岐阜県側の乗鞍スカイラインは、昨晩の雨により24時間雨量が規制値を超えたため、終日通行止め。大雪渓は終日濃霧で時間とともに風が強くなり、気温も下がり、日中に関しては雨はなかったものの、15時頃からまとまった降り方がはじまり、本格的な梅雨に突入した天候の一日でした。
6月26日(日)は晴れ間がのぞく曇り空でしたが、大雪渓に到着すると濃霧と冷たい雨に見舞われ、昨日以上に厳しいコンディション。正午でも2℃しかなく、午後になって一時的に青空が広がるものの、夕方には再び濃霧で、山頂を全く見ることのない一日でした。
大雪渓の積雪状況は、例年の7月下旬〜8月上旬並みで、1ヶ月以上も早い雪解けを見せています。大雪渓での夏スキーを計画されている方は、お早目にお越しになることをお勧めします。
それでは、二日間の様子をご覧ください。
【6月25日(土)、観光センター駐車場】
観光センター前駐車場 |
早朝6時の観光センター前駐車場。
昨晩の雨は収まり曇り空 | だんだん風が強くなってきた =岐阜県側の乗鞍スカイライン雨量通行止= |
昨晩の激しい雨は収まって、現在の天候は曇、やや強めの北風が吹き抜けます。画像の幟は観光センターのテラスにあるもので南風になっていますが、この一角だけは風が渦を巻くようで、方向が逆になっています。ただ、風の強さはこの画像でお分かりになるはずです。
昨晩の雨が収まっても雲行きは早く、天候が回復しているような雰囲気はありません。岐阜県側の乗鞍スカイラインは、昨晩の大雨で、6時時点の24時間雨量が100mmを記録し、規制値を超えたため、通行止めとなりました。24時間雨量は終日にわたって規制値を超えたままの状態で、今日は終日通行止めとなりました。
乗鞍岳春山バスは始発便から運行 | 大半がアルペンボーダー |
乗鞍高原から出発する乗鞍岳春山バスは、早朝のパトロールの結果、道路上に枝や小石がややみられるものの、運行に支障となるものはなく、今日も通常運行が始まります。始発便の時間が近づくにつれて、続々と乗場に訪れます。でも、今日の乗客はほとんどはいつもお越しのアルペンボーダーの方々だけで、スキーヤー・モーグラーは皆無に近い状態でした。
テントの裏に咲く花 | ヤマボウシ |
山頂方面には貴重な高山植物があって注目されるものですが、身近なところの自然にも若干の興味を持っていただくと、山への関心に幅が出てくるもの...春山バスのテントの裏側には白い花が咲き誇っています。もっときれいに咲いている同じ花が乗鞍高原内に数多くありますが、あえて身近な所のものを選んでいます。
こちらはヤマボウシ。開花してからすでに2〜3週間経過していますので、すでにご覧になっている方も多いかと思います。
実はようやく咲き始めたところ(中心部分) |
でも、実は今ようやく咲き始めたところなんです...
ヤマボウシ(山法師、ミズキ科ミズキ属ヤマボウシ亜属)の花弁に見える4枚は、総苞片(そうほうへん)と呼ばれる花序全体を包み込む器官で、実際の花は緑色の中心部分です。中心の坊主頭に白い頭巾をかぶった様子からヤマボウシと呼ばれています。
その中心の緑の部分が、今週あたりから咲き始めたというわけなんです。
今が見頃のフランスギク | その中に紫の花が |
さて、こちらは先週もお伝えしたフランスギク。でも、先週と異なるのはその中に紫の花が咲き始めたこと...
ウツボグサ | 色々なノリクラを見てください |
こちらはウツボグサ。こちらはウツボグサ(靫草、シソ科ウツボグサ属)、花穂が弓矢の矢を入れる靫(うつぼ)に似ていることから命名されています。下から上へと順番に咲いて行き、まさに咲き始めたところです。
雪以外の自然への関心を持ってもらうことが大切で、また、関心・興味はなくとも、その多様性についての認識だけは共感していただきたいと思うのです。
春山バス始発便は2台 |
そして、春山バス始発便が到着。当初は人数が少ないかと思いましたが、結局2台運行となり、この天候の割にはまずまずの人出。
7月からはシャトルバスの運行が始まります 詳細はこちら |
乗鞍岳春山バスの運行は今月末の6月30日まで...7月からは大雪渓・肩の小屋口のさらに先の畳平まで運行されるシャトルバスが始まります。ダイヤも春山バスの1日4便から1時間に1便と大幅に増え、始発便は6時10分と1時間以上早くなり、利便性がかなり向上します。また、7月16日からご来光バスも運行開始です(ダイヤは現時点ではまだ公表されていません)。詳細については、2016シーズン 乗鞍岳マイカー規制・乗り換え駐車場・シャトルバス情報 をご覧ください。
【観光センターから大雪渓へ−車窓の風景】
それでは、いつものように大雪渓に向かう沿道の様子をお伝えします。梅雨に入っても週末になると、そこそこの天候に恵まれていましたが、今回は曇天・降雨後の沿道の様子となります。
観光センターから三本滝にかけては特に大きな変化はありません。
木々は生い茂り、新緑の季節はもう終わっています。こちらはマタタビ。葉が白化してからすでに数週間が過ぎています。よく見ると、白化した葉がピンク色に変化しています。
花が咲き始めると、白化した葉がピンクになるのですが、その理由は不明です。ピンクのマタタビを見つけたら、花が咲いていないかどうか確認してみてください。
