ノリクラ 雪渓カレンダー

Vol.12(2006/07/31) E

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(Update:2006/08/03)

 

【高山植物】

雪解けが進んで大雪渓エリアでも、開花する高山植物の種類が増えてきました。

 

ゴゼンタチバナ(花)

ハイマツ林の下にはゴゼンタチバナが花をつけ始めています。ほぼ、昨年と同じペースの開花です。

高山植物には、ハクサンイチゲやチシマギキョウなど地名をあらわすものがたくさんあります。こちらのゴゼンタチバナもその例に漏れず、ハクサンイチゲと同様、白山から由来しています。ゴゼンタチバナは加賀白山の最高峰の御前峰の名を冠して、万両に似た赤い実が、カラタチバナの実に似ていることから、このように呼ばれているようです。

また、ゴゼンタチバナ(御前橘)は、高山植物の中でも非常に和風の名称でありますが、東北アジア、北米にも分布し、日本固有種ではなく、基準標本産地はカナダです。

ミネズオウ(花)

ハイマツ林床があって、雪田があって、岩礫地もあるのが大雪渓エリアの特徴です。先週は岩場に自生したジムカデを紹介しましたが、今回紹介するのはミネズオウ(峰蘇芳)。葉の形がズオウ(イチイ)に似ているところから、高山の意味を含めた峰という文字を冠して、ミネズオウと呼ばれているようです。北海道と中部以北の高山帯の岩礫地に自生する常緑低小木で、木の高さはわずか5センチほどですが、ごらんのようによく広がっていますので、小さな花が無数に咲く時期を迎えると、ミネズオウの木であることがよくわかります。

 

ミネズオウ(花)

図鑑などではかなりクローズアップした画像が掲載されていることが多いのですが、画像に写る硬貨と比較すると、実際の花は非常に小さいことがわかります。花冠の直径3ミリ程度しかありません。したがって、赤い雄しべがアクセントになって、非常に個性的な姿を持ちますが、目を凝らして見ないとわからないほどです。

肩の小屋周辺や畳平のお花畑などでは6月ごろから咲いていますが、大雪渓エリアでは、まだこれから見頃の時期を迎えるミネズオウがたくさんあります。ぜひ、目を凝らして、星をちりばめたような小さなミネズオウを探してみてください。

シナノキンバイ(花)

こちらは先週開花したシナノキンバイ。花は先週の段階では開きかけの状態でしたが、今週はさらにしっかり開いています。

 

花弁は長さ5ミリ程度の橙色のもの

先週も申し上げましたが、直径5センチほどの大きな黄色の花びら様のものは萼(がく)です。先週は萼はある程度大きく開きましたが、その中の花弁(かべんー花びらのこと)はつぼみの状態で、花弁と雄しべ・雌しべと区別がつきませんでした。今週に入って、ほぼ、開花したため、その構造を見ることができます。

シナノキンバイの花弁はご覧の画像の橙色の部分で、長さはわずか5ミリ程度。雄しべのほうが遥かに長いことがお分かりになるかと思います。シナノキンバイの母種のチシマキンバイとは、姿形が一見したところでは区別ががつきませんが、こちらは花弁と雄しべの長さがほぼ同じである点が異なっています。

チングルマ(若芽)

こちらは、毎年定点撮影しているチングルマ。落葉小低木の高山植物であるため、毎年、同じ固体が同じ位置に定住しています。昨年はこの時期に開花し始めました。今年は雪解けが遅れたため、昨年と比べて3週間遅れで若葉を出し始めています。


【用語メモ】

※基準標本(きじゅんひょうほん):  

その固体を命名した際に用いられた基準となる標本。通常は複数ある標本のうちある一つを正基準標本(holotype)とし、公的機関などに厳重に保管されている。また、基準標本産地は、これらの基準標本の産地を指している。

高山植物の中には、ハクサンイチゲやハクサンボウフウなど、白山が基準標本産地であるものが数多くある。また、アカバナ科の高山植物のアシボソアカバナは乗鞍岳が基準標本産地になっている。

 

 

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