三本滝レストハウス | 三本滝ゲート |
そして、こちらは三本滝レストハウスと三本滝ゲート。
この先冬季閉鎖中・マイカー規制 |
冬季閉鎖中は自転車の通行は禁止されています | 冬季閉鎖解除は7月1日6時 |
この先は冬季閉鎖区間で、マイカーはこの手前まで通行可能です。冬季閉鎖の期間中はゲートは締められていて、春山バスの通過のたびに開錠します。なお、冬季閉鎖は一般のバスやタクシーのほか、自転車・徒歩などすべての通行手段について適応されます。
ただ、この冬季閉鎖は7月1日(金)の6時に解除され、自転車の通行も可能になります。ヒルクライマーにとって、あと一週間は待ち遠しいところです。
激しく流れる雨水 |
さて、三本滝ゲートを過ぎると、法面・山肌から滝のように激しく水が流れる様子があちこちで確認できます。
三本滝ゲート先の土砂崩れ箇所 − 7月1日以降は片側交互通行に |
こちらは三本滝ゲートからすぐ先の土砂崩れ箇所。4月上旬の大雨の際に発生したもので、その時と比べる、幾分浸食が続いているように見受けられます。道幅は大型バス1台分で、タクシーなどの乗用車でもすれ違いは困難な状況ですから、おそらく7月1日以降は片側交互通行となるかと思いますので、通行には十分注意して下さい。
山肌から流れ出た水が道路に土砂を | 普段は見られない美しい滝が蘇る |
また、法面・山肌から流れ出た雨水はそのまま道路を横断します。その際に土砂を含んで流れ出すため、大量の水の流れが生じた場所は、ご覧のように砂利が残っています。このほか、木の枝や、場合によってはこぶし大ほどの石が散乱することもあります。激しい降雨後はこのような現象がみられることは珍しくありません。次週以降、ヒルクライムにお越しの方はご注意ください。
そんな厄介な激しい降雨ですが、普段は見られない美しい滝が蘇る様子も見られますので、足を止めてご覧になる価値があります。
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先週の様子 ノリクラ 雪渓カレンダーVol.6(2016/06/17〜18) D |
遠景の山肌は濃霧に包まれる |
前方の山肌をも隠してしまうほどひどい濃霧。先週画像と比べるとその立体感がよくわかります。
もう一つの土砂崩れ箇所 − こちらも交互通行に |
こちらでも道路の斜面に土砂崩れが発生しています。昨年12月上旬の大雨で発生したもので、発生当時と比べると、やはり少しずつ浸食している模様。先ほどの三本滝ゲート付近の土砂崩れ箇所よりも道幅は広いものの、こちらも対向車両がある場合は、一旦停止する必要がありますので、次週末以降、ヒルクライムにお越しの方はご注意ください。
画像左に注目 |
荒田沢橋を過ぎて冷泉小屋までの劇坂区間に差し掛かります。道路の左側はフリコ沢と呼ばれ、位ヶ原山荘の南から冷泉小屋、そして、三本滝へと続いていますが、よく見ると山肌に普段は見られない滝が流れているのを確認できます。
カーブを通り越して振り返るとよく見える | まぼろしの滝 − 雨の日にしか現れない |
登りの車窓からはよく確認できませんが、先ほどの右カーブを曲がって、ふりかえって確認したのが左画像。ちょうど真正面に滝を見ることができます。雪解けの多い春先と、それ以降は雨の日しか見られないため、「まぼろしの滝」とも呼ばれています。晴れた日でも全く流れていないわけではありませんがほとんど目立たない状態です。右の画像では2本の流れがみられ、右側の小さな滝は通常程度の雨ではほとんど目立たず、大雨の時にしかはっきりと確認できません。昨晩の雨の激しさを語っています。
位ヶ原山荘、濃霧の中 |
標高2350メートルの位ヶ原山荘。このふきんから霧が濃くなり、視界は50メートルにも満たない状況。道路という構造物があるため、何ら問題ないものの、雪で道路をはじめ、すべてのものが埋め尽くされた状態になると、この濃霧のでは進退不能になります。
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先週の11号カーブ、ツアーコース入口 ノリクラ 雪渓カレンダー Vol.6(2016/06/17〜18) D |
今回の11号カーブ、ツアーコース入口 |
晴れた時と濃霧の時では全く景色が異なります。ノリクラでは全ての登山道に誘導ロープが設置されていますので、この濃霧でも道に迷うことはないものの、誘導ロープが数十メートルないだけで、正規のルートから外れてしまいます。晴れた日では考えらえないことですが、正しいと思って歩いても、地形のなだらかな方向へと勝手に進んでしまうからです。
雪壁が続く | 高さ3.7メートル − この1週間で大幅に減少 |
さらに進んで、かろうじて雪壁が残っていることが確認できます。右画像の4号カーブの雪壁は、先週の高さ5.1メートルから3.7メートルと大幅に減少していて、先週までは昨年より高かったのに、今週は逆転してしまいました(昨年は4メートル)。今週は雨続きだったことが大幅な雪解けに影響していると思います。
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